2010年12月

君を想って海をいく

2010年12月24日

フランスの中堅監督フィリップ・リオレの新作。実はサンドリーヌ・ボネール主演の「マドモアゼル」を見て以来、同監督の大ファン。人妻ボネールと旅回りの劇団員ジャック・ガンブランとの数日間の邂逅を描く同作品の品の良さに唸った。その後、再びボネールを主演とした「灯台守の恋」も味わい深い恋愛映画で、さらに劇場公開はされなかったがDVDリリースの「マイファミリー・遠い絆」もある家族の感情の機微を繊細に描いた秀作だった。本作は元水泳選手で今は市民プールのコーチとなっている中年男とクルド難民の17歳の少年の交流を描いたもの。現代フランス社会において難民への対応について一石を投じた作品となっている。
コーチはボランティアで難民援助をしている教師の妻と離婚手続き中。そんな中、プールでクロールを教えてくれという少年と出会う。動機や生い立ちから推察すると、ドーバー海峡を泳いで渡るとしか考えられない。自宅に招くが、隣人からは難民援助は法律違反と警察に通報されてしまう。この隣人のドアマットに書かれていた文字が本作の原題でもある「WELCOME」。監督は困っている人を助けるという寛容ささえ失っているのか、と嘆いているのは間違い。映画のなかでクルド人への言及や説明は一切ないが、バフマン・ゴバディ監督の「亀も空を飛ぶ」で描かれたようにイラク国内で少数派として迫害を受けてきた歴史を持つ。
リオレの映画ではいつものことながら、控えめで慎み深い音楽の使い方も印象的で本作ではニコラ・ピオバーニが担当している。


シネマトグラフ埼玉/埼玉県
大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。


Ricky リッキー

2010年12月16日

 授かったのは、えもいわれぬ可愛さと、翼!をもった赤ちゃん。ちょっとぎこちない家族の元に降りかかった、不思議なファンタジー。続きを読む

naomi0429 at 16:57HC この記事をクリップ!

白いリボン

2010年12月16日

オーストリアの監督ミヒャエル・ハネケの新作。2009年のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞。厳格な司祭や室内シーンでのクロースアップなどベルイマン風。また何者かが村人を恐怖に陥れるストーリーはトニー・リチャードソンの「マドモアゼル」を連想した。
第一次大戦前夜の北ドイツの田舎の村。村人全員が顔見知りというある意味密閉された社会で奇妙な事故や事件が連続して起こる。まず村医者が目に見えない針金に引っかかり、落馬して長期入院してしまう。また、夜中に納屋が全焼する事件も起きる。極めつけは知恵遅れの少年が失明するような暴行を受ける。前半は群像劇風に主要登場人物を紹介し、事件の犯人を追うサスペンス仕立て。やがてストーリーの展開と共にこの監督お得意の不条理劇風となる。
冷たい色調の白黒の画面で、特に室内における重厚な演出が見応えある。ベルイマン風と書いたが、風景や厳しい冬の寒さも北欧と似ている。全編グレーを基調とした白黒撮影が美しい。室内はほとんどカメラを固定している。撮影はハネケと長くコンビを組んでいるクリスティアン・バーガー。背景の映画音楽は一切使用していない。脚本はコンサルタントとしてジャン・クロード・カリエールの名がクレジットされているが、監督自身が単独で書き上げたものだろう。

シネマトグラフ埼玉/埼玉県
大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。





最後の忠臣蔵

2010年12月10日

「最後の忠臣蔵」の登場人物の行動は、徹底して封建時代の価値観に基づいている。現代の視点で見れば、理不尽としか思えない状況であり、ありえない生き方の選択だ。だからこそ、この映画は、本格的な時代劇と言えるのである。続きを読む

syuuma12 at 08:43周磨 要 この記事をクリップ!

ハーブ&ドロシー

2010年12月03日

 ごく普通の市民が、アメリカナショナルギャラリーに数千点のコレクションを寄贈!こんな嘘みたいな本当の話が、テンポよく描かれたドキュメンタリー。続きを読む

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