IMG_0001 私たちの、苦しいことつらいことの多い暮らし。
 その中の、ささやかだけれども面白いもの、尊いものを発見する喜び。我を忘れてそれに没頭し味わうことの充実感。
 その体験を直接関わる人々が一堂に持ち寄って分け合ってゆく喜び。
 そういう喜びを心の糧にして、ごいっしょに生きていきましょう・・・・。

 そういうささやかな主旨というか提案をもって、このたびは、切り絵作家であり、宮澤賢治作品の語り部として全国的に活動している吉田路子さんをエックシュタインの山小屋にお招きしました。


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 前日に、吉田さんに山小屋に来ていただいて、切り絵、千切り紙絵、クレヨン画の展示と、会の趣旨、意義、内容についてじっくり話し合いました。
 吉田さんは、少女時代を宮澤賢治の生家に近くで過ごし、宮澤賢治の作品に基づく切り絵の創作も、ずっと賢治一筋で続けて来られました。
 現在も、宮澤家との親交が深く、家族の暮らしや生活の実感が溢れる宮澤賢治を語り伝える努力を続けておられます。

 さて、今回の語り読み会では、とりわけ、仕事に就く、とか、仕事、就職とは何か、ということを少し意識していただいて、宮澤賢治の作品と生涯を来場者のみなさんにお伝えください、と僕はお願いしました。
 
 というのも、以前から親交のあるキャリアネット広島若者交流館の若者就職支援行事の開催と抱き合わせという形で、都会に住む若者たちを招き、うちのイベント行事を体験していただく予定だったからです。

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 さて、当日は、午前10時からお昼まで、若者交流館関係者だけで、各種スピンドル(糸ごま)、いろんな国々産でさまざまな様式の糸車を使って、私たちの暮らしを支える「衣」文化の根本である糸紡ぎを体験しました。(写真撮るの忘れました!)

P1000248 となりの厨房では、お昼の料理担当の平川広代さんと妹が炊事していました。 お昼近くになると、早めに来た人々が次々に率先して食事の準備を手伝ってくれました。P1000250
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 さすが、おいしい昼食でした。
 平川さんは、きちっとお品書きも準備してくださっていました。一皿分のアップ写真を撮っとけばよかったのですが、残念です。

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P1000255 昼食後、テーブルをみなさんと撤去して、イスを並べて、それから、吉田さんの語り読みが始まりました。
 
 手始めは、おなじみの、『雨ニモ負ケズ』でした。
 
 一般に、賢治の作品は、目の前の人に賢治が直接語りかけるような文体で書かれているそうです。
 花巻弁のイントネーションで語られる、素朴なあったかな、そして、自分で本を読むときとは比較にならないくらい、ほんとうにリアルな感じ。
 
 続いて、賢治が書いた、童話集『注文の多い料理店』序文を吉田さんは来場者に読んでくれました。

 個人的な感動かもしれませんので恐縮ですが、これにはほんとうに心が震えました。
 それで、ちょっと長いですが、全文をご紹介します。

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 わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしや)や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。

 わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹(にじ)や月あかりからもらつてきたのです。

 ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。

 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。

  大正十二年十二月二十日

宮沢賢治

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P1000258 合間のトークに続いて、今日のメインの『虔十公園林』。← 青空文庫のリンクを貼りましたので、どうぞ。

 後ろに吉田さんの切り絵作品を、ストーリー順に左から右へと展示しました。



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 吉田さんが宮澤家で聞いた話によると、賢治は、自分の、『賢い』などという漢字の付いた名前が嫌で、そのかわりに、敬虔(けいけん)の虔の字にあこがれたそうです。P1000276
 ← で、主人公の虔十は、賢治のこと。












 全体を通して、ありありと、宮澤賢治の人と作品をじっくり味わうことが出来ました。
 
 人からじかに語ってもらってそれにどっぷり聴き入るということが、どれだけ豊かなひと時かをしっかり体験できました。

 
 ちなみに、他にもたくさん山小屋ホールに吉田さんの作品を展示しました。
P1000262← 『よだかの星』の一部。

 切ない悲しい話の内容の背後にある、広い大空の明るさへの希望と願いを心に留めて製作したそうです。


P1000271← 『ねこの事務所』。みつろうクレヨン画。

 子どもたちが喜びます。
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 これらの作品はしばらくお借りして、会場に常時展示します。
 お気軽に見に来てくださいね。







 吉田さん、平川さん、若者交流館関係の方々、そして今回のイベントを手伝ってくださった多くのみなさん、来場者のみなさん、ほんとうにありがとうございました。
P1000275← セロ弾きのゴーシュより。