2010年02月
2010年02月23日
2010年02月19日
感謝の42
感想、ウェブ拍手、誤字指摘ありがとうございます
》通りずがり
ありがとうございます
》あ〜あのモシャス実験の被害者だったのですか、影響がこんなところに・・・でもカズキたちとパーティ組むことになったのはもうけものか? 個人的にはエルフに変身はやってみたいですね、寿命伸びそうだし。
パーティを組むことで解決への道が開けたので運は良かったです。でもトラブルにも巻き込まれるという
アロアの場合は望んでいないのに変身ですからね、顔も年も種族すらも違ってはじめはすごく混乱していました。性別すら違っていたら、どうなっていたか
》「生まれ変わってドラクエ 12」に突如出てきた"幸助"って誰のこと?
別の小説と混同したようで、修正しときます
》「樹の世界へ」の28話以降が見えません
こちらは見えたんですが、なにが原因なのでしょうか?
2010年02月09日
生まれ変わってドラクエ 12
金の冠を取り戻したカズキたちは塔を下り、キメラの翼を使ってロマリアへと戻ってきた。
そのまま以前と同じ宿を取り、一晩眠って戦闘の疲れをとったアークは早速金の冠をロマリア王へと返しに行く。
アークが出かけている間に、残った三人はこれからの話をすることになっている。
「二人はこれからどうするんだ?」
「今までどおりラーの鏡を探すさ。どこにあるかわからないんだけどな」
「どうしてラーの鏡なんか探してるんだ?」
グラッセはちらりとアロアに視線を向け、悩むようなそぶりを見せる。
アロアは部屋に入ってからフードを外している。
エルフということとラーの鏡を求めることの関連性がカズキにはわからない。
「正体知られたし私はかまわないよ、お兄ちゃん」
アロアからの促しもあってグラッセは重い口を開く。
「アロアを元の姿に戻したいんだ。
アロアは人間なんだよ。それが五年ほど前にエルフに変えられたんだ」
「エルフに変えられた?」
ここで以前ルイーダに聞いた話を思い出す。魔法おばばに魔法をかけられた人間がいると。グラッセとアロアの故郷はカザーブ近くで、聞いた話にあっている。カズキは、モシャスに近いなにかを使われたのだろうと思い至る。だがなぜ魔法おばばがそんなことをしたのかはわからない。
「一緒に野草を集めにいったとき少しアロアから目を離したら、見慣れない魔物が現れてアロアに魔法を使った。そしたらアロアがエルフに変わったんだ。
魔物はすぐに飛び去って、そのまま俺たちの目の前に姿を現すことはなかった。それからずっとアロアはこの姿のままなんだ」
成長速度もエルフと同じで、この五年アロアは大きな成長は見せていない。
「魔法を使ったときその魔物はなにか言ってなかった? なにかの目的があってそんな魔法を使ったと思うんだけど」
「サンプルとか成功らしいとか、そんなことを言ってました」
「それだけかぁ。なにが目的かわからないな」
「すみません」
「い、いやっアロアが謝る必要はないよ!」
頭を下げるアロアに、慌ててカズキは言った。
「とにかくラーの鏡を探す理由はわかったよ。そういった事情なら、たしかにラーの鏡が役立つだろうね。
変化の杖での変身も解くし、モシャスっぽい魔法の変身も解けそうだ」
カズキは思い違いをしている。ドラクエ3ではラーの鏡は真実の姿を映しただけで、変身を解いてはいないのだ。ドラクエ2や5のラーの鏡と混同している。その思い違いに気づくことなくカズキは話を進める。
「モシャスですか?」
「ん? どんな魔法を使われたのかは知らないの?」
「ああ、ノアニールの書庫で調べてわかったのは、ラーの鏡ってやつを使えば真実の姿に戻せそうだってことだけ。使われた魔法についてはわからなかった」
ノアニールの住民が寝っぱなしなので、遠慮なくしまわれてる貴重書も読み漁り、ラーの鏡について知ったらしい。
「推測なんだけど、アロアに使われたのはモシャスっていう変身魔法。使えば変身対象の技術や能力を真似ることができる。ただし一定時間すぎれば効果がきれるんだ」
「変化の杖というのは?」
「その名の通り変化することができる杖。こちらは姿のみで変化もランダム?」
疑問系になったのはボストロールが王に変身してことから。人間が使った場合はカズキの言った効果でいいのだが、魔物が使った場合はまだ別の効果がでるのかもしれないとふと思ったのだ。日常的に使っていたのなら明らかに変化時間に問題がある。
「世の中にゃいろんなもんがあるんだな」
「ほんとにいろいろあるからね」
グラッセの言葉に共感し、カズキは頷く。前世ではなかったものがたくさんあって、実際にそれらに触れると驚くことばかりなのだ。
「あ、そうそう。ラーの鏡のありかを思い出したんだけど」
カズキがなんでもないことのように言い出したので、グラッセとアロアは聞き流しそうになる。
「……前は知らないって言ってなかったか?」
