ブルックリンの恋人たち

2015年03月15日

 ニューヨークを舞台に、音楽を通して出会った男女の淡い恋物語。先月公開の「はじまりのうた」にも共通するスピリットを思わせる小品である。

 主人公フラニー(アン・ハサウェイ)はモロッコに住みながら、人類学博士号を目指してフィールドワーク中。ある日、母(メアリー・スティーンバージェン)からの電話で弟が交通事故に遭い、昏睡状態だと知らされる。急ぎニューヨークの自宅に戻り、母と2人、看病にいそしむことに。実は、大学を辞めミュージシャンを目指し始めた弟とは、それをきっかけに口論となり、わだかまりは晴れないままだったのだ。
 弟の意識が戻る助けになればと、好きだった音楽をライブハウスに録音しに行って聞かせたり、お気に入りのカフェのメニューをテイクアウトして匂いをかがせたりする内、少しずつ、今までかたくなに拒否して見ようとしなかった素晴らしいものの価値を見つけていくフラニー。弟が心酔していたミュージシャン(ジョニー・フリン)と知り合い、交流を続ける内に、家族とのわだかまりも雪解けていくのだった。
 本当に静かに静かに進むお話で、登場人物たちはあまり多くを語らないのだが、家族のちょっとした、でも根は深いわだかまりや、成功してはいるけれどどこか自らの行く末に一抹の不安も覚えるミュージシャンの心模様など、かすかな感情がふっとたちあがるような語り口が、まさに小品映画の醍醐味であり味わい深い。
 アン・ハサウェイ主演で、久しぶりに戻った家族の元で関係性が見直されていく物語といえば、秀作「レイチェルの結婚」が思い出されるが、プロデューサーが「レイチェル〜」の監督、ジョナサン・デミ!「ストップ・メイキング・センス」の人だもの、音楽センスも納得の素晴らしさ。
 監督はこれがデビューのケイト・バーカー=フロイランド。ブルックリン出身で、自身が好んで音楽を聴きに行く場所での撮影だったとか。ニューヨークの今の音楽シーンを牽引しているのであろうミュージシャンもライブシーンで出演しているようで、思わずニューヨークへライブ巡りに行きたくなってしまう、じんわり幸せな佳作だ。

HC/神奈川県
年間鑑賞本数170本。生涯のベスト1は17歳で観た「恋する惑星」。都会の孤独を映し出す作品に非常なシンパシーを感じる。劇場公開時に必ず足を運ぶ監督はフランソワ・オゾン、塚本晋也。男優の魅力を感じるのは困惑する表情、女優の魅力を感じるのは不機嫌な表情。



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