シネマトグラフ埼玉

ツリー・オブ・ライフ

2011年08月22日

約40年間で本作が5作目という寡作な監督のテレンス・マリック。「天国の日々」は70年代後半、幻の名作だった。日本では劇場公開が遅れ、輸入版のLPレコードで音楽から映像を想像するしかなかった。当時アルトマンの「3人の女」やマルの「アトランティック・シティ」なども同様で、アート系の作品の公開機会は少なかった。1981年春の卒業旅行でニューヨークに4週間ほど滞在し、名画座シネマ・ビレッジで初めて「天国の日々」を見た。70ミリではなく、フィルムの状態もそれ程良くはなかったが、映画は期待どおり素晴らしかった。
さて、本作は残念ながら作品として未消化に終わっている。ストーリーはブラッド・ピットの父親と3人の息子、とりわけ長男との確執が軸なのだが、それ以上に宇宙や自然のイメージ映像に溢れている。映像自体は美しいが、ストーリーとの関係は希薄。精神世界を描きたかったのだろうが総じて表面的。長男が大きくなってショーン・ペンのモノローグとなるが、彼の苦悩は全く伝わってこない。約2時間半の上映時間のうち3分の1くらいがイメージ映像だったような気がするが、すべてカットしてドラマの部分をもっと書き込むべきだった。
マリックはアメリカの国民的画家アンドリュー・ワイエスの絵が好きなのではないか。「天国の日々」の丘の上の白い家がワイエスの描き続けたメーン州の家とそっくりだし、室内に白いレースが揺れるイメージは「シン・レッド・ライン」や本作にも繰り返し登場する。
音楽は売れっ子アレクサンドル・デプラだが、マーラー、ブラームス、スメタナなどのクラシック曲を多用し、自身の曲がどれだけ用いられているのかわからなかった。

シネマトグラフ埼玉/埼玉県
大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。


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モールス

2011年08月11日

スウェーデンの「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイク。ハリウッド版がどのように脚色しているのか興味深く見たが、細部のセリフやカット割りまでほとんど同じ。露骨なCGやSFXを用いておらず、オリジナルの素朴さを保持している点に好感が持てた。少女役はクロエ・グレース・モレッツ。エリ役だった痩せ細った少女とは趣きがやや異なるが、もともと芸達者なだけあって好演。さらにいいのが主人公の少年を演じたコディ・スミット・マクフィーで孤独な表情がとても印象に残る。
リメイクにあたり、設定をストックホルム郊外から1984年のレーガン政権下、ニューメキシコ州のロスアラモスにしている。同地はマンハッタン計画のロスアラモス研究所で有名で、資産百万ドル以上の居住者率が全米で最も高い町として知られるが、映画ではごく普通の田舎町として描かれている。当時流行したルービックキューブが二人の出会いの小道具として使われている。
監督のマット・リーヴスはオリジナル作品と原作に余程惚れ込んだのか、基本的な設定以外はほとんど変えていない。ハリウッド版に良く見られる過剰装飾がないことがこのリメイク版の成功の要因だろう。俳優が異なるだけであとはほとんど同じ、という再映画化にどういう意味があるのか。まず米国市場では一般に字幕付の映画には目を向けられないため、国内市場向けに作られるのだろう。幸い日本の観客は両方を見ることが出来るのだが、下手に脚色されるよりはオリジナルの雰囲気だけは損なわないでほしいと望むし、その成功例がこの映画である。

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大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。


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ふたりのヌーヴェルヴァーグ

2011年08月02日

70年代の後半に本格的に映画を見始めた小生にとって当時トリュフォーは最も好きな監督の一人だった。彼の映画のみならず彼自身や山田宏一氏の著作を読み漁った。この映画はトリュフォーとゴダールの生い立ちから5月革命を経て、二人が決別するまでのドキュメンタリー。「アメリカの夜」の公開後ゴダールが厳しく批評し、それにトリュフォーが反論する73年ごろの時期で終わっているのが残念である。つまりこの記録映画は少なくとも80年代前半、トリュフォーの存命中に作られるべきだった。記録の最後の時期が73年ではその後の約40年間が何も語られていない。
84年10月、トリュフォーが癌で亡くなったとき、小生はホノルルで半年間の語学研修中だった。訃報を図書室の新聞で知り、呆然としたことを覚えている。52歳というあまりに早すぎた死が惜しまれてならない。必ずしも彼のすべての映画が傑作だったわけではないが、「突然炎のごとく」や「隣の女」は映画史に残る。ホークス、レイよりは個人的にはワイラー、フォードが好み。ヒッチコックへの傾倒も度が過ぎている、といった感覚の違いはあるが、全作を見たいと感じた最初の監督である。一方のゴダールは全く評価しない。とりわけ「中国女」や「東風」以降今日に至るまで作品は映画史的に価値がないと見ている。多くのヌーヴェルヴァーグの監督の中から二人の生い立ち、友情、決別を綴った記録だが、先に述べた著作で既にすべて語られたことばかりで、新たな発見はなかった。


