2010年05月

2010年05月23日

感謝の49

感想ウェブ拍手ありがとうございます

》ソフィアさん
指摘ありがとうございます
のちほど修正しておきます
アッサラームについては修正したつもりだったんですけど、残ってたんですねぇ
うん、偽者っぽいw特にポルトガw

》アッサラームには二度と行きたくなくなるでしょうねぇ、この勇者パーティは。 カズキだけは楽しめた模様ですが、最後にふがいない自分に鬱になってそうだし。 ミスコン参加はまだしも、事後承諾で囮に使われたと知って許すのは、よっぽどの聖人じゃなきゃダメでしょうし・・・下手すりゃ誰か死んでてもおかしくなかった・・・特にカズキとか。 まあDQのイベントって結構えげつないのありますからねぇ。

アロアとグラッセは行かないでしょうね。アークは必要があれば顔を隠していく、カズキは気にしないかな? 
ちなみにアークは囮を許してます。死人が出なかったからですが。犠牲が出てたら、さすがにアークも怒ってました
まあ、あの場面で負けても死者はでないんですが。かわりにグラッセとカズキは魔物用奴隷行き、のちのち餌。アークとアロアは逃げられないように処理され金持ちの愛玩用奴隷行き


ee383 at 00:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)日記 

2010年05月17日

感謝の48

感想ウェブ拍手ありがとうございます

》ケイさん
今は無理ゲーでもレベルアップすれば、なんとかなるはず
相手も成長する予定なんですけどね


》いつの間にやらカズキがムードメーカーに、ステータス閲覧や進行展開を知ってる余裕があるからこそ、というのもあるのでしょうけどね。 こりゃあパーティ離脱は無くなってきたかな? 転生鬼面童子とか、不確定な要素も出てきたから、余計にカズキのような俯瞰で見れる人物は必要ですしね。

余裕のあるムードメーカーなのは今だけかもしれません
アークが育てば、皆を引っ張るようになりますから、後半はアークがムードメーカーかな


》拳児の外伝で李書文という伝説的拳士が、ラン・ナー・チャーの基本3動作だけで、天下無敵の槍使いだった、という話もありましたし、基本を極めればカズキも・・・ しかし武器は相変わらず棒なのですね、槍とか殺傷力の強い長柄武器は使わないのかな? 単純な戦力UPで強い武器を使う、というのもアリだと思うけど。

応用を覚えても使えこなせないだろうというのが、師匠の判断でした
アークやグラッセに比べるとカズキには才がありません
棒が一番使い慣れているので、いつまでも棒の予定。槍は使う可能性はありますが、剣や斧は使う予定はありません。使っても技術がたりず、武器のポテンシャルを引き出せませんから

ee383 at 01:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0)日記 

生まれ変わってドラクエ 16-2

 今カズキはアークの付き添いとしてテントの控え室にいる。コンテストは三日に渡って行われる。一日目が男予選で、二日目が女予選。そして三日目午前が男の決勝で、午後が女の決勝の予定となっている。初めての催しなので、ずれがでるのは仕方ないとされている。
 本当は二日の予定だったのだが、参加者が予定よりも多かったので一日増やしたのだった。自信家が多いというよりは、お祭り好きが多いのだとカズキたちが宿泊している宿の主人は言っている。
 アークは着替えのため席を外している。
 
「兄さん、こんな感じでいいのかな?」
「おーっいいね! 優勝狙えるんじゃないか?」

 タキシードを着て、髪をオールバックにしたアークが着替え室から出てきた。見た目、実年齢より上に見えている。
 兄貴分の欲目というやつかもしれないが、カズキの目には周囲の男よりもかっこよく映っている。ここにグラッセがいれば似たような感想をもつだろうから、身内贔屓というわけではない。
 ここにいないグラッセはアロアと共に会場にいる。
 
「こういった格好をするのは始めてだよ」
「アリアハンで城のパーティーに呼ばれなかったのか?」
「二回くらい参加したことはあるよ。でもそのときは騎士の正装を借りてたから」

 パーティーのときは、装飾用簡易鎧にマントといういでたちだったのだ。
 二人は係員に呼ばれるまで雑談で過ごす。話題はアロアだ。カズキが楽しみだなと言い、似た境遇のアークが同情していた。
 三十分ほど時間が経ち、いよいよコンテストが始まる。
 ステージは地球のファッションショーと似てT字となっていて、呼ばれた人物が下部先端まで歩いていくようになっている。予選はそれだけだ。
 出場者を呼ぶ声は、マイクでも使っているかのように会場中に響いている。ゲームにはない魔法なのだろう。生活面でゲームにはない魔法が存在していることがあるとカズキは知っている。金貨銀貨銅貨をより分ける魔法など戦闘では役立たない魔法を、ルイーダの酒場で働いているときに何度も目にしたからだ。

 決勝進出へは観客の反応と審査員の採点を合わせたもの、その上位十名が決勝に進むことになっている。
 何組かにわけられた男たちがステージに移動していき、やがてアークのいるグループの出番がきた。
 出て行くアークを見送り、カズキは舞台の裾からアークの晴れ舞台を楽しげに見ている。いつかオルテガやアークの母親に、このことを報告できたらなと考えている。話しに聞いているオルテガの性格ならば笑ってその場にいなかったことを悔しがるだろうと思うのだ。
 ステージ上でアークはカズキのアドバイス通り、微笑みつつ格式ばったお辞儀をする。それが様になっていて、会場のあちこちからほうっと溜息が聞こえてきた。
 
「ふー、緊張した」
「お疲れさん。あの反応なら決勝に進めるね」
「いやできれば今日で終わりたかったんだけど」

 その願いはニーステアが許してはくれないだろう。

「今日はこれで終わりだし、どうする? まだここにいる?」
「出店とか見て回りたい。とりあえず着替えてくるよ」

 普段着に着替えて戻ってきたアークと共にカズキは出店を回っていく。人が多いのでアロアたちとの合流ははなから諦めている。
 一通り祭を楽しんだ二人は宿に戻り、先に戻っていた二人と今日のことを話していった。
 そして次の日、今度はアロアの出番だ。進行は男の部とかわらない。
 今度はカズキたちが客席にいて、グラッセもこっちにいる。さすがに付き添いについていくことはできない。そんなことをすれば悲鳴とともに叩きだされるだろう。
 女たちの服装は気合が入っていて、一番多いのがドレス姿だ。その次が踊り子の服だ。これはダンス劇場で使われているものと同じものだ。
 アロアのコスプレ姿は少数派に属する。
 だからこそ目立った。
 アロアに注目が集まり、人々は気づく。美人だと。とたんに会場からいっせいにどよめきが聞こえてきた。
 アロアには、集まった視線が圧力を持っているようにも感じられていた。
 ここまで多くの人間に注目されたことはなく、恥ずかしさが高まっていき、体全体をほのかに赤く染めていく。精巧な人形のようにも見えるが、恥じらいが生気を感じさせる。その恥らう様子と容姿とのギャップが男たちの心を鷲掴みにし、会場の男たちは一斉に歓声を上げた。
 アークは男たちのこの反応に驚き、グラッセは危機感を持ち、カズキは半分同意してもう半分では男はバカだと笑っていた。
 歓声に怯え逃げるようにアロアは急いで元いた位置に戻っていく。やっぱりやめておくんだったと少し涙目だ。その表情を男たちが見たら、さらにボルテージが上がるとは欠片も考えていない。
 カズキたちはすぐに控え室に移動し、アロアが出てくるのを待つ。護衛のためだ。控え室の近くには、早くもアロアに会おうと男たちが集まっていた。
 出てきたアロアは顔を隠していたので、騒ぎが起こることはなかった。薄汚れたローブ姿で出てくるとは予想していなかったのだ。アロアに気づかない男たちは、すでに帰ったアロアをまだかまだかと待つことになる。それを横目に四人は宿へと直帰した。

「なんというか予想以上の盛り上がりだったね」
 
 盛り上がるだろうとはカズキは予想していたが、予想以上の盛り上がりに少し引いている。

「これだとアロアは外に出られないんじゃない?」

 盛り上がりっぷりを見たアークの率直な感想だ。アークも人のことはいえないのだが。

「出ない方がいいだろうねぇ」
「はい、でません」
「それがいい」

 アロアは即答し、グラッセもすぐさま同意した。
 明日コンテストが終わったあと、すぐに街を出た方がいいかもしれないと考えた四人は荷物をまとめていく。カズキとグラッセが食料などを買いに出て、夜には旅支度は終わっていた。
 翌朝、昨日の様子から行き来の護衛をつけるべきと判断したニーステアが、四人のいる宿に迎えをよこす。
 会場に行く前に、集合場所を決めておきコンテストが終わるとすぐに街をでることができるようにしておいた。
 アークとアロアは控え室へ、カズキとグラッセは会場へ別れる。

