薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

メインブログの「地域医療の見え方」(http://jp.bloguru.com/syuichiao)、「思想的、疫学的医療について」(http://syuichiao.hatenadiary.com/)もよろしくお願い致します。

ご意見、ご質問などは(syuichiao@gmail.com)までお寄せください。

2014年02月

これまで牛乳や乳製品の摂取と心血管疾患は逆相関にあることが示されてきました。(イントロダクション参照)NIPPON DATE80から牛乳及び乳製品の摂取と心血管リスクに関する報告

【文献タイトル・出典】

Consumption of Dairy Products and Death From Cardiovascular Disease in the Japanese General Population :The NIPPON DATE80

J Epidemiol. 2013;23(1):47-54. Epub 2012 Dec 1. PMID: 23208514

【論文は妥当か?】※抄録情報のみで吟味

[Patient]

30歳以上の男女9243人(男性4045人、平均約50歳、平均BMI22.7

[Exposure]

牛乳や乳製品の少量摂取、中等量摂取

[Comparison]

牛乳や乳製品の高量摂取

Outcome

心血管死亡、冠動脈疾患死亡、脳卒中死亡

研究デザインは何か?

前向きコホート研究

調整した交絡因子は何か?

年齢、BMI、喫煙状況、飲酒習慣、糖尿病既往、降圧薬使用、仕事カテゴリ、総エネルギー摂取

追跡期間は?

24

 

【結果は何か?】

24年の観察期間中心血管死亡893例、冠動脈疾患死亡174例、脳卒中死亡417

男女別に各アウトカムに対する調整ハザード比[95%信頼区間]は以下の通り

男性4045

少量摂取1349

中等量摂取1349

高量摂取1347

心血管死亡

0.890.721.11

0.900.711.15

1(reference)

冠動脈疾患死亡

0.670.411.11

0.570.321.01

1(reference)

脳卒中死亡

1.100.801.50

1.090.771.54

1(reference)

女性5198

少量摂取1733

中等量摂取1734

高量摂取1731

心血管死亡

1.270.961.52

0.990.771.28

1(reference)

冠動脈疾患死亡

1.670.992.80

0.720.381.36

1(reference)

脳卒中死亡

1.340.941.90

1.040.701.54

1(reference)

 

【結果は役に立つか?】

論文の結論には女性において心血管疾患による死亡は乳製品摂取と逆相関と書かれていますが、厳密には傾向にあるという感じで、そのほか全体的によくわからない結果になっています。
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これまでn-3系不飽和脂肪酸と心血管リスクについてはあまり前向きな結果は出ていませんでした。

(参考)最近発売されたω3脂肪酸エチル粒状カプセル(EPA・DHA製剤)は効果がありますか?

(参考)n-3 系多価不飽和脂肪酸で心臓病による死亡は減らせますか?

(参考)オメガ3系脂肪酸と心血管リスク

(参考)ω3多価不飽和脂肪酸の認知症への効果

(参考)EPAの効果

 

今回の報告は食事由来のn3-系不飽和脂肪酸を摂取と言うところがポイントかもしれません。

【文献タイトル・出典】

Long-chain n-3 polyunsaturated fatty acids intake and cardiovascular disease mortality risk in Japanese: A 24 year follow-up of NIPPON DATE80.

Atherosclerosis 2014 Feb;232(2):384-9 PMID:24468152

【論文は妥当か?】※抄録情報のみで吟味

[Patient]

心血管疾患を有しない日本の300か所から9190人の男女(女性56.2%、平均年齢50歳)NIPPON DATE80

[Exposure]

食事由来EPADHAの摂取(最高四分位)

[Comparison]

食事由来のEPA,DHAの摂取(最低四分位)

Outcome

心血管疾患死亡

研究デザインは何か?

前向きコホート研究

調整した交絡因子は何か?

性別、栄養摂取状況などで多変量調整(詳細は抄録に記載なし)

追跡期間は?

24年(192897/年)

 

【結果は何か?】

24年の観察期間中879例が心血管死亡

アウトカム

調整ハザード比[95%信頼区間]

心血管疾患死亡

0.800.660.96

 

【結果は役に立つか?】

なお冠動脈疾患死亡や脳卒中死亡に明確な差は無いとしています。24年追跡で心血管疾患発症が20%少ない可能性の示唆。信頼区間では少なく見積もって4%。ただ用量相関は認められているようで脂肪酸摂取量が多いほど、統計的有意に心血管疾患死亡が減っているようです。(傾向性のP=0.038)サブ解析ではありますが、ベースラインで30歳から59歳の参加者では特に強い関連を認めたという結果でした。今回の報告はあくまで食事由来のものであることが交絡への影響も含めてこのあたりがポイントのような気もしています。

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ビス剤の重大な副作用として有名な顎骨壊死、本邦でも症例報告は存在します。

(参考)薬剤師のケースレポート日誌:ビスホスホネート剤:顎骨壊死

現段階で有力な臨床検討報告が少ない中で、観察研究のメタ分析ですが、貴重な報告

【文献タイトル・出典】

Risk of osteonecrosis in patients taking bisphosphonates for prevention of osteoporosis : a systematic review and meta-analysis

Osteoporos Int.2013 Dec 17. PMID:24343364

【論文は妥当か?】(※抄録情報のみで吟味)

[Patient]

観察研究12研究に参加した症例2562例と対照1571997

[Exposure]

経口又は静注用ビスホスホネート剤

Comparison]

ビス剤の使用なし

Outcome

顎骨壊死、骨壊死発症リスク

研究デザインは何か?

