薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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2016年03月

Callisaya ML.et.al. Greater daily defined dose of antihypertensive medication increases the risk of falls in older people--a population-based study. J Am Geriatr Soc. 2014 Aug;62(8):1527-33. PMID: 24934339
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24934339

[目的] 降圧薬の1日投与量と転倒リスクの関連を検討する。

[デザイン]前向き人口ベースコホート研究

[セッティング]オーストラリアのタスマニア研究

[参加者]60歳から86歳の高齢者をランダム抽出

[評価項目]降圧薬の投与量を1日投与量(DDD)により見積もり、薬剤クラス間の標準的な比較を可能にした。転倒は12か月間、前向きに検討し同定した。年齢、性別、BMI、教育、心血管疾患、他の転倒因子で調整し、転倒と降圧薬の投与量の関連を検討した。

[結果]409人が研究対象となった。(平均72歳、56%が男性)研究開始時の平均血圧は142/80 mmHgで54% が降圧薬による治療を受けていた。161人の参加者(39%)で12か月間の間に転倒を起こしていた。転倒を起こした人は、転倒を起こさない人に比べて、降圧薬のDDDが高かった。1.51vs1.03.P=0.07。DDD高値は骨折の独立したリスクファクターであった。(相対危険1.07[95%信頼区間1.02~1.11]

DDDが3を超えると、48%も転倒リスクが増加した。(相対危険1.48[95%信頼区間1.06~2.08]

特に脳卒中の既往のある患者では高DDDで転倒リスクが増加した。(P for interaction .01)

この効果は降圧薬の使用なしを除外もしくは、高血圧や他の薬の使用の有無に層別化し多後でも残存した。 

[結論] 高用量の降圧薬使用は高齢者における転倒の独立したファクターであり、特に脳卒中の既往や3剤以上の降圧薬使用はハイリスクであった。

[コメント]降圧薬3剤併用というのは高齢者にとってわりとリスクになるということは〔JAMA Intern Med.2015;175(6):989-95. PMID:25685919〕を見ても明らか。HYVETで示されたベネフィットを考慮すれば、虚弱高齢者では3剤の降圧薬を使用して130mmhg未満を目指すより、2剤もしくは1剤で140mmHg~150mmHgを維持できるくらいが良いのではなかろうか
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Teng M.et.al. Statins for Primary Prevention of Cardiovascular Disease in Elderly Patients: Systematic Review and Meta-Analysis. Drugs Aging. 2015 Aug;32(8):649-61.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26245770


[背景]スタチンは一次予防、二次予防におけるその有用性が示されている。しかしながら、高齢者におけるその役割は臨床的難題を残したままだ。つまり年齢に関連したファクターはスタチンのリスク/ベネフィットの度合を変化させる。この研究の目的は高齢者における心血管疾患の一次予防のためのスタチンの有効性、安全性を見積もることである。

[方法]65歳以上の患者を対象にスタチンとプラセボもしくは標準ケアを比較して、心血管疾患の一次予防を検討したランダム化比較試験をシステマティックにレビューした。ランダムエフェクトモデルを用いて相対危険を見積もった。

[結果]8研究25952人がメタ分析の対象となった。スタチンは主要な心血管イベント(複合)を有意に低下させた。(相対危険0.82[95%信頼区間0.74~0.92]。非致死的心筋梗塞(相対危険0.75[95%信頼区間0.59~0.94]、全心筋梗塞(相対危険0.74[95%信頼区間0.61~0.90]

致死的心筋梗塞(相対危険0.43[95%信頼区間0.09~2.01]、脳卒中(致死的:相対危険0.76[95%信頼区間0.24~2.45]非致死的:相対危険0.76[95%信頼区間0.53~1.11]、全脳卒中:相対危険0.85[0.68~1.06]、総死亡(相対危険0.96[95%信頼区間0.88~1.04])は明確な差が無い。

有害事象にも差はなかった。筋肉痛(相対危険[95%信頼区間0.69~1.13])、肝トランスアミナーゼの上昇(相対危険0.98[95%信頼区間0.71~1.34])新規糖尿病発症 (相対危険1.07[95%信頼区0.77~1.48)重大な有害イベント(相対危険1.00[95%信頼区間 0.97~1.04]) 、有害イベントによる脱落(相対危険1.10[95%信頼区間0.85~1.42]). オパシー、横紋筋融解症および認知障害に関しては多くの研究で報告されていない。

