しあわせの雨傘

2011年01月27日

 30年間お飾りの妻だった女性が、夫の病をきっかけに一念発起、会社経営に政治参加と社会に羽ばたいていく様を明るく陽気に描いた女性讃歌。

 30年間いいとこの奥様でぬくぬく暮らしていた人間が、そんなにうまいこと労使交渉できるかあ?とか、そんな人間の経営改革に従業員がそろってついてくるかあ?とか、突っ込みどころは満載ながらも、ドヌーヴが出てきて動き出すと、不思議に納得させられてしまう。これが役者の華というものなんだろう。今こんな話を引っぱっていける女優、ドヌーヴ以外にちょっと考えられない。
 「8人の女たち」の時も思ったけれど、フランソワ・オゾン、本当に女優を撮るのが楽しくてしょうがないんだろうなあ。撮られているドヌーヴも歌っちゃうし踊っちゃうし、楽しんでいる様子ががんがん伝わってくる。
 全編きれいな色合いに軽快な音楽、テンポのいい話運びに、うきうきしながら観てしまうが、登場人物の中で、唯一娘の悲しさがちょっと心に引っかかってしまった。初めは夫の言いなりになっている母のようにはなりたくない、自分も父の会社の重要ポストで働くのだと意気軒昂だったのに、最終的には夫をつなぎ止めるために横暴な父に味方し、自らの重要ポストをも夫に引き渡してしまう。結局、父権主義に幼い頃から慣れ親しんだお嬢さんの呪縛から逃れられないのは、お飾りの妻ぶりを非難した娘本人なのだ。
 娘世代の自分としては、決して作品の本筋ではない部分にちょっと沈んだりしてしまいながらも、ラストはドヌーヴ、オン・ステージに拍手喝采。子供たちも独立し、何かがふっきれたら、人生変えられるチャンスがまた訪れるさ、と爽やかな気持ちが最後には残った。

HC/神奈川県
年間鑑賞本数170本。生涯のベスト1は17歳で観た「恋する惑星」。昨年「西瓜」が生涯のベスト10に食い込んだ。都会の孤独を映し出す作品に非常なシンパシーを感じる。劇場公開時に必ず足を運ぶ監督はフランソワ・オゾン、塚本晋也。男優の魅力を感じるのは困惑する表情、女優の魅力を感じるのは不機嫌な表情。



HC  この記事をクリップ!
「映画検定外伝」とは?
映画検定1級合格者による映画評。現在公開中の映画から旧作まで、選りすぐりの「映画の達人」による遠慮のない映画評を毎週アップします。
『映画検定』とは?
邦画・洋画、新作から往年の名作まで、あらゆる角度から、あなたの「映画力」をはかる検定です。
映画検定公式サイト