前科無き日常

気づけば開設9周年。。。

March 2014

木鷄(スペイン旅行記14)

 グエル公園に辿りつくのに予想以上に難航し、体力と時間を大きくロスしてしまった。とはいえ最低限度見て回りたい場所はクリアしたので、市街の中心部であるカタルーニャ広場へ出て、周辺のデパート、公設市場などをあてどもなく、ブラブラと見て回り、次の目的地を歩いて行ける距離にあるピカソ美術館に定めた。この美術館は市内ゴシック地区の古く趣のある石造りの町並みの中にあり、思ったよりもひっそりとしているが、観光客はさすがに多かった。例によって絵の知識などは無く、ぼんやりと眺めて回ったがほぼこの美術館のコレクションで記憶にあるものがない。プラド美術館同様疲労のピーク時に絵など見るものではない。とにかく椅子に座りたくて、絵をじっくり見るふりをしながら疲労の回復にただただ努めるだけの場所になってしまった気がする。

 美術館を出ても疲労が回復しない。もう気づけば夕方近い時間。朝マクドナルドでハンバーガーを食べて以降時間を惜しんで何も食べておらず空腹でもあったので、アイス屋さんでアイスを買った。街角のベンチで一心不乱にアイスを貪り喰っているときにこの旅最大の事件?は起きた。

 地元の大学生くらいの男女グループが通りがかり、その中の男一人がこちらへ近づいてきて「YAHHH!」と空手のファイティングポーズを取った。味方が大勢いるから調子に乗ってみすぼらしくアイスを食っている日本人をからかおうとしたのだろう。しかし、疲労で頭が働いていない為、びっくりする事もできず、かといって無視する事もなく、挑発に怒りもせずただただその男をぼおっと見る事しかできなかった。すると予想外のリアクションに相手が勝手にびびってしまったのか「SORRY!SORRY」と慌てて謝って去って行った。ほぼ数秒の出来事。このような事態に全く動揺する事は無かった。実態はただ疲れていただけだったのだが。後になって振り返ると、かわいそうになって謝ってきたのかもしれないが、見ようによっては外国人相手の挑発に全く動じず謝らさせた事が、戦わずして勝利したような感じで何だか嬉しかった。

 中国の故事で木鷄という話がある。平たく言えば最強の鶏は、闘う相手に対してまるで木彫りの鶏のように動じないという話だ。あろうことか、海外旅行先でヘトヘトになっている状況の中、偶発的ではあるがこの「木鷄」の境地を垣間見ることができた事が何とも不思議で強く印象に残っている。しかし、この状況に達する事ができたのはこの一回きり。我未だ木鷄たりえずという事だ。些細な事で動揺ばかりしている。

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迷宮攻略(スペイン旅行記13)

 早くこの旅行記も完結させてしまいたいが、あと少し。

 カンプノウを出て、次に定めた目的地はグエル公園。サグラダファミリアと並ぶガウディデザインの代表的な観光地。しかし、そこに至る道のりには予想外の困難が待ち受けていた。まずカンプノウから最寄りの駅へ戻る道のりで元来た道を戻ればいいものの、調子こいてあてにならない勘に頼って別の道を通ったら、一向に駅が見つからず大きな時間のロスとなった。これが第一のミス。やっと駅に戻り、グエル公園最寄りの駅へ向かったのだが、ガイドブックに書いてある一般的な最寄り駅ではなく、観光地仕様ではない別の駅に降りてしまった事でまるでランドマークがない。手持ちの地図と方角を頼りに進んでみたがそれらしき目印は一向に見つからない。

 仕方がないのでバス停で待つ現地の人に拙い英語でグエル公園の場所を聞くとどうやら丘の上らしく、訪ねた場所からは結構入り組んだ行程になる様子だった。それでもまた、得た情報を基に進むも、住宅街の真っただ中で全然観光地の匂いが感じられない。その住宅街で歩いていた別の人にもう一度公園の場所をうざく尋ねると、親切にも一緒に公園の入り口まで案内してくれた。外国人とコミュニケーションが取れたのが嬉しくテンションが上がってしまい、「I’m from Japan.I live in near Tokyo.」と中学校レベルで、300km以上も離れたnear Tokyoという大分話を盛った自己アピールをしてしまったが、道案内させられている上に聞きたくもない日本人のどうでもいい情報を聞かされてさぞ迷惑なことだっただろう。案内してくれた道の入り口には確かにグエル公園内の地図があったが、どうも自分が思っていた感じとも違うし全く人気がない。

 それでもその入り口から公園内に入ると随分とツイ坂道が続く。朝から休みなく歩き回っていた為、そろそろ足も痛くなっていた。坂を登っても一向に人気がなかったが。坂もやっと終わり踊り場のような地形の所に噴水場を発見した。そこにはガタイのいい、おそらくアラブ系のいかにも悪そうなゴロツキ系の男が2、3人位でヒップホップを聞きながら寝そべっている。助けを呼ぶには余りにもひっそりとしており、さすがにこれは完璧にやばい、追剥ぎにあってしまう直感したので気づかれる前にダッシュでその場を立ち去り事なきを得た。考えすぎだったかもしれないが用心に越したことは無い。まさか世界的観光地でこんな思いをするとは。

 それでも、目の前の道を黙々と進むと、ようやく沢山の観光客が見られるようになったが、自分の進んでいる方向とは逆にみんな歩いていく。薄々感じてはいたがどうやら自分はグエル公園の裏口から進入してきたらしい。テレビや本で見るTHE グエル公園のエリアにやっと到着したが、その造形美に対する感慨よりも、やっとたどり着いてやったという達成感の方がむしろ強い。なんだったんだ一体と充実と自分に対する呆れた感じがあいまった感情に胸を満たしながら、小高い丘の上に立つグエル公園から、バルセロナの街を改めて見晴らした。おもちゃのような建築でも、トカゲの像でもなくヘトヘトで歩き回った公園周りの住宅街が一番心に残っているというのが、目的に一直線に進めない紆余曲折の自分の人生となぜか重なって思える。

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