感想もらえた研究所に人二人

2006年12月11日

六話


<亜紀>

「ああ〜しんどいぃ」

 さすがに百階後半の相手は強いわぁ。念無しでよくあそこまで動けるな〜。さすが漫画の世界。常識通じないわ。まっそんな相手と戦わないと実力アップできないけど。この先なにがあるかわからないからね、実力アップはしといたほうがいい。
 かよわかった女としてこの考えはどうなんだろ? 贅肉が減ったのは嬉しいけど、筋肉がついて見た目あんまり変わらないのよね。帰ったらアスリートとして成功できそうな体になってるし。そういえば中学中退扱いになってるんだろうな。……もしかして死亡届でてる? 帰ってから考えよ。戻って運び屋を続けてもいいんだし。こんなこと考えることができるなんて余裕出てきたんだなぁ。
 日空はまじめに修行してるかな? そろそろ系統別の修行してもいい頃かもね。どんな能力にするかも興味ある。

「ただいま」
「おかえり」

 なんというか困惑顔らしき日空が出迎えてくれた。
 そして自分の部屋に入って昨日までなかったものを見た。なんでロープ? しかもそんなにたくさん。買ったの?




6:能力決定(仮)




<日空>

 亜紀の視線が具現化したロープにくぎづけ。出て行く前になかったものが部屋にあったら、そりゃ気になるわな。

「それどしたの? そんなにたくさんのロープなんに使うつもり?」

 あれ? 具現化したものだって気づいてない。

「あーこれ、なんかいきなり具現化した」
「念? ああ〜たしかに」

 しゅるしゅる手の中に戻っていくロープを見て亜紀が納得する。
 ロープからオーラを感じなかったのか?

「もう能力決まったんだ」
「どうなんだろ。出したばっかりで自分でもよくわかってない」
「ふーん。ん? その落ちてる鍵は?」

 亜紀の指差す先、俺の足元を見るとロープの隙間に見えていた鍵が。

「これは亜紀のじゃない? 俺には見覚えがないけど」
「私もないね」

 拾って目の前に持っていきよく観察する。
 色あせた金属製の鍵。古いタイプの形って以外に特徴はない。

「ロープを具現化したときにさ、金属のぶつかる音が聞こえたけどこの鍵が落ちた音だったんかな。だとしたら俺がロープと一緒に具現化した?」
「ロープみたいに出し入れできない?」
「やってみる」

 手のひらにのせた鍵をロープと同じように体内にしまうイメージをする。すると鍵はスッと消えた。出ろと念じれば手のひらに現れる。

「消えたってことは日空が具現化したものだ」
「みたいだけど。ロープと鍵の二つを具現化したことになる」
「一度に二つのものを具現化したってのは聞いたことないけど、実際にしてるし。ためしに使ってみたら?」
「じゃ先に鍵を」

 どうやって使うか……普通に使ってみよう。
 部屋の中を見回して適当な鍵穴を探す。棚に金庫がある、あれになら入るかな。

「金庫に差し込んでいい?」
「いいよ。使ってないし」

 了解をもらってさっそく差し込んでみる。ひねったときにパキンっと音がした。

「パキン?」
「…………鍵壊れた」
「は?」

 振り返って折れた鍵を亜紀に見せる。それは見事にぽっきりと折れていた。亜紀が手を差し出してきたので渡す。

「これはまた見事に。んで何も起きてないのよね?」

 体調やオーラを確認する。分かる範囲で何も変化はない。金庫のほうも特に変化はない。
 頷いて返答する。

「次はロープ。これは何かわかってる?」

 亜紀も判断つきかねたのか、ほおっておいてロープに話を移した。

「自分の意思で出し入れできることくらい。あとは100m以上出してもまだ出てきそうだった」

 できることを探してみようということになり、限界まで伸ばしたり伸縮性や丈夫さを調べたりと今日は修行代わりに調査で時間が過ぎていった。
 わかったことはこのロープには特殊能力はなく、市販のものより頑丈なだけだとわかった。ついでにいえば出し入れできるだけで操ることすらできなかった。長さの限界はちょうど五百m。そこまでいくと出せなくなった。