システマテックレビュー&メタ分析[統合研究数12

元論文バイアスの検討

コホート研究と症例対照研究のメタ分析

評価者バイアスの検討

2名のレビューアーが独立して評価

異質性バイアスの検討

I2統計量を表示(統計的異質性は高い)

出版バイアスの検討

201212月までEMBASE、コクランライブラリを検索



【結果は何か?】

アウトカム

オッズ比[95%信頼区間]

I2統計量

顎骨壊死またはその他の骨壊死

2.321.383.19

91

顎骨壊死

2.571.374.84

92.2

その他の骨壊死

1.790.714.47

83.3


【結果は役に立つか?】


論文の結論には静注用ビス剤でよりハイリスクと書かれていてフルテキストで読みたい文献です。もともと症例報告は多数存在するだけに異質性が高いと言えど、リスクの関連性は軽視できないものがあります。今後のエビデンスに注目です。


 


 


 

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禁煙補助療法に用いられるニコチン置換療法、ブプロピオン、バレニクリンについての心血管リスクとの関連を検討したネットワークメタアナリシスです。

【文献タイトル・出典】

Cardiovascular Events Associated With Smoking Cessation Pharmacotherapies

Circulation. 2014 Jan 7;129(1):28-41 PMID: 24323793.

【論文は妥当か?】

[Patient]

63の研究に参加した30508

[Exposure]

禁煙補助薬物療法(ニコチン置換、ブプロピオン、バレニクリン)

Comparison]

プラセボ対照または実薬対照

Outcome

全心血管疾患、主要心血管イベント

研究デザインは何か?

ネットワークメタ分析

元論文バイアスの検討

63のランダム化比較試験(ニコチン置換療法21試験、ブプロピオン28試験、バレニクリン18試験)

評価者バイアスの検討

2名のレビューアーが独立して評価

異質性バイアスの検討

I2統計量を表示(統計的に大きな異質性はなし)

出版バイアスの検討

言語制限なしにサーチ。個々のRCTの著者にもコンタクトをとった。

 

【結果は何か?】

各相対危険と95%信頼区間は以下の通り

比較対照

全心血管疾患

主要な重大心血管イベント

ニコチン置換vsプラセボ

2.291.393.82

1.950.924.30

ブプロピオンvsプラセボ

0.980.541.73

0.450.210.85

バレニクリンvsプラセボ

1.300.792.23

1.340.662.66

ブプロピオンvs バレニクリン

0.760.331.73

0.330.160.87

ブプロピオンvsニコチン置換

0.430.190.91

0.230.080.63

バレニクリンvsニコチン置換

0.560.251.27

0.670.261.90

 

【結果は役に立つか?】

プラセボに比べて、バレニクリンは心血管イベントリスクについて増やすかもしれないし減らすかもしれないという2つのメタ分析があります。

(参考)バレニクリンの心血管リスクについて

また観察研究ではブプロピオンに比べてバレニクリンは心血管リスクを明確に上昇させるものではないという結果が示唆されています。

(参考)バレニクリンの心血管リスクについて②

今回ニコチン療法のみがリスク上昇を示唆していますが、その他は既存の研究とほぼ同様の結果となっており、心血管リスクについては不明のままです。論文では禁煙補助療法が重大な心血管イベントを明らかに増やすことは無いと結論されています。

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ロタウイルスワクチンでは接種後の腸重積症リスクが示唆されていますが、NEJMから最新の報告が2報連続で掲載されています。研究デザインに関して、当ブログの採用基準外ですが、重要な報告だと思いますので2報まとめてご紹介いたします。

 

【文献タイトル・出典】

Intussusception Risk after Rotavirus Vaccination in U.S. Infants

N Engl J Med.2014 Jan 14. [Epub ahead of print] PMID:24422676

【論文は妥当か?】

[Patient]

ロタテック(5価:RV5)ロタリックス(1価:RV1)を接種した、生後536.9週の乳幼児(RV512777556回、初回507874回 、RV5:103098回、初回53638回)613000/

[Exposure]

リスク期間:接種後~7日目及び接種後から21日目

[Comparison]

コントロール期間:接種後22日目から42日目

Outcome

腸重積症の寄与リスク

研究デザインは何か?

自己対照リスクインターバル解析SCRI

(セルフコントロールドケースシリーズ?)

【結果は何か?】

初回RV5接種で腸重積症リスクと関連(下表)、2回目以降では有意な関連は示されず。

RV1では有意な差が無いものの、症例数が少なく検出力が低い可能性が示唆

リスク

期間

リスク期間

での発症数

コントロール期間での発症数

寄与リスク

95%信頼区間]

相対リスク

95%信頼区間]

7

5

3

1.10.32.7

9.12.238.6

21

8

3

1.50.23.2

4.21.116.0

 

【文献タイトル・出典】

Risk of Intussusception after Monovalent Rotavirus Vaccination

N Engl J Med.2014 Jan 14. [Epub ahead of print] PMID:24422678

【論文は妥当か?】

[Patient]

生後431週の乳幼児(RV1:207955回、初回115908回)

[Exposure]

ロタリックス(1価:RV1)の接種後の腸重積症罹患率

[Comparison]

同年齢小児の腸重積自然発生リスク

Outcome

接種後7日間の腸重積症のリスク

研究デザインは何か?

maxSPRT解析?

 

 

【結果は何か?】

ワクチン接種回

症例数

E群の

症例数

C群の

症例数

相対危険

95%信頼区間]

全例

207955

6

0.72

8.38

初回

115908

2

0.23

8.82

2回目

92047

4

0.49

8.17

なおこの研究ではRV5のリスクは明確に差が出ていない。

【結果は役に立つか?】

初回のRV5RV1ともに有意なリスク相関を示したという報告ですが、そのリスクはごくわずかであり、ベネフィットが大幅に上回ると結論しています。現時点ではロタウイルスワクチンの公衆衛生上の利益が腸重積症リスクを上回るという見解のようです。

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