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大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。



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木洩れ日の家で

2011年04月20日

ポーランドの女性監督ドロタ・ケンジェジャフスカの作品を初めて見たのは、ブリッセル駐在時代の1999年1月のこと。ブリッセル国際映画祭に出品された「Nic 英語題はNothing」だった。4人目の子供を妊娠した若妻がやむなく非合法の堕胎をしてしまうという題材だったが、驚いたのはその大胆な映像美。夜のシーンが多く、漆黒の闇を背景に主人公の入浴場面で金髪が金色に輝くところなど鮮やかに覚えている。細かいカット割りの編集も的確で何と素晴らしい技巧を持っている監督かと感銘を受けた。91年の「Diably, Diably 英語題はDevils, Devils」が長編第1作。この20年間で6本しか作っていない寡作な監督のようである。
4作目が日本で初公開された「僕がいない場所」。これはDVDで見たが、超絶技巧は健在で、魚眼レンズを随所に使い、背景を歪ませたり自然のクローズアップを多用したり、類稀な映像美に溢れていた。撮影は監督の夫であるアルトゥル・ラインハルトが全作を担当している。
5作目が本作で何と白黒。窓ガラス越しに輪郭をぼかしたり、陽光を反射させたり、蝋燭の光だけのシーンなどテクニックは随所に見られるものの、彼女の作品を初めて見る観客にとってはそれ程違和感のない、普通の絵作りをしている。なぜ白黒にしたのかはわからないが、是非カラーで見たかった気がする。主人公の家の周りの木々の緑を何層にも何色にも映像化してみせたに違いない。主役の老女優はほとんど一人芝居だが、存在感は圧倒的だった。映像美と役者には感心したが、安易なメロディーの音楽が玉に瑕。最近印象に残るメロディーを量産しているアレクサンドル・デスプラあたりが担当したら完璧な仕上がりだったのでは。ちなみに「僕がいない場所」の音楽はマイケル・ナイマンだった。

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ザ・タウン

2011年03月03日

俳優ベン・アフレックの監督第二作。一作目はデニス・レへインの「愛しき者はすべて去りゆく」を原作とした「ゴーン・ベイビー・ゴーン」で日本では劇場公開されなかったものの、DVDリリースされており、大変出来が良かった。本作はチャック・ホーガンの小説「強盗こそ、われらが宿命」の忠実な映画化。両作ともボストンの下町が舞台である。アフレックのホームタウンが背景なだけ、入り組んだ石畳の路地や都会の片隅の家庭菜園など生活感溢れる情景を散りばめている。
全米一銀行強盗の発生件数が多いチャールズ・タウン地区。アフレックら幼馴染4人は偶々襲った銀行の支店長レベッカ・ホールを目隠ししたまま人質として連れ去る。まもなく海岸で開放するが、FBIがどこまで情報を掴んでいるか監視する目的で彼らはホールに近づいていく。犯行当日は仮面を被っていたため彼女は何も知らずにアフレックと交際を始める。彼はやがてホールの人柄に惹かれていく、というのがメインストーリー。ホールは「それでも恋するバルセロナ」のふわふわした遊牧民的役柄より本作の方がずっと魅力的。アフレックも処女作では監督業に専念したものの、本作では地元のブルーカラーを生き生きと演じている。主役の二人以外では刑務所に服役中の父親を演じるクリス・クーパーや街の影の実力者役のピート・ポスルスウェイトも好演だが、FBI特別捜査官役のジョン・ハムが一番印象に残った。幼馴染の一人を演じたジェレミー・レナーはアカデミー助演男優賞にもノミネートされた。
犯行現場の指紋やDNAは漂白剤を撒いて消し去るとか、FBIの覆面車両は後部ガラスのアンテナの形状で見分けるとか、細部の豆知識も面白い。映画の後半はフェンウェイ球場が主要な舞台で、レッドソックスの舞台裏を見る楽しみも味わえる。