「動きづらっ!?」
「人多すぎだろう?」

 カズキとグラッセの苦しげな声が人々の話し声にかき消される。
 会場は隙間のないくらいに人々が押しかけていた。あちこちから気に入った出場者を呼ぶ声が聞こえてくる。中でも多いのがアロアを呼ぶ声だ。
 
「すごい人気だなぁ」
「アロアだから当然だな」
「胸張って自慢しなくていいよ。過保護というかシスコンというか」
「お前だってアークの人気は当然だって胸張るだろ」
「当然」

 迷うそぶりを見せずに即頷いた。

「それだってブラコンだろうに」
「んー……俺はアークに弟を重ねてるんじゃないかなと自己分析してる。
 出稼ぎに出て、そのままアリアハンにいついて、弟と妹の世話を放り出したからね。その代償行為かもしれん。
 まあ、本物の弟妹も大事なわけだが。ああ、グラッセには負けるけどブラコンでシスコンなのかな俺も」

 自覚のなかった自身の一面を嬉しげに認めた。弟と妹に関心があると裏付けることだからだ。
 人々に挟まれ一時間弱、司会がステージ上に現れ、

「第一回アッサラーム美男美女コンテスト決勝戦開催です!」

 決勝開会を宣言した。観客たちはそれに歓声で応える。
 予定通り、午前は男たちの出番だ。司会に呼ばれた様々な色男たちがステージ上に現れ、簡単な質問を受けていく。男たちが現れるたびに会場の女たちは黄色い歓声を上げる。それはアークの出番がきても同じだった。
 
「こちらは旅人のアークさんです」
「こんにちは」

 わずかに緊張した様子を見せ、頭を下げる。
 昨日はただステージで動くだけでよかったので緊張はしなかったのだが、今日は受け答えをする必要があると知って緊張しているのだ。カズキが近くにおらずアドバイスを受けられなかったということも緊張の一因を担っている。
 表情は硬いまま質問に答えていく。

「アークさんは執事の格好をなさってますが、仕事もそういったもの関係なのでしょうか?」
「いえ、冒険者をしてます。この格好は仲間に薦められて」
「そうでしたか。旅をしているということなので、いろんな場所に行ったことでしょう。一番印象に残っている地域はどこか教えてもらえますか」
「そうですね……アリアハンにあるナジミの塔の頂上から見た景色でしょうか。
 これから旅をする大地と果てない海を眺めて、期待と不安を胸に抱いたことをよく覚えています」

 インタビューはさらに続き、好みのタイプなども聞かれる。
 そういった質問に慌てた様子を見せ、今までの真面目な雰囲気から一転して幼げな面も見せることになる。その様子に会場からは可愛いといった声が上がった。
 アークのインタビューは終わり、次の人へと交代する。そして男たちの紹介が終わり、三十分ほどの協議の末に結果が発表された。

「優勝は……」

 楽隊の出す音が会場に広まっていき、それが止まったとき司会は優勝者を口に出す。

「ダルリームさんです! 二位はアークさん、三位はフェエラさん。
 三人はこちらへどうぞ。皆さん、三者ならびに参加者たちにも盛大な拍手をお願いします!」

 呼ばれた三人は司会の横まで移動し、賞金を渡される。ダルリームはそれを高々と掲げ、人々は祝福するように盛大な拍手を送った。
 長く続いた拍手も次第に収まり、ステージ上の男たちは控え室へと戻っていく。
 次は女の部だ。昼を食べに会場へと出る男は少ない。男たちの期待が熱気となって、会場の温度を上昇させていく。男目当ての女性客がいなくなったので、会場は若干広くはなったのだが暑苦しさで先ほどよりも居辛さは大きい。
 まだかまだかと期待を膨らませていく男たちの目に司会が映る。

「お待たせしました! これより美女の部の開催です!」

 司会が宣言した瞬間、歓声が爆発する。物理的な衝撃を持って肌に叩きつけられたほどだ。男共はバカらしいほどにテンションが高かった。なんとなく司会も午前よりはりきっているように見える。
 進行は男の時と同じだ。一人一人司会に呼ばれて、質問に受け答えしていく。
 出場者が出てくるたびに、一糸乱れぬ声援が飛ぶ。アホらしいほどに男たちは一体となっていた。
 そしてアロアの出番がくる。一際大きな声援が飛び、それに押されるようにアロアは後ずさった。この時点ですでに目の端に涙が浮かんでいた。

「皆さんお待ちかね! 優勝候補の一角アロアさんです!」
『アロアちゃーん!』
 
 訓練された観客とはこいつらのような者なのだろうとカズキは確信を抱いている。

「早速いろいろと聞いてみたいと思います」
「え、えーとお手柔らかにお願いします」
「まずは、そうですね。お姉さんか妹さんはいますか?」

 最初に聞くことがそれかと、カズキは突っ込むが周囲の「いいぞー!」「ナイス質問!」という声にかき消された。

「兄が一人だけです」
「それは残念。では次に私と結婚してください」

 この司会テンション上げすぎて、自身の役割を忘れていた。
 司会に向かって盛大なブーイングが飛ぶ。司会の言葉にすぐに反応したのはグラッセだった。

「ごめんなさい」
「そうですか……家に帰りたい」

 求婚を断られた司会のテンションはマックスからゼロへと瞬時に移行した。
 この司会はもう駄目だと判断したニーステアが職員を呼び交代を告げる。
 今このときの司会だけは渡してなるものかと交代要員を追い返し、進行を再開する。それを見てカズキは彼を筋金入りのバカだと判断した。

「質問を続けます。
 昨日今日と着ている衣装ですが、アロアさんの手作りなのでしょうか?」
「いえ、仲間の一人が用意してくれたものです」
「なるほど、その仲間は会場にいますか?」
「はい」
「皆さん! この衣装を準備したアロアさんの仲間に盛大な拍手を!」

 盛大な拍手がカズキに送られた。
 カズキ自身が見たかった姿なので、拍手を送る男たちの気持ちはよくわかるのだが、この男たちと同類なんだと思うと素直に喜ぶことはできなかった。むしろあの衣装を用意したことを謝りたくなってきた。人々がここまで大きな反応を見せるとは思っていなかったのだ。エルフの容姿を持つということを甘く見ていた。
 質問は続いていき、ほかの者よりも時間が多くとられる。いつまで続ける気だとニーステアの判断で、司会ともどもアロアはようやく出番を終えた。
 新たな司会が再開し、インタビューは終わる。
 男の部よりも協議は短く、優勝者が司会の口から告げられようとしている。
 観客たちは誰が優勝するか予測できており、司会が告げるまで静かに待つ。ただ待つのではなく、爆発のためのエネルギーを貯めているようにカズキとグラッセは感じていた。
 そして司会者がアロアの名を告げると今日一番の歓声がアッサラーム中に響き渡った。
 わずかな期間のみ姿を現した幻の美少女伝説が誕生した瞬間だった。以後アロアがアッサラームにくることはなかったので、最上級の美少女がアッサラームにいたとだけ噂が残っていくことになる。
 
 宴会や夕食会の誘いを断りアークとアロアは、カズキたちと合流する。その足で四人は街を出る。
 会場にいないことが知られているのか、アロアを探す声があちこちから聞こえてくる。急いでいたこと、探す声に紛れていたこと、この二つが原因で四人は自分たちのあとをつける者たちがいることに気づいていない。そのつけている者たちもまた、自分たちに遅れて四人のあとを追っている者がいることに気づいていないのだが。
 街から出て五分ほどして四人は止まる。
 
「ここまでくれば一安心だな」

 そういってグラッセは一息吐き、街を振り返る。
 街からはそう離れているわけではないが、魔物が闊歩している街外に出る物好きはいない。外に出てしまえば騒動からは離れられるのだ。

「予想以上に盛り上がったねぇ。ちょっとした記念になればって思って参加を後押ししてたんだけど、今となっては少し申し訳なさもあったり」

 苦笑を浮かべて、カズキは謝った。
 頭を下げたカズキがそのまま地面へと倒れこむ。
 
「兄さん?」

 急に倒れたカズキを心配するアークは急に眠気に襲われた。アロアとグラッセも同じように急に眠気を感じる。だが三人は眠気に耐える。

「ラリホー?」

 魔力的なものを感じたアロアが周囲を見渡す。
 アークとグラッセも周囲の気配を探り、近くの木陰に誰かがいるのを突き止めた。
 相手側もみつかったことを悟り、武器を持ち無言で動き出す。人数は三人。動きから自分よりも弱いとアークは見抜いた。
 