「そうだっけ? あのとき眠かったからいい加減な返事したのかも」
疑わしげな目のグラッセに、表面上はとぼけながら答えた。
「まあいいや。それで場所は?」
「サマンオサって国の首都、そこから南東の洞窟にあるとか」
「サマンオサ……聞いたことないな。アロアは知ってるか?」
兄の問いにアロアは首を横に振る。
カズキは地図を取り出し、指で指す。
「ここだ」
「遠っ!?」
ほぼ真反対の位置に兄妹は驚きを隠せない。
カズキは距離のほかにもある問題を指摘する。
「この地図だとわからないけど、サマンオサは岩山に囲まれた国で、出入りできる場所はいくつかある関所だけ。その関所は今は開かれてない」
ゲームと違い、こちらは岩山も頑張れば登ることは可能なのだ。その岩山の比較的楽な道に関所が設けられていて、以前はそこを通って人々は出入国をしていた。
だが十年ほど前からサマンオサは鎖国を始め、岩山の関所だけではなく、河川にある関所すらも閉ざしてしまった。キメラの翼やルーラでの行き来は可能なのだが、貿易は不可能となり、それにともなって人の移動も減り、活気が減ってきているらしいとカズキはルイーダの酒場で働いているときに耳にした。
人の行き来が減ったことで、キメラの翼やルーラで行き来できる人も減り、連れて行ってもらうのにも一苦労するだろう。少なくともアリアハンのルイーダの酒場には、連れて行ける者はいないとカズキは知っている。
このことを告げると二人は明らかに気落ちする。
「せっかく場所がわかったのに、行くことが難しいなんてな」
「言いづらいけど、もう一つ問題があったりする」
「まだあんの?」
勘弁してくれとグラッセの浮かべた表情が雄弁に語っている。
「魔物がここらよりはるかに強いんだ。
今の二人の実力だと、まともに戦うことすら難しい。だいたいグラッセが今の二倍強くなって一対一では苦戦しなくなるかな」
グラッセの今のレベルが10だ。今のままだと逃げることすら苦労する。アロアにいたっては確実に死が待っている。
「やけに詳しいな? 行ったことがあるのか?」
「いや実際に行った人から聞いた話を元にしての推測」
実際は魔物のデータなどを思い出しての比較だ。
「最後に朗報が一つ。回り道だけど確実にサマンオサに行ける方法がある」
「それは?」
「旅の扉を使うんだ」
旅の扉と聞いて二人が首を傾げたので、どのようなものかを簡単に説明する。ついでにアリアハンからロマリアへは、それを使ってきたと実例を付け加える。
「そのロマリアにあるっていう旅の扉を使えばサマンオサに行けるんですか?」
「いやそこから行けるのはアリアハン。サマンオサへは別の場所から。ここから近いところだと、ロマリアとポルトガの間にある関所かオリビアの岬」
「じゃあ俺たちの次の目的地は関所ってことになるのか」
「関所を通るには魔法の鍵が必要なんだけどね。そして旅の扉を使うには別の鍵が必要になる」
なにか言いたげな顔のグラッセとアロア。
「だから回り道って言っただろう? 鍵さえ手に入ればいいから確実って言ったんだ。
まあ、アバカムっていう鍵開けの魔法を覚えたら問題解決するんだけど」
「それの呪文書は?」
「鍵開けの魔法なんて一般公開はしないだろうから入手は難しいだろうね」
グラッセは少し考え込み、顔を上げる。
「話を聞いて出た結論が、サマンオサ行きはすごく困難ってことなんだが。どこが朗報?」
「たしかにここまでの話だと朗報じゃない。二人だけで動けばすごく難しいって教えただけだしね。
そこで提案。俺たちと一緒に旅をしないか?」
カズキの誘いの意味するところは、これまで流れからすぐにわかる。
「一緒に行けば、俺たちはラーの鏡を手に入れられる?」
「時間はかかるけど確実に」
「どうして言い切れるんだ?」
「アークがそこに行くことになるからね。旅をしていればサマンオサの現状を知るだろうし、そしたら行くって言うに決まっている」
「アークさんって何者なんですか? 普通、一般的な冒険者は王様から依頼なんてされませんよね? 有名な冒険者にしては名前を聞いたことはありませんし」
勇者だと言おうか言うまいか、カズキは悩む。知られると同行を断られるかもしれないが、いつまでも黙ったままというのも不審を招きそうだ。
アークならどうするかと考え、言うことに決めた。これから一緒に旅をしたいと思うのならば信じなくてどうするのか、と言うだろうと想像がついたのだ。
「アークは生まれはアリアハン、世界に名だたる英雄が一人オルテガの子」
「それって」
「もしかして」
オルテガの名を聞いたグラッセたちはそれだけで想像がついた。
「そう、アークはバラモス討伐の指名を受けて旅立った人類の希望。精霊に選ばれし者。魔王の対極存在。つまり勇者」
どうせばらすのだからといろいろ大げさに言ってみた。
「勇者ときたか。てっきりどこかの貴族のやんちゃ息子かと」
「その場合、俺はやんちゃ息子に振り回される世話役ってことになるのか?
