2012年12月31日

更新記録

4月26日

生まれて変わってドラクエ 18を投稿
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3月21日

小説家になろうに 竜殺しの過ごす日々 30を投稿
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1月10日

あけましておめでとうございます
小説家になろうに 妹可愛さに家を出た おまけを投稿
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12月27日

小説家になろうに 妹可愛さに家を出た 6 7を投稿
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12月17日

小説家になろうに 妹可愛さに家を出た 5を投稿
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12月12日

小説家になろうに 妹可愛さに家を出た 1 2を投稿
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10月17日

小説家になろうに 竜殺しの過ごす日々 25 26を投稿
お願い悪魔様! でもその願いは筋違いを投稿
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9月26日

生まれ変わってドラクエ 17-4 目次の2からいけます


9月25日

生まれ変わってドラクエ 17-3 目次の2からいけます
明日もドラクエ更新予定


9月11日

生まれ変わってドラクエ 17-2 目次の2からいけます


9月5日

小説家になろうに 竜殺しの過ごす日々 24を投稿
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生まれ変わってドラクエ 17-1 目次の2からいけます


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2011年04月26日

生まれ変わってドラクエ 18


 四人はロマリアから北西へ向かい、施錠された門に到着する。ここらの魔物では、イシスでの経験を経た一行を止めることはできなくなっていた。
 平和な世ならば観光名所となりえただろう大きな橋の上を歩く。橋の中央には高さ五メートルを越す鉄製の門が通行できないように立っている。

「魔法の鍵をどこに使えばいいのか誰か知ってるのか?」

 グラッセの問いに、カズキは頷く。抜かりなく情報を仕入れていたのだ。

「右端に差込口があるんだってさ」
「あ、あったこれだね」

 アークが見つけた差込口に魔法の鍵を入れ捻る。
 門の内部から振動音が聞こえてきて、一分ほどして門がゆっくり押し開いていく。同時に橋の下から激しい水音が聞こえてくることから、水をなんらかの方法で利用して自動で開くようになっているのだろうと推測できる。

「うわぁー、すごいね」

 大人五人がかりでも開かせるのが難しそうな鉄門が開いていく様をアロアは感動して見ている。ほかの三人も似たような表情だ。

「さあ行こう」

 鍵をしまったアークが三人を誘い歩き始める。
 鍵を抜くと同時に門は、開いた時と同じ速度で閉じ始める。四人が橋を渡りきる頃になって完全に閉じた。

「ここからはまた魔物の強さが上がるから油断しないように」
 
 カズキの言葉に三人は神妙に頷く。まあカズキが言わずとも油断などすることはなかっただろうが。
 四人は新たに出会った魔物の対処を覚えながら、海沿いに十日歩きポルトガに到着した。その十日で二度遠くに船が移動するのを見た。話に聞いたポルトガの軍船だ。

「潮の香りの強い街だなぁ」
「そうだね」

 グラッセの言葉にアロアが相槌を打つ。

「港に人は少なめだね。やっぱり魔物の影響なのかな」
「だろうねぇ。平和になればすぐに活気が出てくるんだろうさ。
 そんな先のことはともかく、今日の夕飯が楽しみだ」

 二人の会話にカズキも加わり、アークも加わる。

「楽しみって? なにか名物でもある?」
「いやとれたての魚や貝とかがメニューに並んでそうだろ」
「兄さん魚が好物だっけ?」

 一番好きというわけでもないが、好きな部類だった。前世では日常的に食べていたのだから、懐かしさもある。
 刺身なんかあれば最高だと思うが、さすがにそれは高望みとわかっている。ジパングには醤油もワサビもありそうなので、密かに楽しみにしている。
 この街でも貝のバター焼きや酒蒸しはあるだろうし、魚もカルパッチョやムニエルは食べられるだろう。それはそれで楽しみなカズキだった。
 魚介類のメニューをつらつらと語るカズキに、影響を受けたか三人もなんだか楽しみになってきた。

「あ」
「アロア、どうした?」
「馬の鳴き声が聞こえたような気がして。でもこんな建物の密集地に馬なんか入れないよね」
「大通りなら馬車が通るだろうが、こんなところだと馬も動きづらいだろうし、聞き間違いじゃないか?」

 カズキはカルロスかなと思うが、それを口に出さない。今会ったところでなにもできないのだ。
 
「聞き間違いではないよ、お嬢さん」

 道に置かれた長椅子に座っていた老人が話しかけてくる。

「じゃあやっぱり馬がいるんですか?」
「ああ。じゃがただの馬ではないのだよ。バラモスの呪いを受けた人間が馬となっておるのじゃ」
「そんな人がいるんですか!?」

 アークが驚き、老人に近づく。

「さらにはただ馬とされただけじゃないのだよ。
 カルロス。ああ、馬にされた男の名前がカルロスというのじゃが、カルロスにはサブリナという名の恋人がおってな、サブリナも呪いで猫に変えられてしまっておる。
 昼はカルロスが馬となり、サブリナは人に戻る。夜はサブリナが猫となり、カルロスが人に戻る。
 二人はすぐそばにおるのに、もう何年も会えずにおるのじゃ」
「可愛そう。バラモスはどうして呪いなんか?」

 アロアは自身が似たような状態なので、より親身に感じるのだろう。

「カルロスは凄腕の船乗りじゃった。魔物が出るようになった海でも、海流を読むなどして戦闘を避け被害を出さずに世界中の海を駆けておった。
 そのおかげで海が荒れても必要最低限の物資が様々なところに届けられておった。それをバラモスは邪魔だと思ったのだろう。海に出られないように呪いをかけてしまった。サブリナはその巻き添えじゃ」

 カルロスが呪いを受けた理由を知らなかったカズキは、わからないことがわかり不謹慎ながらも少しだけ嬉しくなった。

「昼夜で交代するように変化するのはなにか意味を持たせたのでしょうか?」

 アークの疑問に、老人は首を横に振る。

「意味なんぞありはしないのだろう。ただただ人間が悲しみにくれる姿を見たかった、それだけじゃろうて」
「カルロスさんたちはどこに住んでいるのでしょう?」
「ん? お会いになるのかな?」

 頷くアークに、老人はすぐそこだと家を教える。
 その老人に礼を言って四人は移動する。
 小さな庭に馬がいる。そのそばに女がいて、馬の体を拭いていた。
 その女がサブリナだろう。カルロスのそばにいるというのに表情は暗い。どことはなしに馬の様子も沈んでいるように見える。
 その様子をしっかりと心に刻むように見たアークは、静かにその場を去る。
 話しかけると思っていたカズキは疑問を抱きつつ、アークを追う。グラッセとアロアも話しかけることはせずに、二人を追った。

「アーク。話をしないの?」
「話せることがないよ」
「バラモス討伐を目標に旅をしてるって言えば、二人の思いは少しでも晴れるんじゃない?」
「その目標は達成する。でも万が一ってこともある。その場合は二人の心をさらに傷つけることになると思うから、なにも言わずにいた方がいいと思ったんだ」

 負ける気で旅をしているわけではないが、それでも一抹の不安は持っている。
 思い出すのはオルテガのこと。話に伝え聞く父に追いつけたとは思っていない。ならば今のままでは討伐は無理だ。そんな自分の言葉で励まして効果があるのかと考えていた。

「俺も賛成だ」
「グラッセも?」
「下手な慰めや励ましは逆効果だ。アロアのことで経験したからわかる」
「心のケアは身近な人たちがすでにしてると思うから、今私たちにできることはないと思う」

 アロアもグラッセやアークと同意見だった。
 なにもできないという点ではカズキも異論はない。しかしアークが二人の様子を見に行ったことがわからない。
 その思いを読み取ったか、アークが口を開く。

「二人を見て、討伐への決意を高めるというのが一番近いかな。
 今も苦しんでいる人がいるって思うと、負けられないって思いが強くなる」
「そうだったんだ」

 頷きながら、アークが気負いすぎないよう注意しておこうと考える。
 今日の宿を決め、アークが城へと出発する。残り三人はいつものように留守番したり、消耗品の補給だ。
 城に行き、王様の前に通されたアークはこれまでのと同じように挨拶をする。儀礼的なものが無事に終わり、雑談へと移る。

「そういえば勇者殿は黒胡椒というものをしっておるかな?」
「黒胡椒ですか? いえ、聞いたことないですね」
「調味料の一種でな、ここらでは採れない代物なのじゃよ。野菜炒めによし、肉料理によし、麺料理にも使えるものでな、わしの大好物なのじゃ」
「へー、私もそれを使った料理を食べてみたくなりました」
「それならば! と言いたいところじゃが、魔物の活性化のせいで輸入がままならぬのじゃ。
 そこで頼みがある」
 
 なんとなく先がわかったアークだが、黙って先を待つ。

「想像ついたみたいじゃが、黒胡椒をもらってきてほしい。
 料金はこちら持ちじゃ。報酬として船をやろうではないか。これから先海路でしか行けない場所もあるはずじゃ、便利じゃぞ?」
「船!?」

 船が報酬と聞いて盛大に驚くアークを、王は満足気に見ている。

「でどうするかな?」
「こちらとしてもありがたい話ですが、本当に黒胡椒を取ってくるだけでいいのですか?」
「うむ。大臣が証人じゃ」
「はい。証人となることを誓います」

 報酬が船という衝撃に少し呆然としつつ、アークは城から出る。
 黒胡椒購入資金として宝石を預かっており、バハラタに行くのに必要となるノルドへの手紙も渡されている。
 アークが去った後、王と大臣が言葉を交わす。

「勇者殿はカンダタを倒し、人質を助け出すことができるでしょうか? 一度目はぎりぎり勝てたという話ですし。
 一度使った策はあやつも警戒していると思うのですが」
「これくらいは乗り越えてもらわなければ困る。
 一戦目から日数は経っておるし、予定外のイシスでの戦いもあった。成長しておらぬということはあるまいよ」
「そうだとよいのですが……」
「船はどうなっておる? 最終工程だと聞いたが」
「はい。建造は順調に進んでおり、勇者殿が戻ってくる頃には点検も含め終了します」
「急がせる必要はない。着実に丁寧に造っていくのだぞ」
「それはもう。勇者殿に贈るのです。中途半端なものを造るわけにはいきませんから」
「各国から集めた金と資材と技術を詰め込んだ船だ。長期の航海にも魔物の攻勢にも耐えうるものだろう。
 それが世界平和に役立つといいのだが」

 王は記憶に残るオルテガよりもまだまだ頼りなさげなアークの姿に、少しだけ不安を感じる。だが誰しも最初から強いわけではないのだと思い直し、これから起きることが成長の良き糧となることを祈る。
 
 アークからこれからの予定を聞いた一行は、旅の準備や装備の修理を行い、二日後にキメラの翼でアッサラームへと飛んだ。
 ちなみにこの二日間で魚料理は堪能していた。とれたての魚を使った料理は前世に食べたものも含めて上位に入るものだったと、カズキは大変満足していた。
 四人はアッサラームには立ち寄らず、直接東の洞窟を目指す。恨んではないが、多少思うところがあり足が向かなかったのだ。
 ノルドに手紙を渡し、道を開いてもらった四人は、バハラタダーマ地域へと足を踏み入れた。

「目的地は南だよな?」

 グラッセの問いにカズキが頷く。

「うん。単純な距離だけで言うと、アッサーラムからイシスまでと同じ。でも砂漠がないから移動時間は短め。それでも二十日以上はかかるね。
 北にはオリビアの岬ってところがある」
「カズキさんはどんなとこか知ってるんですか?」

 ここらの地理情報は知らないアロアが問いかける。

「オリビアっていう幽霊が出るから、岬にその名がついたんだ。
 その幽霊は船の通行を邪魔して通さない」
「どうして邪魔するんでしょう?」
「さてそこまで知らないなぁ」