「俺が突っ込むから、グラッセはアロアを」
「わかった」

 返事をもらってすぐにアークは動く。男たちへと移動する際にカズキの背中を踏みつけた。起こすために踏んだのだが、眠りが深いようで起きることはない。
 戦闘はアークたちに有利に進む。男たちも外に出てくるだけあって一般人レベルは超えているのだが、アークたちはそれ以上なのだ。特訓の成果が出ているのだろう。

「止まれ」

 戦闘音の響く中、消えそうな声だったそれはかき消されることなくアークたちの耳に入ってくる。
 声の聞こえたほうへと顔を向けると、弓を持った男がカズキに狙いをつけていた。不意打ちを狙って隠れていたのだ。

「剣を捨てろ。でないと撃つ。呪文も使うな」

 メラを使おうとしたアロアの動きを察して後半を付け加えた。
 男の指示に従い剣を捨てようとしたアークだが、捨てる前に火球が飛んできて弓を持った男にぶつかった。それで弦が燃え、弓は使い物にならなくなる。
 メラを放ったのは指示を無視したアロア、ではない。飛んできた方向はアロアがいる場所とはまったく違う場所だ。
 予想外の事態に慌てる男たちへとアークたちは攻撃を行い、無力化していく。

「お見事」

 戦闘終わると同時に、拍手をしつつ現れたのはテンションが高かった司会だ。
 警戒を解かない三人に、司会は敵ではないと告げる。

「ニーステア様の言いつけで陰ながら護衛をしていた者です」

 どういうことだと訝しむ三人に、男たちを縛りながら事情を説明していく。
 護衛が一人だけなのには理由がある。それはカズキたちの行動が早かったからだ。ニーステアたちは、カズキたちがコンテストが終わってすぐに街から出るとは思っていなかったのだ。同じ理由で人攫いの人数も少なかった。本当ならばもう四人ほど犯行を手伝うはずだったのだ。
 説明の途中でカズキも起きる。なにがあったかわからない様子だったが、話を聞いていくうちに理解したようで、役に立たずどころか足手まといになったと落ち込む。

「詫びと礼をしたいので、一度街に戻ってはもらえませんか」
「街に戻るとアロアが追い掛け回されるかもしれないだろうが」
「否定はできませんね」

 司会はグラッセの反論を認めた。

「ではここで待っててもらうというのはどうです?」

 この提案にはグラッセは反論はなく、アークに判断を任せるとアロアの横に移動する。
 カズキとアロアもアークに任せると黙ったままだ。

「長くは待ちませんよ?」
「ありがとうございます。ついでにこいつらを見張っててもらえると助かります」

 司会は頭を下げ、街へと走って戻る。
 四人は再び人攫いがくるかもしれないと警戒したまま、司会を待つことにする。
 地面に転がっている人攫いたちは、どうにか縄抜けできないかともぞもぞ動いてるが、縄抜け対策をとった結び方をされているようでいっこうに成果はでない。
 そのまま時間が流れていき、一時間も経たずにニーステアを含めた自警団がやってきた。
 自警団員たちはちらちらとアークとアロアに視線を向けつつ、転がっている男たちを台車に積んでいく。

「お二人のおかげで人攫いの一部を捕らえることができました。
 事前承諾なく囮にしたことは許されないことだと重々承知しております。すみませんでした」

 深々とニーステアは頭を下げる。
 アークは気にせず、人攫いが捕まったことを喜んでいる。アロアとグラッセはアークほどお人好しではいられず、人攫いが捕まったことを喜ぶこととニーステアの勝手な振る舞いに憤ることが半々という思いを抱いていた。カズキは落ち込んだままだ。

「囮のかいあって、明日以降の被害は減っていくことと思います。
 これはお詫びです、お受け取りください」

 五百ゴールドとアイテムの入った袋をアークへと差し出す。アイテムは種が少し、毒蛾の粉と薬草と満月草が三つずつだ。

「アッサラームにお越しの際は私を訪ねてください。精一杯おもてなしさせてもらいます。
 なにか困ったことがあれば、できる範囲で協力しますわ」

 本当はコンテストで人気を博した二人を商売関連で利用したいのだが、これ以上の勝手な振る舞いはさすがに自重する。
 後日イシス関連の騒ぎで、アークが勇者だと知ったニーステアは自重してよかったと心底安堵することになる。勇者を商売に利用したと知れ渡ると、各国からの批判が集中し利益よりも損失のほうが大きくなるのだから。

「そのときはお願いします」

 アークに言葉にニーステアは深く頷いた。
 四人はニーステアと自警団に見送られ、イシスへ向けて出発する。
 ニーステアは商売関連で、自警団はアークとアロアと親交を持ちたいという理由で、別れを惜しんでいた。

 アークたちは旅が終わっても知ることはなかったがこの人攫い、実は魔王軍とも関連があったのだった。
 ここでさらわれた者たちのほとんどが、鬼面童子の人体実験になったり、サマンオサの王都送りになったり、バラモス城に餌として送られていたのだ。
 アークたちは知らず知らずのうちに、魔王側に小さなダメージを与えたということになる。
 人攫いはアッサラームだけで起きているわけではないので、阻止したところで大きく意味があるものではない。
 だが勇者アークが魔王軍に明確なダメージを与えたのはこのときが初めてなのだ。
 本格的な勇者としての活動はここから始まったといえるのかもしれない。


   17-1へ

生まれ変わってドラクエ 16-1

 アッサラームは一都市だ。その賑わいはカズキたちがこれまで見てきた王都にやや劣るくらいで、一都市としては破格のものだ。
 商人が集まり、多くの物が溢れている。お金とコネが用意できれば買えないものはないとまで言われている街だ。
 道行く人々は褐色白色黄色人種が入り乱れ、様々な地域から人間が集まっているとわかる。
 だがこの賑わいもバラモス登場前に比べると小さくなっているほうだ。魔物の活動活性化により商人の行き来が難しくなったせいだろう。
 
 今アッサラームでは予定外のイベントが準備されている。それは十日ほど前に急遽決まったもので、その発端にカズキとグラッセが関わっていた。
 トンカントンカンと音を響かせているイベント会場予定地は完成間近で、明日にもイベントが始まろうかという勢いだ。
 その会場前にグラッセとカズキが立っている。グラッセの雰囲気は暗い。逆にカズキは明るい。
 グラッセは現状の発端となったことを後悔していて落ち込んでいる。カズキはお祭り騒ぎを純粋に楽しんでいるのだ。
 グラッセがこんな様子を見せている原因は、彼らがアッサラームにやってきた日まで時間をさかのぼることになる。


「ここがアッサラーム」
 
 賑やかな街を見てアークが感心した様子を見せている。
 カズキはここについて知っている情報を述べるため口を開く。
 
「世界有数の商都だね。
 南の港は寂れ、東へと繋がる洞窟を閉ざしてしまい人の流れは減ったが、それでもこれだけの賑わいを見せる街」

 アッサラームに属する港は西にもあり、そちらは南の港ほど寂れた様子は見せていない。なぜならば西の内海はその狭さのおかげで、ロマリアとポルトガの海軍が定期的に魔物を駆除できている。よって他の海よりは治安がいいのだ。といっても完全に安全とはいえず、一般人が船に乗ることは禁止されている。内海を移動できるのは軍船とそれに警護された貿易船のみとなっている。民間船を警護できるほどの軍船の余裕はない。ごくまれに幽霊船が見かけられているが、見間違いだろうとその存在を認められてはいない。
 ポルトガに行くためにアークたちは遠回りしている。ロマリア王に頼めば軍船に乗せてもらいポルトガに行くことができるかもしれない。アークたちはそれに気づいていないが、ロマリア王は気づいていてその提案を伏せていた。そこにはちょっとした思惑があり、それに各国の王も関わっていた。この思惑を知るのはアークたちが船を手に入れたときだ。

