Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes.

このブログでも触れる機会が多いので

ACCORD試験について

N Engl J Med 2008;358:2545

まずは論文のPECOから

P: HbA1c7.5%の心血管疾患を持つ4079歳の2型糖尿病患者
またはHbA1c7.5%の動脈硬化,アルブミン尿,左室肥大,

2つ以上のCVD risk factor(脂質異常症,高血圧,現在喫煙者,肥満)

のいずれかを持つ5579歳の2型糖尿病患者
E
 目標HbA1c 6.0%未満
C
 目標HbA1c 7.07.9%
O
 primary(複合): 非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管死
   secondary:総死亡,治療必要な低血糖

ランダム化 多施設共同研究試験 
ベースライン:同等と考えられる。

ITT解析されている。

症例は10,251人に対し,サンプルサイズ10,000

中間解析で集中治療群の死亡率が上昇したため,

追跡期間平均3.5年(中央値3.4年)で試験中止。

この時点で十分衝撃的だが、もう少し結果を詳しく見てみよう。

primary endopoint(複合心血管イベント)
HR 0.900.781.04),p=0.16

有意差なし。個別にみると

非致死的心筋梗塞: HR 0.60.620.92),p=0.004
非致死的脳卒中:HR 1.060.751.50),p=0.74
心血管死:HR 1.351.041.6),p=0.02

心血管死についてはむしろ増加傾向。

secondary endpoint

総死亡: HR 1.221.011.46),p=0.04


整理してみよう。

HbA1c 6.0%未満をめざすとHbA1c 7.07.9%で治療した人に比べ

心血管イベントを抑制できずに、総死亡が増加する可能性がある

 

糖尿病治療において薬剤師国家試験対策で我々が勉強したのは

HbA1cを血糖降下剤で下げて、

3大合併症を予防することが大切である

検査値でもJDS値でHbA1c=5.6%が基準であると、

しっかり学んだような気がする。

現在の学部カリキュラム内容がどうなのかは分からないが、

薬物治療の講義でも病態生理の講義でも

こんな話はみじんもなかった。

まあこの試験は2008年発表だから学生時代には

誰もわからなかったのかもしれないが、しかし

薬剤師として勤務していてもこのような事実を

教えてくれる環境は調剤薬局の薬剤師には少ない。

少なくとも自分の周りでは皆無だった。

当たり前のように調剤している経口糖尿病薬の一部が

糖尿病歴の長い患者の血糖コントロールにおいて

死亡率を上げる可能性があるため、厳格にすべきではない。

 

薬で確かに血糖値は下がりHbA1cは下がるのです。

教科書にもそう書いてあり間違えではありません。

しかしその先の患者のアウトカム(成り行きのようなもの)

をしっかり学部で教育すべきだと思うのです。

薬学部も6年生になり、現在のカリキュラムは私にはわかりませんが

患者真のアウトカムを想像できる薬剤師の養成が必要です。

また現場の教育体制にも言えると思います。

薬剤師養成を大学に頼るのはもう時代遅れです。

調剤薬局は地域医療に貢献できる薬剤師を

養成する使命を負っているのではないでしょうか。