薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

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禁煙補助剤

Benowitz NL, et al : Cardiovascular Safety of Varenicline, Bupropion, and Nicotine Patch in Smokers: A Randomized Clinical Trial. PMID: 29630702

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29630702

 

[重要]薬物療法の使用によって禁煙効果が増強されるが、そのような薬物の心血管安全性に関する懸念が提起されている。

 

[目的]禁煙治療の相対的な心血管安全リスクを比較する。

 

[方法]二重盲検、無作為化、トリプルダミー、プラセボ対照試験およびアクティブコントロール試験(全身禁煙試験における有害事象の評価[EAGLES])およびその非治療延長試験が、140の多国籍センターで実施された。精神疾患のあるなしにかかわらず、喫煙者が対象となり、少なくとも1回の薬剤処方を受けた12週間の治療を完了し、12週の追跡を受けた8058例と、さらに28週間追跡した 4595例が含まれていた。

 

[介入]バレニクリン112回、ブプロピオン15012回、ニコチン置換療法121mg漸減

 

[評価項目]一次アウトカムは、治療中に重大な有害な心血管イベント(MACE:心臓血管死亡、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中)の発生であった。二次エンドポイントは、MACEおよび他の関連する心血管イベント(MACE+:MACEもしくは、介入が必要な末梢血管疾患、冠動脈再建術、不安定狭心症の新規発症もしくは悪化)の発生であった。

 

[結果]8058人の参加者のうち、3553人(44.1%)が男性(平均SD年齢46.5歳)であった。治療およびフォローアップ中の心血管イベントの発生率は低かった(MACEについては<0.5%、MACE +については0.8%未満)、治療方法によって著しく異ならなかった。心血管イベント、血圧、または心拍数に時間的に有意な治療差は認められなかった。バレニクリンまたはブプロピオン処置対プラセボ処置のいずれかのMACE発症までの時間に有意差はなかった(バレニクリン:ハザード比0.29; 95% CI, 0.05-1.68 、ブプロピオン:ハザード比、0.50; 95CI0.10-2.50

 

[結果]禁煙中の薬物療法の使用が、治療中または治療後の重篤な心血管有害事象のリスクを増加させたという証拠は認められなかった。EAGLESとその延長試験の結果は、喫煙者の一般集団における禁煙薬が重篤な心血管イベントのリスクを増加させないというさらなる証拠を提供する。

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Gershon AS.et.al. Cardiovascular and Neuropsychiatric Events Following Varenicline Use for Smoking Cessation. Am J Respir Crit Care Med. 2017 Dec 20. [Epub ahead of print] PMID: 29260881

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29260881

 

[背景]バレニクリンは禁煙補助薬として有用だが、重篤な有害事象にも関連している。 この研究の目的は、リアルワールドにおけるバレニクリン使用後の心臓血管および神経精神イベントリスクを評価することであった。

 

[方法]カナダのオンタリオ州の多様な多文化集団からのリンクされた普遍的な健康管理データを用いた、人口ベースのセルフコントロールリスクインターバル研究。2つの別々の分析で、201191日から2014215日の間に新規にバレニクリンを使用した人が、バレニクリン使用前1年、使用後1年観察された。バレニクリン受診後の12週間(危険間隔)の残りの観察期間(対照間隔)と比較した心血管および神経精神医学的入院および救急隊訪問の相対的発生率は、2つの別個の固定効果条件付ポアソン回帰で推定した。

 

[結果]バレニクリンの新規使用者56,851人のうち、受診前1年から受信後1年に、6317人の心臓血管系および神経精神入院患者および救急部の受診があった。心血管イベントの発生率は、対照群と比較してリスクが34%高かった(相対的発生率[RI] 1.34; 95CI1.25-1.44)神経精神イベントの相対的な発生率は、初回試験ではわずかに有意であった(相対的発生率1.06; 95CI1.00-13

 

[結論]バレニクリンは、心血管系のリスク増加と関連するが、精神神経学的事象は伴わないようである。

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Lindson-Hawley N.et.al. Gradual Versus Abrupt Smoking Cessation: A Randomized, Controlled Noninferiority Trial. Ann Intern Med. 2016 Mar 15. [Epub ahead of print] PMID: 26975007