 知らないというのは本当だ。エリックという恋人がいたのは知っているのだが、通さない理由はゲームで明らかにされたかどうか覚えてないのだ。
 
「岬には少しは人はいるって聞いてる。でも今は行く必要はないと思うな」
「俺もそう思う。今はバハラタを目指そう」

 アークの発言に三人は頷き、バハラタを目指し南下する。
 ノルドのいた洞窟が長く閉ざされていたため、こちらに来る者は少ない。なので森の中にある道は荒れ果てていて、獣道より少しましといった違いしかなかった。
 どこまでも続いていると勘違いしそうなほど大きな森を抜け、一行は視線の先に街を見る。
 ようやく街に到着だと四人は大きく溜息を吐いた。いい加減安全な場所で、ぐっすりと寝たかったのだ。
 街の入り口に着いた四人は見張りに立っていた警備兵に宿を聞き、そこへ向かう。その四人を見送った警備兵が黒胡椒を扱っている調味料店に向かって走りだしたことに気づかず。
 宿について荷物を置いて汚れを落とし、ご飯を食べ、ベッドに入る。久々の快適な環境に、十時間というたっぷりな睡眠時間を得た四人の体調は絶好調といえるものだった。
 早めな昼食を食べ終え、宿の主人に黒胡椒を扱っている調味料店の場所を聞いて、四人はそこに向かう。
 すぐそこというところまで近づいた時、男二人が言い争う声が聞こえてくる。
 幸助にはグプタとタニアの祖父の会話だろうと予想ついたが、わからない三人は何事かと調味料店に急いで向かう。

「タニアは俺が助ける!」
「待たんかグプタ!」

 店の入り口まで来た時、必死な形相の青年が店から出てきて、アークたちに気づくことなく走り去った。
 その青年を追うように初老の男が店から出てくる。店のそばに立つアークたちに気づくと、驚いた表情を見せ、次に恥ずかしげな表情となる。

「お客様でしょうか? みっともないところをお見せしまして」
「えっとなにかあったんですか? 助けるとか聞こえたんですが」
 
 アークが聞く。
 それに男は少し迷う素振りを見せてから口を開く。

「孫娘が賊にさらわれてしまいまして」
「それは大変じゃないですか!」
「はい、それはもう。警備兵に助けを頼んでもしりごみして動きが鈍く。
 それで冒険者を募っているところなのですが、彼らが集まるまで待てずに恋人のグプタが助けに行ってしまいました。
 グプタには戦いの経験はなく、無事に指定場所に辿り着いてもきっと返り討ちになってしまいます。
 私は急いで冒険者を集めなければなりませんので、これで失礼します」

 そう言って去ろうとする男をアークは呼び止める。
 カズキにはアークの言いたいことが予想できて、それは当たっていた。

「俺たちに任せてもらえないでしょうか!」

 グラッセとアロアもなんとなく予想できていたのだろう。アークの発した言葉に驚いた様子は見せない。

「会ったばかりの方々に迷惑はかけられませぬ」
「困っている人を放ってはおけません。それなりに腕に自信はあります」

 男はじっとアークを見つめ、一度目を閉じる。そして頭を下げた。客商売の経験からか、信頼できると踏んだのだろう。

「……孫娘のことお願いできるでしょうか」
「必ず」
「ありがとうございます」
「お礼は助け出した時に言ってください。
 それで賊の居場所なんかはわかっているんですか?」
「住処かどうかわかりませんが、身代金の引渡し場所として北東の廃墟を指定しています。
 そこに行けば必ず会えるでしょう。
 出立はすぐにでも?」
「そのつもりですが」
「明日にしてもらえませぬか。身代金がまだ用意できておらぬのです。お金で済めばそれにこしたことはありませんから。
 明日になればどうにか準備できますので」
「俺たちにも準備は必要だしちょうどいいんじゃないか?」

 グラッセの言葉にアークは頷いた。
 また明日と去ろうとしてアークはなにかを思い出し振り向く。

「店から出てきたということはお店の関係者なんですよね?」
「ええ、私が店主です」
「だとしたらこれをどうぞ。身代金の足しになると思います」
「これは?」

 アークが渡したのは黒胡椒の代金として渡された宝石だ。
 それはさすがにまずいのではと会話に加わらなかった三人は考える。

「ポルトガ王から黒胡椒を買うために渡された宝石です」
「そのようなものを身代金にするわけには!?」
「大好物だと仰っていた黒胡椒を扱う人の関係者を救うためです。王もわかってくださると思います」

 渡された宝石はカズキが鑑定し、合計七千ゴールドと判明していた。予定外のことに使って借金とされても返済は可能だと、アークは考えている。それに無駄遣いしたわけではないのだ、きちんと話せばわかってくれるとも。
 
「……一応お預かりいたしますが、お金は十分集まる予定ですので使わないと思いますよ?」
「その時は予定通り黒胡椒の代金にしてもらえれば」
「わかりました」

 今日のところはこれでと別れた四人は消耗品などの補給を済ませていく。
 装備も新たに整えた。アークは鋼の鎧と魔法の盾を、アロアは魔法の盾のみを、カズキとグラッセはポルトガで黒装束を買っていたので、黒頭巾のみを。おかげで防御力は上がったが、財布はずいぶん軽くなった。
 しばらくはお金を貯めて、そのお金でアークの鋼の剣を買い換えなければならないなと全員で話し合った。綺麗だった刀身には細かな傷が入っていて、少ないが刃こぼれしているところもあるのだ。後三ヶ月ももてばいいところだろう、というのが使っているアークの言葉だった。
 夜が明け、四人は再び調味料店に訪れた。

「こちらが身代金となります。お金のままだとかさばるので宝石に変えてあります」

 店主が袋の中身を見せてからアークに渡す。中にはルビーやサファイアなど七つほど入っていた。捨て値で売ってもゆうに二万以上で売れる。
 ここまでの大金は初めて持つアークは、緊張しつつ荷物の中にしまいこむ。
 その間にグラッセが身代金引渡しの詳しい場所やそこの情報を聞き出していく。

「この街の北にある川を東に沿っていけば橋が見つかります。その橋を渡れば廃墟があります。五日もあれば着くでしょう。
 その廃墟に地下へ行くための階段があります。そこで身代金を渡すようになっています。
 そこは犯罪者を隔離しておくための場所だったらしいです。ですが魔物が活動的になり、管理維持していくことが難しくなり放棄されたという話です。
 そういった場所ですから牢屋があります。そこに孫は入れられているのでしょう」
「抜け道とかそういったものは?」
「聞いたことありません」
「そうですか。賊の人数とかは?」
「それも詳しいことは」

 店主は首を横に振り、申し訳ないと頭を下げる。

「ただ賊による被害の話を聞いたところ、一度に五人以上の人数でやってきたことはないとのこと。
 もしかすると大規模な集団ではないのかもしれません」
「だと助かるんだが」

 身代金が用意できているとはいえ、賊の気分次第で戦いになるのだ。その場合大人数ではきついものがある。
 こう思っているのはアークとグラッセとアロアだ。カズキはゲーム知識が思考を誘導し、戦闘になるとしか考えていない。
 カズキのこういった、考えが誘導され思考の幅が狭まる、というのはちょっとした弊害かもしれない。ゲーム知識は有利になることもあるが、不利ももたらすということなのだろう。

 情報を聞き終え、四人はすぐに街を出る。それを確認した警備兵の一人がキメラの翼を使った。
 北にある川を見つけるとそれに沿って進み、橋を渡り、目的地である元収容所に到着する。
 ざっと見渡したかぎりでは見張りなどの姿は見えない。それと廃墟といっても建物がぼろぼろになっているということもなく、人がいるように感じられないだけだった。
 廃墟を探索し、地下への階段を見つけた四人は慎重に下りていく。

「特徴のない通路だね、ここ」

 少しばかり進んだ頃、アロアが周囲を見ながら言った。
 賊たちが使っているらしい松明があちこちに置かれていて、手持ちの松明で火をつけていったおかげで自然の洞窟よりも明るい。

「たしか迷いやすくするために、こういった造りにすることがあるんだって聞いたことあるな。
 特徴がないってことは目印もないってことだからね、目的地への道順を知らないとかなり時間を食うことになる」

 カズキは前世で聞いたことを思い出しながら言う。
 思い出したのは海外の城の特集だ。そこの地下が碁盤目状の造りで、なにも考えずに進むと現在地もわからなくなるといったものだ。
 その説明をしつつカズキは内心首を傾げている。魔物がまったくいないことに。アークに聞いても魔物の気配はないと言う。ゲームでは魔物が出たはずなのにと不思議がっている。

「脱獄を防ぐためなのかな?」
「どうなんだろう? それもあったのかもね」

 おぼろげながらも正しいルートを覚えていたカズキだが、それを口に出さず先頭を進むアークについていく。
 ほぼ全部の道を通る形になったものの、一行は下りの階段を見つける。
 それを下り進み、人の話し声が聞こえる部屋の前に来た。カンダタ子分たちの声だろう。

「何人くらいだと思う?」

 グラッセが小声で皆に聞く。それにアークは若干の間を置いて五本の指を立てた。
 グラッセもその判断と同じようで、頷きを返す。

「どうする? 身代金を持ってきたことを告げるか、奇襲するか」
「奇襲して全員を倒せればいいけど、一人でも逃すと人質が危ないと思うんだ」
 
 アークの返答にグラッセはそれもそうだなと頷き、奇襲はなしということになった。
 交渉が上手くいかない場合のことも考え、戦闘になった場合の動き方を話してから四人は部屋に入る。

「誰だぁ?」
「調味料店の孫を誘拐しただろう? 孫と交換する身代金を持ってきた者だ」
「代理というわけか。金は?」
「現金では重いので、宝石にして持ってきた」

 アークが懐から取り出した袋を、子分の一人が受け取り中身を確認する。
 確認した子分は他の子分と小声で話し合う。
 そうしている間にカズキは子分たちのステータスを確認し、心の中のみで首を捻っていた。

(カンダタと同じように、この人たちもステータスに盗賊って文字がどこにもないな。
 もしかするとカンダタたちとの島争いに勝った傭兵崩れとかだったり?)

 そんなことをカズキが考えているうちに、カンダタではない誰かの子分たちの話し合いが終わる。
 結論を出した子分たちの顔は、ニヤリと嫌な感じの笑みを浮かべていた。

「ここでお前たちを殺してしまえば、届かなかったともう一度身代金を取れるな」

 子分たちはナイフや斧を手に持ち、殺気立つ。
 その殺気を受けた四人は素早く武器を手に取り、応戦の意思を見せる。
 子分たち五人の内四人が襲いかかってきて戦闘が始まる。
 応戦するのはアークとグラッセで、カズキはアロアの護衛のため武器を構えたまま動かない。
 アロアは始めにスクルトを使い、次にボミオスといったふうにいつもと同じように補助に専念する。ヒャダルコやべギラマといった広範囲攻撃呪文も覚えているが、接近している状態では使いにくい。砂漠で役立つためヒャダルコを優先したため、単体で威力の高いメラミはまだ覚えていない。
 アロアの役目はもう一つあり、先頭から離脱しようとする者に魔法を当て人質のところへ行かせないようにするというものだ。
 子分側の残った一人は戦いを避けて、アロアのいる場所に回り込もうとしたがカズキに阻まれ一対一の形になっている。
 ゲーム中ではルカナンを使ってきていた子分たちは、呪文など使う様子は見せずひたすら手に持つ武器で攻撃している。カンダタ子分ではないという違いだからだろうか。もっともカズキたちとっては助かる変化だが。
 以前よりも力量を上げ、装備も良くなっている四人は苦戦らしい苦戦もせず、子分たちを倒す。とどめは刺さずに武器を取り上げ、落ちていたロープで縛って部屋隅に転がしておく。
 
「この奥にタニアさんとグプタさんはいるのかな?」
「じゃないか?」

 子分たちを縛り終えたアークとグラッセが奥へと繋がる通路を見ながら言う。

「奥から戦闘音を聞きつけて人が出てこなかったってことは、もう賊はいないってことかな?」
「その可能性は高いと思うが、人質を盾にしようと待ち構えてる可能性もなくはない、かもしれない」
「気を抜かずに行った方がいいね」
「だな」

 四人は静かに移動し、さらに奥へと歩を進める。T字路に当たり慎重にどちらに進むか決め、一行はタニアが入れられている牢屋を見つけた。
 念のためカズキはステータスを見て、本物か確認する。そして間違いなくタニアだとわかった。

「あなた方は? 私をさらった人たちとは違った感じを受けますけど」

 タニアは警戒しているのか、柵には近づかずに問いかけてくる。

「あなたの身代金を持ってきた者です」
「身代金を持ってきたにしては騒がしかったような?」
「賊が欲を出して、それが原因で戦闘に」
「……ということはあなた方が勝ったと判断しても?」
「はい」

