Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes.
このブログでも触れる機会が多いので
ACCORD試験について
まずは論文のPECOから
P: HbA1c≧7.5%の心血管疾患を持つ40~79歳の2型糖尿病患者
またはHbA1c≧7.5%の動脈硬化,アルブミン尿,左室肥大,
2つ以上のCVD risk factor(脂質異常症,高血圧,現在喫煙者,肥満)
のいずれかを持つ55~79歳の2型糖尿病患者
E: 目標HbA1c 6.0%未満
C: 目標HbA1c 7.0~7.9%
O: primary(複合): 非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管死
secondary:総死亡,治療必要な低血糖
ランダム化 多施設共同研究試験
ベースライン:同等と考えられる。
ITT解析されている。
症例は10,251人に対し,サンプルサイズ10,000人
中間解析で集中治療群の死亡率が上昇したため,
追跡期間平均3.5年(中央値3.4年)で試験中止。
この時点で十分衝撃的だが、もう少し結果を詳しく見てみよう。
primary endopoint(複合心血管イベント)
HR 0.90(0.78~1.04),p=0.16
有意差なし。個別にみると
非致死的心筋梗塞: HR 0.6(0.62~0.92),p=0.004
非致死的脳卒中:HR 1.06(0.75~1.50),p=0.74
心血管死:HR 1.35(1.04~1.6),p=0.02
心血管死についてはむしろ増加傾向。
secondary endpoint
総死亡: HR 1.22(1.01~1.46),p=0.04
整理してみよう。
HbA1c 6.0%未満をめざすとHbA1c 7.0~7.9%で治療した人に比べ
心血管イベントを抑制できずに、総死亡が増加する可能性がある。
糖尿病治療において薬剤師国家試験対策で我々が勉強したのは
HbA1cを血糖降下剤で下げて、
3大合併症を予防することが大切である
検査値でもJDS値でHbA1c=5.6%が基準であると、
しっかり学んだような気がする。
現在の学部カリキュラム内容がどうなのかは分からないが、
薬物治療の講義でも病態生理の講義でも
こんな話はみじんもなかった。
まあこの試験は2008年発表だから学生時代には
誰もわからなかったのかもしれないが、しかし
薬剤師として勤務していてもこのような事実を
教えてくれる環境は調剤薬局の薬剤師には少ない。
少なくとも自分の周りでは皆無だった。
当たり前のように調剤している経口糖尿病薬の一部が
糖尿病歴の長い患者の血糖コントロールにおいて
死亡率を上げる可能性があるため、厳格にすべきではない。
薬で確かに血糖値は下がりHbA1cは下がるのです。
教科書にもそう書いてあり間違えではありません。
しかしその先の患者のアウトカム(成り行きのようなもの)
をしっかり学部で教育すべきだと思うのです。
薬学部も6年生になり、現在のカリキュラムは私にはわかりませんが
患者の真のアウトカムを想像できる薬剤師の養成が必要です。
また現場の教育体制にも言えると思います。
薬剤師養成を大学に頼るのはもう時代遅れです。
調剤薬局は地域医療に貢献できる薬剤師を
養成する使命を負っているのではないでしょうか。
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