薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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2014年04月

バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンはナトリウム排泄を増加させず、水排泄を促進させる新規利尿剤です。心不全患者では慢性的に細胞外液量が増加しており、相対的に血清Na濃度が低下し、低ナトリウム状態にあると言います。心不全では低ナトリウムは予後悪化因子と言われ、血清Na濃度に大きく影響を及ぼさない(むしろ高Naを引き起こす)トルバプタンの有効性が期待されていました。

【文献タイトル・出典】

Effects of Oral Tolvaptan in Patients Hospitalized for Worsening Heart Failure

JAMA 2007;297:1319-1331 PMID:17384437

【論文は妥当か?】

[Patient]

18歳以上でLVEF40%、NYHAⅢ~Ⅳ度の心不全で入院した患者4133例(心不全悪化により48時間以内に入院した患者、平均65.7歳、男性74%)

[Exposure]

トルバプタン30mg/日を投与2072

[Comparison]

プラセボを投与2061

Outcome

全原因死亡、心血管死亡及び心不全による入院

研究デザイン

多施設ランダム化比較試験

ランダム化さているか?

されている

患者背景は同等か?

ほぼ同等

盲検化されているか?

2重盲検

サンプルサイズは十分か?

サンプルサイズは各群1490例で本研究は十分

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

ITT解析されている

解析組み入れ率は100

追跡期間は?

中央値9.9か月

 

【結果は何か?】

アウトカム

E

トルバプタン

C

プラセボ

相対リスク

95%信頼区間]

総死亡

537/2072

25.9%)

543/2061

26.3%)

0.98

0.871.11

心血管死亡 及び心不全による入院

871/2071

42.0%)

829/2061

46.4%)

1.04

0.951.14

【結果は役に立つか?】

有害事象では口渇やのどの渇きが有意にトルバプタン群で多かったようです。結果もほぼ同等となっており、トルバプタンの有効性は認められなかったとしています。
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バレニクリン、ニコチンパッチ、両剤ともに介入研究では禁煙補助効果への有用性は示されていますが、両剤の併用はより効果的なのでしょうか。

【文献タイトル・出典】

Is a combination of varenicline and nicotine patch more effective helping smoker quit than varenicline alone? A randomized controlled trial

BMC Med. 2013 May 29;11:140  PMID: 23718718

【論文は妥当か?】

[Patient]

18歳以上の禁煙希望の117人 (現在、妊娠中ではなく、また重大な疾患を有さない人を対象。平均44.6歳、喫煙本数18本、喫煙年数17.9年、男性67%、既婚者26.5%)

[Exposure]

バレニクリン+ニコチンパッチ(15mg/16時間)58

[Comparison]

バレニクリン+プラセボパッチ59

※バレニクリンは禁煙予定日の1週間前より、ニコチンパッチは禁煙予定日より開始

※バレニクリンは0.5mg/日×3日、1mg/日×4日、以後2mg/12

Outcome

喫煙衝動症状消失割合

禁煙割合(24時間後、1週後、4週後、12週後)

研究デザイン

ランダム化比較試験

ランダム化さているか?

されている

(禁煙予定日のパッチ開始時からランダム化)

患者背景は同等か?

同等と記載あり

盲検化されているか?

2重盲検

サンプルサイズは十分か?

サンプルサイズは110人から120

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

ロスト例は喫煙者として解析

ロストはE28例、C25例で追跡率は54.7

追跡期間は?

12

 

【結果は何か?】

アウトカム

E

C

危険率P

4週後の禁煙割合

35/59人(59%)

35/58人(60%)

0.91

12週後の禁煙割合

36

29

0.71

【結果は役に立つか?】

喫煙衝動症状消失割合や禁煙割合(いずれの時点においても)明確な差は出ませんでした。追跡が悪く、12週後のアドヒアランスもあまり良いとはいえなさそうです。(両群でアドヒアランスに差は無いとしていますが…)この研究だけではよくわからない部分も多く、症例数が結果として不足傾向にあることから、論文の結論でもβエラーの可能性について言及していますが、現時点で併用効果については不明です。

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日本呼吸器学会作成のCOPDガイドライン(第4版)によればCOPD1期よりLAMAもしくはLABAが推奨されていますが、2期以降は両者の併用も考慮されています。両者ともに心血管系への有害事象の配慮が現時点では必要かと思いますが、重度COPDの長期管理において両者の併用はベネフィットがあるのでしょうか。SPARKスタディからの報告

【文献タイトル・出典】

Once-Daily QVA149 Reduces Exacerbation and improves Health Status in Comparison With Glycopyrronium and Tiotropium Patients With Severe-to-Very Severe COPD: The SPARK Study

Chest 2014 Mar 1;145(3 Suppl):427A PMID:24638584

【論文は妥当か?】

[Patient]

40歳以上の重度のCOPD患者2224

[Exposure]

インダカテロール110μg+グリコピロリニウム50μg 11

[Comparison]

①グリコピロリニウム50μg 11

②チオトロピウム 18μg 11

Outcome

COPD増悪率、SGRQスコア(健康関連QOLスコア:スコアが高いほど症状悪化。4ポイント以上のスコア改善で臨床的意義あり)

研究デザイン

多施設ランダム化比較試験

ランダム化さているか?