 アークの返答にタニアはほっと安堵したように息を吐く。
 
「この牢屋とは反対側の牢屋のそばに鍵を開ける仕掛けがあります。それを作動してきてもらえないでしょうか?」
「わかりました」
「あ、あと向こうにはグプタがいると思うので、私は無事だと知らせてもらえないでしょうか?」

 タニアの願いにアークは頷いて、皆で仕掛けのもとへ向かう。
 牢屋のそばに来ると、中にいたグプタがすごい勢いで柵にしがみついてきた。

「あ、あんたたち賊の仲間じゃないよな? な?」
「違いますよ。あなたはグプタさんでいいんですよね?」
「そうだけど、どうして俺の名を?」
「調味料店の店主さんと向こうにいるタニアさんに聞いて。
 タニアさんは無事ですよ」
「本当か!? よかったぁ」

 恋人が無事と聞いてグプタはその場に座り込む。

「今鍵を開けますから。念のため柵から離れてください」

 すでに仕掛けに近寄っていたカズキに、アークは作動させるよう頼む。カズキがレバーを下げると、柵の一部が徐々に上がっていく。
 柵が上がりきる前にグプタは牢屋から出て、タニアのいる方へと走っていく。それを追い、四人も移動する。
 すぐに追いついた四人が見たのは、タニアに抱きついて無事を喜んでいるグプタの姿だった。
 タニアはそのグプタの様子に嬉しげにしつつも、どこか申し訳なさげな表情を見せていた。それも四人が近づいてきたことに気づき、引っ込んだ。

「皆さん、ありがとうございます。無事グプタと再会することができました。なんとお礼を言ってよいのやら」
「ありがとうございます!」
「いえ、困っている人を助けるのは当然のことですから」

 アークの言葉に感激したグプタが何度も頭を下げてくる。それを止め、ここから出ようと促す。
 六人がここから出ようと、戦闘があった部屋に戻ると同時に、偽のカンダタが子分二人を連れて部屋に入ってくる。

「お前ら!? また俺たちの邪魔をしに来たのか!」

 カンダタがアークを指差し怒鳴る。
 アークはタニアとグプタに下がるように言ってから、カンダタに向き直る。

「また会えるとは思わなかったよ。また悪さしてたのか!」

 アークとカンダタが睨み合う。

「以前は負けたが今回は同じようにはいかねえ!
 野郎どもいくぜ!」

 カンダタの掛け声で子分二人は武器を手に持ち、カンダタの横に並ぶ。
 アークの横にカズキとグラッセが並び、応戦の意思を見せる。その背後でアロアが援護できるように集中している。
 少しの間、静かな時間があり、その静寂を破るかのようにカンダタが雄雄しく声を上げアークへと突撃する。
 アークの剣とカンダタの斧がぶつかりあう。甲高い金属音が響き、そのままギリギリと擦れる音が鳴る。剣と斧は拮抗し、二人は間近に睨み合う。そこでアークはカンダタの目に闘志は見つけられたが、敵意を見ることができないことに疑問を抱く。だが戦いの最中に疑問を晴らすための意識を割くことはできず、疑問は心の奥底に仕舞われた。

「少しは腕を上げたようだなっ」
「そっちは以前と変わらずかっ」

 押し切るように力を込められた斧を弾いてアークは下がる。
 大きく息を吸い込んで、一歩前へと踏み込む。再び剣と斧がぶつかり合い、連続して金属音が響き火花が散る。
 以前は押される一方だったアークは、これまでの努力が実を結んだか互角の戦いを見せている。

「本当に腕を上げたようだな! このままだとやばいな。本気でいかせてもらおう!」

 そう言ったカンダタの表情は真剣なものになり、大きく息を吸い体に力を入れる。離れて見ていたタニアとグプタは、もともと大柄だったカンダタの肉体が膨らんだように見えた。
 振るわれる斧の速さが増し、アークをかするようになる。斧が鋼の鎧を削り小さな傷をつけ火花を散らす。受け止めるにはきついかもしれないと判断したアークは避ける。かすっているのは鎧やマントのみで、ダメージを受けてはいない。落ち着いて攻撃を見ることができているのだ。逆に振り終わった隙をついて、少しずつダメージを与えていた。
 そうしてほぼ拮抗した戦闘が続いているうちに、グラッセとカズキは子分たちを倒し、アークへと加勢できるようになる。
 
「劣勢か。こうなれば多少の被害は諦めるしかないな」

 状況を見て取ったカンダタは戦い方を変える。防御を捨てて、攻撃のみに集中し始めた。防御を考えなくなったせいで少なくないダメージを負い始めたが、アークに攻撃を当てられるようになった。
 カンダタはあっという間に血だらけになる。アークは血を流してはいないが、ダメージが皆無かというとそうでもなく、鎧の一部が外れるなど明らかに攻撃を受け始めている。
 それを見て、グラッセとカズキも慌てて参戦する。アークより実力が下な二人は、カンダタの攻勢に押されダメージを蓄積させていく。倒れずにすんでいるのはスクルトのおかげだ。
 二人が身を挺して攻撃対象を増やしたおかげで、アークは余裕を持つことが可能になった。

「少しだけ耐えて!」

 アークの頼みにグラッセとカズキは頷き、防御に専念しカンダタの猛攻を耐えていく。
 一歩下がったアークはホイミで簡単に傷を回復し、ギラを使う準備を始める。
 使うのは新たに練習したギラの魔法剣。

「ギラ!」
 
 呪文を唱えると剣が朱色に光りだす。
 光る剣をアークはカンダタ目掛けて振り下ろす。魔法剣自体は以前見て知っていたので、カンダタは驚くことはなかった。斧を大振りしカズキたちに距離をとらせると、振り下ろされる剣へと斧を力いっぱい振り上げる。
 今日何度目かの剣と斧の衝突が起こる。
 ここでカンダタは目を見開いた。そのまま拮抗するなり弾くなりすると思った斧が剣にぶった切られたのだ。
 同時に剣も折れ曲がる。それにアークは驚くことなく、赤熱が収まりかけている剣を手放す。予想できていたのだ。もともと交換の時期にきていたし、ギラの魔法剣によって剣の寿命が縮むこともわかっていた。
 だからここで駄目になるだろうと予測していた。
 剣を手放したアークの行動に迷いはなく、驚くカンダタの腹へと蹴りを叩き込む。
 防御を捨てていたカンダタはその蹴りで大ダメージを受け、床に沈んだ。追撃としてアークは拳を叩き込み、カンダタを気絶させた。

「勝った!」

 前回は勝ったとはいいきれなかったが、今回はきっちりと勝敗がつき、アークは自身の成長を実感し喜びの思いが心に満ちる。これまでの努力が無駄ではなかったとわかったのだ。
 子分たちはすでに倒れ伏しており、カンダタもこれでダウン。戦闘はこれにて終わりを告げた。
 すぐさまカンダタを縛り上げ、薬草を使って怪我を治す。
 
「戦闘は終わったわけだけど、これからどうしようか。
 俺こいつら運べないぞ? 血が足りなくてふらついているし」

 グラッセと似たような状態なカズキとアークも、彼らを運ぶのはしんどそうだ。
 元気なアロアやタニア、グプタたちでは力が足りない。

「見張りに俺と兄さんが残ってるから、グラッセたちはグプタさんたちを街まで連れ帰って。
 んで警備兵を連れて戻ってくればいいと思う」
「俺もそれでいいよ」

 アークの提案にカズキが同意する。

「じゃあ急いで戻ってくるよ」

 それでいいならとグラッセたちはグプタたちを連れて部屋を出る。タニアとグプタは何度も頭を下げ、感謝を示し帰っていった。
 グラッセたちは警備兵と一緒に一時間ほどでカンダタのアジトに戻ってきた。その頃にはカンダタたちも目を覚ましていたが、特に騒ぐことなくじっとしていた。

「ここからは私たちに任せてください。皆さんはお疲れでしょう。先に街に帰って疲れを癒してください」

 警備兵の提案に従い、アークたちは部屋を出てバハラタに戻る。
 アークたちがいなくなり、戻ってくることもないと確認した警備兵たちはカンダタたちの縄を解き、治療していく。

「お疲れ様でした。薬草はまだ必要ですか?」
「いやもう十分だ」

 薬草を差し出してくる警備兵に、カンダタは必要ないと示す。

「勇者殿はどうでした?」
「上々だろう。成長の早さも申し分ない。仲間も中々の奴らがそろっているし、期待してもいいのかもな。
 まあバラモスと戦うには、さらなる成長が必要なんだろうが」
「そうですか。バラモス討伐に希望が出てきましたね」

 その場にいる全員がこの言葉に頷いた。
 警備兵たちとカンダタたちは一緒にアジトから出て行く。警備兵はバハラタへと、カンダタはロマリアへとキメラを翼を使い帰っていく。
 誰もいなくなった廃墟は数ヶ月ぶりに静けさを取り戻していた。一ヶ月もすれば兵たちに排除された魔物たちが戻ってくることだろう。

ee383 at 23:41|PermalinkComments(3)TrackBack(0) その他SS 

2011年03月21日

ほったらかしすぎた

こちらではお久しぶりです
小説家になろうに投稿するものばかりで、こちらはほったらかし状態になってました
向こうに投稿したことだけでも知らせようと思ってったんですが、うっかり?忘れてて今日まで放置
それでも200人ほど来て頂けてありがたいごとです
今書いてる竜殺し31話を書き終えたら、久々にドラクエ3ss書こうかなと思ってます。たしかイシスまで書いてたはず? ポルトガに行ってダーマバハラタに行って船手に入れて第二部完って感じかなぁ
次の更新がいつになるかわからないし、予定は未定だったりしますが
いまやってるelonaが作業を遅らせる要因になってたりもしますしね
ここで書くと示しておくことで自身を追い詰めようという効果を狙ってたりします
こうでもしないといつ書くかわかりゃしねぇ

ee383 at 20:59|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 日記 

2011年01月10日

感謝の58

感想ありがとうございます

》茄子さん
あの東方ssの感想をこっちでもらえるとは思ってなかったです。ちょっとびっくり
こっちにも載せてたんですね
どんな話か忘れてて読み返してきました
早苗さんいいですよね。好きな東方キャラのトップ5に入ってます

》竜殺しみ読みました! 時間を泥棒されましたが、爽快な気分です! 続編、期待してます!
ももは読んでないので、ネタで返答できない
続きはまだしばらく読めないかと。がんばります


新年明けて、3DSの発売が少しずつ近づいてます
世界樹の迷宮のために購入すると決めました
今から楽しみです





ee383 at 23:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 日記 

2010年12月17日

感謝の57?

ウェブ拍手ありがとございます

》「ハンターハンター 原因となりし者たち」、おもしろかったです!
ありがとうございます。あれを読む人いたのかと思っていたりします

》妹可愛さに家を出た面白かった。続き期待している。
ありがとうございます。自分のペースでがんばってみます

》説明回すぎて読んで面白いと思う場所がないような
これは妹可愛さ~の感想でいいのかな?
ちょいと詰め込みすぎましたかね?


Sound Horizonの新アルバム買いました
一日遅れでお店に行っても、初回版特典つきで買えました
いろいろと驚きましたね
外見とか中身とかボーナストラックとか、まあ全部に驚いたと
曲はいい感じだと思う、まだまだ解釈不足ですが

ee383 at 23:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 日記 

2010年12月12日

久々更新


お久しぶりです
ハードディスクご臨終しました
十年前に買ったパソコンがまだ動くのに、四年前に買ったパソコンが先に壊れるってどうなんだろう? 使ってた環境まったく同じなのに
修理費と新しいウィルスソフト購入で三万円がとんでった。ノートンまだ3ヶ月くらい残ってたのに
それ以上に痛かったのが、設定が初期に戻ったこと。設定元通りにできずに少し使いづらい

修理に出していた間インターネットにつなげられないので、止まってるゲームをやってたり、古いパソコンで新しい小説書いてました
世界樹3のクエストボス狩りしたり、地球防衛軍3で武器集めと体力上げがはかどりました
新しい小説は、小説家になろうに明日にでも投稿予定とりあえず100kb弱ほど推敲完了してます。残り90kb
内容はまたファンタジーで、異世界転生? ハーレム予定、ありきたりですね
現時点でハーレムのハの字くらいしかないですが


》あかさん
返信遅れて申し訳ありません
清涼剤はどうなんだろう? 
以前も書きましたが、ああいった転生者もいるんだろうなと思います
冒険もいいけど、安全志向。いい意味で現実をみていて、悪い意味で消極的


ee383 at 00:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 日記 

2010年09月26日

感謝の56

感想ウェブ拍手ありがとうございます

》棍棒系で上位の武器ってDQにありましたっけ? 打撃系は大金槌くらいしか覚えてないですけど・・・ 回復系はPTに必須ですね、イシス以降で仲間になるのかな?