それでどうする? アリアハンの冒険者たちはアークと一緒に行くことを拒否したけど」
「拒否したんですか?」
「うん。まあ、一般人がバラモス退治についていこうとか無謀な考えだよね」
「カズキさんは一緒に旅してますよね? 同じようについていこうと考えた人はいなかったんでしょうか?」
アークと一緒に行くと言った者はいたのだが、それは十才を少しすぎた子供たちで、アークのその気持ちだけ受け取った。さすがにその年齢の子供を旅には連れ出すことは無理だ。
「俺は最後までは無理だってアークに言ってるから。途中リタイアする予定。
それでももうしばらくは一緒に旅するけどね」
「途中リタイアが認められるなら一緒に行きたいな。勇者なら一般人が入れないところも入れるだろうし、ラーの鏡入手がスムーズにいきそうだ」
「一般人が入れないところに入ることができるってのは、アークが俺を旅に誘った言葉と同じだな。好奇心に負けたのも旅に同行している一因なんだよ」
同行の理由の一つを話したカズキを、二人は若干呆れた顔で見ている。命の危険もある旅なのに、好奇心が同行の理由では無理もないのかもしれない。
「勇者アークよ! よくぞ、金の冠を取り戻してくれた!」
取り戻された冠をかぶった王が玉座から立ち上がり、アークを褒め称える。
そばに控えている王妃や大臣や近衛兵も笑みを浮かべて手を叩いている。
「カンダタも討伐したのであろう? ご苦労であった」
「いえ、カンダタには逃げられました。手強く冠を取り戻すので精一杯でした」
「そうか……それでも冠を取り戻し、住処から追い払ったことは大いに褒めるに値することだ。
褒美を与えよう。大臣」
呼ばれた大臣は玉座のそばに置いていた袋をアークの前に持っていき置いた。
中身はお金とステータスアップ系の装飾品と種がいくつか。
「褒美など頂くわけには! 褒美のために依頼を受けたのではありません」
「褒美を与えるだけの働きをしたのだ、遠慮せずに受け取っておけ。
褒美といえばもう一つ。アークよ、サークレットを渡してくれまいか」
「サークレットですか?」
再び近寄ってきた大臣にアークはサークレットを渡す。
大臣から渡されたサークレットの宝玉部分に王は指を当てる。
「精霊よ、ロマリアを治める命を受け取りし人間が請う。ここに勇者あり、私はこの者を認める。ゆえに古より伝わりし力の一つをこの者に授けたまえ。*****」
最後に誰にも聞き取れない、意味もわからない言葉を言ったあと、宝玉が一瞬光を放った。
これは各王家に伝わる、勇者を認めるとき行う儀式のようなものだ。
王が勇者を勇者と名乗るのに十分だと認めたとき行うように、精霊から命じられていた。
かつてはオルテガもこの儀式を受けていた。
「今のは建国当時より王家に伝わる儀式だ。この儀式を一つでも受けた者だけが、勇者と名乗ることができるのだよ」
「アリアハンで儀式を受けていないのですが、もしかして私は今まで勇者ではなかったのでしょうか?」
自身を勇者と信じて疑っていなかったアークは表情を曇らせる。
「おぬしは例外といえるだろう。今の儀式は平和な世に大きな手柄を立てた者に行ってきたものだ。精霊の選定なく、人が独自の判断で選んだ勇者に行ってきたもの。
しかしおぬしは精霊に勇者と選ばれておる。それをアリアハン王も認めたことで、儀式がなくとも勇者と名乗ることができる。だから安心してよい」
王は最後の言葉とともに、温かみのある笑みをアークへと向けた。
「アリアハン王がこの儀式を行わなかったのには、なにか考えがあるのだろう。気になるのならばいずれ聞いてみるといい」
話ずれず聞こうと、アークは今の話を心に刻んだ。
「これで勇者のみが使える魔法アストロンを使えるようになる。詳しいことは夢の中で精霊に習うことができると聞いておるよ。
そこらへんはおぬしのほうが詳しいのではないか?」
「心当たりはあります」
アークは旅立つ前日に見た夢を思い出す。
返されたサークレットをしげしげを見つめたあと、アークは慌てて頭を下げる。
「ありがとうございます!」
「そう恐縮せずともよい。
おぬしはこのあとどのように動くのだ? 行き先によっては力を貸せるだろう」
「ノアニールに行こうかと」
「眠りの街か……行ったとしてもなにもできぬかもしれんぞ。それでも行くのか?」
「はい。なにができなくとも、行く前から諦めたくはありません。解決はできなくとも、小さななにかができるかもしれないのですからっ」
力強く言い切ったアークを王は目を細め眩しそうに見る。王妃たちも頼もしそうにアークを見ている。
「そうか。では私が知っていることを話してやろう。
あそこはノアニール西の大森林に住むエルフによって呪われているのだ。
原因は人間の男とエルフの女が結婚を認めてもらえず、エルフの秘宝を持って駆け落ちした。そのことがエルフの女王の怒りを買ってしまったのだ。
呪いを解こうと魔法使いに呪いの研究を命じては見たものの、魔法に関してはエルフのほうが優れておるせいか結果はいまだにでないのだよ。
エルフの女王と交渉しようかとも思ったが、ロマリアを第二のノアニールにするわけにはいかんのでな、うかつに手が出せん」
「エルフがそのようなことを。
二人はどうして秘宝を持ち出したのでしょうか?」
「さあな。当事者でなければわかりはしないだろう。もしかすると、生活資金にする。そんな簡単な理由かもしれんがな」
「追ってきてほしかったのかもしれませんね」
黙ったままだった王妃が口を開く。
「秘宝を持ち出せば、追っ手を差し向けられるのは必然でしょう。
追っ手から二人の様子は女王へと報告されるはず。自分たちのことを知ってもらい、二人で一緒にいたいのは生半可な思いではなく本気だと知ってもらい、結婚を認めさせる。そんな考えがあったのかもしれません。
これも推測にしかすぎないのですが」
二人でいればそれだけで幸せかもしれないが、それでも多くの者に祝福されたい。そんな気持ちを思って王妃は推測を述べた。
このあとは雑談に興じ、ゲームと同じように王になってみないかと誘われたのだが、アークは畏れ多いと固辞した。
「おかえり」
城から帰ってきたアークを三人が出迎える。
「ただいま。これ褒美だって」
もらった褒美をテーブルの上に置く。
カズキが中身を広げる。アイテムの鑑定はカズキがして、グラッセはお金を数えだす。アロアはアイテムを興味深そうに見ている。
「力の指輪に、ヘビメタリングに、はくあいリングか。
それに力の種が三つ、守りの種が一つ、ラックの種が一つと。あ、すごろく券も一枚入ってた」
「金は1500ゴールドあるぜ」
「指輪の解説はいる?」
アークとアロアが頷く。
「順に力と素早さと賢さが少しずつあがる。性格にも影響が出るらしいよ」
「賢さがあがるってどういうこと? 力は筋力が、素早さは動きがってわかるけど」
アークの疑問にアロアとグラッセも頷いている。
「俺もよくわからない。たぶん記憶力とか思考速度を少し強化するんじゃないか?
