薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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2014年01月

通常は便秘などで処方される漢方製剤の防風通聖散は市販薬としても入手が可能です。医療用製剤の効能効果は「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘」となっており、肥満症へも効能効果を有しています。

【文献タイトル・出典】

Efficacy of bofu-tsusho-san, an oriental herbal medicine, in obese Japanese women with impaired glucose tolerance.

Clin Exp Pharmacol Physiol. 2004 Sep;31(9):614-9. PMID:15479169

【論文は妥当か?】※抄録情報のみ

[Patient]

耐糖能異常の日本人女性81人(BMI36.5±4.8

[Exposure]

1200Kcalの低カロリー食と300Kcalの運動+防風通聖散40

[Comparison]

1200Kcalの低カロリー食と300Kcalの運動+プラセボ41

Outcome

体重減少・腹部内臓脂肪減少

研究デザインは何か?

ランダム化比較試験

ランダム化されているか?

されている

患者背景は同等か?

抄録に記載なし

盲検化されているか?

2重盲検

サンプルサイズは十分か?

抄録に記載なし

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

 ▶抄録に記載なく詳細不明

追跡期間は?

24

 

【結果は何か?】

E群では安時代謝率の減少なしに体重や腹部内臓脂肪が減少した(P0.01

C群では体重は減少したものの(P0.05)腹部内臓脂肪はわらなかった

 

体重

腹部内臓脂肪

E群:防風通聖散

有意に減少(P0.01

有意に減少(P0.01

C群:プラセボ

有意に減少(P0.05

有意差なし

 

【結果は役に立つか?】

論文では耐糖能異常を有する肥満女性への治療に用いることができると結論しています。24週後の体重は両群で減少していますので、E群とC群の差がどの程度だったか抄録には記載がありません。体重のような連続変数を評価する場合、各群のベースラインからの差を両群間の差で評価するというのが一般的です。したがってこの情報のみで、プラセボと比べて有意かどうかは不明で肥満症へ有効と結論付けることは難しいです。また体重変化が統計的有意でも、実際のところ差がわずかであれば個人差の範囲内となってしまうこともあり、この報告(抄録情報)からだけではその有効性についてはよくわからないと考えた方が良いと思います。またBMI36以上とかなり肥満と思われる参加者が食事・運動介入も合わせて行っていますので、BMI25前後の少し太り気味程度の人が、ただ単に防風通聖散を服用するだけでは減量効果はほぼ効果は期待できない可能性が高いと思います。

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過去にはビタミンEは認知症の進行を遅らせる可能性が示唆れていました。N.Engl.J.Med 1997 Apr 24;336(17):1216-22 PMID:9110909 しかしながら、ビタミンEサプリメントの高用量摂取は死亡リスク増加を示唆する報告Ann.Intern Med 2005;Jan4;142(1):37-46 PMID:15537682 も存在し、その使用を積極的に行うべきかは議論の余地があります。JAMAから最新の報告

【文献タイトル・出典】

Effect of Vitamin E and Memantine on Functional Decline in Alzheimer Disease The TEAM-AD VA Cooperative Randomized Trial

JAMA 2014;311(1)33-44. PMID:24381967

【論文は妥当か?】※抄録情報のみでの吟味

[Patient]

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症患者613

[Exposure;1]

αトコフェロール2000IU/日 152

[Exposure;2]

メマンチン20mg/日 155

[Exposure;3]

αトコフェロール2000IU/日+メマンチン20mg/日 154

[Comparison]

プラセボ152

Outcome

ADCSADLスコア(日常生活スケール078でスコアが高いほど機能障害の程度が低い)

研究デザインは何か?

多施設ランダム化比較試験

ランダム化されているか?

されている

患者背景は同等か?

 

盲検化されているか?

2重盲検

サンプルサイズは十分か?

 

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

intention-to-treat解析されているか?


追跡率:561/613人=91.5

追跡期間は?

平均2.27

 

【結果は何か?】

アウトカム

E

トコフェロール

メマンチン

C

プラセボ

結果

平均スコア変化差

[95%信頼区間]

ADCSADL

スコア

E1

140

 

140

3.15[0.925.39]

E2

142

1.98[0.244.20]

E3

139

抄録に記載はないが有意は無い

【結果は役に立つか?】

マンチンの有効性は統計的にも示せませんでした。ビタミンEのスコア差も統計的有意に出てはいますが、078のレンジのうち3ポイント前後です。臨床的な影響はどの程度なのでしょうか。安全性については、染症と外寄生がプラセボ群で13件(11例)、メマンチン群31件(23例)、併用群44件(31例)とE群で多かったものの、重大な有害事象ともに治療群間に差はなかったとしています。しかしながらビタミンE2000IUという高用量摂取が長期的なアウトカムにどのように影響してくるのか、ADの罹患年齢なども考えればなかなか難しい問題です。

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スタチン系薬剤の中でも心血管・脳血管疾患の一次予防に対するロスバスタチンとシンバスタチンを比較検討した観察研究です。

【文献タイトル・出典】

Comparative effectiveness of rosuvastatin versus simvastatin in primary prevention among new users: a cohort study in the French national health insurance database.