破壊の鉄球も一応属するのかな? あとは魔神の金鎚
回復役はまだまだですね。さすがに最終決戦では回復役いますけどね
サマンオサあたりだとしっかりとした回復呪文の使い手はいる予定です

》小説家になろうにある「我らの望みはありふれたもの」ですが〜

書く予定あるかもと思って完了設定しなかったんですが、今のところ書く予定はないし設定しとこうか。どうしよう

》キメラの翼って、ある意味反則アイテムですね〜

距離に関わらず短時間で移動できるんですから、チートアイテムですよね
薬草とかも十分なチートアイテムですが

》ヨシオさん

パーフェクトハッピーエンドではないですけど、ある程度いい結果がでるとわかってるから、手出しを控える転生者もいますよね
目的を達成できてないから、苦労が実ったわけじゃないけど、女の子に囲まれたいという願いは叶ってるから幸せっていえば幸せか。あとは修羅場が起きなければおーけー

》幸谷カケルさん

景が隠れるほどオリジナル設定だったかなと思ったけど、最初からオリジナルの村出したっけ


次からはしばらく竜殺しの更新が続きます、たぶん
次の更新自体は未定、まだ一文字も書いてないですから

ee383 at 22:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 日記 

生まれ変わってドラクエ 17-4

「そろそろ出発しよう。あまり休みすぎるのもね」

 魔物との戦闘はなく十分ほど休んだあと、そう言って立ち上がるアークにつられて、話していたラッドとレシャが立ち上がり、ほかの者も遅れて立ち上がった。
 問題の四階に上がり、中央の部屋へと静かに移動していく。
 アークとエイヤーがこそりと覗き込んだあと、アークがカズキを手招きする。そして小声で頼む。

「一匹だけ種類の違う魔物がいるんだけど、兄さんなら知ってるかもしれないから、覗いてみて」

 カズキは頷き、物音を立てないよう覗き込む。そこにはさまよう鎧と大王ガマと笑い袋がいて、一匹だけ地獄の騎士がいた。数を合計すると十二体。回復役の笑い袋が二体だけなのは運がいいのだろう。
 地獄の騎士を見て、カズキの顔が引きつる。ネクロゴンドの洞窟にいるはずの魔物がここにいるのだ。驚くなというほうが無理だ。それに加えて、ゲームで見た地獄の騎士と違いがあり、四本の剣ではなく、二本の鉄の剣と二枚の鉄の盾を持っている。兜も真新しい鉄製で防御面も考えられた装備だ。ゲームほど簡単に倒せはしないだろう。

「一匹だけの奴は地獄の騎士。ここら辺の魔物とは格が違う。攻撃力の高さ、防御力の高さ、体力の高さに加えて、腕が多いから手数も違うし、こっちを麻痺させる息も吐いてくる」
「つまりあれがリーダー格と考えていいってこと?」
「だろうね。あれより上がいるのは考えたくないな」
「……ちなみに夜叉童子より強い?」
「それはない。あれよりは下」

 だからこそカズキはまだ戦意を保っていられる。夜叉童子がいたら、即座に逃げ出すことを提案していただろう。
 一度入り口から離れ、全員で簡単に作戦を決めていく。
 始めにアロアがヒャダルコで、広範囲を攻撃。そして突入し、アークとグラッセが地獄の騎士へ、ラッドとカズキは笑い袋へ、アロアとレシャは入り口付近で待機、エイヤーはその二人の護衛。
 レシャはマホトーンで魔物たちの呪文を封じ、アロアはいつものように補助に回る。
 カズキとラッドは笑い袋を倒したあとは、大王ガマへ。
 フリーとなったさまよう鎧や大王ガマがアロアたちへ向かってきたら好都合、アークたちを巻き込まずに攻撃呪文を使える。
 決めた作戦はこういった具合だ。
 皆視線を交わし頷き、動き始める。
 アロアがヒャダルコを使う準備を整え、部屋入り口に駆け寄る。それで地獄の騎士たちはアロアに気づいた。

「吹きすさべ氷牙! ヒャダルコ!」

 部屋の中へと氷弾が飛ぶ。アロアへと近寄ろうとした魔物たちは、ヒャダルコをまともに食らう。ただ全員にダメージがいったわけではない。さまよう鎧が壁となり、落としておきたかった笑い袋は無傷だったのだ。
 すぐに笑い袋からさまよう鎧へとホイミが飛ぶ。地獄の騎士と大王ガマは回復を待つことなく、アロアへと近づく。
 最初の役割を終えたアロアの横をアークたちが駆け抜けていき、それぞれの魔物へと向かっていく。
 
「波動よ、魔を封じなさい! マホトーン!」

 アークが地獄の騎士に斬りかかると同時に、レシャがマホトーンを使った。魔物たちの間を目に見えない波動が走る。大王ガマたちはラリホーを使おうとして、使えないことに慌てた様子を見せている。笑い袋は魔封じの波動を打ち破ったのか、ホイミを使い続けていた。

 大王ガマとさまよう鎧を無視して、笑い袋に駆け寄ったカズキとラッドはその勢いのまま笑い袋を蹴り、ほかの魔物たちから離す。
 部屋の隅へと飛んだ笑い袋を追ったラッドは、鉄の斧を叩きつける。その一撃で倒すことはできず、少しの間ホイミと攻撃の交互が続くが、上手く急所に当たり、倒すことができた。
 笑い袋を倒したあとは、近づいていた大王ガマへと向かっていく。
 カズキは足を止め、ヒャドを放つ。二度ヒャドを使えば倒せると踏んだのだ。そして二度目のヒャドを使っている最中に、背後から衝撃を感じ倒れ込む。ヒャドはやや狙いをそれたが、笑い袋にかすった。それが止めとなった笑い袋は死に消えていった。
 倒れたせいで笑い袋を倒したことを確認できないカズキは、背後から攻撃した者を確認する前に、笑い袋の生死を確認するため、倒れたまま笑い袋がいたところへ視線を向ける。笑い袋が消えていくのを確認して、急いで体を起こし、背後から攻撃した魔物へと振り返る。けれどもそこには何もいない。どこにいったと思った瞬間、今度は頭に衝撃を受けた。
 何事だとパニックになりそうな心を必死に押さえつけ、ふらふらと立ち上がる。痛い頭を手で抑えたカズキは、すぐそばにいた大王ガマを見て、何があったのか察した。
 背後からカズキを攻撃した大王ガマは、その後すぐに飛び上がり頭上から体当たりを仕掛けたのだ。カズキがすぐに振り返っていれば、飛び上がる瞬間を見て攻撃を避けることができていたはずだ。
 薬草を食べて痛みもふらつきもなくしたカズキは、目の前の大王ガマへと棒を突き出す。

 アロア、レシャ、エイヤーは協力して、アークたちが無視した魔物の相手をしている。
 エイヤーはナイフを振るってはいるが、倒せるほどのダメージは与えられていない。さまよう鎧にはまったく無効ですらある。そのことを気にしていない。宣言していたように、倒すことよりも撹乱することに重きを置き、アロアとレシャに近づけないよう立ち回っている。
 レシャはエイヤーが怪我した時に、ホイミをかけることを主に行っている。ほかはエイヤーの攻勢を掻い潜り近づいてきた魔物を杖を使って、突き飛ばすくらいだ。
 アロアは自分を含め、レシャとエイヤーにスクルトを使ったあと、メラでエイヤーに当てないよう魔物を攻撃している。ヒャドを使わないのは魔力節約だ。
 三人とも倒すことよりも耐えることを考えている。もう少しすれば、カズキとラッドが加勢するとわかっているのだ。自分たちで倒してしまおうと考える必要はなかった。ここで全力を尽くすつもりもない。この場が今日の最終決戦場とは限らないのだから。
 そうこうしているうちに、ラッドがさまよう鎧へと斧を叩きつけ加勢し、遅れてカズキが勢いをつけた突きを大王ガマへとぶつける。
 これで取り巻き討伐組の形勢は決まった。

 アークとグラッセは左右から地獄の騎士へと攻撃していた。
 その攻撃を地獄の騎士は上手く捌き、二対一という不利を感じさせない。むしろ優勢だ。攻撃力の高さゆえに一撃一撃が重く鋭い。かするだけでイシス周辺の魔物と同じだけのダメージを与えてくる。さらにはアークたちの攻撃はしっかりと避けたり盾で受け止めるので、地獄の騎士が食らうダメージは少ない。もとからの丈夫さもあって、与えられているダメージは五以下だ。
 不利なのにはアークの攻撃方法が制限されているというのもある。突きがほとんど意味ないのだ。
 当たり前だが地獄の騎士は骨の魔物で、肉はない。だから突いてもきちんと狙わないと骨の間をすり抜ける。頭部や骨盤といった狙いやすい箇所を狙えば命中させやすいが、地獄の騎士もそれはわかっている。狙う場所がわかっていれば、防ぎやすいのだ。
 そうなると自然と突きは使う回数は減り、斬り薙ぎの二種類を多用し、戦いの幅が狭まるのだ。
 すでに二人が使った薬草は三つずつ。地獄の騎士は回復手段を持ってはいないが、このままでいくと地獄の騎士の体力が尽きるよりも早く二人の持つ薬草と体力が尽きる方が早い。
 二人はカズキが言った、ここらの魔物とは格が違うといったことを身をもって実感していた。

 このままではやばいかなと二人は同じことを考えている。そこへ取り巻きを倒したカズキたちがやってくる。目の前の敵に集中していた二人は、取り巻きが全滅していたことに気づかなかった。余所見する暇などなかったのだ。
 しかし人数が増えたところで優勢になるかというと、そうでもない。一度に攻撃できる人数は限りあるのだ。無理して四人だが、その四人すら地獄の騎士は相手取ることができるとアークは見ていた。それだけ動きがすごい。
 それでもアークは参戦してきたカズキとラッドを止めはしない。手数が増えることは歓迎できることだし、四人相手はさすがに思考に隙ができるだろうと踏んだからだ。

 囲まれた地獄の騎士は四人を一度に相手にしなかった。その場で回転し、剣を振り回す。呼び動作のわかりやすい隙の大きな攻撃なので、囲んでいる四人は一歩下がり無事に避けた。
 この回転斬りは、ダメージを与えることを目的としたものではない。四人を一度自分から離して、一動作分の時間を稼ぐためのものだ。
 回転を止めた地獄の騎士は大きく息を吸い込み、四人が攻撃する前に自分を中心にやけつく息を吐いた。前方に吐いたわけではないので、広範囲に効果が及ぶということはなく、アロアたちにまでは届かなかったが、囲んでいた四人はまともに息を浴びた。

「っ!?」

 やけつく息を浴びたカズキは、目の痛み、鼻と喉の奥に痛みに動きを止めた。すぐに目に涙が滲み視界が悪くなる。誰かが咳き込む声も聞こえてくる。
 これがやけつく息の効果かと、満月草を使った薬を取り出そうとポケットを漁る。
 そうしていると歪んだ視界に影が差す。そして次の瞬間顔に重い衝撃を受けて床に仰向けで倒れこんだ。意識が朦朧として体に力が入らず、しばらくは倒れたままとなる。
 
