2008年10月05日

ミリオンセラーでも「赤字」になる、書籍の不思議

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昨日も書いたように、書籍の多くで、初刷りでは赤字状態になっている。

結局、現在の書籍ビジネスがどうなっているかというと、初刷りが全部売れ、2刷り、3刷りと増刷を重ねて、ようやく黒字になっていく形だ。それでも多くの書籍は赤字かトントンで、一部のヒット書籍で全体の帳尻を合わせているのが実情。


さらに、超ヒットすればいいかというと、微妙。たとえば宮沢りえ×篠山紀信の1991年の写真集「Santa Fe」は、出版前は大ヒット確実と言われ、実際ミリオンセラーとなったが、版元の朝日出版が儲かったという話は聞かない。噂では赤字という。というのも、大ヒット確実というので全国の書店が大量に仕入れ、結果的にとんでもない量の返本にさらされたから。返本分の造本コストを、もろに被ったのだ。しかも写真集だからコストも高額だ。

昨日も書いたように、書籍の多くは委託販売で、売れ残っても自分の腹が痛まないので、書店側では「とにかく入れろ。売れなきゃ返本すればいい」となりがち。だから、特にこのような超大ヒット確実本は、危険なのだ。

たとえばハリーポッターの版元、静山社では、委託販売でなく責任販売制を取っている。これは要するに「書店が買い取りで仕入れる」方式。書店は、委託販売よりは好条件で仕入れられるが、売れ残りのリスクを自分で負うことになる。したがって、むやみには仕入れなくなるので、出版社としても安心できるわけだ。


現在、書籍販売には負のサーキットができている。

出版不況で書籍1冊の販売部数が減る
>出版社は苦しいので書籍刊行点数を増やす
>書店の棚は有限で、点数が増えた分、新刊もすぐ返本
>このため、1冊あたりの販売部数がさらに減る

という悪循環だ。当然増刷りできる本も減り、出版社が書籍事業で黒字を出すのは、どんどん難しくなっている。このため、いずれ詳しく書くが、現在の書籍出版では、「仕掛け」が非常に重要になっている。その意味で、雑誌編集者的な感性が、書籍編集者にも必要な時代なのだ。書籍編集者になりたい人は、このあたりを強化しておいたほうがいい。

editors_brain at 09:44│Comments(2) 雑記 | 出版界でメシ食いたい方に

この記事へのコメント

1. Posted by 出しゃばりおばさん   2008年10月05日 18:39
「サンタフェ」が大ヒットしたのに出版社は赤字・・・・というのはおかしい。
実際、150万部以上を売り上げ、個人被写体の写真集では日本は元より、世界的にもNO,1の売り上げを記録したのではないだろうか。

当時、朝日出版の新社屋は「サンタフェ・ビル」とも呼ばれ、おおいに潤ったはず。経営状況が苦しいのはその後の経緯。

確かに部数を見込んでの刷り過ぎは返品率を考えると、大きなネックにはなるが、「サンタフェ」に関しては予想と結果は見事に合致している。因みに数版繰り返し増刷されている。
2. Posted by tokyo_editor   2008年10月07日 06:00
出しゃばりおばさんさん、こんにちは。
情報ありがとうございます。

私は朝日出版社と直接の関係はないので真偽は不明ですが、当時、注文に応じて大量の初版を印刷した結果、かなりの返本を受けたという話を聞きました。

ご存じの通り、異例の返本量であれば長期保管する以前に断裁に回す分も多いでしょう。話題は継続しましたから、その後に贈刷りがあっても不思議ではありません。

いずれにしろ、150万部というのは、高額な写真集としては異例の売れ行きです。さらに、santa feのヒットでその後の写真集も注目されたので、総合的には十分コストに合ったものになったのは確かだと思います。

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