2006年12月03日
ハンターハンター隙間
一話
<ジン>
「ジン・フリークス様とゴン・フリークス様ですね。ご確認ください」
「ありがとう」
「よい旅を〜」
くじら島も十年ぶりか。ばあちゃんとミト元気にしてっかな。
ん? ゴンどこみて笑ってるんだ。受付のほうを見てるのか。ゴンもあいつが気になるのか。ちょっと変わったオーラ持ってたからな。そんな違いがわかるなんてさすが俺の息子だ! 将来が楽しみだ。
俺もちょっと興味がわいたから帰りによって一緒に話し聞こうな。
その後、俺があいつのところに行くことはなかった。ゴンと離れ離れになったショックでそれどころじゃなかったからだ。
ゴン〜カムバーック!
なんとかゴンから会いにきてくれる方法を考えないと。
二話
<グレソン>
それはいつもと変わらない戦いの日々の一部だった。名誉、金、力のために天空闘技場で戦っていた俺は一つの声と出会った。
「勝てー!! グレソン! そこだ! 何やってんだ! よし! うわ!」
その声援は過去から今現在にいたるまで受けたことのない心のこもったものだった。俺の動作一つ一つに激を飛ばし、受けた攻撃に心配の声を上げてくれた。
「ありがとーグレソン! その名は俺の心の中に数時間は輝き続ける!」
俺が勝ったときも自分のことのように喜んでくれた。勝利の祝福の後半部分は聞こえなかったがきっと俺を祝福してくれたんだろう。
この声のおかげで俺はこの後も階層を上がり続けることができて、ついにはフロアマスターまで登りつめた。あの一回きりしか聞こえなかったがきっといつも応援してくれていたんだろう。そう思うと気合が入った。
人生を変える一声だったんだ。いつかお礼を言いたい。
四話
<受付>
私が受付の仕事を始めてかれこれ三年ほど。けっして長いとはいえない年数だけど、申し込みにくるいろいろな人を見てきた。
闘技場と名のつく場所だけあってくる人は喧嘩なれしてそうな人や格闘暦の長そうな人が多い。ときたまくる変り種もけっしてあなどれない雰囲気をもっていた。
だけど今日来た人は……大丈夫なのだろうか? 格闘素人な私から見てもけっして強そうだとは思えなかった。むしろつきそいの女の子のほうが強く見えた。
初めての試合結果は負け。当然のように思えた。ポイントをとったのは驚いたけど。
もっと驚いたのは次の試合にちゃんと出てきたこと。負けた直後は出てきたくなさそうだったのに。
さらに驚いたのは試合に勝ったこと。負けた試合と何か変わったようには見えなかった。殴られても痛さを堪えて前に出る姿勢は思わず見入ってしまった。
その後も彼は勝ち負けを繰り返し、階層を上がっていった。痛がっているのに、耐えて試合を続けるのはなぜだろう?
いつのまにか私は彼の試合を毎回見ていて、楽しみにしていた。何度負けても立ち上がり、前に進み続ける彼のファンになったといってもいい。
今日も彼は私というファンがいることを知らずに戦う。私は受付から心の中で声援を送る。
いつか休みの日と彼の試合が重なったら客席で応援したいな。
五話
『あいつにとってもあれは偶然だったに違いない。試合後のあいつの表情が物語っていたよ。
いままでに喰らったことのない技だった。背後をとったあいつは俺の背に乗り足で足を絡め、腕をとり……そうっ大鷲の如く広げ! 声高らかに叫んだ!
パロスペシャルとっ!!
全身に激痛が走ると同時に思ったよ、それがこの技の名かと。俺にとってまったく未知の技で、生涯忘れられない技の名となった』
天空スポーツより一部抜粋
セトはこの後も我々の知らない技を繰り出した。ジゴクグルマ、スクリューパイルドライバーなどなど。
その見たことのない技を楽しみにする客も現れ、彼は三つ目の名を得た『技師セト』。これが『リベンジ』『サンドバック』に続いて得た名だった。