それで誰がどのアイテムを使う? 種はアークに全部食わせる、異論は認めない」
バラモスやゾーマと戦うのだ、力は少しでもあったほうがいい。
「種って食べたことないから一個くらい食べてみたいんだが」
「バラモス討伐に最後までついてく?」
「すまん」
グラッセは即座に謝った。
途中離脱する者に種を与えても無駄でしかない。
「俺は別に食べなくてもいいんだけど」
「バラモスとの戦いで、この一粒の差で倒せなかったってことになりたい?」
「それは嫌だ」
「じゃあ、全部食べること」
差し出された種をアークは食べる。力が七ポイント、みのまもりが一ポイント、運が一ポイント上がったのが確認できた。
「そういや俺がバラモス倒すって当たり前のように言ってるけど、グラッセとアロアに教えてもよかったの?」
「あっちの事情を聞いたからね。こっちの事情も教えないとフェアじゃないだろう?
アークがいない間に勝手に話したのは謝る、ごめん」
カズキはアークに頭を下げる。
「別にいいよ。気にしてない」
「アークが勇者ってのは本当なのか?」
「そうだよ。さっきロマリア王にも勇者だって認められた」
城で聞いた話を三人に話し、三人もここで話したことをアークに話す。
困っている人を放っておけないアークは、ラーの鏡入手についても乗り気になる。グラッセとアロアに、必ずサマンオサに行ってラーの鏡を探すことを約束した。
「ところでサマンオサってなにか起きてるの? 俺が現状を知ったら行くらしいけど」
「何年か前から王様の様子が急変したと聞いたことがある。急に政策を変えたり、民を虐げるような真似をしたり、英雄サイモンを排除したりと、普通ならやらないことをやってるらしいよ。
これを知ったらアークはサマンオサに行くだろう?」
「行くに決まっている! サマンオサ王は何を考えているんだ!」
「行ったらわかるさ。ただグラッセとアロアにも行ったけど、今の俺たちだとサマンオサにいる魔物には勝てない。行くなら強くなってから」
「魔物が強い?」
「強いって聞いてる」
「そっか。わかった。今の俺だとカンダタに勝つことも難しいしね」
カンダタとの戦いでアークは、カンダタが自分よりも高いところにいるとわかっていた。退けることができたのは意表をつけたおかげ、まともやれば勝つことはできない。盗賊にも勝てないそんな自分が、しゃしゃりでても邪魔でしかないと考え、強くなってからというカズキの言葉に頷く。
だがカンダタに勝てる勝てないというよりも、一国家の問題に個人の戦闘能力が必要かどうかという部分に気づいていないのが問題だろう。
そんなアークをフォローするのがカズキの役目だ。
「納得したところで、未来の話ではなく明日の話をしよう。
次の目的地はノアニールで変更なしでいいんだな?」
「うん。エルフに呪いを解いてもらう。これが行動目標」
「ノアニールなら俺が行ったことあるから、キメラの翼で行けるぞ」
ラーの鏡などについて調べるために、ノアニールには何度も足を運んだのだ。ノアニールを守るために派遣されているロマリア兵とも顔見知りで、宿の心配をする必要もない。
「じゃあ、出発は明日でいいかな?」
アークの言葉に三人は頷いた。
今日は消費した道具の補充と武具の整備に費やすことになる。
旅の準備を整えた四人は早めに眠りにつく。
その夜、アークは以前見た滝の夢を見た。そこでアストロンの効果と呪文文字を教えてもらう。
起きて身支度を整えた四人は、予定通りキメラの翼を使いノアニールへと飛んだ。
13へ
そのまま以前と同じ宿を取り、一晩眠って戦闘の疲れをとったアークは早速金の冠をロマリア王へと返しに行く。
アークが出かけている間に、残った三人はこれからの話をすることになっている。
「二人はこれからどうするんだ?」
「今までどおりラーの鏡を探すさ。どこにあるかわからないんだけどな」
「どうしてラーの鏡なんか探してるんだ?」
グラッセはちらりとアロアに視線を向け、悩むようなそぶりを見せる。
アロアは部屋に入ってからフードを外している。
エルフということとラーの鏡を求めることの関連性がカズキにはわからない。
「正体知られたし私はかまわないよ、お兄ちゃん」
アロアからの促しもあってグラッセは重い口を開く。
「アロアを元の姿に戻したいんだ。
アロアは人間なんだよ。それが五年ほど前にエルフに変えられたんだ」
「エルフに変えられた?」
ここで以前ルイーダに聞いた話を思い出す。魔法おばばに魔法をかけられた人間がいると。グラッセとアロアの故郷はカザーブ近くで、聞いた話にあっている。カズキは、モシャスに近いなにかを使われたのだろうと思い至る。だがなぜ魔法おばばがそんなことをしたのかはわからない。
「一緒に野草を集めにいったとき少しアロアから目を離したら、見慣れない魔物が現れてアロアに魔法を使った。そしたらアロアがエルフに変わったんだ。