「ルイーダの酒場で噂には聞いていたが、直に見ていると活気が予想以上だな」
「俺も故郷に来ていた旅商人に話は聞いていたが、ここまでの活気とは思ってなかった」
 
 グラッセの言葉に同意だとアロアも頷いている。

「商人が多いってのが一番の特徴だな。あと娯楽も多い。
 たちの悪い商人もいるらしいから買い物するときは注意するように。
 掘り出し物があったりもするらしいけど、目利きできないとみつけだすのは無理だろう」
「兄さんでも?」
「んー俺はみつけることできると思う。でも派手にやると商人に睨まれることになりそうだ。
 やるなら小遣い稼ぎ程度に止めておいた方がいいだろうなぁ」
 
 その小遣い稼ぎを実行する気満々だったりする。

「ここなら今使っている物以上の装備が買えるだろ」

 カズキはロマリアで買った鉄棍を見る。半年近く使ってきた愛用の武器は細かな傷が多くついていた。カズキは自身の武器を代える必要は感じていない。大きく折れ曲がっているわけでもないのだ。
 代える必要があるのはアークの剣とグラッセの手甲だ。剣は小さな刃こぼれが多く、切れ味を鈍らせている。手甲は金属部品が折れ曲がり取れかけている。

「装備を整えるときは俺と一緒に行くからな?」

 三人に念を押しておく。三人が勝手に買う心配はないが、一応言っておいた。
 それに三人は素直に頷く。
 宿をとった四人は少し休憩し疲れをとってから街に出る。消耗品の補充をアークたちに頼んだカズキは、一人ルイーダの酒場へと向かう。その途中で早速掘り出し物を探していき、三つほど年代物の茶器や楽器をみつけ購入していく。
 それらを抱えたままルイーダの酒場で、情報を購入していく。特に目立った情報はなかった。ただ一つ気になったのは魔物が少しだけ減ったという情報だった。詳しいことはルイーダもわからず首を傾げていた。

「ほかに聞きたいことはあるかしら?」
「二つほど。
 これを売りたいんで古物商を紹介してもらいたい。それほど高い物でもないんで、そこそこの規模の商人がいい」

 カウンターの上に置いていた茶器などをルイーダはちらりと見る。
 商都に住み商人たちとの交渉が多いだけあって、このルイーダも多少は目利きができる。
 大雑把に価値を推測していき、ちょうどいいと思われる商人の居場所をカズキに教える。

「もう一つは、綺麗どころがいてちょっとくらいはおいたも許される、そんなサービスのいい酒場があれば教えてもらいたい。予算はそれなりに用意できる」

 こちらは息抜き用に聞いているのだ。ここのところ気合入れっぱなしだったので、息抜きがしたくなっていたのだった。
 遊ぶための資金は古物を売ったお金があてられる。
 娼婦のことを聞かないのは病気をうつされることを恐れてだ。娼婦も評判に関わるだろうからそういったことには注意しているだろうが、万が一ということもありカズキは旅に出てから一度も娼婦のところへと行ったことはない。
 アリアハンにいた頃は何度か行ったことはある。そのことがセラシエールにばれていると知ったとき、カズキは恥ずかしく自室で身悶えることになった。恐ろしきはルイーダの情報網だ。

「二件ほど知ってるわ。料金は高いほうと安いほうどちらがいい?」
「違いは?」
「金持ち用と庶民用って感じね」
「金持ち用ってコネがないと駄目なんじゃ?」
「お金さえ払えば問題ない。一晩で一人百ゴールドってところ。安い方は四十ってとこ。
 金持ち用は上手い酒や珍味がでてくるけど、安い方も不味いものはでない。むしろそこらの酒場よりも上手いものがでる」
「安い方で。高いほうは堅苦しそうだ」

 安いといってもそこらの酒場より高い。例えばルイーダで一晩飲み続けて最大十五ゴールドほどか。
 ルイーダはわかったと頷いて庶民用の酒場を教える。
 それらの情報にお金を払い、礼を言ったカズキは早速古物商のもとへと向かった。
 元手三十ゴールドで手に入れた品物は、百五十ゴールドという五倍の値段で売れた。
 ホクホク顔で三人に合流したカズキは四十ゴールドずつ、アークとアロアに小遣いとして渡した。

「俺の分は?」

 もらえなかったグラッセが少し寂しそうに聞く。

「あとで一緒に酒場に行くつもりだから、その資金に消える。
 行かないなら渡すけど?」

 いろいろとサービスのいいらしい酒場だとこっそり伝えられ、グラッセは楽しみだと頷いた。

「飲み過ぎないようにね、兄さん」
「お兄ちゃんも」

 カズキとグラッセはわかったと返し、四人は買い物を再開する。
 この買い物で、アークは鋼の剣を購入。関税や輸送費の関係か少し高めだったが、戦力アップのために躊躇うことなく購入を決めた。
 グラッセは新しい手甲を購入。以前のものは手を覆っていただけだったが、今回の物は肘手前まで覆う物だ。稽古着だった胴体の装備も武闘着へと変更されている。
 アロアは旅人の服から、鉄線が仕込まれた布のローブへ。体力がついてきて、重めの装備も着ることができるようになっている。これはアロアだけにいえることではなく、全員にいえることだ。全身鉄装備のアークも今ではこの重量感に慣れている。
 カズキもより重厚な鎖かたびらを再度購入し、防御力が上昇している。
 全員の装備を整えたことで、お金の大半が消えていった。残金は十日ほどアッサラームに滞在できるくらいだ。四人はアッサラーム周辺で修練と平行し魔物と戦うつもりなので、お金に関してはそれほど心配していない。
 
「それじゃ行ってきまーす」
「ほんと飲みすぎないようにね」

 夕食もそこそこにカズキとグラッセは酒場へと向かう。
 楽しみ楽しみと笑いながら、紹介してもらった店に入っていった。入店だけで十五ゴールド払い、初めての来店ということで軽く注意点を聞いたあと二人はテーブルへと案内された。
 店内は適度に賑やかだ。あちこちから笑い声が聞こえてきて、暗い雰囲気はない。ガード役の男たちは目立たない位置に配置されている。だがすぐに動けるように遠くへと追いやられているわけではない。客は商人や臨時収入のあった冒険者など。ホステスも綺麗どころが多い。二人の相手にやってきたホステスもそれになりに美人といえる。
 実はこういった店にくるのは初めてのグラッセ。最初はやや硬い表情となっていたが、上手くリードしてくれるホステスのおかげですぐに楽しげな表情となった。
 酒宴は進み、酔いも進んでいく。そういったとき話題の一つなのだろう、ほかのテーブルから二人のテーブルに届いた声がある。

「やはり一番の美人といったらシェテリーゼだろう!」
「いやいや、馬屋のフラワーズもなかなかのものだ」

 これにほかの客も自身が一番と思う女を挙げていく。
 次々と聞こえてくる声に、グラッセがずうずとした様子を見せ始める。酔って自制が効かないせいか、すぐに立ち上がり討論に参加する。

「俺の妹のアロアが一番だーっ!
 容姿だけじゃなく、気遣いもでき、最近は芯の強さも少しずつだが得てきている!
 そんなアロアがそこらの女に負けるわけがない!」

 盛大な妹自慢に周囲もやんややんやとはやしたてる。
 参加していないカズキは笑いながらグラッセを見ている。

「グラッセも酔ってんなぁ」
「お客さんは参加しないの?」
「一番と思う人がいないわけじゃないけど、まあ見てるだけでいいかな」

 カズキが一番と思うのは、姉のように慕うセラシエールだ。だがこの街にいない人物だから、いい女だと証明しようがないので参加しようとは思わなかった。

「それに目の前に綺麗な花があるんだ、今はこちらを見ていたい」

 少しきざだったかと。苦笑が浮かぶ。
 相手のホステスもそう思ったようだが、褒められているとはわかったので笑みを浮かべカズキのコップに酒を注ぐ。
 コップを口に持っていきつつ白熱する討論を見て、ぽつりと漏らす。

「いっそのことミスコンでも開いて一番決めればいいのにな」
「ミスコンってなんです?」

 カズキの声を聞き逃すことのなかったホステスが聞く。
 ドラクエ6でコンテストがあったので、もしかしたらこの世界にも似たようなものはあるかと思っていたカズキだが、この反応でないのだと知った。
 コンテストのことを大雑把に説明していく。複数の審査員を準備して、いくつかの審査基準を出題し、それらの合計点で一番を決める。もしくはふるいにかけ、最後に残ったものを一番とする。説明はだいたいこんな感じだ。