Pharmacoepidemiol Drug Saf.2013 Dec 2. PMID:24292987

【論文は妥当か?】

[Patient]

心血管疾患、脳血管疾患の既往の無い40歳~79

[Exposure]

ロスバスタチン5mg106 941

[Comparison]

シンバスタチン20mg56 860

Outcome

心血管疾患・脳血管疾患・死亡(一次予防)

研究デザインは何か?

コホート研究

調整した交絡因子は何か?

年齢、剥奪指標、同効薬、併存疾患、入院歴

追跡期間は?

中央値35.8カ月

 

【結果は何か?】

アウトカム

調整ハザード比 [95%信頼区間]

心血管疾患・脳血管疾患・死亡

intention-to-treat解析0.94 [0.85-1.04]

per-protocol 解析 0.98 [0.87-1.10]

 

【結果は役に立つか?】

心血管疾患・脳血管疾患の一次予防にあえてストロングスタチンを積極的に使用すべき根拠は見当たらないように思います。観察研究ではありますが貴重な報告です。

なおストロングスタチンでは用量によっては糖尿病発症リスクが上昇する可能性が示唆されています。

(参考)スタチンによる糖尿病発症リスクはどの程度ですか?

(参考)スタチンと糖尿病リスク

(参考)スタチン系薬剤は糖尿病を増やすって本当ですか?

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上気道炎に汎用されるカルボシステイン。中耳炎などでも処方されることも多く、小児から高齢者まで処方頻度は非常に高い薬剤です。COPD患者では痰がらみ症状を訴えるケースも多く、このような去痰薬を使用するケースもあるかと思います。

【文献タイトル・出典】

Effect of carbocisteine on acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease (PEACE Study): a randomised placebo-controlled study.

Lancet.2008 Jun 14;371(9629):2013-8. PMID:18555912

【論文は妥当か?】※抄録情報のみ

[Patient]

過去2年間に少なくとも2回の増悪を経験した40歳~80歳のCOPD患者709人(FEV(1)/FVC0.7未満、FEV(1)25%~79%)

[Exposure]

カルボシステイン1500mmg/日の投与354

[Comparison]

プラセボの投与355

Outcome

1年間のCOPD増悪頻度

研究デザインは何か?

中国における22施設ランダム化比較試験

ランダム化されているか?

されている

患者背景は同等か?

抄録に記載なし。

盲検化されているか?

2重盲検

サンプルサイズは十分か?

抄録に記載なし。結果に有意差あり

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

intention to treat.解析

追跡期間は?

1

 

【結果は何か?】

アウトカム

E

カルボシステイン

C

プラセボ

結果

リスク比[95%信頼区間]

年間の

増悪頻度

1.01

(SE0.06

1.35

(SE0.06

0.75 [0.62-0.92],

p=0.004

【結果は役に立つか?】

カルボシステインなどの粘液溶解薬は、COPD患者における増悪の予防のための価値ある治療法として認識されるべきである。と結論しています。統計的有意差は出ていますが、臨床上どの影響があるか、微妙なところでしょうか。コストやリスクを考慮すれば、ルーチン投与もありかなという気もします。

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少し古い論文ですが、表題のテーマで調べる機会がありましたので以下の論文を読んでみます。

使用されている薬剤はチバセン®ですが、この薬剤、重篤な腎機能障害のある患者では慎重投与となっており、添付文書ではクレアチニンクリアランスが30mL/分以下、又は血清クレアチニン値が3mg/dL以上の重篤な腎機能障害のある患者では、投与量を減らすなど慎重に投与すること。〔本剤の活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度の血圧低下、腎機能の悪化を起こすおそれがある。〕」と記載があります。用法用量には重症高血圧症又は腎障害を伴う高血圧症の患者では2.5mgから投与を開始することが望ましい」との記載もあります。

【文献タイトル・出典】

Effect of the angiotensin-converting-enzyme inhibitor benazepril on the progression of chronic renal insufficiency. The Angiotensin-Converting-Enzyme Inhibition in Progressive Renal Insufficiency Study Group.

N Engl J Med. 1996 Apr 11;334(15):939-45. PMID:8596594

【論文は妥当か?】

[Patient]

慢性腎不全を有する18歳~70歳の男女583人(平均年齢51歳、男性72%、軽度39%、中等度61%、糸球体腎炎192人、間質性腎炎105人、腎硬化症97人、多発性嚢胞腎64人、糖尿病性腎症21人、その他原因不明の腎不全104人)

[Exposure]

ベナゼプリルの投与110mg 300

[Comparison]

プラセボの投与 283

Outcome

血清クレアチニン倍化・透析導入

研究デザインは何か?

ランダム化比較試験

ランダム化されているか?

されている

患者背景は同等か?

同等と記載あり

盲検化されているか?

されている(2重盲検)

サンプルサイズは十分か?

 

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

ITT解析されている

追跡期間は?

E群中央値3年、C群中央値2.9

 

【結果は何か?】

アウトカム

E

ベナゼプリル

C

プラセボ

結果

相対リスク[95%信頼区間]

クレアチニン倍化・透析導入

31/300

10.3%)

57/283

20.1%)

0.53[0.270.70]

NNT=11人(3年)

【結果は役に立つか?】

高カリウム血症などへの配慮は必須となります。一般的に慢性腎臓病を合併した高血圧症ではACE阻害薬の投与が有用と思われますが、症例ごとに個別化は必要でしょう。なお血圧低下はE群で3.55.0mmhgほどの低下でした。

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