 カズキを殴ったのは、当然地獄の騎士だ。やけつく息で四人の動きを止め、各個撃破を企んだ。
 最初に一番弱そうなカズキを盾で殴り、次に防御力の低そうなグラッセを袈裟斬りにし、最後にラッドを蹴り飛ばした。
 グラッセは胸部を斬られ気絶、早くホイミをしなければ出血多量で死んでしまう状態だ。ラッドは鎧の上から蹴られたにもかかわらず、あばらにひびが入る。こちらは気絶まではいっていないが、意識が朦朧としている。
 欲を言えばアークにも一回斬りつけたかった。だがやけつく息のアドバイスを聞いていて、咄嗟にマントで口と鼻を押さえ対処していたアークには、手を出すのは難しかったのだ。
 
 地獄の騎士とアークの一対一の戦いが始まる。
 エイヤーとレシャは三階から上がってきた魔物に気づいて、足止めをしている。アロアはスカラをアークに使った後は、なにか思案していた。
 状況は地獄の騎士有利だ。やけつく息の大部分を防いだとはいえ、アークの目は涙が滲んでいて、視界が良いとはいえない。その状況で、二対一でどうにか持っていた戦いを有利へは持ってはいけなかった。
 あらゆる角度から襲い掛かる剣を、アークは剣と盾を使って防ぐことで精一杯だ。反撃の機会など掴めない。
 スカラのおかげで大ダメージは受けてはいないが、体中小さな切り傷でいっぱいになっている。じりじりと減っていく体力を自覚し、焦る心を抑えつけ機会を待つ。
 倒れている誰かが起きてくることが反撃の機会に繋がると考えている。だが未だ誰も起きてこない。

「くっ」

 このままでは薬草を使う暇もなく、体力が尽きてしまうと思っていた時、背後から強い魔力を感じた。

「アークさん! 左右どちらでもいいので、避けてください!」

 強いアロアの声に、半瞬迷い従った。
 左へと飛びながら、ちらりと視線をアロアに向ける。見えたのは両方の手にそれぞれメラを出していたアロアの姿だ。
 そのままアロアは両手を胸の前に持っていき、一つになった炎の塊を地獄の騎士へと押し出した。
 未完成の技術故に、アロアの両手は自身の呪文で火傷を負っている。それでも発動は成功させた。

「合体呪文メラ!」

 メラの倍以上の大きさとなった炎球が、地獄の騎士へと迫る。
 真っ直ぐ迫るそれを地獄の騎士は避けようと動き、半歩動いたところで止まってしまう。
 地獄の騎士の動きを止めたのは、どうにか意識をはっきりとさせたラッド。痛む体を押して、斧を投げつけ地獄の騎士の動きを止めたのだ。エイヤーが模擬戦でナイフを投げ、カズキを戸惑わせた場面を思い出し、咄嗟に投げたのだった。
 止まった地獄の騎士の右上半身に、合体メラが命中する。
 アロアの攻撃は、今日一番の大ダメージを与えた。それ以上の成果が、右腕二本を奪ったことだ。合体メラが直撃した部分は黒く焼け焦げ、地獄の騎士が腕を動かそうとすると砕けたのだ。

「おおおぉっ!」

 剣と盾が床に落ちた音を、アークの叫び声が掻き消した。
 これが待ち望んでいた機会だと、アークは地獄の騎士へ突っ込んでいく。体力は薬草で回復させていて、怒涛の勢いで剣を振る。
 突然二本の腕が失われたことで動揺している地獄の騎士は、上手く体のバランスが取れないこともあり、アークの攻撃を捌けず食らっていく。

 やがてアークの剣は地獄の騎士の首を捉えた。
 斬り飛ばされ地面へと落ちた頭蓋骨。天井へと向けられた地獄の騎士の目は、突き立てられようと迫るアークの剣を捉え、それが最後の映像となった。
 意識が消え行く最後の瞬間、地獄の騎士は自身の仇討ちを夜叉童子へと願う。
 それを感じ取ったのか、兵たちと魔物の衝突を上空から見ていた夜叉童子はピラミッドへとわずかに黙祷し、目的は果たしたと眼下の衝突結果を見ることなく飛び去った。
 魔王軍にとってはジパング乗っ取りが失敗した今、イシス侵攻は成功させたいことだった。けれども夜叉童子個人にとってはたいして興味のないことだったのだ。
 夜叉童子が力で抑えつけ、もともとしっかりとまとめられているわけではなかった魔物たちは、夜叉童子がいなくなったことで好き勝手に動き出す。空から発せられていた、夜叉童子のプレッシャーがなくなったことを敏感に感じ取ったのだ。
 戦いを継続するもの、逃げるもの、倒れた兵を食べ始めるもの。本当に自由な行動を取り始めた魔物たち。
 すべての魔物が攻めていたこれまでと違い、戦う数が減り兵たちはここが雌雄を決する転換期だと、疲れた体に鞭打ち魔物に各々が持つ武器を叩きつけていく。
 これで状況はイシス勝利へと傾いた。夜叉童子が戻ってこないかぎりは、逆転の目もない。
 たった数時間ではあるが、戦争と呼べる戦いは徐々に終わりに近づいていた。

 終わりはピラミッド内も訪れている。いやこちらの方が一足早いか。
 薬草を使い回復したラッドが、エイヤーたちに加勢し魔物たちを倒す。
 部屋にはあちこちに金貨が落ちており、それが戦闘の終わりを告げていた。
 アークがカズキを、アロアがグラッセを薬草で回復していく。グラッセは治療が間に合い、死ぬことはなかった。ただ血が足りず、今日はもう戦えない。
 誰もが床に座り込み、激しかった戦いの疲れを癒す。

「終わったんだよね?」
「ああ、リーダー格は倒した」

 はりのないアークの問いに、同じくはりのない声でグラッセが答えた。

「あとは魔物を生み出すなにかを、どうにかしないとね」

 カズキの声に、地獄の騎士と戦った者たちの表情が歪んだ。このまましばらくは動きたくないのだ。

「気持ちはわかるけどね。それも頼まれたことだからやらないと。
 たぶんこの魔法陣を消すなり、一部を削るなりすればいいと思うよ」
「魔法陣?」

 ラッドが首を傾げている。
 そのラッドに、カズキは人差し指を床に向け示す。
 全員の視線が床に向かう。床一杯に黒い文字が模様を描くように書き込まれていた。
 本来ならばここには宝箱が置かれていたはず、それらがないことをカズキは不思議に思い、戦う前に床を見て魔法陣を発見していたのだ。

「これが魔物を生み出していたなにかで間違いないんですか?」
 
 レシャがカズキに聞く。

「こんな文字を俺は知らない。
 情報の集まるところで働いていた俺だから、古今東西の文字は見たことあるんだ。ワインボトルとかに使われてるからね。
 そんな俺が知らない文字で描かれた陣って怪しいと思わない?」
「そうかもしれませんけど、偶然知らない文字って可能性もありますよ?」
「うん、そうだね。だからこれをどうにかしたあとも、念を入れて探す必要はあると思う。
 ようは怪しい物を一つ潰せたって、少し安心していいんじゃないかなってとこ」
「……たぶんこれで間違いないと思う」

 床に手を当てた格好でアロアが言う。呪文の扱いに長けたエルフとなっているアロアは、陣を流れる魔力が地下へと向かっているのを感じ取ったのだ。
 アロアは、陣の効果が地下に作用していると説明する。
 エルフだと知っているアークたち三人はそれで納得するが、事情を知らないラッドたちは未だ納得できないでいる。
 ラッドたちを手っ取り早く納得させるため、アロアはフードに手をかけ、グラッセが止める間もなく外した。

「エルフ?」
 
 ラッドたちの声が重なる。
 再びアロアはフードを被る。

「エルフが呪文に長けているのは知っているでしょう?
 そのエルフが陣の魔力を感じ取り、魔力が地下に向かっていると言っているのだから、納得できませんか?」

 アロアの言葉にラッドたちは反応を見せない。突然現れた、イシス女王に匹敵しようかという美貌に驚き見惚れたのだ。
 聞いてなかったのかとアロアは小首を傾げる。

「……顔を隠していたのは容姿が目立つから?」

 レシャの問いにアロアは頷いた。

「それだけ綺麗なら顔を隠すのも分かる気がする。
 ご両親のどちらがエルフなの?」

 ハーフだろうと思い、物珍しさから聞く。
 グラッセが人間ということに気づいていないからこその質問だ。アロアがハーフならば、グラッセもハーフでなければおかしい。だがグラッセはエルフの要素を感じさせない。
 ここに気づいていれば、この質問の違和感に自分で気づけただろう。

「事情があって、その質問は答えられないの。ごめんなさい」
「他人が家庭の問題に踏み込むべきじゃなかったわね。こちらこそ軽率でした」

 互いに頭を下げる。
 その二人の会話を聞きながら、カズキは棒の先で魔法陣の一部を削ろうとして止まる。素人が手を出していいものかと思い、止まったのだ。
 
「アロア」
「なんです?」
「この魔法陣を止めるのって、どこか一部分でも消せばいい?」
「ごめんなさい、勉強不足でそういったことはわからないんです。
 消すなりすれば、おそらく正常な運行は行えなくなるとは思いますけど」
「下手に触ると暴走して、ガイコツが生み出される速度が上がる可能性もあるか。
 エイヤー」
「なんだ?」
「イシスに呪文を研究する人っている?」
「いるぞ。
 そいつらに解析させて止めた方が安全だと思うんだな?」

 カズキは頷いた。
 エイヤーは少し考え、同じ結論に至る。

「俺もカズキと同じ判断だ。誰か今すぐ対処した方がいいって奴はいるか?」

 この問いに皆、首を横に振る。満場一致で触らないということなる。
 そう決めて上階へと向かったアークたち。その一時間後、魔法陣は動きを止めた。アロアがいればわかったことだが、魔法陣を動かしていた魔力が尽きたのだ。
 この魔法陣は、夜叉童子が一日二回魔力を注入することで動いていた。その夜叉童子がいなくなり、補充がされなくなったことで動きを止めた。
 アークたちは屋上からキメラの翼でピラミッド入り口に移動したことで、このことに気づかなかった。
 おかげで、エイヤーの案内でやってくる研究者たちは無駄足となるのだった。

 ピラミッド入り口から勝敗が決した戦場を見るアークたちは、朝にあった兵たちの戦意の高さの代わりに、濃い血肉の臭いを感じ取り顔を顰める。
 人と魔物の血がどれほど流れたのか、アークたちには多く流れたのだろうとしかわからない。
 ピラミッド探索が終わったら、戦場に向かおうと思っていたアークは狂気が含まれる初めての雰囲気に飲まれ、行く気が起きない。そしてほかの者たちもアークと同じ思いだ。

「陣地に戻ろう」

 こうアークが言った時、あきらかに皆ほっとした表情となる。
 一行はキメラの翼で陣地に戻り、司令部のあるテントに向かう。
 報告があると門番役の兵に伝え、補佐役を呼んでもらう。けれども出てきたのは見知らぬ人だった。

「補佐役さんはどうしたんですか?」

 ここにいるはずの補佐役が出てこないことにアークは疑問を感じ聞いた。

「戦いが始まった頃から姿が見えないのですよ。
 なにか問題があって王都に戻ったか、戦いに巻き込まれたかと考えています」

 死んだかもしれないと告げられて、アークたちは沈んだ表情となる。

「ご用件は代わりに私が聞くことになります。
 連絡事を聞かせてもらえますか?」
「リーダー格と思われる魔物を倒しました。それとイシスの先祖を魔物と化していた魔法陣を四階で発見、暴走の危険も考慮して手は出さずに戻ってきました」
「リーダー格の死亡は、魔物たちの統率がなくなったことから推測できていました。おかげで戦いが楽になったようです。
 魔法陣の処理はこちらで受け持つと判断してよろしいですね?」
「はい」
「わかりました。女王にそのように伝えて、素早い対処を願っておきます。
 ではこれであなた方に託した仕事は終了と判断させてもらいます。
 お疲れ様でした。休息を望むのならば、キメラの翼で王都に戻ったほうがいいかと。ここは後処理で騒がしくなり、落ち着いて休めないと思いますから」