「面白そうですね。そのアイデアもらってもいいですか?」
「俺が考え出したものでもないし、断り入れなくてもいいよ。
 もらうってことはコンテスト開くつもり?」
「ええ、大きな催しは街に活気を出させますからね。バラモスのことなどで、以前に比べると雰囲気が沈みがちですし。ここらで陰気を大きく吹っ飛ばすようななにかをしたいと思っていたのですよ」
「……ただのホステスじゃなかったりします?」
「秘密です」

 唇に人差し指を当て、ウィンクをする様子が決まっている。表情は悪戯めいたものとなっていて、ただものではないという言葉を肯定しているようにも見える。

「まあ酒の席で野暮なことは聞くもんじゃないか」
「ええ、せっかく大金払っているんですから楽しまないといけませんよ」

 このあとは純粋に酒宴を楽しんでいく。美味い酒、美味い料理、中身はなくとも笑える会話、ちょっとしたおいたもあった。やりすぎてはいないので、追い出されることもなく無事に店をでることができた。
 カズキたちが宿に帰ったのは日付が変わり、さらに時間が過ぎた頃だ。翌朝の起床が辛かったのは言うまでもないだろう。
 リフレッシュしたあとは再び修練となり、街の外で素振りや実戦を行っていく。
 そうして四日経ち、イシスまでの旅費が貯まり四人がそろそろ出発のことを考え始めた頃、街中に張り紙が張られた。
 そこには、アッサラーム美男美女コンテスト開催のお知らせ、と書かれていた。参加者の名前も書かれており、アロアも名前もあった。
 コンテストというものがいまいちわからないといった面々に、カズキが説明する。

「なんでアロアがそれに参加することになってんだ!?
 アロア、参加申し込みしたのか?」
「出してないよ!? 出すわけないよ!」
「どういうことか、企画したところに聞きに行ったら?」

 カズキの言葉に頷いたグラッセとアロアは宿を出る。そのあとをカズキとアークも追う。参加するつもりがないのならば、このままイシスへと向かい不参加という形をとればいいだけということを四人は思いついていなかった。
 歩きながらカズキは、あのホステスはこういったことを実行できる地位にいたんだなとのんびり考えていた。
 四人が道行く人に聞きながら向かった先は町役場だ。役場ではコンテストのことに聞きにくる人間がいると予想していたようで、専門の臨時部署を作っていた。そこで説明を受けるように受付で指示された四人は、臨時部署の人間を捕まえ事情を話す。
 その役人によると参加者を決めたのは部署のトップで、自身にはどうする権限もないとのことだった。三時間ほど待つならば会うことも可能なので、どうするかと問う役人にグラッセとアロアは即座に頷く。
 役人たちの邪魔にならないよう隅で待ち続けること三時間弱。待つように告げた役人が一人の女性を連れてやってきた。
 
「あ」

 カズキが思わず指差し声に出す。あのときのホステスだったからだ。
 相手もカズキに気がつき頭を下げる。
 
「先日はいいアイデアをありがとうございます。
 改めて自己紹介を、私はアッサラームを運営する幹部の一人ニーステアと言います」
「兄さん知り合い?」
「酒場に行ったときにね」

 酒場という単語を聞いてグラッセも、ニーステアのことを思い出した。グラッセの相手をしていたホステスは別人だったので、カズキが言わなければ気づかなかった。

「そういえば見覚えあるな。そんな人がなんで酒場にいたんだ? というかここの関係者が感謝してるってことは。このイベントにカズキが関わってんのか?」
「ええ、あの席でコンテストのことを話したのがカズキさんですよ」
「ほーう、ということはだ。アロアが参加するってことになった原因はカズキにあるんだな」

 光り放つような目でグラッセはカズキを見る。

「え!? 俺が悪いことになんの?」
「まあ、大元はそうかもしれませんが、主な原因はあのとき盛大に妹自慢していたあなたにありますよ?
 あのとき挙げられた人物は強制的に参加というふうに手配しましたし」
「俺の自爆なのか?」
 
 いやいやあの場で自慢しないという選択肢はない、とグラッセは一人呟く。

「あの!」

 当事者であるアロアが勢い込んで話しかける。

「はい?」
「私の参加を取り下げてもらいたいんですけど」
「あなたがアロアさん?」
「はい。
 大勢の前に出て注目されるなんて恥ずかしいので、出たくないんです」

 フードで顔の大部分を隠したアロアを見て、ニーステアは失礼と断ってフードに手をかける。そして自分にだけ見えるように上げた。
 見えた容姿にニーステアは驚いた。人間とは一線を画した容姿がそこにあったのだから。成人にはまだ遠いからか色気は少ないが、あどけなさに鋭さが少し混ざった、大人になりかけの少女。開花間近の蕾といった印象を抱いた。

「……これはお兄さんが自慢するだけのことはあるわ。コンテストを盛り上げるためますます手放せなくなったわね!」
「いや参加したくないんですけど」

 渋るアロアに追随するグラッセ。その二人を宥め、煽て、揺さぶり、説得していく。
 海千山千の商人たちと渡りあってきたニーステアと口論で敵うわけはなく、いつのまにか参加を承諾してしまうということになっていた。おまけにアークも参加することになっている。
 話が終わりアロアとグラッセはなぜだと首を捻っていた。巻き込まれた形のアークも似たようなものだ。カズキはこれも旅の思い出だと一人肯定的に頷いていた。なんの害も苦労もないので気楽なものだ。


 参加を承諾したあと詳しい話を聞き、書類に必要事項を書き込み、ある程度の準備金ももらった四人は宿に戻っていった。参加を強制するので費用はこちら持ちだと言ってニーステアが渡したのだ。
 太っ腹なことだとカズキは思ったのだが、なんの思惑もなくお金を渡したわけではないのだ。
 ニーステアはコンテストのついでに、一つの問題を解決できるかもしれないと考えていた。
 それは人攫いの問題だ。ここ十年そう多く攫われるわけではないのだが、人攫いが起きていた。犯人は警戒心が高いようで、アッサラームの自警団は犯人の足取りすら掴めていない。
 コンテスト上位入賞者を、その犯人に対しての囮にできないかとニーステアは思いついたのだ。その囮役にアークとアロアが適合した。二人ならば上位に入る可能性は高い。
 皆が認めた綺麗どころで価値が高まる点、旅人であるがゆえに行方不明になっても魔物に殺されたのだろうと判断され怪しまれにくい点。
 この二つから犯人に狙われやすいのではとニーステアは睨んだのだ。簡単なプロフィールはもとから紹介時に流すつもりだったので、二人が旅人だと犯人にもわかる。これで犯人も動きやすくなるだろう。
 このことをカズキたちには伝えてはない。知らせた場合、行動に不自然さが出てそこから犯人は手を引く可能性があるからだ。かわりに一般人を装った警備をつけるように手配している。
 すべてが終わったあと謝罪と謝礼金は払うつもりだ。準備費用として渡したのはその前金となる。

 ニーステアがこのようなことを考えているとは欠片も思わず、四人は参加のために動き出す。
 アロアはエルフということは隠しておきたいので、耳をどう隠そうかと皆に相談し、カズキがアイデアを出した。
 カズキのアイデアは手品を元にしたものだ。客に見せたくないものは、ほかに注目を集めることで目立たなくするといった手品の技法だ。
 それを実行するためにカズキは一人、材料集めに宿を出た。このついでにアーク用の衣服も探し、執事が着るような服をみつけた。若く有能な執事というコンセプトでいこうと決め、購入する。
 衣服店を中心に見て回り、廃棄となっているそれをみつけた。
 店の主人に承諾を得て、宿屋に持ち帰る。

「それがカズキの探していたものなのか?」
 
 グラッセはボロボロな犬のきぐるみを指差した。

「そのとおり。まあここから改修するんだけどね」

 防具としてきぐるみがあるように、イベント用のものとしてもきぐるみはある。カズキはアリアハンでも何度か見かけていた。だから探せばみつかるだろうと確信していたのだ。
 
「この耳の部分をカチューシャにでもくっつけて、当日につけてれば耳は隠れるだろ?」

 きぐるみの頭部についている垂れ耳を指差す。

「ああ、なるほど。それならたしかに隠れますね」
「あとはこっちを少し露出度を高く改造すれば、太ももとか肩とかお腹に注目が集まって、耳なんか気にしないさ」

 ようはちょいとセクシーな犬のコスプレだ。女遊び人も似た系統なので、珍しいということはないだろう。
 アロアは自身がそれを着た図を想像して、顔を赤くしている。

「腹とか露出させるのか!?」
「犬耳だけつけるのは不自然だろ?」
「そんな格好はさせられん! ましてや野郎共に見せるなんぞもってのほかだ!」
「じゃあ、耳を隠す方法ほかに思いつく?」
 