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26975007

 

[背景]ガイドラインの多くが、直ちに禁煙する方法を推奨している。しかしながら直ちに禁煙する試みは徐々に禁煙することも含んでいる。徐々に禁煙する方法が成功するとしたら、喫煙者に2つの方法をアドバイアス受けることができるかもしれない。

 

[目的]禁煙の成功率を直ちに禁煙する方法と徐々に禁煙する方法で比較する。

 

[研究デザイン]非劣性ランダム化比較時化

 

[セッティング]英国のプライマリケア

 

[参加者]喫煙常習者の697

 

[介入]直ちに禁煙する介入と、2週間かけて75%徐々に禁煙する介入。両群とも看護師より禁煙行動支援とニコチン置換療法を受けた。

 

[評価項目]一次アウトカムは禁煙4週後の持続的な禁煙。二次アウトカムは6か月後の禁煙

 

[結果]4週後、徐々に禁煙した群では39.2%[95%信頼区間34.044.4]、直ちに禁煙した群では49%[43.8から54.2%]が禁煙していた。相対危険は0.8095%信頼区間0.660.93

 

6か月後には徐々に禁煙した群で15.5%[95%信頼区間12.019.7]、ただちに禁煙した群で22.0%[95%信頼区間18.026.6%]が禁煙しており、相対危険は0.7195%信頼区間0.46から0.91]であった。

 

[限界]盲検化不可。参加者の多くが白人種

 

[結論]直ちに禁煙することは、徐々に禁煙することよりも優れている可能性がある。

 

 

[コメント]

経験的には徐々にという感じでこの結果とは対照的。〔Cochrane Database Syst Rev. 2012 Nov 14;11:CD008033. PMID: 23152252〕ではあまり明確な差はない。

 

Neither reduction or abrupt quitting had superior abstinence rates when all the studies were combined in the main analysis (RR= 0.94, 95% CI= 0.79 to 1.13),

 

どちらでも良いのでは?

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Sterling LH.et.al. Varenicline and Adverse Cardiovascular Events: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Am Heart Assoc. 2016 Feb 22;5(2). PMID: 26903004

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26903004

 

[背景]バレニクリンは禁煙補助薬として有用である。しかしながら、これまでのメタ分析では、心血管への安全性について不明な部分も多い。その後出版された、いくつかのランダム化比較試験のデータはこの潜在的な薬剤有害反応を評価させる機会を提供する。

 

[方法と結果]禁煙治療におけるバレニクリンとプラセボを比較したランダム化比較試験を検索。心血管の重大イベントもしくは総死亡を報告した研究を組み入れた。
 

38研究12706人が解析対象となった。イベントはバレニクリン群57/7213人、プラセボ群43/5493人であった。重大な心血管イベントはほぼ同等であった。(相対危険1.03, 95% CI 0.72-1.49) 心血管疾患を有する患者(相対危険1.04, 95% CI 0.57-1.89)、心血管疾患を有さない患者 (相対危険1.03, 95% CI 0.64-1.64).での解析でも差は認められず。
 

死亡はバレニクリン群11/7213人、プラセボ群9/5493人であった。総死亡に明確な差はなかった。(相対危険0.88, 95% CI 0.50-1.52)心血管疾患のある患者(相対危険1.24, 95% CI 0.40-3.83) 無い患者(相対危険 0.77, 95% CI 0.40-1.48) での解析も同様であった。

 

[結論]バレニクリンが心血管イベントリスクを上昇させるという明確な根拠はない。この結果は心血管疾患の既往あり、なしでも同様であった。 禁煙のベネフィットを考慮すれば、その使用は継続されるべき。

 

[コメント]

バレニクリンと心血管リスクについては過去にRCTのメタ分析が出ており、以下の論文が重要

CMAJ. 2011 Sep 6;183(12):1359-66. PMID: 21727225

BMJ. 2012 May 4;344:e2856. PMID: 22563098

Am J Ther. 2013 May-Jun;20(3):235-46. PMID: 23615317

関連して禁煙補助薬のネットワークメタ分析も出ている

Circulation. 2014 Jan 7;129(1):28-41. PMID: 24323793

観察研究も軽視できない。

BMJ. 2012 Nov 8;345:e7176. PMID: 23138033

 