 失礼しますと一礼し、男はテント内に入っていった。
 アークたちは話し合い、すぐには帰らず、日が暮れるまで怪我人の治療を手伝っていくことにした。
 ホイミや薬草を使い、魔力と在庫がなくなると包帯を巻いたりできるかぎりで治療を手伝っていく。
 夕暮れが近づくにつれ、徐々に兵たちが戻ってくる。未だ元気な者、疲れ果てた者、大怪我をしている者、死者となっている者、様々だ。その誰もが血と砂で汚れ、荒々しい雰囲気を纏っていた。
 日が暮れアークたちが帰った後も、兵たちは休むことなく動き続ける。
 野ざらしとなっている兵の死体を、陣地に運ばなければならないのだ。ほうっておくと魔物や獣に食べられてしまう。
 兵たちが優先するのは五体無事な死体だ。欠損が多いと生き返ることはできない。
 腕一本なくなっている程度ならば教会で蘇生可能なのだが、首が胴から離れていたり、あちこち食い散らかされ欠けた箇所が多いと教会では蘇生はできない。そうなった場合でもザオリクやザオラルの使い手がいれば、蘇生は可能だ。ようは死後の経過時間が問題となっていると、世の学者は言っている。
 今回の戦いで死んだ者は半数以上が蘇生不可だった。戦いを放棄して、食欲を優先した魔物がいたせいだ。
 死が決定した死体は一ヶ所にまとめられ、朝方火葬された。その火葬はイシス兵だけではなく、傭兵も混ざっている。国許の墓地に葬ってあげたかったのだが、判別不可能な死体もあり、一緒に燃やしたのだった。
 夜が明けると、今度は死体の代わりに、落ちているゴールド集めが始まる。
 それが終わり、ようやく兵たちはイシスへと帰って行った。

 王都に帰り一夜明け、昼前まで寝ていたアークたち四人はようやく動き出す。
 一緒に帰ってきたラッドたち三人は、宿に泊まらず城に戻っており、ここにはいない。

「アーク? なにしてるのさ」

 起きてすぐに着替えだしたアークに疑問を抱いたカズキ。

「城に行こうと思って。帰ってきたこと、魔法の鍵をもらったことを報告に行ってくる。
 一緒にくる?」
「行かない」
「だと思った。
 魔法の鍵持ち出したって証明するために持っていくよ」
「了解。いってらっしゃい」
「いってきます」

 ベッドの中から動かないグラッセとアロアを気遣ってか、静かに扉を開け閉めしアークは出て行った。
 カズキはベッドに上にあぐらをかき、小さく鳴った腹を押さえる。

「腹減ったな……食堂でなにか食べよ」

 カズキも手早く着替え、財布をポケットに入れる。

「グラッセ、アロア、食堂に行かない?」
「行きます」
「俺はちょっと起きれない。軽いものでいいから持ってきてくれ」
 
 昨日血が流れすぎたグラッセは、いまだに体がふらふらとしていて動き回るのは難しかった。
 カズキはわかったと返答し、アロアが着替えるため部屋を出て、扉の前で待つ。
 二人は抜いた朝食の分も合わせて、多めに注文する。
 食べ終えた二人は、グラッセの料理を持って部屋に戻る。二度寝していたグラッセを起こし、持ってきた料理をベッドの上に置く。
 慌しかったここ数日と打って変わり、のんびりとした雰囲気に包まれ、三人はわずかに残る疲れを癒していく。

 城に上がったアークはそれほど待たずに謁見室へと通された。
 
「報告は届いていますよ。お疲れ様でした。
 無事、魔法の鍵も回収できたようですね」
「はい、ここに」

 得たことを示すため、ポケットから魔法の鍵を取り出す。
 それを見て、女王は頷いた。

「ほかに種などの道具も得たようですが、それも持っていってかまいません。
 旅の役に立ててください」
「ありがとうございます」

 アークは深々と頭を下げた。
 ピラミッドで手に入れたのは、賢さの種と素早さの種、小さなメダル三枚。
 魔法陣のあった部屋に、本来ならば置かれていたはずの宝箱はその形跡すらなかった。このことを知っているのはカズキだけで、魔物に持ち去られたのだろうと一人で納得し、誰かにそのことを言うことはなかった。

「宰相、用意していたものをこちらに」
「はい」

 女王の呼びかけに応え、宰相は近衛兵に持たせていた盆を持って、アークに近づく。

「この度の働きに対する褒賞です。どうぞお受け取りください」
「どうぞ」
「いいのですか?」

 褒美目当てで参戦したわけではないし、すでに魔法の鍵を得ているので、アークは褒美を貰うことに躊躇いを覚える。
 女王は微笑みを浮かべて頷き、ほかの者たちも反対といった表情は浮かべていない。
 もらったものを後で確認すると、街や城で手に入るアイテムと二千ゴールドが入っていた。星降る腕輪も入っていて、価値を知っているカズキと価値を教えられた三人は本当に受け取っていいのか、少し悩むことになる。
 結局役に立つので、旅をする間借りておこうと決まり、グラッセが装備することになった。
 
「ありがたくいただきます」
「ええ、そうしてください。
 さらに授けるものがあります。サークレットをこちらに渡してもらえますか?」

 女王に従いアークはサークレットを女王に渡す。
 女王がサークレットの宝玉に指を当てた場面に既視感を覚え、すぐに思い出した。ロマリア王がアークを勇者と認めた時と同じなのだ。

「この度の活躍を持って私イシス女王は、アークを勇者と認めます!
 精霊よ、イシスを治める命を受け取りし人間が請う。ここに勇者あり、私はこの者を認める。ゆえに古より伝わりし力の一つをこの者に授けたまえ。*****」

 儀式を終え、女王は王座から立ち上がり、サークレットをアークの頭に被せる。この場にいる全員が大きく拍手をして、勇者と認められたことを祝う。

「ありがとうございます!」
「これでトヘロスという呪文が使えるようになります。詳しいことは精霊から教えてもらえるはずです」
「ロマリアでも同じように呪文を授かったので、その辺は理解しております」
「そうでしたか。
 この後はポルトガに向かうのでしたね」
「はい。船が手に入ればと思いまして」
「旅の無事を祈っています。余裕があれば再びイシスを訪れてください。歓迎しますよ」

 そっとアークの頬に手を当て微笑を浮かべて、女王は玉座に戻る。

 これでアークたちがイシスですることはなくなった。
 一日休息を取った四人は、ラッドたちに見送られてロマリアへと飛んだ。

 一行が去っていくらか経った頃、ピラミッドへ巡回に向かう兵が補佐役らしき死体を発見した。
 なぜか魔物や獣に食い散らかされることなく干からびていた死体は、服装や身体的特徴から補佐役と断定された。
 死因は強力な呪文による殺人。
 それ以上の情報は得られず、誰がなぜ殺したのかさっぱりわからないまま、火葬されピラミッドへと葬られた。
 
 実のところ、補佐役の肉体的な死は呪文によるものだが、精神はそれ以前に死んでいた。時期はピラミッドに魔物が集まる少し前だ。
 補佐役は夜叉童子にスパイ役として見初められていた。精神を壊され、怪しい影が体を操り、イシスの内部情報を夜叉童子へと送っていた。
 アークたちがピラミッドへ向かったあと、補佐役は夜叉童子にそのことを知らせに向かった。そして情報を受け取った夜叉童子は、用済みとして怪しい影ごと補佐役を殺したのだった。
 死体に怪しい影の気配が残っていたため、食い散らかされずにすんだ。
 これがアークたちの知らないところで起きた出来事だ。そして今後誰にも知られずに消えてく出来事でもある。


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2010年09月25日

生まれ変わってドラクエ 17-3

 朝靄が漂う街中で、兵士や傭兵が忙しなく動いている。
 日が出て幾分も経っていない今は肌寒く感じられ、そのおかげで多くの者の眠気がとんでいた。
 普段ならば活気があるとはいえない時間帯である今も、今日ばかりは戦意高い者たちが多いことで、静かとはいえない。
 アークたちも雰囲気を出している者たちの一部で、わずかに緊張と興奮を漂わせながら歩いている。

「おはようございます」
「皆さん、おはようございます」

 人の多い兵舎の前に立っていた補佐役を見つけたアークが声をかける。
 
「ラッドさんたちは?」
「彼らは出発する少し前に合流しますよ」
「俺たちはここで待っていればいいのか?」

 グラッセの言葉に補佐役は首を横に振った。

「もう三十分もすれば街外に移動するよう指示がでますから、それにあわせて移動してもらいます。
 そのあとは女王様のお言葉をもらい、出発となります」

 やることがないので、三十分ほど待ちぼうけとなる。その時間をアークたちは雑談で潰していく。
 昼間のように炎天下ということもなく、三十分ほどならばなんの問題もなく待つことができた。
 三十分経つとあちらこちらから、兵士たちが街正面入り口に向かうように指示を出し始めた。
 アークたちも補佐役の案内で動き出す。
 王都正面入り口には百以上のラクダがいて、犬ぞりのように砂上を滑ることができるようにそりをつけた荷台がたくさんある。ラクダにそりを引かせるのだ。二頭で一台のそりを引くことになっている。荷台には食料などが載っていた。
 兵士たちは声を張り上げて、兵士と傭兵を右と左にわけている。そして整列するように指示を出していた。
 アークたちはその列に混ざらず、司令部に案内される。

「皆さんはここで話を聞いてください。
 私はちょいと仕事をしてきます」

 そう言って補佐役は、話し合いをしている偉そうな兵士たちに混ざる。
 再び暇になったアークたちは、周囲の話し声を拾って情報収集をしている。

 そうして一時間弱ほど経った時、人々のざわめきが大きくなった。女王が到着したのだ。
 女王は櫓の上に立ち、眼下にひしめいている兵士と傭兵を見る。彼らに頼もしさを覚えると同時に、今後の財政のことを考えると少し頭が痛くなる思いもある。魔物を倒して得られるゴールドに期待するところだ。
 女王が地上の人々を見ているのと同ように、兵士や傭兵たちも頭上にいる女王に気づき見上げている。そして多くの者が女王の美貌に感嘆の声を漏らしていた。
 この場に集まった人数は、戦闘要員と非戦闘要員を合わせて優に六千を超える。割合としてはイシス関係者が三で傭兵が七だ。イシス側の兵士の数が少ないのは、街と城を守るために残しているからだ。全兵力をピラミッドに向かわせて、その間に街を魔物に攻められでもしたら目を当てられない。
 家臣たちの話し合いでは、そこまで高い知恵を持った魔物はここらにいないので、もう少し守備兵を減らしてピラミッド攻めの方にまわしてもいいのではという意見もあった。
 だがそれは結局通らなかった。女王が、ピラミッドに集結するという今までにない魔物たちの行動を指摘し、低い可能性かもしれないが街攻めもあると述べたためだ。
 街を守るのは兵士のほかに民から募った義勇兵もいる。傭兵たちは全てピラミッド攻めに参加となっている。
 街を守るのは自分たちの手でという考えと、戦いに慣れていない民を遠征に出しづらいからそうなったのだが、傭兵は捨て駒といった考えも小さく小さく囁かれていた。
 なるべく国力は落としたくない。隣の家の人間が死ぬよりは、遠くの人間が死ぬ方がいい。そういった思いが囁きを生み出したのだろう。
 無論傭兵もそういった考えがあるのは理解している。自国を守るといった立場になれば、同じように考えるだろうとわかっているからだ。
 それがわかってここにいる者がほとんどなので、そういった言動が表立ってでないかぎりは報酬分だけ働く考えだ。
 司令部が傭兵たちに、命をかけて囮になってこい玉砕して来いといった無茶な命令を出した場合はいつでも離脱する準備がある。多くの傭兵が離脱用のキメラの翼を懐に忍ばせている。
 といっても急に戦力が減って困るのはイシス側なので、無茶な命令は出さないだろう。出してもよほど追い詰められた時だ。そんな状況になれば傭兵だけではなく、兵士たちにも無茶な命令が出されるはずだ。

「勇敢なる兵士たちよ。よく集ってくれました」

 櫓に立つ女王が口を開いた。大声とは言わないが、それでも全員が女王の声を聞き漏らすことはなかった。聞き逃せない力があった。
 全員の注目が集まったことを確認し、女王は続ける。

「そして傭兵の方々は初めまして、イシスの女王エリアと申します。
 この度は私たちの戦いに力を貸してくださり、とてもありがたく思います」

 まずは礼を述べ、次に目的と行動予定を述べていった。
 
「皆が無事、この戦いを乗り越えることを切に願い、再び笑顔で会えることをここ王都で祈っています」

 最後に激励の言葉を述べた女王は深々と一礼し、もう一度集まった人々を見渡して櫓から降りていった。
 次に軍団長が櫓に上がり、指示を出していく。
 兵たちは縦四列で、ピラミッドを目指し歩き出した。
 自分たちも出ないと、と考えているアークたちにラッドたちを連れた補佐役が近寄る。