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ウォール・ストリート

2011年02月14日

オリヴァー・ストーン監督「ウォール街」(87)の続編で、2008年秋のリーマンショック前後の事件を巧みに盛り込んでいる。主人公が師と仰ぐフランク・ランジェラの投資会社はベア・スタンズ、一方ジョシュ・ブローリンの会社はリーマン・ブラザーズがモデルとなっていると思われる。主人公シャイア・ラブーフとランジェラとの師弟関係が重要な伏線で、後半の主人公の行動の動機・基盤となっている。脚本はアラン・ローブとスティーブン・シフ。右肩上がりに上昇していた住宅価格の値下がりが、証券化され販売されていたサブプライムローンの破綻に繋がり、世界の金融界をパニックに陥れた2008年の数ヶ月が物語の主要な背景。最近ストーン監督は、「JFK」「ニクソン」「ブッシュ」と政治家ものが目立ったが、経済ネタでも冴えを見せている。
航空機業界に絡むインサイダー取引により有罪となったマイケル・ダグラスが刑期を終え、出所するところから物語は始まる。刑務所の中で書いた伝記がベストセラーとなり、大学でも講演する。一方、若き主人公ラブーフは彼の一人娘を婚約者としていた。
よくわからなかったのはイーライ・ウォラック演じる人物の素性。ワシントンの連邦準備制度理事会の会合にも同席していたが、彼は民間の投資家なのか政府側の人間なのかはっきりしない。
ダグラスの一人娘との関係修復が後半の主要な展開となるが、親子の問題に傾注する分どうしても前半の経済事件のテーマが薄くなってしまう。映画全体のトーンが少なからず転換するが、力ずくで経済テーマのみで引っ張ってほしかったという気もする。ただ主人公の婚約者という設定も悪くはなく、物語として破綻するほどではない。
最後に字幕について一言。ウォラックがダグラスの事務所を訪れ一緒にファンドを立ち上げようと話をするが、字幕では「財団を作ろう」となっていた。ファウンデーションの勘違いと思われるが、ここでは非営利法人ではなく、あくまで営利目的の投資ファンドのこと。最後に善行をして引退しようとしているわけではないのである。

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ソーシャル・ネットワーク

2011年01月27日

デヴィッド・フィンチャーの前作「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(08)はこれまでの殻を破ったとも思える優れたドラマだったが、本作でさらに評価を高めたのは間違いない。脚本のアーロン・ソーキン(「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(07)など)が視点や時制を変えながら膨大なセリフと共に巧妙に物語を展開していく。
2003年秋、ハーバードで主人公マーク・ザッカーバーグはボストン大学の女子学生に不用意な発言をして振られてしまう。その腹いせにブログで彼女を実名で中傷するのが事の始まり。女子学生の実名と写真をネット上で公開し、美人投票をするサイトが大当たり。やがてそれがSNSサイトのフェイスブックの誕生となる。現実の人付き合いは苦手だが、ネットの中ならありのまま自分で好きな事を言えるという主人公をジェシー・アイゼンバーグが好演している。
会員数の増大と共に、あのアイデアは自分から生まれたと主張する上級生のグループや共に創業しながら意見の違いから仲違いしていくストーリーを背景で説明しつつ、弁護士事務所の一室で延々と双方の主張を繰り広げる舌戦が見応えある。ベンチャー企業の創業時のエピソードとして創作の部分も多いのだろうが、今日なテーマを1本の映画にまとめ上げた監督らの手腕を評価したい。今や全世界で5億人以上の会員を集め、来年にも株式公開かと騒がれるフェイスブックの何が凄いのか、という問いかけには全く答えてくれない内容だが、ザッカーバーグの特異な人物像とそれを取り巻く登場者たちは実在の人物をモデルにしているだけにリアルに迫ってくる。