魔物はすぐに飛び去って、そのまま俺たちの目の前に姿を現すことはなかった。それからずっとアロアはこの姿のままなんだ」
成長速度もエルフと同じで、この五年アロアは大きな成長は見せていない。
「魔法を使ったときその魔物はなにか言ってなかった? なにかの目的があってそんな魔法を使ったと思うんだけど」
「サンプルとか成功らしいとか、そんなことを言ってました」
「それだけかぁ。なにが目的かわからないな」
「すみません」
「い、いやっアロアが謝る必要はないよ!」
頭を下げるアロアに、慌ててカズキは言った。
「とにかくラーの鏡を探す理由はわかったよ。そういった事情なら、たしかにラーの鏡が役立つだろうね。
変化の杖での変身も解くし、モシャスっぽい魔法の変身も解けそうだ」
カズキは思い違いをしている。ドラクエ3ではラーの鏡は真実の姿を映しただけで、変身を解いてはいないのだ。ドラクエ2や5のラーの鏡と混同している。その思い違いに気づくことなくカズキは話を進める。
「モシャスですか?」
「ん? どんな魔法を使われたのかは知らないの?」
「ああ、ノアニールの書庫で調べてわかったのは、ラーの鏡ってやつを使えば真実の姿に戻せそうだってことだけ。使われた魔法についてはわからなかった」
ノアニールの住民が寝っぱなしなので、遠慮なくしまわれてる貴重書も読み漁り、ラーの鏡について知ったらしい。
「推測なんだけど、アロアに使われたのはモシャスっていう変身魔法。使えば変身対象の技術や能力を真似ることができる。ただし一定時間すぎれば効果がきれるんだ」
「変化の杖というのは?」
「その名の通り変化することができる杖。こちらは姿のみで変化もランダム?」
疑問系になったのはボストロールが王に変身してことから。人間が使った場合はカズキの言った効果でいいのだが、魔物が使った場合はまだ別の効果がでるのかもしれないとふと思ったのだ。日常的に使っていたのなら明らかに変化時間に問題がある。
「世の中にゃいろんなもんがあるんだな」
「ほんとにいろいろあるからね」
グラッセの言葉に共感し、カズキは頷く。前世ではなかったものがたくさんあって、実際にそれらに触れると驚くことばかりなのだ。
「あ、そうそう。ラーの鏡のありかを思い出したんだけど」
カズキがなんでもないことのように言い出したので、グラッセとアロアは聞き流しそうになる。
「……前は知らないって言ってなかったか?」
「そうだっけ? あのとき眠かったからいい加減な返事したのかも」
疑わしげな目のグラッセに、表面上はとぼけながら答えた。
「まあいいや。それで場所は?」
「サマンオサって国の首都、そこから南東の洞窟にあるとか」
「サマンオサ……聞いたことないな。アロアは知ってるか?」
兄の問いにアロアは首を横に振る。
カズキは地図を取り出し、指で指す。
「ここだ」
「遠っ!?」
ほぼ真反対の位置に兄妹は驚きを隠せない。
カズキは距離のほかにもある問題を指摘する。
「この地図だとわからないけど、サマンオサは岩山に囲まれた国で、出入りできる場所はいくつかある関所だけ。その関所は今は開かれてない」
ゲームと違い、こちらは岩山も頑張れば登ることは可能なのだ。その岩山の比較的楽な道に関所が設けられていて、以前はそこを通って人々は出入国をしていた。
だが十年ほど前からサマンオサは鎖国を始め、岩山の関所だけではなく、河川にある関所すらも閉ざしてしまった。キメラの翼やルーラでの行き来は可能なのだが、貿易は不可能となり、それにともなって人の移動も減り、活気が減ってきているらしいとカズキはルイーダの酒場で働いているときに耳にした。
人の行き来が減ったことで、キメラの翼やルーラで行き来できる人も減り、連れて行ってもらうのにも一苦労するだろう。少なくともアリアハンのルイーダの酒場には、連れて行ける者はいないとカズキは知っている。
このことを告げると二人は明らかに気落ちする。
「せっかく場所がわかったのに、行くことが難しいなんてな」
「言いづらいけど、もう一つ問題があったりする」
「まだあんの?」
勘弁してくれとグラッセの浮かべた表情が雄弁に語っている。
「魔物がここらよりはるかに強いんだ。
今の二人の実力だと、まともに戦うことすら難しい。だいたいグラッセが今の二倍強くなって一対一では苦戦しなくなるかな」
グラッセの今のレベルが10だ。今のままだと逃げることすら苦労する。アロアにいたっては確実に死が待っている。
「やけに詳しいな? 行ったことがあるのか?」
「いや実際に行った人から聞いた話を元にしての推測」
実際は魔物のデータなどを思い出しての比較だ。
「最後に朗報が一つ。回り道だけど確実にサマンオサに行ける方法がある」
「それは?」
「旅の扉を使うんだ」