されている

患者背景は同等か?

抄録に記載なし

盲検化されているか?

E群とC①群のみ2重盲検

サンプルサイズは十分か?

抄録に記載なし

ランダム化は最終解析

まで保持されているか?

試験完遂は75

追跡期間は?

64



【結果は何か?】

アウトカム

比較

発生率比[95%信頼区間]

COPD増悪率

①グリコピロリニウム

0.850.770.94

②チオトロピウム[非盲検]

0.860.780.94

アウトカム

比較

平均差

SGRQスコア

①グリコピロリニウム

-2.07

②チオトロピウム[非盲検]

-2.69

【結果は役に立つか?】

SGRQスコアに関しては臨床的差異に関する説明が抄録になくよくわかりません。増悪頻度は対グリコピロリニウムで有意に減少しています。こちらも率比から読み取れる統計的差異であり、臨床上有意な改善なのかよくわかりません。症候性の重度COPD患者への短期的な使用は考慮されるかもしれません。

 

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【文献タイトル・出典】

Vitamin D and risk of cause specific death : systematic review and meta-analysis of observational cohort and randomized intervention studies

BMJ 2014;348:g1903 PMID: 24690623

【論文は妥当か?】

[Patient]

73件の観察研究に参加した849412人(中央値63歳、男性51%)及び22件の介入研究に参加した30716人(中央値77歳)

[Exposure]

ビタミンDの投与(観察研究では血中ビタミンD濃度)

Comparison]

プラセボの投与もしくは治療なし

Outcome

心血管死亡、癌死亡、非血管非癌死亡、総死亡

研究デザインは何か?

メタ分析[統合した研究数95

元論文バイアスの検討

ランダム化比較試験22件及びコホート研究73件のメタ分析

評価者バイアスの検討

2名の調査者が独立して評価

異質性バイアスの検討

I-squaredを記載

出版バイアスの検討

ファンネルプロットに大きな非対称性は見られない

 

【結果は何か?】

①観察研究のメタ分析

一次予防2次予防、及びトータルで大きな差は無く、類似の結果となっている。そのため1次予防、2次予防すべてのコホートを対象にしたもののみ記載

アウトカム

[統合した研究数]

相対リスク

95%信頼区間]

異質性

心血管死亡[29

1.431.251.64

I-squared = 83.9%, p = 0.000

癌死亡[17

1.251.101.43

I-squared = 72.7%, p = 0.000

非血管・非癌死亡[10

1.341.131.60

I-squared =49.3%, p = 0.038

総死亡[68

1.441.341.55

I-squared = 82.8%, p = 0.000

②ランダム化比較試験のメタ分析

アウトカム

[統合した研究数]

E

ビタミンD

C

プラセボ

相対リスク

95%信頼区間]

総死亡[14

VD3

1087/6826

1177/6811

0.890.800.99

総死亡[8

VD2

1440/8493

1410/8586

1.040.971.11

VD3I-squared = 10.2%, p = 0.341、  Vd2I-squared = 7.2%, p = 0.375

【結果は役に立つか?】

ビタミンDの摂取に関して観察研究ではずかながら死亡リスクが増加するという衝撃的な結果になっています。ただ観察研究では異質性がかなり高く、その結果の妥当性はよくわかりません。ブロボグラムを見ると、全体的にはリスク増加傾向にあるようです。

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高度な慢性腎臓病(CKD)患者へのアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)またはアンジオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)のようなレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系のブロッカーを使用するベネフィットは明確ではありません。高K血症リスクなどは侮れないものがあります。透析直前の高血圧および貧血を有する高度CKD患者CKDへのACEI / ARBの使用の有効性と安全性を評価した観察研究

【文献タイトル・出典】

Renoprotective effect of Renin-Angiotensin-aldosterone system blockade in patients with predialysis advanced chronic kidney disease, hypertension, and anemia.

JAMA Intern Med. 2014 Mar 1;174(3):347-54PMID: 24343093

【論文は妥当か?】

[Patient]

台湾における高血圧合併の成人CKD患者28497人(血清クレアチニン6.0mg/dL超、ヘマトクリットレベル28%未満で赤血球生成刺激剤を使用中の患者)

[Exposure]

ACEI / ARBの使用14117

[Comparison]

ACEI / ARBの非使用14380

Outcome

全死因死亡と長期透析導入の複合アウトカム

研究デザインは何か?

前向きコホート研究

調整した交絡因子は何か?

抄録に詳細の記載なし(Cox比例ハザード回帰モデルによるハザード非の算出)

追跡期間は?

中央値7か月

 

【結果は何か?】

アウトカム

ハザード非[95%信頼区間]

透析導入

0.940.910.97

全死亡と透析導入

0.940.920.97

K血症による入院

1.311.21-1.43

K血症関連死亡

1.030.92-1.16

 

【結果は役に立つか?】

CKDに対するACE阻害薬はRCTでもその有用性は報告されていますが、高K血症への警戒は十分すべきでしょう。

(参考)慢性腎臓病患者で透析導入を遅らせることができる薬はありますか?

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