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君を想って海をいく

2010年12月24日

フランスの中堅監督フィリップ・リオレの新作。実はサンドリーヌ・ボネール主演の「マドモアゼル」を見て以来、同監督の大ファン。人妻ボネールと旅回りの劇団員ジャック・ガンブランとの数日間の邂逅を描く同作品の品の良さに唸った。その後、再びボネールを主演とした「灯台守の恋」も味わい深い恋愛映画で、さらに劇場公開はされなかったがDVDリリースの「マイファミリー・遠い絆」もある家族の感情の機微を繊細に描いた秀作だった。本作は元水泳選手で今は市民プールのコーチとなっている中年男とクルド難民の17歳の少年の交流を描いたもの。現代フランス社会において難民への対応について一石を投じた作品となっている。
コーチはボランティアで難民援助をしている教師の妻と離婚手続き中。そんな中、プールでクロールを教えてくれという少年と出会う。動機や生い立ちから推察すると、ドーバー海峡を泳いで渡るとしか考えられない。自宅に招くが、隣人からは難民援助は法律違反と警察に通報されてしまう。この隣人のドアマットに書かれていた文字が本作の原題でもある「WELCOME」。監督は困っている人を助けるという寛容ささえ失っているのか、と嘆いているのは間違い。映画のなかでクルド人への言及や説明は一切ないが、バフマン・ゴバディ監督の「亀も空を飛ぶ」で描かれたようにイラク国内で少数派として迫害を受けてきた歴史を持つ。
リオレの映画ではいつものことながら、控えめで慎み深い音楽の使い方も印象的で本作ではニコラ・ピオバーニが担当している。


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白いリボン

2010年12月16日

オーストリアの監督ミヒャエル・ハネケの新作。2009年のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞。厳格な司祭や室内シーンでのクロースアップなどベルイマン風。また何者かが村人を恐怖に陥れるストーリーはトニー・リチャードソンの「マドモアゼル」を連想した。
第一次大戦前夜の北ドイツの田舎の村。村人全員が顔見知りというある意味密閉された社会で奇妙な事故や事件が連続して起こる。まず村医者が目に見えない針金に引っかかり、落馬して長期入院してしまう。また、夜中に納屋が全焼する事件も起きる。極めつけは知恵遅れの少年が失明するような暴行を受ける。前半は群像劇風に主要登場人物を紹介し、事件の犯人を追うサスペンス仕立て。やがてストーリーの展開と共にこの監督お得意の不条理劇風となる。
冷たい色調の白黒の画面で、特に室内における重厚な演出が見応えある。ベルイマン風と書いたが、風景や厳しい冬の寒さも北欧と似ている。全編グレーを基調とした白黒撮影が美しい。室内はほとんどカメラを固定している。撮影はハネケと長くコンビを組んでいるクリスティアン・バーガー。背景の映画音楽は一切使用していない。脚本はコンサルタントとしてジャン・クロード・カリエールの名がクレジットされているが、監督自身が単独で書き上げたものだろう。

シネマトグラフ埼玉/埼玉県
大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。





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インセプション

2010年08月10日

クリストファー・ノーランの新作は意欲作ではあるものの、前作「ダークナイト」程の完成度はない。同監督は余程眠りとか夢にこだわりがあるのか、夢の中のシーンの造形はこの映画の白眉でもあり、大いに見ごたえはある。予告編でも見られた、パリの街並みがめくり上がるシーンなどは本当に素晴らしい。しかしながら、この映画のストーリーの核心となる他者に概念を植えつけるという行為(インセプション)を観客に理解させるまでの前提や説明がわかりずらい。夢も3層に分かれており、どの層が誰の夢でどういう効果があるのか、混乱してしまう。アクション場面は想像力にあふれ手に汗握るが、主人公の夢の中の妻(マリオン・コティヤール)のシーンがどうも映画の流れを中断し、余計に感じる。夢から覚醒させる音楽がピアフというのは楽屋落ちのつもりなのか。ハンス・ジマーの音楽は大変心地よく、この映画の雰囲気にも合っている。

シネマトグラフ埼玉/埼玉県 大学時代より今日まで約30年間、年間200〜300本観ている会社員。ニューヨークとブラッセルの駐在時代の7年間ではシネマテークにも通いつめた。サイレントから50年代くらいまでの古典を意識的に見るよう努力している。現代の好きな監督はロメール、レネ、リベットなど。日本映画では溝口と成瀬。


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