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2006年12月19日

七話


 とりあえず亜紀にうっかりハンター試験参加したことを伝えとかなきゃ。
 携帯を取り出して、亜紀の番号を出す。電話をかけようとした時、大きなベル音が聞こえてきた。

「第一試験が始まります。適当な席に座って合図を待ってください」

 電話する暇がなさそうだ。どうするかね。このまま参加するか、やめとくか。ライセンスを持ってたほうが便利なんだけど、へたすりゃ死ぬって聞いてるし迷う。念習得してるし大丈夫か?

「なにやってるんです? 早く適当な席に座って」

 考え事してたら試験官の一人に声をかけられた。周りを見ると全員すでに座っていて立っているのは試験官を除くと俺一人。参加者の視線が俺に集中してる。
 恥ずかしっ。一応座ろう。

「全員座りましたね。それでは第一試験説明を始めます。
 第一試験はペーパーテスト。ハンターは様々な状況に出くわすため幅広い知識が必要となります。このペーパーテストでは知識量を試すことになります。
 合格ラインは90パーセント以上。カンニングはしてもらってかまいません。問題用紙は机の上に、解答用紙は会場に入って来るときもらった用紙に記入です。
 開始は私の持っているこのベルを鳴らしたら、終わりも同じです。
 最後にこれはハンター試験です。
 では始め!」

 澄んだベル音が広い部屋に響く。同時に問題を手に取る音もあちこちから聞こえてくる。皆まずは問題内容に目を通すつもりなんだろう。
 試験なら死ぬこともないし受けてみるか。90パーセントって無理だろうし。

「第一問はっと」

 問1 グリードアイランドに出てくる奇運アレキサンドライトの入手法を簡単に述べよ

 マテイ
 これってここにいる大半のやつが解けないんじゃ? 念使わんと入れんのに。
 まあ答え書いとこ。身包みはがされるっと。
 えーと次は。
 こんな感じで色々な問題が出てきた。毒をもった生き物を毒抜きせずに美味しく食べる方法とか、本当に色々出題されて範囲の幅広すぎだろっ! と大声で叫びたかった。
 ほぼ白い解答のまま。終了のベルを聞くことになった。周りはそれぞれが持つコネを使い解答を埋めていったみたいだ。

「では解答用紙をもってこちらへどうぞ」

 十人の試験官が何かの機械を持って並んでいる。受け取った解答用紙を機械に通して合否を伝えていた。
 並ぶ列の中にトンパがいた。長いこと参加してるってほんとのことなんだな。そんなことを知ることができて、ちょっとだけ嬉しかった。
 トンパを見ててもしょうがないし俺も並ぼう。どうせこの解答じゃ落ちる。順番が来て解答用紙を渡す。渡した解答用紙を見て試験官が微妙な顔をした。
 出た結果をみて合否を伝えてくる。

「はい、合格です。あの扉から先に進んでください」
「は?」
 
 合格ってありえんだろ!? 確実に点数足りてないって。

「後ろが詰まってますから早く行って。
 なんで合格できたか不思議なら行った先にいる試験官に聞いてみればいい」

 聞きたかったことを教えてくれるらしいので行くことに。扉をくぐると100人以上の受験者がいた。試験官を探すとそれっぽいのがいるので聞いてみた。

「あのすみません」
「なんだ?」
「第一試験をなぜ合格できたかわからないんですけど。確実に点数足りなかったはずですし」

 この試験官も微妙な表情になる。

「わかってなくて偶然合格できたのか、運がいいな」
「わかってなくて?」
「いいかこの試験はハンター試験であって学校とかの試験じゃない。隠された合格条件があったんだ。それは九割以上ということ。
 よく思い出せ、試験前に俺たちはなんて言った? 合格ラインは九割以上といったが誰も正解率のことは言ってないぞ」

 開始前の説明をできるだけ思い出す。

「……あ、そういえば言ってなかった気がする。でも普通は取った点数のことだと」
「そういう思い込みを試す、思考の柔軟性を求める試験でもあったんだ。それに気づいた奴は白紙で答案用紙を出してるぞ」