[結論]高齢者においても、主要な心血管イベント一次予防の有用性がある。この利点を検証するためさらなる研究が必要とされる。

[コメント] 
高齢者におけるスタチンの一次予防効果については2013年にも報告されている。
J Am Coll Cardiol. 2013 Dec 3;62(22):2090-9. PMID: 23954343
ランダム化比較試験8研究に参加した65歳以上の高齢者24,674人(平均73歳)が解析対象となっており、心筋梗塞や脳卒中を減らす可能性があるものの、総死亡や心血管死亡に関しては明確な差が見られずという結果であった。

本研究では脳卒中すら不明で、さらに致死的心筋梗塞についてもよく分からないという結果になっている。複合アウトカムにしてやっと有意性が検出できる程度である。過去のメタ分析との結果の相違は研究間の異質性も要因の一つだろう。major adverse cardiovascular eventsのI-squared は 71.5%,である。ただ全体としては減少傾向にあるようだ。有害事象も少ないことから漫然投与されることは多いだろう。

ただ心血管イベントを20~30%を減らすというのが予防的効果としてどれくらいの延命をもたらすのだろうか、と言う視点は重要である。80歳を超える高齢者においては、たとえ心血管ハイリスクと言われるような要因をもつ患者でもその延命効果は1年程度であろう。もちろん、健康寿命がどの程度延命されるかは不明だ。延命されるのはたいてい「不健康寿命である」

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Tully PJ.et.al. Antihypertensive Drug Use, Blood Pressure Variability, and Incident Stroke Risk in Older Adults: Three-City Cohort Study. Stroke. 2016 Mar 24. pii: STROKEAHA.115.012321. [Epub ahead of print] PMID: 27012741

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27012741

 

[背景と目的]65歳以上の高齢者における、長期間の血圧変動コントロールで降圧薬と脳卒中の関連を評価する。

 

[方法]高血圧患者もしくは収縮期血圧が140mmHg超、または拡張期血圧が90mmHg超で少なくとも1種類の降圧薬を服用している5951人(年齢中央値74歳、女性60%)が対象となった。被験者は12年の観察期間中、致死的、非致死的脳卒中発症を追跡された。血圧変動は9つの降圧薬について解析した。血圧、血圧変動、交絡調整をして、降圧薬と脳卒中のリスクを見積もった。

 

[結果]中央値9.1[IQR6.410.4]の間に273件の脳卒中が発症した。能祖中は降圧薬により減少しなかった。特にARB:ハザード比1.56[95%信頼区間1.062.28]、及びβ遮断薬:ハザード比1.41[95%信頼区間1.031.92]では脳卒中リスクが増加した。収縮期血圧で調整後ARB及びβ遮断薬は脳梗塞も増加した。

 

[結論]ARBとβ遮断薬は脳卒中、脳梗塞に関連していた。

 

[コメント]高齢者における降圧薬の使用には賛否ある。一般的には軽度高血圧症でも降圧メリットが示されている文献報告があるが、特に虚弱高齢者には注意したい。

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Filion KB.et.al. A Multicenter Observational Study of Incretin-based Drugs and Heart Failure. N Engl J Med. 2016 Mar 24;374(12):1145-54. PMID: 27007958

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27007958

 

[背景]DPP4阻害薬やGLP-1アナログのようなインクレチン関連薬には心不全リスク増加の懸念がある。現在進行中の臨床試験ではこの問題を検出するための十分な研究規模がないものと推察される。

 

[方法]一般的なプロトコルに従い、糖尿病患者における多数のコホートを解析した。カナダ4州、米国、英国のヘルスケアデータが使用された。本研究では、心不全で入院した症例に対して、20例のコントロールを同一コホートからマッチングする、コホート内症例対照解析を行った。なおマッチングは、性別、年齢、コホート登録日、糖尿病治療期間、追跡期間で行った。

 

インクレチン関連薬の投与を受けていた患者の心不全による入院について,コホートごとのハザード比を、条件付きロジスティック回帰により経口糖尿病治療薬を併用していた患者と比較し推定、ランダムエフェクトモデルを用いてコホート全体でプールした。