 熱いグラッセにカズキは冷静に接する。
 なにかアイデアがあるというわけではないようで、グラッセの勢いはすぐに小さくなった。
 ここで参加しないと再び言い出さないことに人の良さが出ている。
 明後日までになにか思いつけばそっちを優先するということになり、グラッセは真剣に考え始めた。
 カズキとしてはアロアのコスプレ姿を見てみたいので、なにもアイデアが出ないことをルビスに祈っていた。ルビスとしては、こんなことを祈られても困るだろう。
 この祈りが通じたのか、アイデアが出ることはなくイベント当日となった。

  16後へ

2010年05月02日

感謝の47

感想ウェブ拍手ありがとうございます

》でんでん犬さん
原作に関わらない主人公を、というのが原点ですから
ショウも頑固な性格ではないから、もっと事態が変化してなかったり、グランがもっとショウにかまっていたら原作に関わった可能性もあるんですよね
グランが頼み込むタイミングが悪かった
ショウとの会話で、放り出すのだけは許されないとグランも理解しましたから、なんとか立ち上がりました
人物紹介はいろんな人たちの動きがみられたから、面白いといってもらえたのかな


小説進行を遅らせている世界樹の迷宮がようやく四層ボスに到着です
いままでのボスと同じく一回目は全滅でした
状態異常がやっかいすぎる
一作目二作目では使わなかった休養を初めて使って、対策を練ってます
これで負けたらレベル上げ頑張るかなぁ

ee383 at 22:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

生まれ変わってドラクエ 15

「んっ……あーっよく寝た」
「起きたか」

 たっぷり半日眠り、疲れが取れたカズキが目を覚ますと、先に起きていたオルクが声をかけた。
 筋肉痛で痛む体を起こし、オルクへと向き直る。薬草で筋肉痛は鎮まることはないのだ。いつもはマッサージを受けてから眠るので筋肉痛はないのだが、昨日は疲れからすぐに眠ったので筋肉痛が発生したのだった。

「あ、オルク。先に起きてたんだ。ほかの三人は、まだ寝てるか。
 外は……うわ真っ暗」

 窓を開けると暗い空と星と雲が視界一杯に広がっていた。
 村の中も静かで、人が動いている気配はない。

「俺もついさっき起きたところだ。
 星の位置から推測するに、夜明けまであと二時間弱といったところだと思う」

 おぼろげな記憶を辿り、寝ていた時間を推測しカズキは驚いた。だが洞窟での戦いを思い出し、疲れをとるためだとすぐに納得した。

「理由はわからないけど見逃してもらえた、それでもよく生き残れたもんだ」
「そうだな。正直、俺は生き残れるとは思ってなかったからな。
 あの強さの魔物なんぞ、生まれて初めて会った」
「そこらへんの雑魚じゃなくて、おそらく幹部クラスの強さなんだろうね、あれ」

 つまりはヤマタノオロチやボストロールもあれくらいの強さの可能性もあると思い至り、重い溜息が出る。
 正直、すぐにでも逃げ出したかった。けれどもカズキが逃げるとグラッセたちも抜けるかもしれず、アークだけでそれらに挑むことになる可能性も考えられ、ここでの離脱は気が引けた。

「……少しでも強くならないとなぁ」

 この先、アークに付き合い生き残るにはそれが一番の近道だと結論が出た。当然といえば当然の結論だが、心の底から強さを求めてはいなかったカズキには決意が必要なことであった。

「頑張ってくれとしか言いようがないな」
「ん、頑張ってみる」

 レベルはまだ十代で、きちんと努力すれば伸びていくと知っているのでやる気はある。限界が九十九だと知っていて、それまで成長が止まることはないとわかっているだけ、ほかの人間よりも気は楽だ。

「頼りっぱなしというのも悪いから、女王に支援できないか聞いてみる。
 鬼面童子の強さは、里を全滅は無理でも壊滅はできるからな。そこまでの強さの魔物がいると知らせれば、少しは手を貸すことも考えるかもしれん」
「支援が可能なら眠りの杖と祈りの指輪がほしい」
「どちらもエルフの宝なんだが、そういったものがあるとよく知ってたな?」
「情報収集のたまものですよ」
「どこまでエルフのことを知られてるんだろうな?
 一応、その二つのことは伝えておく。だが期待はしないでくれ。
 もしそれらがもらえた場合は、ノアニールの村人に預けておく」
「わかった」

 オルクは荷物を手に取り、立ち上がる。

「俺は里に戻る。情報を早く伝えたいし、ルビーのこともあるからな」
「せめてアークたちに挨拶って言いたいけど、二人はいつ起きるかわからないしね」

 復活したときは最低でも丸一日は眠り続けるのだ。
 早く帰りたいオルクに、二人が起きるまで付き合わせるのは酷だとカズキも理解している。

「アン王女のこと頼む。それから道中の無事を祈っている。
 こう言っていたと伝えておいてくれ」
「必ず」

 オルクは一つ頷いて、窓から外に出た。
 カズキが窓から外を見たとき、オルクはキメラの翼を使い里へと帰ったところだった。
 濡らした布で軽く汚れをとったあと、することがなくなったカズキは武具を手に取った。

「武具の手入れでもして時間を潰そ」

 暗い中、出歩くのも村人たちに迷惑だろうと部屋の中で時間を潰すことにした。
 戦闘の連続で、武具は傷ついていて手入れは必要なのだ。バギクロスをまともにくらったアークたちは職人の手入れが必要だろうが、余波を受けただけのカズキのものは自分で修復するだけで十分だ。
 ちまちまと作業を進めていきやがて夜が明け、村人たちが動き出した頃、アロアが目を覚ました。

「あ、おはよ」
「……おはようございます」

 着替えずに旅衣装のままベッドに入っていることに疑問を感じているアロア。すぐに寝る前のことを思い出し、安らかな寝息をたてるグラッセを見てほっと胸を撫で下ろした。

「水場で汚れを落としてきたら?
 顔も洗えば眠気もとぶって……そういや顔を晒したくないか。
 俺部屋から出るから、その間に身支度整えるといいよ。
 桶とか取ってきたほうがいい?」
「できればあったほうが」
「わかった」

 武具を床に置いて、カズキは部屋を出る。従業員に桶を借りると一声かけて、水を入れた桶を部屋まで運ぶ。着替え中かもしれないのでノックすると、すぐにアロアが扉を開ける。

「持ってきたよ」
「ありがとうございます」
「食堂でご飯食べてるから、身支度終えたら食堂にくるといい」

 それだけ言って再び部屋から移動する。
 昨日のカズキたちの様子からなにがあったか気になり聞いてくる従業員に、手強い魔物と鉢合わせ死にかけたとぼやかして答え料理を待つ。
 生還の祝いなのか、少し量をサービスされた料理をゆっくりと食べていく。
 二十分かけて食べ終えた頃に、アロアが食堂にやってくる。
 アロアは食欲がないのか果物だけを頼み、すぐに運ばれてきたそれをゆっくり食べていく。
 元気のないアロアに気遣ってか、カズキのときとは違い、話しかける者はいない。

「……ごちそうさま」
「アロア、気分転換にそこらへん散歩行かない?」

 カズキの誘いにアロアは首を横に振る。

「私はいいです。一人で行ってきて。
 兄さんたちのそばにいないと」
「アークたちはまだ起きないからすることないと思うんだけどな。
 ああ、汚れ落とすくらいはしとこうか」

 二人は席を立ち、部屋に戻る。
 カズキはアークを、アロアはグラッセの防具を外し、濡れ布で拭いていく。

「これで終わり、あとは起きたときに自分たちでやってもらわないとね」

 乾燥していた血や土ぼこりを拭き取られたアークたちからは痛々しさが大分減った。

「ちょっと外に出てくるけど、アロアはここにいる?」
「はい」

 沈んだままの返事に頷きを返して、カズキは愛用の鉄棒を手に取る。
 それを見たアロアが声をかけた。

「あの」
「ん?」
「武器なんか持って、なにをしに行くんですか?」
「特訓」

 簡潔な返答にアロアはポカンとした表情を見せた。

「……カズキさんは……」

 ここでアロアは言葉を止める。

「俺がなに?」
「カズキさんはあんなことがあったのに怖さとか感じないんですか!?
 わ、私はまたあんな魔物に出会うかもしれないと思うと体が震えてきます」

 その言葉に偽りはなく、今もアロアは小さく震えている。それに耐えようと、両手を強く握っている。

「俺も怖くないわけじゃいないんだけどね。
 アークについて行くからには怖がっているだけじゃいられないと思って、本格的に特訓始めようと思ったんだ」
「特訓したところで人の力が通用するわけないじゃないですか!?
 お兄ちゃんたちがなすすべなく倒されたところ、カズキさんも一緒に見てたのに!」
「そう、だね。今回はこっちの惨敗。次会ったときも似たような結果になるかもしれない」
「わかってるのに、特訓しようと思うんですか?」
「でもね? まったくダメージを与えられなかったわけじゃないよ?
 少しだけ、うちの最大戦力のアークが全力出して少しだけだけどダメージは与えたんだ」

