退屈といえば退屈な日常の繰り返し。
しかしこれが不思議と退屈せずに見ていられるのはやはりジャームッシュの手腕ならでは。
同じように見えても日々は少しづつ変化し進行している。
そして週末に起こるちょっとした事件。起承転結で言うと、平日5日間はずっと起。
最後の20分くらいで一気に承転結、という感じ。
突然カントリー歌手になると言い出したりする妻に比べてパターソンは慎ましい。
詩を書くのはあくまで趣味で、あなたは才能がある出版したほうがいいノートのコピーを取って、という妻の言葉にもいつもちょっと照れくさそう。
しかしそのノートが失われたときに、初めて彼は自分の中に少なからずそれをいつか認められたい妻の言うように1冊にまとめたいというような欲求が潜在的にあったことに気づいたのではないだろうか。
詩人になりたい、詩人として生きたい等と大それたことは夢見ないまでも。
コインランドリーでラップ詩の練習をする男や、パターソンと同じように秘密のノートに詩を書きためている少女など、日常的に出会う人々の書く詩にパターソンは素直に感心し仲間を得たように共感するけれど、それは反面、詩を書くことなど特別なことではなく誰にでもできること、才能のある人間は自分以外にいくらでもいる、という現実をつきつけられることでもある。
淡々と繰り返す日常に満足しているように見えたパターソンが、実は複雑に葛藤する内面を抱えていた。
ところで永瀬正敏。
ミステリートレインぶりに出演しているのは知っていたので、いつ来るかいつ出るかと待っていたのだけどこれが全然出てこない、もしかして通行人だった?と不安になったところで、最後の10分くらいにやっと登場!
自信を喪失して呆然としているパターソンを、結果的に励ますことになる不思議な日本人役。新しいノートに、新しい言葉をまた書き出すパターソン。
なんてことない1週間の話だけれど、退屈な日常を生きる勇気をちょっとだけもらえる感じ。