 

[結果]

本研究で解析されたコホートには1,499,650人が含まれた。そのうち 29,741人が心不全により入院した。(発生率9.2/1000人年)心不全による入院は他の糖尿病治療薬併用に比べて明確な上昇は見られず。(ハザード比 0.8695%信頼区間0.621.19)心不全の既往のない患者でもリスクは上昇せず。(ハザード比 0.8295%信頼区間0.671.00])またDPP-4 阻害薬と GLP-1 アナログでこの結果は変わらなかった。

 

[結論]

糖尿病患者の大規模コホートのデータによる解析では、インクレチン関連薬は一般的に使用されている経口糖尿病治療薬の併用と比較して、心不全による入院のリスク上昇との関連は認められなかった。

 

[コメント]

まあもういいでしょう、この手の報告は。

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Coupland C.et.al. Antidepressant use and risk of cardiovascular outcomes in people aged 20 to 64: cohort study using primary care database. BMJ. 2016 Mar 22;352:i1350. PMID: 27005565

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27005565

 

[目的]うつ病患者における抗うつ治療と心筋梗塞、脳卒中もしくは一過性脳虚血発作、不整脈との関連をコホート研究にて検討する。

 

[参加者]英国におけるQResearch primary care database.より200011日から2011731日の間にうつ病と診断された20歳から64歳の238963

 

[曝露と評価項目]抗うつ薬(三環系及びその関連抗うつ薬、SSRI、他の抗うつ薬)の使用。用量、使用期間、個別薬剤。評価項目は追跡期間中の心筋梗塞、脳卒中もしくは一過性脳虚血発作、不整脈の初発。Cox比例ハザードモデルと用いて、交絡補正後のハザード比を算出。

 

[結果]5年間の追跡期間中、心筋梗塞772人、脳卒中もしくは一過性脳虚血発作、1106人、不整脈1452人であった。5年の追跡期間おいて、抗うつ薬と心筋梗塞との関連が認めなかった。追跡1年目において、抗うつ薬の使用なしと比べて、SSRIではむしろ心筋梗塞は減少した。(ハザード比0.5895%信頼区間0.420.79

 

薬剤個別ではフルボキサミンはリスク低下に関連(ハザード比0.4495%信頼区間0.270.72]ロフェプラミンではリスク増加に関連。(ハザード比3.0795%信頼区間1.506.26

 

また抗うつ薬は脳卒中もしくは一過性脳虚血発作との関連も見られなかった。三環系抗うつ薬では処方から28日以内の不整脈リスクが増加した。(調整ハザード比1.9995%信頼区間1.273.13]しかしながら、5年の追跡で抗うつ薬と不整脈の関連は見られなかった。フルボキサミンはむしろ不整脈リスクを減らした。(ハザード比0.7495%信頼区間0.590.92])しかし、シタロプラムでは関連性は見られなかった。(ハザード比1.1195%信頼区間0.721.71])

 

[結論]この研究では20歳から64歳のうつ病患者において、SSRIが脳卒中もしくは一過性脳虚血発作を増加させる確かな根拠は示されなかった。ただ、シタロプラムはごくわずかに不整脈を増加させるかもしれない。またSSRI、特にフルボキサミンは心筋梗塞をむしろ減らした。ただしロフェプラミンではリスクが増加した。

 

[コメント]

SSRIが脳卒中を増やす〔J Neurol. 2014 Apr;261(4):686-95. PMID: 24477492

SSRIが心筋梗塞を増やす〔BMJ. 2011 Aug 2;343:d4551. PMID: 21810886

というような報告もあれば、やや古い報告では

SSRIが心筋梗塞に関連しない

Br J Clin Pharmacol. 2001 Aug;52(2):179-84. PMID: 11488775

抗うつ薬で心筋梗塞による入院が減る

Am J Med. 2004 Nov 15;117(10):732-7. PMID: 15541322

と複雑な背景。。

 

本研究はQResearch、バージョン34を用いた大規模コホート研究である。交絡補正も入念に行われているようだ。参加者の平均年齢は39.5歳、327 235人(61%が女性)が対象となっている。本研究ではリスクとの明確な関連性はおおむね否定されており、心筋梗塞ではわずかに減少傾向にある可能性が示唆されている。

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