前科無き日常

気づけば開設9周年。。。

August 2013

コルドバ食地獄(スペイン旅行記5)

 バスはラマンチャ地方を抜けいよいよアンダルシア地方に入る。詳しくは忘れたが土の色が白っぽい色から赤茶けた色に変わってくるらしい。コルドバの世界遺産となる歴史地区はローマ橋と呼ばれる古い石橋が入り口となっていて、石畳の古い街並みは世界中の観光客で溢れかえり縁日のようだ。残念ながらローマ橋を渡る直前にデジカメのバッテリーが切れてしまい、街並みを写真に収める事はできなかった。代わりに歴史地区のシンボルともいえるメスキータと呼ばれる教会や白塗りの細い路地に連なるユダヤ人街を貪欲に脳裏に焼き付け、執拗に添乗員に建物に関する質問を浴びせた。今回の添乗員さんはとても博識で大体の質問に答えてくれるのでその点については有能だ。メスキータは元々はイスラム教の寺院だったものをカトリックの教会に改装したもので、同じ建物の中に、2つの宗教の祭壇が祭られているという世界的に見ても非常に珍しい建築らしい。宗教の違いに関係なくいいものはいいという寛大さが気持ち良い。

 メスキータを見学後に昼食の為の自由時間となり、ハモンさんと歴史地区周辺のレストランを探した。中々めぼしい所がなかったが何とか決めて席についた。レストランは込んでいて何だかウエイターも殺伐としており、スペインでは初めての外食の為緊張感が半端ない。メニューを出されても何がどれか分からない。かろうじて何か聞いたことある言葉だと思ってトルティージャという食べ物のセットと、コーヒーを注文した。しかめっ面のウエイターにコーヒーにミルクはいるかと問われたが、ミルクと言っているのが分からず、認知するのにとんちんかんなやりとりをしてしまい、すっかりウエイターに呆れられるという醜態をさらした。海外経験豊富なハモンさんが多少フォローしてくれたため事なきを得て、一人だったらどうなっていたことかと思ったと言いたい所だが、多分一人でもそれなりに何とかなっていただろう。そんなものだ。レストランが込んでいたせいか随分と待たされやっと例のトルティージャがやってきたが、その正体は刻んだじゃがいもの入ったバカでかい塩味のオムレツだった。勝手にタコスみたいのを想像していたので若干萎えた。味は悪くないがなにぶんでかくて永遠にただの塩味の為、途中で飽きてしまい半分くらい残してしまった。先日のパエリアに引き続き食べ物2連敗。

 コルドバの集団観光はわりかし早く終わって市内のホテルに到着した。まだ日も高いので散策がてらハモンさんと共にホテルの外へ出て夕食を食べる事になった。ホテルから昼間廻った旧市街を目指して目ぼしい食堂を探したが、夕暮れさしかかる街並みは美しく露天に立ち並ぶカフェやバルでは賑やかに食事と会話を人々が楽しんでいる。ニュースによればスペインは経済危機で失業率が40%とか聞くが、不況に伴う悲壮感が感じられない。スペインでは主たる宗教であるカトリックは教義としてプロテスタントと異なり労働が重視されない事や、温暖な気候によって労働の切迫性が寒冷地に比べて少ない事、人生を謳歌する事に何より重きを置く国民性がこの辺りに現れている気がして、素直に羨ましい。

 市内を流れる川沿いにこじゃれたレストランがありそこに入る。例によってメニューから注文するときに慌てて、値段が安いローマ字読みで「クロケット」成るものと白ワインを注文。付け出しの便所臭いオリーブをつまみながら白ワインを飲んでみる。生まれてこのかた飲んだことなかったが、癖がなく赤ワインより美味いかもしれない。そして肝心のクロケットが届く。なんてことはない大ぶりのコロッケが5個ぐらい更に載せられている。ああコロッケの事だったのかと少し安心した反面、こういうの頼んだつもりでもなかったのだがと少し後悔。中身はクリームチーズたっぷりで味はおいしかったが、全部同じ味で大ぶりな為最終的に飽きてしまった。これで食べ物3連敗。

 何とかクロケットを食べ終えホテルへの帰路。確か豚のソテーみたいなのを一皿ペロリと食べていたハモンさんが立ち飲みバルに興味を示す。そして案の定「もう一軒寄っていきませんか?」と言われ、腹も一杯だったが断ることもできず、辛うじてメニューに書いてあるものと自分のイメージが一致したビールと安っぽいチョリソーを注文した。クロケットで満たされた腹にはきつかった。でも夕暮れの路上のテラス席でダラダラとビールを流し込む感じは格別だったのでこれはようやく引き分けといった所だ。

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ラマンチャの男(スペイン旅行記4)