旅の扉と聞いて二人が首を傾げたので、どのようなものかを簡単に説明する。ついでにアリアハンからロマリアへは、それを使ってきたと実例を付け加える。
「そのロマリアにあるっていう旅の扉を使えばサマンオサに行けるんですか?」
「いやそこから行けるのはアリアハン。サマンオサへは別の場所から。ここから近いところだと、ロマリアとポルトガの間にある関所かオリビアの岬」
「じゃあ俺たちの次の目的地は関所ってことになるのか」
「関所を通るには魔法の鍵が必要なんだけどね。そして旅の扉を使うには別の鍵が必要になる」
なにか言いたげな顔のグラッセとアロア。
「だから回り道って言っただろう? 鍵さえ手に入ればいいから確実って言ったんだ。
まあ、アバカムっていう鍵開けの魔法を覚えたら問題解決するんだけど」
「それの呪文書は?」
「鍵開けの魔法なんて一般公開はしないだろうから入手は難しいだろうね」
グラッセは少し考え込み、顔を上げる。
「話を聞いて出た結論が、サマンオサ行きはすごく困難ってことなんだが。どこが朗報?」
「たしかにここまでの話だと朗報じゃない。二人だけで動けばすごく難しいって教えただけだしね。
そこで提案。俺たちと一緒に旅をしないか?」
カズキの誘いの意味するところは、これまで流れからすぐにわかる。
「一緒に行けば、俺たちはラーの鏡を手に入れられる?」
「時間はかかるけど確実に」
「どうして言い切れるんだ?」
「アークがそこに行くことになるからね。旅をしていればサマンオサの現状を知るだろうし、そしたら行くって言うに決まっている」
「アークさんって何者なんですか? 普通、一般的な冒険者は王様から依頼なんてされませんよね? 有名な冒険者にしては名前を聞いたことはありませんし」
勇者だと言おうか言うまいか、カズキは悩む。知られると同行を断られるかもしれないが、いつまでも黙ったままというのも不審を招きそうだ。
アークならどうするかと考え、言うことに決めた。これから一緒に旅をしたいと思うのならば信じなくてどうするのか、と言うだろうと想像がついたのだ。
「アークは生まれはアリアハン、世界に名だたる英雄が一人オルテガの子」
「それって」
「もしかして」
オルテガの名を聞いたグラッセたちはそれだけで想像がついた。
「そう、アークはバラモス討伐の指名を受けて旅立った人類の希望。精霊に選ばれし者。魔王の対極存在。つまり勇者」
どうせばらすのだからといろいろ大げさに言ってみた。
「勇者ときたか。てっきりどこかの貴族のやんちゃ息子かと」
「その場合、俺はやんちゃ息子に振り回される世話役ってことになるのか?
それでどうする? アリアハンの冒険者たちはアークと一緒に行くことを拒否したけど」
「拒否したんですか?」
「うん。まあ、一般人がバラモス退治についていこうとか無謀な考えだよね」
「カズキさんは一緒に旅してますよね? 同じようについていこうと考えた人はいなかったんでしょうか?」
アークと一緒に行くと言った者はいたのだが、それは十才を少しすぎた子供たちで、アークのその気持ちだけ受け取った。さすがにその年齢の子供を旅には連れ出すことは無理だ。
「俺は最後までは無理だってアークに言ってるから。途中リタイアする予定。
それでももうしばらくは一緒に旅するけどね」
「途中リタイアが認められるなら一緒に行きたいな。勇者なら一般人が入れないところも入れるだろうし、ラーの鏡入手がスムーズにいきそうだ」
「一般人が入れないところに入ることができるってのは、アークが俺を旅に誘った言葉と同じだな。好奇心に負けたのも旅に同行している一因なんだよ」
同行の理由の一つを話したカズキを、二人は若干呆れた顔で見ている。命の危険もある旅なのに、好奇心が同行の理由では無理もないのかもしれない。
「勇者アークよ! よくぞ、金の冠を取り戻してくれた!」
取り戻された冠をかぶった王が玉座から立ち上がり、アークを褒め称える。
そばに控えている王妃や大臣や近衛兵も笑みを浮かべて手を叩いている。
「カンダタも討伐したのであろう? ご苦労であった」
「いえ、カンダタには逃げられました。手強く冠を取り戻すので精一杯でした」
「そうか……それでも冠を取り戻し、住処から追い払ったことは大いに褒めるに値することだ。
褒美を与えよう。大臣」
呼ばれた大臣は玉座のそばに置いていた袋をアークの前に持っていき置いた。
中身はお金とステータスアップ系の装飾品と種がいくつか。
「褒美など頂くわけには! 褒美のために依頼を受けたのではありません」
「褒美を与えるだけの働きをしたのだ、遠慮せずに受け取っておけ。
褒美といえばもう一つ。アークよ、サークレットを渡してくれまいか」
「サークレットですか?」
再び近寄ってきた大臣にアークはサークレットを渡す。
