October 27, 2017
Sports Coaching Lab Vol.004 「外部指導者のこれからについて」
11月17日にゲストスピーカーとして登壇したSports Coaching Lab Vol.004 「外部指導者のこれからについて」の模様を主催者がレポートとしてまとめてくれましたので、とりあえず僕のパートだけを抜粋してお伝えします。
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より良い部活、より良い教育のために今求められる「外部指導者」を考える
〜Sports Coaching Lab Vol.004 「外部指導者のこれからについて」
「スポーツのコーチが学ぶ場を創る」ことを目指し、毎回様々なゲストスピーカーを招いて講演やワークショップを行う「Sports Coaching Lab(以下、SCL)」。その第4回目を2017年10月17日(火)、博報堂ラーニングスタジオで開催しました。
今回のテーマは「部活動の外部指導者」です。近年、学校の部活動においては教員の長時間労働や、教員数の減少に伴う専門性を持った指導力の低下といった問題が起こっています。そこで注目されているのが「外部指導者」の存在です。学校外から専門的な指導を行えるコーチを招くことで教員の負担を減らすと同時に、生徒に対しては質の高い指導が実施できるというメリットがあります。2017年4月には文部科学省が学校教育法施工規則を一部改正し、外部指導者を学校職員と位置づけられることにもなりました。しかし外部指導者を招く費用はどう捻出するか、教員や生徒とどう良好な関係を築いていくかといったシステム的な課題もはらんでいる状況です。
そこで今回は、実際に外部指導者として活動する深田悦之氏と柳瀬浩之氏、教員として外部指導者と関わる深田真人氏を招き、外部指導者に関するインスピレーショントークを実施。セッションの後半では参加者も交えて外部指導者に求めるものを考えるワークショップも開催しました。なおファシリテーターはNPO法人スポーツコーチング・イニシアチブ 代表の小林忠広が務めました。
☆ゆとり教育が生んだ「外部指導者の第一人者」
最初に登壇したのは杉並区立和田中学校テニス部で外部指導者にして、ロックシンガー、音楽プロデューサーが本業である深田悦之氏。ロックシンガーと部活動の外部指導者という立場はまったく交わりのないもののような印象を受けますが、氏が外部指導者となった背景には、2002年から全国の小中学校でスタートした「ゆとり教育」にありました。
2003年、深田(悦)氏は、東京都初の民間人校長を務めた藤原和博氏(現・奈良市立一条高等学校校長)から請われ、和田中学校で音楽の総合学習の外部サポーターを務めることになりました。この授業は好評で翌年も継続することになったのですが、その際に藤原氏より「女子硬式テニス部の顧問だった教員が異動してしまったため、テニス部のコーチもお願いできないか」と依頼され、同部の外部指導者としての役割も受け持つことになったそうです。
「もちろんテニスの指導経験はなかったので、はじめは“それは無理です”と言ったのですが、最終的には引き受けることになりました。だから僕は、なろうと思って外部指導者になったわけではありません。ですがこのように、学校内部の人材不足を補填することが、外部指導者に求められていることなんだろうと感じています」
こうして指導経験のない中で外部指導者となった深田(悦)氏ですが、先生や保護者も巻き込んで合宿を開催するなど、部活動に関わるステークホルダーをつなぐ取り組みを実施し、新しい「ブカツ」を創り上げていきました。この取り組みは自治体にも注目され、2016年から杉並区で開始された「部活動活性化事業」のモデルケースになったと言います。
一般的には「失敗だった」と言われることが多いゆとり教育ですが、深田(悦)氏はそのゆとり教育時代に外部指導者の第一人者となり、部活動のあり方を変える源流となりました。氏は最後に、ゆとり教育について次のような考えを述べて講演を締めくくりました。
「“ゆとり教育の概念そのものが失敗だったわけではなく、ゆとり教育を行える人材がいなかったことがうまくいかなった理由だと感じています。今、教育界では“アクティブラーニング(認知能力や社会的能力等の汎用的能力の育成を図るために、教員からの一方的講義形式の授業ではなく、体験学習やグループワーク等を盛り込んだ授業方式)”に大いに注目をしていますが、僕から見るとアクティブラーニングはゆとり教育時代の総合学習に通じるものだと思っています」
今後教育のあり方が変わっていく中で、学校側も様々な変化にさらされることになります。その際、学校側は外部の優秀な人材を見つけ、うまく活用していくことが求められます。一方で外部指導者にも、技術指導だけにとどまらず、部活動に関わるステークホルダーと良好な関係性を築く必要が出てくるでしょう。そのような観点から考えると、深田(悦)氏の取り組みには多くのヒントが詰まっていると言えるでしょう。
杉並区立和田中学校テニス部で外部指導者の深田悦之氏。現在では和田中学校以外の複数の学校で外部指導者として活動。また自身の経験を伝えるために、全国でロックコンサート的な講演活動を展開している
edge_etsuji at 14:28│