薬剤師の地域医療日誌

薬剤師が臨床や地域医療にどのように関われるか、EBMを実践しながら模索しています。このブログは個人的な勉強記録です。医学文献の2次資料データベースとして医師、看護師、薬剤師その他のスタッフや患者様に役立てれば幸いです。情報に関しては知識不足の面から不適切なものも含まれていると思われます。またあくまで個人的な意見も含まれております。掲載の情報は最新の文献等でご確認の上、運用していただければ幸いです。

ご利用ありがとうございます。個人的に気になった論文を紹介しています。

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慢性閉塞性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者の咳症状に麦門冬湯の効果を評価したランダム化比較試験です。パイロット研究なので、あくまで仮説生成という感じで気楽に読みたいと思います。

【文献タイトル・出典】

A pilot study of the multiherb Kampo medicine bakumondoto for cough in patients with chronic obstructive pulmonary disease.

Phytomedicine.2011 Jun 15;18(8-9):625-9PMID:21177084

【論文は妥当か?】

試験デザイン:3施設ランダム化比較クロスオーバー試験

 [Patient]COPDを有する65歳以上の高齢患者24人(男性14人、女性9人)。

[Exposure] 麦門冬湯の投与/[Comparison] 麦門冬湯の投与なし(クロスオーバー)

[Outcomn]日誌による咳の頻度と症状の強さ

■患者背景は同等か?▶抄録に記載なし

■盲検化されているか?▶されていない。(オープンラベル)

intention-to-treat解析されているか?▶抄録に記載なし

■サンプルサイズは十分か?▶抄録に記載なし

■追跡期間▶16週間

■追跡率▶抄録に記載なし

【結果は何か?】

■麦門冬湯の投与で咳の重症度が改善

 week 0 vs. week 8, p=0.004

■麦門冬湯の投与で咳の頻度が減少傾向 

 week 8 vs. week 16, p=0.129

【結果は役に立つか?】

麦門冬湯は、COPDを有する高齢患者の咳症状に効果がある可能性があると結論しています。プラセボ対照ではないことやオープンラベル試験であること、さらに症例数などパイロット研究だけに妥当性に関しては微妙ですが、咳の重要度改善、咳の頻度改善傾向が期待できる可能性が示唆されました。プラセボ対照の2重盲検比較試験での報告に期待したいです。

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【文献タイトル・出典】

Pneumonia and pneumonia related mortality in patients with COPD treated with fixed combinations of inhaled corticosteroid and long acting β2 agonist: observational matched cohort study (PATHOS).

BMJ.2013 May 29;346:f3306. PMID:23719639

【論文は妥当か?】

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

[Patient] 1999年から2009において、スウェーデンにおけるプライマリケア診療録データからCOPD患者9893例から傾向スコアで11にマッチングし、患者背景を調整(平均年齢、67.6歳、女性53%)

[Exposure]ブデソニド/ホルモテロール(マッチング後2734例)

[Comparison]フルチカゾン/サルメテロール(マッチング後2734例)

[Outcome] 年間肺炎発症率、肺炎による入院、死亡

【結果は何か?】

■肺炎発症は年間100人当たりE群で6.4人、C群で11.0人、C群はE群に比べて73%多い

発生率非▶1.73 (95%信頼区間 1.57 1.90; P<0.001)

■肺炎による入院は年間100人当たりE群で4.3人、C群で7.4人、C群はE群に比べて74%多い

発生率非▶1.74 (95%信頼区間1.56 1.94; P<0.001),

■肺炎による死亡はE群で52例、C群で97例であり、C群はE群に比べて76%多い。

ハザード比▶1.7695%信頼区間1.22 2.53; P=0.003

【結果は役に立つか?】

アストラゼネガから資金提供を受けた研究だけに、その結果の妥当性気になります。そもそも傾向スコアマッチングで患者背景をそろえる際に、コホートから抽出する対象者の選択バイアスのようなものは発生しないのでしょうか。結果をそのまま鵜呑みにするのは難しい印象ですが、薬剤の種類によってこのようにアウトカムの違いが有る可能性も示唆されました。

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糖尿病と慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している患者において、副腎皮質ステロイドによる治療が糖尿病合併症リスクに関連するか、また用量依存的リスクがあるかどうかを検討した報告です。

【文献タイトル・出典】

Comorbid Diabetes and COPD: Impact of corticosteroid use on diabetes complications.