 それは本当ですか? 問題解こうと必死に悩んだ俺が間抜けみたいじゃないですか。 

「納得できたか? できたなら静かに待ってろ」

 試験官に追い払われて適当な椅子に座る。
 真面目に解いていたことにへこんでいるといつの間にか第一試験が終わっていた。
 合格者は試験官の発表によると200人。元は700人いたらしい。残った受験者を見ようと部屋の中をぐるりと見渡す。当然ながら知らない顔ばかり……と思ったらトンパがいた。
 さすがに他に知ってる奴はいないだろうと見ていたら、いた。有名な人がっていうかなんで受験者としているんだあの人!?
 見た目は幼いツインテールな可愛くすごいお方。すでに50近いはずなのにその若さは反則だろう。未来におけるゴンとキルアの師匠ビスケット=クルーガーその人が受験者に紛れている。
 驚き固まって凝視していたら気づかれた。会釈されたのでこちらも会釈を返し正面を向く。笑顔で会釈されたけど怪しまれてるんだろうな。
 そんなことを考えていると試験官が話し始めた。

「それでは第二試験を始めます。
 皆さんの中に数名、試験官が紛れています。その試験官のうち一人でもいいので見つけ出し、こちらに申請してください。チャンスは一回きりです。
 それでは第二試験開始っ!」

 いきなり試験が始まった。試験会場はざわざわとうるさくなる。受験者は周りを見渡し試験官を探している。
 俺も探す必要があるんだろうけど、見つけてるんだよな? たぶんビスケでファイナルアンサー。
 試験官のところに行こうかな、外れても不合格になるだけで安全に帰られるんだし。
 軽い気分で歩き、試験官に近づいていく俺を他の受験者は驚いた表情で見ている。なんで驚いてんだ? カンニングしたようなもんだし、そんな驚かれることじゃないだろ?

「なにか質問ですか?」
「いや答えを言いに来たんだけど」
「……それではこちらのリストの中から選んでください」

 そういって受験者全員の写真がついたリストを渡された。ビスケを探してぱらぱらめくっていたら俺の写真もみつかった。いつのまにとったんだろう?
 リストの中からビスケをみつけ試験官に教える。

「この人がそうです」
「チャンスは一回きりですよ? いいんですね? 外すと不合格ですよ?」
「かまいません」

 俺が即答すると試験官は黙る。五秒ほどして、

「正解です。この扉を通って出たところにある飛行船に乗ってください」

 試験官が合格を言い渡すと後ろのざわざわが大きくなった。何を騒いでいるのかよく聞こえないので気にせず指示されたとおり飛行船に向かう。
 ここからは飛行機で移動か帰るとき大変かもな。


<ビスケ>
 ハンター協会に頼まれて、隠れ試験官として試験に参加したけど今年は粒ぞろいってわけじゃなさそうね。
 鍛えがいのありそうなコがいればちょっかいだしたのに残念だわさ。

 第一試験開始を知らせるベルが聞こえてくる。あら? まだ立ってるコがいる。普通のコ……じゃないわね、まだまだ未熟だけど念が使えるみたいだし。

 全試験の合格条件を聞いてるから問題に悩まなくていいんだけど暇だわ。ほかの受験者の様子でも見て暇つぶし。うーんたくさんのコが真面目に問題解いているわね。気づいている奴もいるけどそう多くはないか。あ、念使えるコも正直に解いてる。

 白紙の答案用紙を試験官に渡して第一試験は突破。さて次の試験が出番。誰か私が隠れ試験官だってわかるかしら。
 念使いのコが入ってきた。あのコも合格できたか。あの様子だと偶然合格できたみたいね。合格できたのになんで沈んでるのかしら?
 
 目が合った。それだけなら気にすることじゃないけど、なぜ驚いた? 誰かに似てた? 違うそういう類の驚き方じゃないわ。思いがけないことが起きて驚いた、そんな感じだわ。

 第二試験が始まった。さて、少しはぼろを出さないと。おや、あのコもう行くみたいね。観察力には自信があるのかしら。試験官のゆさぶりにも動じない。見た目に反して度胸があるじゃない。

 第二試験が終わってあのコが誰を示したのか気になったから試験官に聞いてみた。まさかぼろを出す前にばれていたとは。
 ちょっと面白くなってきたから試験官についていこう。私を騙すほどの演技で実力を隠しているなら、その実力見てみたい。

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