TIME/タイム (2011)

2012年02月22日

まさに「時は金なり」。観終わった後、ついゲームに長時間没頭した一日を思い起こし、「お金に換算したら、どれだけの無駄使いなのだろう?」と暗澹たる気分に陥った次第である。
本作は、『ガタカ』(97)、『トゥルーマン・ショー』(98、脚本担当)、『シモーヌ』(02)とオリジナル設定のSFで哲学的テーマを紡いできたアンドリュー・ニコル監督作品。中でも、深い余韻が残るあまりに美しい感動作『ガタカ』は、もはやSFのクラシックと見なしてよかろう。なかなか当作をこえる作品を生み出せず苦戦を強いられている監督であるが、予告編を観るかぎり、「これは面白そう!」と期待を抱かせてくれる本作。はたして『ガタカ』越えはなったのか…!?続きを読む



汽車はふたたび故郷へ

2012年02月20日

 「素敵な歌と舟はゆく」「月曜日に乾杯!」・・・、のんびりマイペースに人生を楽しむことの豊かさを、独特のテンポでファンタジックに描くオタール・イオセリアーニ監督の最新作。主人公は検閲や思想統制から故郷グルジアを逃れてパリに赴く映画監督ということで、イオセリアーニ監督の経歴を見ると、どうやら半自伝的な内容になっているようだ。続きを読む

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い (2011)

2012年02月20日

“絆”という言葉を改めて噛みしめた昨今。アメリカから胸に染み入る良心作の登場である。
本作は、9.11文学の金字塔と評されたジョナサン・サフラン・フォアのベストセラー小説の映画化。監督を務めたのは、『リトル・ダンサー』(00)、『めぐりあう時間たち』(02)、『愛を読むひと』(08)とデビューから三作連続オスカー・ノミネートを果たすという驚愕の偉業を成しとげたスティーヴン・ダルドリー。今回もトム・ハンクス、サンドラ・ブロック、脚本のエリック・ロス、撮影のクリス・メンゲス、衣装のアン・ロスとオスカー・ウィナーをズラッと揃え、準備万端。結果、候補枠が広まった好運もあり、すべり込みで作品賞ノミネートとなったのはご存じの通り。いやはやアッパレ。もうダルドリー作品に外れナシ!と決めてかかって問題なかろう。続きを読む

男と女 (1966)

2012年02月17日

これぞ大人なラブ・ストーリーと呼べる名作である。
本作は、カンヌ映画祭グランプリとアカデミー外国語映画賞をダブル受賞するミラクルを達成し、しかもアメリカで大ヒットを記録した珍しいフランス映画。ご存知の通り、アメリカ人のフランス人に対するコンプレックスはハリウッドにおいても例外ではなく、現に対抗意識からか、カンヌ受賞作がアカデミー賞で評価を受けることはほとんどない。有無を云わせずアメリカ人を屈服させたこの一事を顧みても、本作の内容の普遍性が窺えよう。続きを読む

逆転裁判 (2012)

2012年02月15日

時間をドブに捨てる可能性を覚悟してスクリーンに挑んだのだが、これが意外に面白く、何やら得をした気分である。三池崇史、やっぱりあんたはスゴイ!
本作はカプコンの大人気アドベンチャー・ゲームの映画化作。僕も大いにハマり、「異議あり!」と声を張り上げて全作プレイした大ファンだ。
今回、映画化の報を聞き、綾里千尋=壇れい、綾里真宵=桐谷美玲、糸鋸刑事=大東俊介の配役に「これはないだろ!」と卒倒寸前。
そもそも本作は、ゲームだから成立している独特の世界観を持つ作品だ。他メディアへのコンバートは、漫画と舞台がギリギリであろう。多分、アニメですらキツイ。映画などもってのほか。
と、炎上要素満載であったのが、冒頭に記した通りの感想に落ち着くのだから、世の中わからないものである。続きを読む

ドラゴン・タトゥーの女 (2011)

2012年02月13日

ダーク・ミステリーというより、異色のラヴ・ストーリーとして観応えのある一本であった。
本作は、スウェーデン発世界的ベストセラーとなったスティーグ・ラーソンのミステリー小説『ミレニアム』シリーズ第1弾の再映画化。云う迄もなく3部作はすでに母国にて映画化済みであり、わが国でも大ヒットし、高い評価を獲得している。それがこんなに早くリメイクされるのだから、ハリウッドにおけるネタの枯渇はよほど深刻なのだろう。
監督を務めるのは、今のりにのっているデヴィッド・フィンチャー。このばっちりな人選に膝をうった方もさぞ多かろう。あまりにかっちょいい予告編から、僕も期待に胸を高まらせていたのだが…。続きを読む

ポエトリー アグネスの詩

2012年02月13日

 タイトルそのままに詩がテーマのこの作品、驚くべきことに、イ・チャンドン監督が製作するきっかけになったのは、韓国で数年前に起きた、10代の少年集団が女子中学生に数か月にわたって性的暴力を加えていた事件なのだという。被害者の立場から苦しみ・悲しみを切々と訴えるのでもなく、正義の第三者が埋もれた真実を掘り起こすのでもなく、加害者の中学生を親代わりとして育てる初老の女性が一篇の詩を紡ぐというアプローチをとったことに、限りない独自性を感じる。続きを読む

セルビアン・フィルム (2010)

2012年02月10日

残酷映像目当ての観客をシニカルに巻き込む怪作であった。
本作は、そのあまりに過激なゴア描写で各国の映画祭を震撼させたセルビア映画。好き者の間で“狂気の一作”と相当話題になっていた本作が、ついにノーカット解禁である。(規制にさんざんうるさくなった我が国ながら、何故かこうした映画が平気で封切られるのだから不思議)
先行する噂からどんなえげつない内容になっているのかと、それなりの覚悟を決めて観に出かけたのだが…。
これが意外にもしっかりとしたドラマを備えた娯楽作となっており、ちょっとした驚きであった。続きを読む

人生はビギナーズ (2010)

2012年02月08日

ポンッと優しく背中を押してくれる、愛すべき小品であった。
本作はマイク・ミルズ監督が自身の体験をもとに脚本を書き、撮り上げた自叙伝的一作。75歳の父親がゲイであることを宣言すると云うキャッチーな内容だけみれば、何となくドタバタ・コメディのように思えるが、さにあらず。劇的な娯楽要素を避け、監督の分身である主人公の心の動きを繊細に綴った心理ドラマとなっている。続きを読む

ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵 (2012)

2012年02月06日

まずは、ベルセルク・サーガの新たなる第一歩を素直に祝したい。
本作は、20年以上に渡り連載続行中である三浦健太郎の人気漫画のアニメ映画化作。原作は、我が国が世界に誇るダーク・ファンタジーの決定版だ。僕も年一回のペースで発売される単行本を心待ちにしている大ファンである。
今回、題材となるのは、原作時間軸における本編前の序章(とは云え、10巻超のボリュームがあるが…)となる“黄金時代篇”。
ファンならご周知の通り、当パートは97年に『剣風伝奇ベルセルク』としてテレビアニメ化済み。僕もどうせなら別の章を取り上げて欲しかったところだが、やはりOVAではなく改めて映画として後世に残すプロジェクトは支持したいし、何より原作未読の方のことを考えれば致し方あるまい。続いて“断罪篇”、“千年王国の鷹篇”と駒を進める構想もあるそうなので、ここははやる気持ちを抑え、とりあえずは第一弾となる本作である。続きを読む