インドの旅の中で様々な人との出会いがあった。誰もが自分にとって予想外をプレゼントしてくれた。もうお腹一杯というところだが、もう一人だけ覚えておきたい人がいたので、その人について最後に触れて、旅行の時間よりはるかに長くかかったしまったこの旅行記を締めくくりたい。

 シンさんとは空港の入り口でお別れし、搭乗手続きも大きなトラブルなく終わった。免税店ではインド人最後の逆襲とばかりに、日本円を両替してくれなかったり、買いたいお土産をレジに持っていくと違うものをごり押しで進められるなど最後までインドはインド。出発時間が大幅に遅れるという最後っ屁までお見舞いされた。

 何とか搭乗となり飛行機に乗り込むと、隣は若い女の子。小柄でひどく痩せている。細い腕の裏側に十字架のタトゥーが入っていて、入れたばかりなのかしきりに撫でていた。機内食の時に、食べ物について野菜が食べられないとかだったかCAにあれこれめんどくさい注文をしていた。ああ中々めんどくさい子だなと思ってみて見ぬふりをしていた。

 夜になってひと眠りした後、どういうタイミングだったか、旅行帰りですかか何か尋ねると、どうやらインドの学校に留学しているらしい。日本の大学に入学したが、周りと全く合わずなんのために学校に行っているのかわからなくなり、インドの学校に留学することにしたらしい。しかし、インドの学校にはもう一人日本人がいてその人は競争心やら嫉妬心が強いらしく、何かとつっかかってくるのが不満らしい。初対面の人の、全く生活圏も異なる日頃の不満をまさか聞くことになるとは思わなかった。おそらく、この子は世界のどこへいっても周りと協調することなくツッパリながら生きていくんだろうと思うと、あまのじゃくな自分としては是非応援したい気持ちになった。如才なく周りと適応しながら生きている人より、話していても面白い。不満が生きるエネルギー。彼女にどんな未来が待っているかは分からないが、最後の最後に面白い人がいたなと妙に印象に残っている。

 わずか10日間の旅だったが、いろいろな経験を積んで日本に降り立った時には何となく達観したかのような心持がした。きっと日常に戻れば薄れていくのだろうが少し静かに物事を見れるようになったといえば大げさか。インドへ行くと世界観が変わるというが、自分の人生においては今回の旅は一つの区切りになったような気がする。