幕が上がる

2015年02月28日

 今をときめくアイドルグループ、“ももいろクローバーZ”主演、原作は日本を代表する劇作家平田オリザの処女小説という異色のコラボレーションである。地方高校の弱小演劇部を舞台に、女子高生たちが「高校演劇」を通して成長していく、青春ど真ん中ストーリー。

 監督は「踊る大捜査線」シリーズが有名だが、演劇への愛情も豊かな本広克行。脚本は『桐島、部活やめるってよ。』が高く評価されつつ、「ナイロン100℃」「ブルドッキングヘッドロック」所属とがっちり演劇畑の喜安浩平。と、強力タッグが支えている。
 物語は、静岡県立富士ヶ丘高校演劇部2年のさおり(百田夏菜子)が、地区大会に敗れ、部員たちからなかば押しつけられるように次期部長に任命されるところから始まる。抱負を語るうちに「勝ちたかったの、私は!」と熱くなるさおり。
 3年の最初、新歓オリエンテーションの上演もふるわず目標を見失う部員たちだが、たまたま練習場所として借りた美術教室で、新任美術教師、吉岡(黒木華)に出会う。彼女はさらりと、役者1人1人が自分自身のことを芝居にする手法【肖像画】を提案し、やってみせてという突然のふりにも、一瞬で目を奪われる即興演技を見せてくれる。実は彼女が元学生演劇の女王だったということが判明し、必死に指導を乞う部員たち。
 吉岡の指導のもと、ぐんぐん力をつけていく演劇部。全国大会を目指す日々が始まるのだった。
 初めは周りに流されるようでいながら、自身の役割に目覚め部をひっぱるさおりに、華やかな看板女優、裕子(玉井詩織)、お調子者でいつも場を盛り上げる美紀(高城れに)、さおりを誰よりも慕う2年生、明美(佐々木彩夏)、演劇強豪校からの転校生、中西さん(有安杏果)と、主要部員たちの描き分けも的確で、ももいろクローバーZ内の立ち位置ともリンクするようなキャラクターづけが、アイドル映画ならではの醍醐味。
 濃密な1年間を過ごすうちに彼女たちが到達した“私たちは、舞台の上でならどこまでもいける。でも、世界は私たちのスピード以上に広がって、どこにもたどり着けない。”という境地は、演劇という世界にとどまらず、これから飛び出していく人生に向けてのスタートラインを鮮やかに切り取っている。
 大会演目である「銀河鉄道の夜」のテーマとも共鳴し、劇中劇と映画そのものの双方がクライマックスに向けてどんどん輝きを増す様たるや、一級の青春映画!
 まったくもって、勢いのあるアイドルのパワーにはもうひれ伏すしかない、最高です。

HC/神奈川県
年間鑑賞本数170本。生涯のベスト1は17歳で観た「恋する惑星」。都会の孤独を映し出す作品に非常なシンパシーを感じる。劇場公開時に必ず足を運ぶ監督はフランソワ・オゾン、塚本晋也。男優の魅力を感じるのは困惑する表情、女優の魅力を感じるのは不機嫌な表情。





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