白夜

2009年10月16日

  『ちゃんと伝える』の園子温に続いて、EXILEのスタッフは、メンバーの眞木大輔を主演とした『白夜』の監督に、小林政広を起用した。

が園子温ならともかく、「確信犯的実験映画」作りをする小林政広が、限定公開が故、所謂「EXILEファンの為の映画」が撮れるのか?しかも宣伝コピーを見ると、もしかして『ビフォア・サンライズ』?小林政広が軽妙な会話劇?かなりの不安が。
 冒頭いきなり、デモ行進。それを狙ってフランスのリオンに行くはずないし、もしかしたら『勝○にしや○○』か?で、その喧騒から遠く離れ、橋の上で一人佇む眞木大輔。彼がバックパッカー(にしてはかなり身ぎれい)であった頃の回想が始まる。その頃、同じこの橋の上で、不倫の相手を待ち続けていた吉瀬美智子と出会った。と書くと、悲しげなラブ・ロマンスだが、その描き方が、もう凄いのなんの。橋の上での展開が多いのだが、背景はどこかのヨーロッパの風景ぐらいにしか見えない。街中に入っても二人をフルショットで撮っている為、背景がほとんど無意味状態。リヨンなら、それなりの観光名所があるはずなのに全く無視。たまに二人をロングで撮るとカメラブレブレ。更に全体の構成は、やはり『ビフォア・サンライズ』なのに、俳優はオブジェ、会話は軽妙どころか、説明的且つ長台詞。と、いつも以上の「確信犯的実験映画」になっている。そしてクライマックスのアップは、やはり『○手○○○がれ』か!
 小林政広は、普段と違う制約の中で、彼なりの映画を作ったのだろう。好きです、その姿勢。でも、この映画は「EXILEファンの為の映画」であり、登場人物を、せめて神代辰巳か相米慎二レベルの演出で「確信犯的実験映画」にすべきだ。それが出来ないのなら、いっそ職人監督に徹した方がいいはず。その力量はあると僕は信じている。でも、こんな機会、二度とないだろう。だからこそ、小林政広なのだが。

勝村俊一/兵庫県
金銭的な理由で年間100本ぐらいしか見れない不自由人。まあ年の功で昔の映画は語れますが、その反動(?)で最近はこれぐらいの映画と思って見て、本当にそれぐらいの映画より、もしかして凄い、と思って見て大外れの映画の方が精神的ダメージが少ない、という見逃しゴメン、穴狙いの映画ファンとなっています    


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