これらの論文は本研究イントロダクションにも引用されている。

Previous metaanalyses provided conflicting results regarding the association between varenicline and adverse cardiovascular events

記載の通り結果に一貫性がない。

 

この研究は本文にTwo reviewers (L.H.S. and L.T.) independentlyと記載があるように、評価者バイアスへの配慮がなされている。The primary outcome incidence of cardiovascular SAEs、つまり重篤な心血管有害アウトカムだ。The secondary outcome allcause mortality.となっている。

 

元論文のQuality assessment Cochrane Risk of Bias Toolを用いて検討されている。解析対象はランダム化比較試験38研究。研究の質に関してはOverall, studies had a low risk of biasと記載がある。

 

出版バイアスについてはfunnel plot (Figure S5) and Egger's test (P=0.80) showed no evidence of publication bias.となっている。異質性についてはI20%となっており、高い異質性は統計的に認めない。視覚的にはややばらついているようにも思えるが、致命的ではなさそうだ。

 

これまでの研究も含めて考えると、バレニクリンが心血管イベントを著明に上昇させているとは考えにくい。なお、精神系アウトカムに関しても著明な悪化はないとする報告がでている。

BMJ. 2015 Mar 12;350:h1109. PMID: 25767129

Drug Saf. 2010 Apr 1;33(4):289-301 PMID: 20297861

 

ただ先日Short Message Service Text-Based Smoking Cessation Interventionなるものの介入効果を検討したRCTが報告された。the effects observed in this trial are comparable with those for traditional smoking cessation interventions.らしい。後ほど読んでみる。

JAMA Intern Med. 2016 Feb 22. [Epub ahead of print] PMID: 26903176

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Roberts E.et.al. Efficacy and acceptability of pharmacotherapy for smoking cessation in adults with serious mental illness: A systematic review and network meta-analysis. Addiction. 2015 Nov 23. doi: 10.1111/add.13236. [Epub ahead of print] PMID: 26594837

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26594837

 

[背景と目的]重度の精神疾患を有する成人において薬剤による禁煙補助療法の有用性、忍容性をシステマテックレビュー、ネットワークメタ分析で評価する。

 

[方法]2014121日までに英語で報告されたランダム化比較試験を対象とした。含めたすべての研究において統合失調症、双極性障害など重度の精神疾患の喫煙者が対象となった。薬剤による治療はニコチン置換療法、ブプロピオン、バレニクリンの単独、もしくは併用療法とプラセボが比較された。有効性アウトカムは自己申告による禁煙持続、忍容性は、有害事象による研究継続中止とした。

 

[結果]14のランダム化比較試験が対象となった。ニコチン置換療法単独を検討した報告はなかった。有効性評価には356人、忍容性評価には423人が解析に含まれた。ネットワークメタ分析の結果、プラセボに比べてブプロピオン、バレニクリンともに有用性を示した。(オッズ比 4.51[95%信頼区間 1.45 14.04 ]、オッズ比5.17 [95%信頼区間 1.78 15.06 ]respectively) 忍容性に明確な差は見られなかった。すべての結果はGRADE criteriaにてvery low quality.であった。

 

[結論]重度の精神疾患患者においてブプロピオンとバレニクリン有効性、忍容性ともに良好である可能性を示唆している。

 

[コメント]全体的に質が低い印象である。解析対象者も少なく、忍容性検討においてはやや心もとない。バレニクリンは精神疾患の悪化を伴うことが報告されており、基礎疾患に精神疾患を有する患者では避けるべきである。バレニクリンは双極性障害患者60例に対して行われたランダム化比較試験も報告されているが、症例数が少なく安全性検討としては不十分な印象である。[J Clin Psychiatry 2014 PMID: 25006684]

 

またうつ病あるいはうつ病の既往のある525人を対象とした2重盲検ランダム化比較試験では、912週における一酸化炭素確認による持続的な禁煙率は、バレニクリン群で有意に多い結果が示されており、殺念慮、抑鬱や不安の悪化には有意な差はないとしているが、試験からの脱落も多く、有害事象を過小評価している可能性がある。[Ann Intern Med. 2013 PMID: 24042367]

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