「私たちは最後尾です。もう少しだけ待ってください」

 アークたちが聞きたいことを予測していた補佐役が、これからの行動を告げた。
 それに従い、アークたちは兵たちの移動を眺めて待つ。
 そのアークたちに女王が近づいてきた。勇者の仲間の顔を見るという目的を果たすため来たのだ。

「勇者の仲間の皆様、この度はイシスの戦いに付き合いくださり、ありがとうございます」
 
 会うことはないと思っていた女王を間近にして、カズキ、グラッセ、アロアは動きを止めている。
 
「どうかされました?」
「……はっ!? 女王が俺たち一般人に声をかけてきたので驚いてしまいました」

 前世の感覚で、王といった存在への敬意が他の者よりは少ないカズキが最初に我に返る。

「そうでしたか。
 ですが、自国の民でもないのに手を貸してくれるのですから、労って当然だと思いませんか?」
「王としてはどうかわかりませんが、人としてそう思うのは当然かもしれませんね」
「王でも必要があれば、市井の者に会い声をかけ頭の一つも下げますよ」

 自国の平穏を願う王として、国を助けてくることを感謝する個人として、両方の面から礼を言ったのだ。
 
「変なプライドに凝り固まっているより、接しやすいですね。
 っと接しやすいからといって、あまり砕けては駄目でした。
 無礼を謝ります」

 気になさらずと返答し、女王はラッドたちへと視線を移す。

「あなたたちも気をつけて。
 勇者たちへの協力を惜しまず、任務を果たしなさい」

 直接声をかけられたことにラッドたちは感激し、片膝をついて敬意を示す。
 女王は軽く一礼したあと、護衛と一緒に王都へと帰って行った。
 女王がいたことで緊迫していた空気が緩み、その場にいた全員強張っていた体から力を抜く。
 二十分後に列の最後尾が動き出し、アークたちも歩き始める。その後ろを荷台を運ぶラクダたちが並び歩いていた。
 
 行軍は一日二日と予定通りに進む。途中で散発的な魔物の襲撃はあったが、極少数だったためピラミッドに集っている魔物たちとは別件で偶然遭遇しただけと考えられていた。
 女王が今回の魔物の行動は計画的である、と指摘したことを軍の高官たちは軽視していた。
 兵士たちは実際に魔物と戦い、イシス周辺の魔物たちのことをよく理解しているという自負がある。だから現場には出ない女王の言葉を軽んじてしまっているのだろう。
 通常ならば兵士たちの考えが正しいのだが、今回ばかりは女王の判断が正しかった。魔物たちの行動に対する先入観がないがゆえに、変化を見落とさなかったのだ。
 散発的に襲ってきた魔物は、上の指示によって軍隊を観察しにきていた。軍隊がイシスを出発したことは、イシスに潜り込んで猫に変化していた魔物によって、知らされていたのだ。この猫はゲームにも登場するが、カズキはその存在をすっかり忘れていた。覚えていても役割がスパイだとは思ってもいなかったのだが。
 戦闘から逃げることができてピラミッドに戻っていった魔物によって、ピラミッドにいる夜叉童子は、軍の規模、行動速度などなど貴重な情報を手に入れることができ、これからの行動を決めることができた。
 そして夜叉童子は早速魔物を動かした。

 二日目の夜。皆が寝静まった頃、見張りくらいしか起きていない時刻、半月と星と雲が浮かぶ暗い空をいくつもの影が飛ぶ。
 羽ばたきが聞こえないくらいには高い位置を移動しているせいで、眠気と戦うことに気を取られがちな見張りたちは気づけない。そのもう一段高い位置を夜叉童子が飛ぶ。彼らが兵たちのキャンプ地上空に来た時、夜叉童子は止まり、メラを上空へと飛ばし、キャットフライと人食い蛾の混成部隊に合図を送る。
 合図を受けた魔物たちは、これから味わうだろう人間の血と肉の味に舌なめずりしながら、次々と急降下していった。
 バサバサと多くの羽ばたきに見張りが気づいた頃にはもう遅く、魔物たちはなんの準備もできていない兵たちに喰らいついていった。
 眠っていた兵たちは、あちこちから上がる悲鳴で叩き起こされた。
 状況は、ただやられる者、声を張り上げ指示を出す者、武器を手に応戦する者、戸惑うだけの者と様々な様相を見せている。
 混沌とした状況は、魔物たちが引く三十分間続いた。
 魔物たちが去ったあと残ったのは、むせるほどの血の匂いと助けを求める声と助けるために動く者の声。

 この状況でアークたちが巻き込まれないはずもなく、彼らも悲鳴で起きて戦いに参加していた。
 アークたちに特に酷い怪我はなく、手持ちの薬草一個使えば十分だった。
 武器を収めて、怪我人の治療を手伝うために動き出す。そんな彼らに慌てた様子で補佐役が走りよってきた。補佐役はすでに治療したのか傷一つない。服に汚れがないことから、上手く戦いを避けることができたのかもしれない。

「皆さん! 無事ですか!?」
「怪我はしたけど、薬草で十分治療できましたよ」

 アークの返答に、補佐役は心底ほっとしたような様子を見せる。

「そうですか、それはよかったです」
「兵士たちの被害ってどれくらいですか?」
「私も全部を把握はしていないんですが、死者も出ています。
 飛べる魔物を中心として大群で奇襲をしかけくるなんて……予想外もいいところですよ」
「明日の出発はなしで、部隊のまとめなおしかな?」

 カズキの言葉に補佐役は頷いた。

「ええ、そうなるでしょう。
 死者はイシスへと送り返し、その付き添いに多くの兵が行く必要があるだろうし。
 最大で四分の一くらいは人数が減ると思いますね。
 まったくピラミッドに着く前に戦力が減るなんて、幸先が悪すぎます」

 大きく溜息を吐いた補佐役は、仕事があるからとアークたちから離れていった。
 アークたちは治療の手伝いを再開し、適度なところで切り上げ、再び眠りについた。
 騒がしい夜が明けても忙しさは変わらず、兵たちの疲れは取れていないと一目でわかる。再度襲撃の可能性もあるので、気を抜くこともできない。
 陣地のそこかしこに血の染み込んだ砂も見える。
 軍隊上層部は各隊に今日は進まず、ここに留まると通達し、休める者から休むよう状況を整えていった。
 上層部の頑張りにより、イシスへと引き返す部隊は夕刻前には編成できた。その部隊は編成してすぐにイシスへと戻っていった。これにより死者はもちろんのこと、完治に時間がかかり後遺症が残っている者もいなくなった。
 ここに留まったことで補給部隊が追いつき、彼らをと一緒に帰還部隊を行動させることで、帰還部隊につける守護兵を減らせて、戦力減少を僅かながらに食い止めることができたのは、少しだけ運が良かったことなのだろう。

 こういった予想外の出来事はあったが、予定一日遅れで軍隊はピラミッド近くに到着した。
 遠目にピラミッドが見え、目がいい者でもなくともピラミッドの周囲に集まった魔物たちの影を見ることができる。
 兵たちは魔物の動きに警戒しつつ、陣地を作り上げていく。その様子を魔物たちも見えているはずなのだが、なにも仕掛けてくることはない。魔物一匹近づいてこないことに不気味さを覚えてはしたが、妨害がないことはありがたく、陣地設営は順調に進み、予定していたよりも早く終わった。
 設営を終えてすぐに突っ込むということなかった。本来ならば、補佐役がアークに言ったように軽く一当てしようとしていたのだが、計略を立てられる魔物がいるかもしれない現状ではただ戦力を減らすだけと考えられ、偵察兵を動かすだけに止まっている。急ぎ建てられた櫓には、目のいい見張りが立っており、常に魔物の動向を見張っていた。双眼鏡か望遠鏡でもあれば詳しく観察できるのだろうが、あいにくそれらは世界中には広まっておらず、ルザミかニホンと名づけられた街にしかない。

 アークたちはこれからの行動を決める会議には出ずに、自主的に偵察側に回っていた。
 アークたちが会議に出ないのは、兵たちが話し合うのはピラミッド外での戦いのことだけだからだ。アークは誘われはしたのだが、話し合いの主題を聞いて参加しなくても問題なしと判断し、後から聞くと言って辞退したのだった。

「まったく魔物遭わないね」
「だなぁ。これだけ近づいてんのにな」
 
 偵察に出たアークとカズキが拍子抜けした様子で、周囲を観察している。
 現在地は、陣地からピラミッドを避けて一時間弱ほど北上した小高い砂丘だ。ピラミッドへはここから十分も歩けば到着する。これだけ近づいても二人は魔物に遭遇しない。見つからないように注意して移動はしたが、普通ならば最低でも一回は魔物と戦ってもいいはずだ。
 丘から見下ろせばピラミッド周辺に魔物たちが蠢いている。
 
「兄さん、ここから魔物たちの強さわかる?」
「んー……」

 二人でここに来たのは、カズキのステータスを見る能力で事前に魔物の情報を得るためだ。特に女王から聞いた見たことのない魔物の情報を得たい。
 カズキは目を凝らして魔物たちを見ていく。まだ遠いのかステータスを確認できない。けれども見たことのない魔物とやらの見当はついた。

「(あれってガイコツだよな?)」

 アークに聞こえないよう心の中で呟く。
 カズキの視線の先には、ドラクエ1のガライ南に出てくるガイコツがいた。詳しくいうなら、スケルトンと呼ばれる魔物のそのものだろう。ガイコツの方は衣服を着けていたが、スケルトンは骨のままという違いがある。
 ピラミッドを利用して生み出すには、ちょうどいい魔物だなと納得もしていたりする。なんせ地下には数え切れないほどの骨があるのだから。

「(たしかそれほど強くはなかったはず。変に強化されてなかったらの話だけど……)
 いまいちはっきりしないけど、女王が見慣れないっていった魔物はあの動く骨で違いないはず。
 骨の魔物はがいこつ剣士や地獄の騎士ってのがいるけど、腕の数が違うしね」
「がいこつ剣士は昔勉強した時に聞いたけど、地獄の騎士ってのもいるんだ」
「それなりに強い上に、麻痺させる息を吐き散らすんだとさ。
 そういった厄介な奴とは違って、あれは一対一なら俺でも勝てそうだ。
 ただ死者を使い生み出されたらしいから、攻撃するのはちょっと躊躇いを覚えないでもないかな」

 実際戦うことになれば、死にたくないので攻撃はするだろうが。

「あれが一番強い魔物?」
「いやどちらかっていうと、あれは弱いほうだ。数の多さは厄介だけど。
 一番っていうと、あの色のついた包帯の魔物、あれだ。
 一番体力が高いし、力も強い」
 
 カズキが指差さしたマミーを、アークはじっと見る。

「ほかに注意するのは蛙と袋の魔物。妨害系の呪文使ってくる」
「どんな呪文か正確にわかる?」

 どんなのだっけと記憶を掘り起こし、思い出していく。

「……蛙がラリホー? 袋がマヌーサ、マホトーン。ほかにも何かしてくるって聞いたんだけど忘れたちゃってるよ、ごめん」

 正確には笑い袋が、ボミオスとホイミとスクルトも使ってくる。
 全ての情報がわからなくとも、笑い袋は早めに倒した方がいいとアークは判断した。
 少しでも情報が手に入ったことで良しとして、二人は陣地に戻る。

 二人が戻り、情報を話し合っているうちに、兵たちの会議ではこれからの方針が決まった。
 急造の軍隊なので、細かな動作はできない。それを踏まえて笛と銅鑼で簡単な指示を出すことに決めた。
 予め軍を大人数二つ、少人数一つにわけておき、大人数の方を鶴翼の陣のように配置。少人数の方は陣地の守りだ。
 銅鑼は一回で前進、二回で攻撃を交えつつ後退。三回で守りに徹しつつ後退。笛を一回吹いたら、移動を停止して矢を放つ。二回吹いたら、移動を停止して呪文を使える者が呪文を飛ばす。笛と銅鑼が同時に鳴れば、わきめもふらずに陣地まで撤退だ。
 もっと複雑に動かしたいが、錬度が足りない現状では贅沢は言っていられないと軍上層部もわかっている。
 だから最初の弓と次の呪文で、できるだけ数を減らして、その後のぶつかりあいを少しでも楽にしたと上層部は考えている。
 出陣は明日の朝だ。それまでは守りに徹する。
 そういったことをアークたちはやってきた補佐役から聞く。アークたちの出発も明日になった。戦力が減った現状では、後方撹乱や戦力増大防止といった援助はありがたいのだ。
 予定が変更になりすまなさそうな補佐役に、アークは快く出発変更を受け入れた。
 