 これは鬼面童子のHPを見て確認しているから間違いない。

「これって俺たちが今より強くなればもっと有効的な打撃を与えれるようになるって証拠だと思うんだ。
 アロアはそうは思わない?」
「わ、私は……わかりません」

 カズキのようにステータス画面を見ることができるわけではないので、ダメージを与えたことはわからず、そのような考えはできないのだろう。

「俺たちはまだまだ強くなる、なれる! それを俺は確信してる。
 むしろ人間がたどり着ける限界まで、まだまだ遠いと思ってる!」

 ステータス画面を見ることができるからこそ、強く言い切れる。

「どうしてそこまで言い切れるんですか? 人間ってもっと弱いと思う」
「人間もそこまで捨てたものじゃないと思うよ? その気になれば一人で魔王倒すことだって可能だろうさ」

 ネット動画で勇者一人旅なんてものがあったことを思い出している。
 本当に一人で倒すことができるかはカズキにも断言はできない。しかし努力し尽くした人間は魔王に迫るのではと思ってもいる。

「一人でなんて無理に決まってます!」
「やろうとした人がいるだろ?
 アークの父親オルテガさん。魔王討伐を実行に移したくらいだから、すごく強かったと思わない?
 ほかには英雄サイモンも強かったみたいだし、ここ最近だとカンダタもアークより強かった。
 ほら人間にも強い人はいるだろ」
「で、でもそんな人たちは才能があったから!」
「確かに才能はあったのかもしれない。
 でもそれ以上に努力したんだと思うよ? 才能に胡坐かいた状態で得られる強さなんて脆いんじゃないかな。
 それに才能だけで戦えるのならアークは毎日訓練してないよ?」

 日々の訓練を欠かさないアークをアロアたちは見ているから説得力があった。

「それでも私は……」
「アロアだって強くなってるよ? 自分でもわかってると思うんだけど?」
「呪文は覚えたけど、それだけじゃ強くなったなんて……」

 アロアは自信なさげに俯いている。

「覚えた呪文の数だけじゃないよ。
 力も体力も俊敏さも状況判断も、出会った頃より確実に上がってる。
 一緒に旅を始めた時よりも、移動時に疲れた表情は見せなくなってる。これって力や体力がついてきたってことだよ?
 呪文だってただ使うだけじゃなく、メラだったら軌道を曲げることができるようになったし、イオも狙った位置に爆発の中心を持っていけるようになった。
 ほら出会った頃より成長してる。
 今よりも呪文を覚えたらさらにできることは増えるし、体力とかもまだまだ増加中。
 これで強くなれないとか嘘だよ。
 アロアが多彩な呪文を覚えたら、俺たちも助かるんだ。今でも十分助かってるけどね」

 カズキが強く断言するのでアロアの心は揺らぎ、そうなのかもしれないと思い始める。

「まずは信じよう、人間の底力を!
 誰もがそこまではやれないと思って投げ出すから、そこで止まるんだ。
 違うんだ! オルテガさんやサイモンさんやカンダタが証明してる。人間はやればできるってことを。信じて突き進めば、多くの人々が限界と感じているところは、ただの通過点にすぎないってことを」
「……私も誰かに頼ってもらえるくらいに成長できるかな?」
「できると俺は信じてるよ」

 カズキの嘘偽りない言葉が、アロアの心に浸透していく。
 断言できる根拠がゲーム知識というのが少し情けないかもしれないが、少なくともアロアの心には響いた言葉だった。
 この会話のおかげか、アロアの体の震えは小さくなる。完全に消えないのはやはり恐怖心がまだあるからなのだろうが、今の実力差では仕方のないことだろう。むしろ恐怖心を感じず、無謀な思いを抱くよりはいい。

「私も自分を信じて頑張ってみます」

 そう言ったアロアに、カズキは荷物を漁り、紙束を取り出す。ジェキンスから受け取った合体呪文などのレポートだ。カズキには資質が足りず扱えるような代物ではないが、エルフとなっているアロアにはこれ以上ない有用な品だろう。
 これを渡すことはカズキなりの信頼の証だ。アロアならばこの技術を悪用しないと信じた。

「これはアロアの力になるはずだ」
「なんですか?」

 渡されたレポートの表紙をまじまじと眺めている。そこには『魔法の可能性について』とのみ書かれていて、タイトルからは内容は読み取れない。

「合体呪文とかの研究内容が書かれたレポート。
 アロアなら使えこなせると思うから。まあ、今はできることの幅は狭いだろうけど」
「合体呪文って洞窟で魔物が使ったものですよね?
 危なくないですか?」
「あれとはまた違った方法が載っているはずだよ。一度全部読んでみるといい。疑問が湧いたらそれを書いた人に聞きにいけばいい。
 じゃあ俺は出かけてくるから。ちょっとアリアハンまで戻ることにしたんで、夜まで帰ってこないかもしれない」
「アリアハンまで?」
「ちょっと用事がね。いってきます」

 いってらっしゃいという返事を背で聞いて、カズキは宿を出てキメラの翼を使う。
 アリアハン王都の入り口に着地して顔なじみの門番に挨拶してから街へと入る。ルイーダの酒場への道を歩く。ここらの人々には顔を知られているので、人々の視線がカズキへと集まる。それらに頭を下げるなど反応を返し、酒場へと入る。
 顔なじみの冒険者たちと軽く挨拶を交わし、まっすぐセラシエールのいるカウンターへ歩いていく。
 
「おかえりカズキ」
「ただいまセラ姉さん」

 無事の帰還を喜ぶようにセラシエールは笑みを浮かべている。
 カウンターの椅子を薦め、オレンジジュースをカズキの前に置く。セラシエールは酒を出そうとしたのだが、このあと用事があるからとカズキが断った。

「あなたの旅は終わったの?」
「まだだよ。今日帰ってきたのはセラ姉さんに紹介してほしい人がいるからなんだ」
「誰?」
「棒術の上手い人を」

 棒術が上達するコツや訓練法を聞きたくて、アリアハンまで戻ってきたのだ。
 コレッソに基本を習ったとはいえ、コレッソも棒術を専門にしているわけではない。正確な指導をしたとは言いがたいのだ。
 これから実力を上げるためには、しっかりとした基礎が必要になってくるだろう。そのことをアロアを話している途中に気づいたのだった。
 強くなりたいのならばレベルを上げればいいと思うかもしれないが、レベルアップで得られるのは身体能力上昇と保有魔力の増加と呪文使用適正値の上昇だけだ。
 力が強くなっても攻撃を当てられなければ意味はないし、頑丈になってもしっかりとした防御をとらないと余計なダメージをくらう。技術が伴わなければ、優れた身体能力も宝の持ち腐れとなってしまう。

「人の紹介もうちの仕事だし、いいんだけどね。
 実力アップをしなくちゃいけないくらい旅が危険になってきたということよね。
 旅に出る前のカズキならここらで旅をやめるって言うと思うんだけど」
「まあ、実力の違いすぎる魔物にも会ったりして怖い目にあって、そういう気持ちがないとは言い切れない。
 でもアークと約束したからね、ついていけるところまで行くって。
 それになんというかアークが大事なんだよ。アークだけじゃないけど。
 一緒に旅して頼り頼られて、そういった積み重ねてできた絆が大事。恐怖心をはねのけて、アークたちの力になってやりたいと思えてくるくらいに」

 恥ずかしいこと言ったと自覚したのか、顔を赤くしてセラシエールから視線をずらしている。
 セラシエールは小さく笑みを浮かべたあと、わざとらしくニヤニヤとした表情となる。弟のような存在の成長が感じられて嬉しいのだろう。ここで褒めるとさらに照れると判断し、茶化すような態度をとった。