大臣から渡されたサークレットの宝玉部分に王は指を当てる。
「精霊よ、ロマリアを治める命を受け取りし人間が請う。ここに勇者あり、私はこの者を認める。ゆえに古より伝わりし力の一つをこの者に授けたまえ。*****」
最後に誰にも聞き取れない、意味もわからない言葉を言ったあと、宝玉が一瞬光を放った。
これは各王家に伝わる、勇者を認めるとき行う儀式のようなものだ。
王が勇者を勇者と名乗るのに十分だと認めたとき行うように、精霊から命じられていた。
かつてはオルテガもこの儀式を受けていた。
「今のは建国当時より王家に伝わる儀式だ。この儀式を一つでも受けた者だけが、勇者と名乗ることができるのだよ」
「アリアハンで儀式を受けていないのですが、もしかして私は今まで勇者ではなかったのでしょうか?」
自身を勇者と信じて疑っていなかったアークは表情を曇らせる。
「おぬしは例外といえるだろう。今の儀式は平和な世に大きな手柄を立てた者に行ってきたものだ。精霊の選定なく、人が独自の判断で選んだ勇者に行ってきたもの。
しかしおぬしは精霊に勇者と選ばれておる。それをアリアハン王も認めたことで、儀式がなくとも勇者と名乗ることができる。だから安心してよい」
王は最後の言葉とともに、温かみのある笑みをアークへと向けた。
「アリアハン王がこの儀式を行わなかったのには、なにか考えがあるのだろう。気になるのならばいずれ聞いてみるといい」
話ずれず聞こうと、アークは今の話を心に刻んだ。
「これで勇者のみが使える魔法アストロンを使えるようになる。詳しいことは夢の中で精霊に習うことができると聞いておるよ。
そこらへんはおぬしのほうが詳しいのではないか?」
「心当たりはあります」
アークは旅立つ前日に見た夢を思い出す。
返されたサークレットをしげしげを見つめたあと、アークは慌てて頭を下げる。
「ありがとうございます!」
「そう恐縮せずともよい。
おぬしはこのあとどのように動くのだ? 行き先によっては力を貸せるだろう」
「ノアニールに行こうかと」
「眠りの街か……行ったとしてもなにもできぬかもしれんぞ。それでも行くのか?」
「はい。なにができなくとも、行く前から諦めたくはありません。解決はできなくとも、小さななにかができるかもしれないのですからっ」
力強く言い切ったアークを王は目を細め眩しそうに見る。王妃たちも頼もしそうにアークを見ている。
「そうか。では私が知っていることを話してやろう。
あそこはノアニール西の大森林に住むエルフによって呪われているのだ。
原因は人間の男とエルフの女が結婚を認めてもらえず、エルフの秘宝を持って駆け落ちした。そのことがエルフの女王の怒りを買ってしまったのだ。
呪いを解こうと魔法使いに呪いの研究を命じては見たものの、魔法に関してはエルフのほうが優れておるせいか結果はいまだにでないのだよ。
エルフの女王と交渉しようかとも思ったが、ロマリアを第二のノアニールにするわけにはいかんのでな、うかつに手が出せん」
「エルフがそのようなことを。
二人はどうして秘宝を持ち出したのでしょうか?」
「さあな。当事者でなければわかりはしないだろう。もしかすると、生活資金にする。そんな簡単な理由かもしれんがな」
「追ってきてほしかったのかもしれませんね」
黙ったままだった王妃が口を開く。
「秘宝を持ち出せば、追っ手を差し向けられるのは必然でしょう。
追っ手から二人の様子は女王へと報告されるはず。自分たちのことを知ってもらい、二人で一緒にいたいのは生半可な思いではなく本気だと知ってもらい、結婚を認めさせる。そんな考えがあったのかもしれません。
これも推測にしかすぎないのですが」
二人でいればそれだけで幸せかもしれないが、それでも多くの者に祝福されたい。そんな気持ちを思って王妃は推測を述べた。
このあとは雑談に興じ、ゲームと同じように王になってみないかと誘われたのだが、アークは畏れ多いと固辞した。
「おかえり」
城から帰ってきたアークを三人が出迎える。
「ただいま。これ褒美だって」
もらった褒美をテーブルの上に置く。
カズキが中身を広げる。アイテムの鑑定はカズキがして、グラッセはお金を数えだす。アロアはアイテムを興味深そうに見ている。
「力の指輪に、ヘビメタリングに、はくあいリングか。
それに力の種が三つ、守りの種が一つ、ラックの種が一つと。あ、すごろく券も一枚入ってた」
「金は1500ゴールドあるぜ」
「指輪の解説はいる?」
アークとアロアが頷く。
「順に力と素早さと賢さが少しずつあがる。性格にも影響が出るらしいよ」
「賢さがあがるってどういうこと? 力は筋力が、素早さは動きがってわかるけど」
アークの疑問にアロアとグラッセも頷いている。
「俺もよくわからない。たぶん記憶力とか思考速度を少し強化するんじゃないか?