 結果。ただ長く頑丈なロープが出せるだけ。

「使えねー。せめて俺が鞭とか縄術とか使えれば役にたったんだけどな」
「これはどうしようか。このままじゃただの縄を出せる人」
「まんまじゃん」

 これをどうにかするには……制約しかないかなぁ。

「制約でどうにかしてみる? 今よりかはましになると思うけど」

 亜紀も同じこと考えてたみたい。しっかし制約で強化することを目的としないで、まともに使えることを目的にするってなかなかないことなんじゃ?
 二人で話し合ってきつくない制約を決めていく。
 そして決まったこと。一つ目、長さは半分二百五十mに短縮。二つ目、使用オーラ量倍。三つ目、このロープを使って致命傷は与えられない。勝手に中傷までダメージ減。
 一つ目はなにも問題なし。正直500mのロープは今の俺には使い道がわからん。二つ目はこれもたいして問題なし。特殊な効果とかないおかげかオーラ使用量はそんなに多くなかった。三つ目は俺に殺しとか重傷とかを負わせる覚悟がないから問題ないと思う。ただ亜紀は渋い顔をしていたが。危険な目にあってないから甘いのは仕方がないと思って欲しい。

「なせばなる」
「ほんとにね。これで陰を覚えれば、結構役に立つようになるんじゃない? クラピカも同じことやってウボォーを押さえ込んだし」

 あっちは鎖に特殊能力がついてできたことだけどね。俺には絶対無理。

「それと基礎練習と系統別訓練がんばれば」
「つまりは全部ってことか。訓練は大事だしその意気はいいと思うよ」

 亜紀にも褒められたっぽいし頑張るか。明日から。今日は結構時間食ったし帰ろう。
 帰って気づいた。結局鍵については何もわからなかった。

 次の日からも特訓特訓。亜紀が言うにはほんの少しずつ成長しているらしい。自分じゃ実感ないけど。
 根つめすぎは駄目だからと、ときには丸一日休みになる。そんな日は亜紀に連れられていろんな場所へ。これってデートなん? と思いつつ声には出さずに楽しむ。怖い所に連れて行かれてもなんとか自分を誤魔化して楽しむ。あんな場所を知ってるのは長くこっちにいるからなんだと納得させられた。

 そんな日々を過ごして年越しました。そして新年早々時計の電池が切れて購入のためデパートに来てます。携帯は持ってるけど時間を見るのは時計っていう変なポリシーのため電池を買いにきました。
 繁盛しているのか客はたくさんいる。ごつい人がちらほらといるけど、買い物にごつい人がきちゃ駄目なんてことはないからいても不思議じゃない。

「ええと時計売り場はどこかいなっと」

 案内板で場所を確認してエスカレーターで移動。
 時計専門店へと無事に到着。
 電池を探すよりも店員に聞いたほうが手っ取り早いと思いレジにいた店員に声をかける。

「すいませーん。腕時計の電池がほしいんですけど」

 ん? 店員さんの顔が一瞬変わったような気がする。

「いらっしゃいませ。電池ですか? いくつ必要ですか?」

 いくつ必要ってちょいと違和感を感じるな? 聞かれるもんだっけこんなこと。
 そうさね……予備も持っておいたほうがいいか。

「そうですね……三つもらえますか」
「わかりました。すみませんが腕時計の電池は今ここにはありませんので倉庫までついてきてもらえますか? 必要な電池のタイプがわかりませんので」
「あ、はい」
「ではこちらへ」

 俺の持っている時計を持っていって探すんじゃないのか? 世界が違うせいか対応も違うなぁ。
 店員につれられてエレベーターへ。工事中の看板が立っているエレベーターのボタンを押す店員。動かないんじゃ? と思ったが扉が開いたのと店員が躊躇なく乗り込むのでつられて入る。店員が何も書かれていないボタンを押すと扉は閉まり、地下へと動き出した。パネルがB1を示してもエレベーターは動き続ける。
 変だと思い始めた頃、エレベーターは止まった。
 扉が開くと目の前には人が。奥には人がたくさんいる。

「ようこそハンター試験会場へ。ぎりぎりでしたね。こちらへどうぞ」
「へ?」

 漫画で見たプレートと同じものと何かの用紙を渡され、せかされる。後ろへ振り返るとエレベーターの扉がちょうど閉まるところだった。一仕事終えたという店員のいい笑顔が印象的だった。
 瀬戸日空。運がいいのか悪いのかなぜか試験を受けることになりました。
 あ、電池買えてない。


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