Diabetes Care.2013 Jun 4. [Epub ahead of print] PMID:23735725

【論文は妥当か?】

  研究デザイン:後ろ向きコホート研究

[Patient]20017月から20086月におけるオーストラリアの退役軍人省Australian Government Department of Veterans’ AffairsのデータよりメトホルミンやSU剤の新規処方が認められかつチオトロピウム、イプラトロピウムを使用していた患者1076

[Exposure]ステロイドの使用(全身、吸入)

[Comparison]ステロイドの使用なし

[Outcome]SU剤メトホルミン投与開始から12カ月後からの

糖尿病合併症による入院までの期間

 

【結果は何か?】

■ステロイド高用量0.83以上DDD/の使用は糖尿病合併症による入院リスクに関連

▶サブハザード比 1.94 [95%信頼区間 1.14–3.28], P = 0.014

ステロイド鄭用量0.83未満DDD/の使用は糖尿病合併症による入院リスクに関連せず

【結果は役に立つか?】

高用量のステロイド使用が糖尿病合併症による入院リスクを増加させる可能性が有るとしています。糖尿病を合併したCOPD患者ではできる限り低用量のステロイドが推奨されるかもしれません。

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長時間作用型吸入β刺激薬(LABA)や長時間作用型抗コリン薬(LAMA)等、COPDの第一選択薬は、心血管リスク増加と関連していることはこのブログでも良く取り上げるテーマです。

(参考)COPDにおける吸入薬剤の安全性

(参考)慢性閉塞性肺疾患の吸入薬に副作用はありますか?

JAMA Intern Medからコホート内症例対照研究で心血管イベントによる入院や救急外来受診のリスクを検討した報告です。

【文献タイトル・出典】

Cardiovascular Safety of Inhaled Long-Acting Bronchodilators in Individuals With Chronic Obstructive Pulmonary Disease.

JAMA Intern Med.2013 May 20:1-9.PMID:23689820

【論文は妥当か?】

  [研究デザイン]後ろ向きコホートの症例対象解析

[Patient]200391日から2009331日においてカナダオンタリオ州でCOPD治療を受けた66歳以上の患者191005

[Exposure]LABA LAMAの使用

[Comparison]LABALAMAの使用なし

[Outcome]心血管イベントによる入院および救急外来受診リスク

■調整した交絡因子▶抄録に記載なし

【結果は何か?】

■心血管イベントによる入院および救急外来受診53532 (28.0%)

■新規LABA処方と新規LAMA処方は入院リスク、救急外来受診リスクに関連

▶新規LABA:調整オッズ比1.31 [95% 信頼区間1.12-1.52; P < .001]

▶新規LAMA:調整オッズ比1.14 [95%信頼区間1.01-1.28; P = .03]

【結果は役に立つか?】

高齢者におけるCOPD患者では、長時間作用型β刺激薬と長時間作用型抗コリン薬の新規使用は、心血管イベントリスクの増加に関連付けられていると結論しています。

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国際ガイドラインではCOPDの急性増悪時において7日~14日の全身ステロイド療法が推奨されているが、その投与量や投与期間には議論の余地があるようです。JAMAからステロイド5日投与VS14日投与のランダム化比較試験です。

【文献タイトル・出典】

Short-term vs Conventional Glucocorticoid Therapy in Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: The REDUCE Randomized Clinical Trial.

JAMA.2013 May 21:1-9PMID:23695200

【論文は妥当か?】

試験デザイン:ランダム化比較試験

[Patient]COPD急性増悪によりスイスの5つの医療施設救急診療部を受診した患者314例(平均年齢69.8歳、女性51%~72%、在宅酸素療法10.6%~15.5%、現在喫煙者62%~77%、喫煙歴あり79%~93%、FEV131.3%~31.7

[Exposure]メチルプレドニゾロン40mg/5日間+プラセボ8日間(157例)

[Comparison]メチルプレドニゾロン40mg/14日間(157例)

[Outcomn]180日以内のCOPD増悪

■患者背景は同等か?▶女性がC群で多い、年齢、COPD重症度、ステロイド前処置等は同等。在宅酸素療法、現在喫煙はE群でやや多い

■盲検化されているか?▶2重盲検(患者、医療者、評価者、統計担当者等、盲検化)

intention-to-treat解析されているか?▶されている

■サンプルサイズは十分か?▶α0.05、統計パワー85%で設定したサンプルサイズは各群150例でサンプルサイズは十分である。

■追跡期間▶180

■追跡率▶99%(311/314人)

【結果は何か?】

COPD増悪E群で35.9C群で36.8%であり、E群はC群に比べて非劣勢である。

E群:56/156人(35.9%) C群:57/155人(36.8%)

▶ハザード比:0.9595%信頼区間 0.701.29P0.006

【結果は役に立つか?】

セカンダリアウトカムですが重要な死亡を見てみますと両群間に明確な差はありませんでした。

E群:12/156人(7.7%) C13/155人(8.4%) 

ハザード比:0.83 95%信頼区間0.402.20

全身ステロイド5日投与は14日投与に比べて6か月以内のCOPD増悪頻度は非劣勢で、ステロイド暴露量を大幅に減らせるとしています。
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