それで誰がどのアイテムを使う? 種はアークに全部食わせる、異論は認めない」
バラモスやゾーマと戦うのだ、力は少しでもあったほうがいい。
「種って食べたことないから一個くらい食べてみたいんだが」
「バラモス討伐に最後までついてく?」
「すまん」
グラッセは即座に謝った。
途中離脱する者に種を与えても無駄でしかない。
「俺は別に食べなくてもいいんだけど」
「バラモスとの戦いで、この一粒の差で倒せなかったってことになりたい?」
「それは嫌だ」
「じゃあ、全部食べること」
差し出された種をアークは食べる。力が七ポイント、みのまもりが一ポイント、運が一ポイント上がったのが確認できた。
「そういや俺がバラモス倒すって当たり前のように言ってるけど、グラッセとアロアに教えてもよかったの?」
「あっちの事情を聞いたからね。こっちの事情も教えないとフェアじゃないだろう?
アークがいない間に勝手に話したのは謝る、ごめん」
カズキはアークに頭を下げる。
「別にいいよ。気にしてない」
「アークが勇者ってのは本当なのか?」
「そうだよ。さっきロマリア王にも勇者だって認められた」
城で聞いた話を三人に話し、三人もここで話したことをアークに話す。
困っている人を放っておけないアークは、ラーの鏡入手についても乗り気になる。グラッセとアロアに、必ずサマンオサに行ってラーの鏡を探すことを約束した。
「ところでサマンオサってなにか起きてるの? 俺が現状を知ったら行くらしいけど」
「何年か前から王様の様子が急変したと聞いたことがある。急に政策を変えたり、民を虐げるような真似をしたり、英雄サイモンを排除したりと、普通ならやらないことをやってるらしいよ。
これを知ったらアークはサマンオサに行くだろう?」
「行くに決まっている! サマンオサ王は何を考えているんだ!」
「行ったらわかるさ。ただグラッセとアロアにも行ったけど、今の俺たちだとサマンオサにいる魔物には勝てない。行くなら強くなってから」
「魔物が強い?」
「強いって聞いてる」
「そっか。わかった。今の俺だとカンダタに勝つことも難しいしね」
カンダタとの戦いでアークは、カンダタが自分よりも高いところにいるとわかっていた。退けることができたのは意表をつけたおかげ、まともやれば勝つことはできない。盗賊にも勝てないそんな自分が、しゃしゃりでても邪魔でしかないと考え、強くなってからというカズキの言葉に頷く。
だがカンダタに勝てる勝てないというよりも、一国家の問題に個人の戦闘能力が必要かどうかという部分に気づいていないのが問題だろう。
そんなアークをフォローするのがカズキの役目だ。
「納得したところで、未来の話ではなく明日の話をしよう。
次の目的地はノアニールで変更なしでいいんだな?」
「うん。エルフに呪いを解いてもらう。これが行動目標」
「ノアニールなら俺が行ったことあるから、キメラの翼で行けるぞ」
ラーの鏡などについて調べるために、ノアニールには何度も足を運んだのだ。ノアニールを守るために派遣されているロマリア兵とも顔見知りで、宿の心配をする必要もない。
「じゃあ、出発は明日でいいかな?」
アークの言葉に三人は頷いた。
今日は消費した道具の補充と武具の整備に費やすことになる。
旅の準備を整えた四人は早めに眠りにつく。
その夜、アークは以前見た滝の夢を見た。そこでアストロンの効果と呪文文字を教えてもらう。
起きて身支度を整えた四人は、予定通りキメラの翼を使いノアニールへと飛んだ。
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2010年02月05日
感謝の40
感想、ウェブ拍手ありがとうございます
》ドラクエ知識のある転生者がカンダタの名前を騙ってたのでしょうか? う〜んだとしてもなぜ? という疑問があるのですが・・・アロアの方もワケありみたいですし、知識に頼ってたらマズイことになりそうですね。
カンダタについてはもう少し先でわかるかと。転生者ではないです
転生者はカズキと話にでてきた三人だけです
アロアのこともそう遠くない話で事情がわかるかと
》某SS紹介ブログから、生まれ変わってドラクエを見に飛んできたんですが、まさか竜殺しの過ごす日々の作者さんのページとは!ドラクエも楽しかったですし、竜殺しも楽しみにしております!がんばってください!
ありがとうございます。両方とも終わらせる気はあるので、そこは心配しなくても大丈夫です
ドラクエは思いのほか長くなってるんですよね。本当ならば今くらいの分量+αで終わっていたはず
》竜殺しほのぼのしておもしろかったです
目指す方向がのんびり路線なので、ほのぼのといってもらえるとありがたいです
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転生者はカズキと話にでてきた三人だけです
アロアのこともそう遠くない話で事情がわかるかと
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ありがとうございます。両方とも終わらせる気はあるので、そこは心配しなくても大丈夫です
ドラクエは思いのほか長くなってるんですよね。本当ならば今くらいの分量+αで終わっていたはず
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