「ありがとうございます。
 せめて先日の戦いで使った薬草などの補給はしますよ。どれくらい必要ですか?」
「全員に薬草一つずつで十分ですよ」
 
 そうだろう? とアークは皆に確認し、皆も頷きを返す。
 すぐに用意しますと補佐役は言って、アークたちから離れていく。
 その日は、はぐれている魔物の襲撃すらなく日が落ち、静かな夜が過ぎていった。
 そして出陣の朝が来た。だれもかれもが気合の入った表情で、鎧を纏い、武器を手にしている。
 朝食を取り、準備が整った兵たちは前日に指示されていた配置へと移動していく。
 一方で、人間の活発な動きに反応したのか、櫓に立っていた見張りが魔物たちの動きに変化を見る。魔物たちが一塊のまま前進を始めたのだ。速度的には早歩き程度で、あと二十分もすればこちらの陣地に到着するだろうと、見張りは判断し報告する。
 報告を受けた指揮官は銅鑼一つ鳴らすことを指示し、大きく鳴り響いた銅鑼を聞いた兵たちは前進を始める。
 兵と魔物の距離が、矢の届く手前まで縮まると、笛が鳴り響いた。兵は止まり、弓を持った者たちが矢をつがえる。その四秒後、三千近くの矢が一斉に空へと放たれた。
 そんな光景を誰もが初めて見た。近年他国との戦争など起こっていない。当然大規模な戦いなど経験した者はおらず、このような光景は見られなかった。せいぜいが魔物の討伐で二百を超える矢を一斉に飛ばしたくらいだろう。

「おおーっ!」

 どこからともなく感嘆の声が漏れるのを、アークたちは聞く。カズキも思わず声を漏らした一人だ。
 矢は雨のように魔物たちへと降り注ぐ。密度の高い矢の雨を避けきれる魔物などいない。容赦なく矢は魔物たちに突き刺さった。
 運の悪い魔物は目や喉に命中したり、数本まとめて刺さっていた。
 この先制により、死ぬ魔物も出た。だが数はそれほど多くはない。さらには怪我をした魔物を笑い袋のホイミが癒していき、完全に回復させている。
 結果、多少数は減らせたものの、魔物たちの戦意を高くさせただけとなる。救いは笑い袋のMPを減らせて、ホイミなどの使用回数を削ったことか。
 矢が飛ばなくなり、銅鑼が一つ響く。少し兵たちが動いたところで、笛が二度響いた。
 笛の音が響き終わった瞬間、多くの火球が飛んだ。ほかにもカマイタチや氷や爆発が飛んだが、一番多かったのがメラだ。
 メラ着弾の影響か、砂混じりの熱風が兵たちの間を吹き抜ける。
 呪文の衝突によって起こされた砂煙の向こうから、魔物たちが前進する。弓矢の時と同じ展開でやや数は減ったものの、ホイミにより怪我自体は治っている。
 それを見た兵たちはそれぞれの武器を構えて、雄叫びを上げる。そして間近に迫る魔物たちへと、走りぶつかっていった。

 兵たちの雄叫びはアークたちも聞くことができた。
 迫力のある声は、間近で聞いた魔物たちに物理的な衝撃を持って体にぶつかっていった。

「これが戦場か」

 今までの戦闘とは違った様相に、カズキは驚きに満ちた声を漏らす。
 そこに補佐役がやってきた。

「皆さん、そろそろ出てもらえますか」
「わかりました。
 皆行こう」

 ラッドたちがキメラの翼を取り出し、アークたちが近寄ったことを確認し、空へと放り投げた。
 それを見届け、補佐役もキメラの翼を取り出し、空へと投げた。飛んだ先はピラミッド方面だった。

 移動したアークたちはピラミッドの裏手に現れた。
 正面はさすがに目立つということで、飛ぶ際にこっちを強くイメージしたのだ。
 
「俺が先に行ってくるから、皆はここで静かにしててくれ」
 
 偵察の役割を担当するエイヤーが、そう言って走り去る。
 足跡はあれど、足音はなく、あれならば魔物にも気づかれにくいだろうと皆に思わせた。
 エイヤーの偵察で、外にいた魔物たちの大部分はピラミッドから離れており、ピラミッド入り口には見当たらず、侵入に問題なしとわかった。ただ見張りもいないことから罠の可能性もあると付け加えられた。

「罠でも行かないといけないし、注意して進むってことでいいかな?」

 アークが確認をとり、皆は頷いた。
 エイヤーの先導で、アークたちは入り口まで進む。壁に松明が一定間隔で置かれているのが見えるが、それでも内部は薄暗く視界は通っていない。
 カンテラを持ったエイヤーとアークを先頭に、次にラッド一人、アロアとレシャ、最後にカズキとグラッセが並ぶ。
 天井は低めだが、通路は四人が横並びで進めるほどの広さだ。戦闘になっても十分な余裕がある。
 進むルートは見落としを防ぐため、全ての部屋を見ると決めていた。地下一階は最後だ。今もがいこつが生み出され続けているだろうと予測し、そんな場所に突っ込む気は誰もなかった。それと地図を見て内部を覚えたエイヤーと以前ここに来たことのあるラッドの言により、地下一階には仕掛けを施すスペースはないと判明している。だから最後に回しても問題ないだろうと判断したのだった。
 地下二階はどうなのだろうとカズキは思ったが、エイヤーとラッドはその存在を知らないので、話しに地下二階の話はでなかった。
 どうして他国の者が隠し階層のことを知っているのか怪しまれそうなので、カズキも話すことはなかった。

「お! 宝箱!」

 小部屋にあった宝箱を見てグラッセのテンションが少し上がる。
 だがラッドたちを見て、苦い表情に変わる。イシスの民がいる前で、墓泥棒な真似はできないと気づいたのだ。

「なに考えたのかわかったけど、別に開けていいぞ?」
「いいのか?」

 ラッドが許可を出し、グラッセが驚き嬉しげな表情となる。許可が出るとは思ってなかったのだ。
 
「ラッドさん! 泥棒を推奨するようなこと!」

 レシャが咎めるが、ラッドは気にすることはない。大丈夫だと宥めて、開けてみたらとグラッセを促す。
 レシャの反応が本来のものなのに、にこやかに勧めるラッドに疑問を覚えグラッセは宝箱に触ることを躊躇う。

「開けないのか?」
「なんというか手を出しづらい」
「遠慮なんかしなくていいのに」

 躊躇うグラッセの代わりにラッドが宝箱を開けた。
 グラッセとエイヤー以外が中身を覗き込む。

「から?」

 アロアの言葉にラッドが頷いた。
 空の宝箱を見てカズキは、そういや一階は空っぽの宝箱と人食い箱だけだったかと思い出した。
 エイヤーが宝箱を見なかったのは、空だと知っていたからだ。地図を覚えた時、知らされていたのだ。

「一階は盗掘にあったらしくて、一階にある宝箱は空なんだ」
「だから開けてもいいって気軽に言えたのか」
「その通り」
 
 悪戯気分だったのだろうラッドは楽しげに頷いた。
 その楽しげな表情が、部屋の入り口からした音によって引き締められた。ミイラ男が二体、この部屋に向かってきていた。
 戦闘をあっさり終わらせ、七人は先へと進む。
 空とわかってても宝箱を開けてみたかったグラッセが、人食い箱に触れようとしたのを止めた以外は特にこれといったことはなかった。
 本当に人食い箱なのか疑われたカズキは、離れた位置からヒャドを飛ばして、ダメージを受けて暴れだした人食い箱を指差し証明した。
 人食い箱はそのまま遠くから呪文で倒された。攻撃力が高い要注意な魔物でも、手も足もでない距離から攻撃できればただの動く箱だった。
 二階も隅々まで回って、かしこさの種を手に入れた以外は特別なことはない。このかしこさの種は持ち帰り、女王に承諾を得たらアークに渡されることになった。
 
「リーダー格も魔物を生み出しているようなものも、ここまではなかったね」
「あと考えられるのは四階か地下くらいだな。俺としては四階が怪しいと思う」

 エイヤーは自身の考えを述べる。

「じゃあここを探索した後、少し休みませんか?
 少し疲れてしまいました」

 レシャの提案に皆は頷く。
 目的のものを探すため、隅々まで歩き、その分余計に戦ってきたのだ。外では戦闘が続いているのはわかっているが、一休み入れたかった。リーダーがいるということは守りも堅いだろう。そこに疲れた状態で突入したくもなかった。

「この階にあるのは魔法の鍵だ。
 女王から持ち出しの許可はもらっているので、ついでに持って行こう」
「いいの?」

 アロアの疑問に、エイヤーは頷いた。

「また取りに来させるのも悪いとのこと。遠慮せずに持ち出していいと俺は聞いた」
「じゃあ遠慮なく持っていこう。
 俺が聞いたところだと仕掛けがあって、わらべ歌がヒントになってるんだって?
 まんまるぼたんはおひさまぼたん、だっけ?」

 カズキの言葉にエイヤーは驚いた表情となる。
 仕掛けの解き方は一応国家機密に属する情報なのだ、それを知っているということは、よほどの情報通かコネを持っているのだろうと、エイヤーの中でカズキの評価が上昇した。今までは、戦闘能力がそれなりにある冴えない男というものだった。今は、人食い箱の擬態を見破ったこともあり、観察力の高い情報通だ。

「へーあの歌ってヒントだったんだ」

 聞き覚えのある歌にアークが感心している。

「知っているのなら話は早いな。
 東西に四つのボタンがあって、それを順番どおりに押すと、向こうにある壁が動く仕組みになっている」

 エイヤーが北を指差し、皆の視線が行き止まりの壁に集中した。

「あれが動くんですか?」
「仕掛けを解いたらな」

 レシャの言葉にエイヤーが頷いた。
 では早速解いてみようと、わらべ歌にそってボタンを押していく。最後の東のボタンを押すと、石が擦れる音が聞こえてきた。
 三階と二階を繋ぐ階段に戻り、皆で北を見る。そこにあった壁はなくなっており、台座とそこに置かれている宝箱が二つ見えていた。
 二つの宝箱を空け、一行は魔法の鍵とスタミナの種を手に入れた。

「これが魔法の鍵か。ポルトガに行けるようになるんだね」

 アークは、手の中の鍵をしげしげと見つめる。

「ちょうどいいから、ここで休憩しよ。
 魔物は正面からしかこないから、わかりやすいしね」

 カズキの言葉に皆頷いて、その場に座り込む。
 水で喉を潤し、携帯食料を少し食べたり、雑談したりと思い思いに過ごしていく。
 アークとラッドとレシャは話しながら正面を見張り、グラッセとアロアは魔法の鍵を手にして目的達成に一歩近づいたことを喜び、カズキはエイヤーにどれくらい情報を持っているのか探られていた。カズキは一般市民が知っていてもおかしくなさそうな話を選んでいたが、知らず知らずのうちに一般人が知らないような情報も話して、エイヤーから情報通だと認識を深められていた。

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ee383 at 22:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0) その他SS 

2010年09月11日

感謝の55

感想ウェブ拍手ありがとうございます

》ドラクエの更新、待ってました!イシスでよもやの大規模戦〜
お待たせしました
イシス攻防戦が終わるまでは、ドラクエを優先して書きます
そんなに長くはなりませんから、あと一話か二話で終わりますが

》RPGではほぼパーティ行動なので、大規模戦闘とかありませんからねぇ〜
大規模戦に参加してしまうと、まったく目立たなくなるので、理由をつけてゲームの進行通りになりました
あ、でも初戦だけは参加させて、そこを少し書いてみるのもいいかもしれませんね

ee383 at 18:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 日記