 スペイン2日目。マドリードを離れ一行はラマンチャ地方へ向かう。なにやらスペインの国民的文学作品らしいドンキホーテの舞台となった地方で、中世の騎士を騙る老人ドンキホーテが怪物に見立てて突撃したモデルとなった風車があるらしい。ドンキホーテと風車。今思えばこの両者は自分がスペインを知るきっかけとなったものという事に最近気がついた。確か中学生の時、仲間とプロレス的な罵りあいになったとき、ドンキホーテがどういう話しかも知らずイメージだけで相手に対し「お前は口だけのドンキホーテだ」と口撃した所、「それお前だろ」と返され、以降しばらく自分がドンキホーテ呼ばわりされるという遠い日の思い出がよみがえった。そして風車はアニメの「YAWARA」のバルセロナオリンピック辺りの件のオープニングテーマの中の映像が心に残っていてスペインに行きたいと思ったのが多分その位の時期だったようななかったような。無意識にその記憶は働き、大学の語学でもスペイン語を選び、10年立ってスペインの地に立つことになった。スティーブジョブズがかつて語ったように、過去の様々な点が一つの線となっている。

 バスはハイウェイを進み、畑のような荒地のような荒涼とした景色が延々と続いた。小高い丘が見え始め、ふもとの南欧の田舎らしい村をぐるりと回って丘を昇るとそこが目的地のコンスエグラの風車群だった。丘の上に立つ白くてぼろい風車の群れ。眼下に広がる荒涼としながらものどかな風景。バスを降りいうまでもなく一行はカメラ小僧となり風車をバックにポーズを決めて思い思いに写真を撮りだした。申し訳程度に一人風車を撮っていると、同行の人が気を使ってくれて「撮ってあげましょうか?」と気を遣ってくれたのだが、撮るのは好きだが撮られるのは大の苦手な自分は戸惑ったが断るのも悪いと思い、撮ってもらう事にした。しかし撮られ慣れていないため撮られるノウハウというか、引き出しがない。結果として風車をバックに硬直して仁王立ちするしかなかった。「そのポーズでいいんですか?」「いいんです!」という変なやり取りの後に不自然な写真が一枚出来上がった。写真一つナチュラルに撮られない自分はいつまでたっても欠陥人間だと妙な劣等感を妙な場所で感じるばかりだった。左下の同じツアーの女の子たちのこなれたはじけ方とは雲泥の差である。
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 風車を離れ、近郊の小さな村でトイレ休憩となった。多分風車をツアーで訪れる場合セットでここにも停まるという感じの村で、ドンキホーテゆかりのおみやげが色々と売られていた。静かだが暖かい雰囲気のあるいい村だった。一通りおみやげを物色し終えて一服していると、トイレのある店のひさしの部分にベンチのような腰掛けがあり、現地人と思われるおじいさんがボーっと座っている。どうやらスペインの宝くじを売る人らしく首からくじの束をぶら下げ悠然と煙草を吸っている様、いかにもスペイン的なロケーションにいかにもスペイン人が溶け込みとても画になっている。なんて思っていると一つのアイデアが生まれた。写真を一緒に撮ってもらおう。ライブ感がある。それに風車での後悔を挽回するためのチャンスだ。おじいさんは身なりがあまり綺麗ではなく他の人はやや気味悪がって近づこうとしなかったが近くにいた添乗員さんにカメラをお願いして「PHOTO WITH ME?」とおじいさんに話しかけた所頷いてくれたのですかさず撮ってもらった。写真を撮られ慣れていないので両者の距離に若干の違和感があったが、又とない時間を切り取るという意味では正しいカメラの使い方ができた気がしてテンションが上がった。添乗員さんもこれはいいですねと感心してくれたのでなおさらだ。そんなくだりを様子を見ていた他の人たち、私も私もとなりおじいさんとの撮影会の列ができあがり余り人が寄りつかなかったおじいさんは瞬く間にこの場のスターダムにのし上がった。自分との写真は微妙な距離感だったが女性と撮るときにはきっちり肩を抱くあたりはラテン系気質に抜かりがない。後で撮ってもらった写真を見るとやはり我ながら不自然さを感じる。でも恥にまみれて己を磨くため敢えてさらす。ただし自分以外のもう一人の被写体掛け値なしに最高だ。

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 期せずしておじいさんのプロデュースに成功し、内心満足した反面、穏やかな日常をかき乱した気がして迷惑かけたと思い申し訳なくなった。そこでお礼におじいさんの売っているくじを一枚買おうと思った。おじいさんの儲けにもなるだろうし、異国の地で当たるかどうか、当たっているのかどうかも分からないくじが旅の記念品として、これからの幸運の象徴として欲しくなった。撮影会が落ち着きもう一度おじいさんに近寄り、首からぶら下がっているくじを指さし「HOW MUCH?」と話しかけると「NO NO NO」とにべもなく販売を断られた。外人にくじを売るのが違法なのか、外人が買っても意味がないとの判断なのか、よそ者にずかずかと日常に入りこまれたのが不快だったのかは分からないがこうして名も知らぬ街の小さな旅の思い出はあっさりと終了した。バスはラマンチャからアンダルシアの古都コルドバへ向かう。
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