「棒術を扱う人で腕の立つ人だったわね。えっと……」

 書類を十分以上眺めて、目的の人物を見つけ出した。

「いたわ。今は仕事を受けてはいないから、街の外に出てなければ暇にしているはずよ。
 ここにはいないから、街をぶらついているか家にいると思うわ」

 書類を抜き出してカズキの目の前に置く。
 カズキは名前と住所をしっかりと覚え、セラシエールに書類を返す。

「ありがと」

 礼を言って情報料をカウンターに置いたカズキは席を立つ。

「もう行くの?」
「わりと急いでて、夜までにはカザーブに帰りたい」
「夜にほかの用事でもあるのかい?」
「いや、それくらいにはアークたちの目が覚めるから」
「もしかしてアーク倒れた?」
「うん。強い魔物に殺されて生き返ったばかりなんだ」

 セラシエールだけに聞こえるように小声で言う。生き返るとはいえ、勇者の死は人々に不安しか与えない。周囲の人々に聞かせないにこしたことはないのだ。
 セラシエールは口を押さえて声が出ないようして、驚いた表情を見せた。

「カズキも死んだの?」
「俺ともう二人は運良く重傷手前ですんだ」
「旅の目的が目的だし、そういった事態も起こり得るとはわかっていたけど……実際に聞くと心臓に悪いわ。
 あなたが今後そういった目に遭わないよう祈ってるわ」

 ありがとうと返して、カズキは酒場を出る。
 目的の人物はどこにも出かけておらず家にいた。
 その人に頼み、棒術を教えてもらう。全額先払いだと提示した二百ゴールドのおかげで交渉はスムーズにいき、教えを乞うことができた。
 数時間の拘束で二百は破格といってもいい金額で、講師役の男は上機嫌で愛用の棒を取り出す。
 まずは模擬戦でカズキの技術を見る。レベルはカズキのほうが上だが、技術の差で男が優勢のまま模擬戦は終わる。
 三度にわたる模擬戦で男は、カズキの良い点悪い点、得意とするもの苦手とするものをあらかた理解する。
 そこを指摘して、実際に修正した動きを見せ、さらに指摘するということを繰り返し、おかしな癖や未熟なところを修正していく。
 昼食もとらずに集中して行われた講義は、体力が尽きた日暮れ時まで続けられた。
 カズキは男に礼を言ったあと地面に倒れ込み、体力の回復に務める。

「今日教えたことは繰り返し練習して真価を発揮する。
 毎日サボらずにやっていれば、才の乏しいお前さんでも十分戦力として使えるものになる。
 だから上達しているのかわからなくとも、放り出さずに続けろ。わかったな?」

 教えてもらったことは基本ばかりだが、その基本が大事だと念を押されている。
 カズキには応用を使える腕はないと判断し、応用に練習時間を割くより基本に集中し極めさせることが有意義だと男は判断したのだ。

「わかりました! ありがとうございました!」
 
 わずかに戻った体力を振り絞って返事を返す。
 それに頷いて男は家に戻っていった。
 十分後、起き上がったカズキは男の家の方角に頭を下げ、キメラの翼を使った。

「ただいまぁ」
「おかえりなさい」

 読んでいた書類から目を離したアロアだけが返事を返す。

「まだ二人は起きてないんだね」
「はい」
「夕飯は食べた? まだなら行ってきていいよ。俺が二人を見てる」
「カズキさんは食べてきたんですか?」
「うん。昼抜いてお腹が空いてたんだ。いい匂いに我慢がきかなくて」
「じゃあ、食べてきますね。二人をよろしくお願いします」

 アロアが部屋を出て行く。二人はアロアが出ている間も眠り続け、起きることはなかった。結局二人が起きたのはアロアが夕飯を食べ終えた一時間後だった。

「……ここは?」

 目を開けたアークが天井を見ながら誰ともなしに聞く。

「ようやく起きたか。ここはカザーブ。アークたちが死んだあと、オルクたちとここまで運んだんだよ」
「死んだ……あ、そうか負けたんだ」
「惨敗」
「兄さんは手厳しいなぁ。もうちょっと遠まわしに言ってもいいじゃないか」

 アークは手で顔を隠す、見える口元は苦笑の形に歪んでいる。

「カンダタに続いてまた負けが増えた、か。
 世界には強い奴が多いいねぇ」
「生きてるんだから負けではないって考え方もあるぞ?
 カンダタにも鬼面童子にもリベンジして勝てばいいさ」
「勝てるかな? カンダタにはなんとか勝つ姿を想像できるんだけど、正直鬼面童子には敵わないなんて思いがある」

 飛び出した弱音にアロアは不安げな顔になり、カズキはまたかという顔になる。

「アロアにも言ったけど、俺たちはまだまだ強くなる。今の俺たちは最終的な強さの半分にも至ってないと思ってる。そう俺は信じてる。
 一週間の俺たちは今日の俺たちよりも強くなっていて、昨日の戦いよりもいい勝負ができるはずだ。一ヵ月後の俺たちはさらに強くなっていて、わずかなりとも勝算が見込めるようになっているかもしれない。
 諦めなければ必ず勝てるようになる。俺はそう確信をもってるよ。
 だからアークも未来の自分を信じて、不安なんか吹き飛ばせ!」

 力強いカズキの言葉に、アークは苦笑を引っ込めてキョトンとした表情となる。激励するカズキが珍しかったのだ。
 
「今日よりも強く、未来の自分を信じる。
 そうだね、そうだった。今までやってきたことじゃないか。
 力の差に怯えて忘れてた」

 起き上がったアークの表情からは不安の陰が消えている。かわりに浮かんでいるのは闘志や希望といったプラス思考のものだ。

「やっぱり兄さんがいてくれてよかったよ」
「戦力にはなりづらいからね、これくらいは役立たないと」
「最近はアロアのサポートもあってそんなことはないんだけど。
 ん? なんかボロボロって感じがするね?」

 カズキを見たアークは不思議そうに聞く。昨日の戦いのままでいるわけはなく、そんなにくたびれた姿はおかしいと思ったのだ。

「アークが寝てる間に、アリアハンで棒術の基礎を教えてきてもらったから」
「今日よりも強くを実践してきたんだ?」
「言った本人が成長しないと説得力ないからね」

 お腹が空いたというアークのためにに食べ物をもらってきて渡し、アークが食べている最中にグラッセも目を覚ました。
 アロアとアークと同じようにグラッセも沈んでいた。カズキは三度目となる檄を飛ばすことになる。グラッセの激励には難航するが、アロアも混ざって立ち直った。妹がやる気を見せているのに、兄である自分がいつまでも落ち込んでいられないと奮起したのだった。
 グラッセも空腹を訴え、食事を運ぶ。
 全員が起きたので、カズキはオルクとの会話を伝えておく。

「勝手にエルフからの援助内容決めてごめん」
「謝らなくていいよ。俺たちが寝ている間の会話だし。
 むしろ謝るのはこっちだよ。兄さんたちに移動とかの手間かけたんだから」
「運ぶのは当然のことだから、それこそ謝る必要はないよ。あの場でほったらかしていくなんて選択肢はないんだし」
「でも礼は言っとくよ。アロアにもね」
「私はお兄ちゃんが死んで気が動転しててなんの役にも立ってませんから、お礼は必要ないです。
 呆然としているところを、アークさんを背負ったカズキさんに手を引かれてましたから」
「心配かけてすまん」
 
 アロアにグラッセが頭を下げた。
 
「謝ったり礼を言ったりはここまでにしといて。
 次の行動を決めよ、といってもすでに決まってるけどね」

 カズキの言葉にここらの地理に詳しくないアークだけが首を傾げる。

「南も北も西も行ったから残るは東、アッサラームか」
「その通り。そしてそこを経由してイシスへ」
「そこに行く目的はなにかあるの、兄さん」
「ここらよりも環境的に厳しく、強い魔物がでるから修行にちょうどいいってのと、魔法の鍵がピラミッドにある。
 魔法の鍵があればポルトガに行けるようになる。ロマリア西の関所を開けられるはずだから魔法の鍵は」
「その話は前に聞きましたね」

 以前聞いたとアロアは思い出す。

「俺聞いてないんだけど?」
「アークが王様に金の冠を返しに行ったときに話したことだから、知らなくて当然だよ」
「あ、そういやたしかに聞いたな」

 グラッセも思い出したようで何度も頷いている。

「これからの予定は明日準備を整えつつゆっくり休んで、明後日出発といった感じになるのかな?」

 アークのまとめにカズキは頷く。
 この予定のとおりに準備を進め、二日後の朝カズキたちはアッサラームへと出発したのだった。

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