田野泰典

告白

2010年07月20日

 愛娘を教え子に遊戯感覚で殺される前からすでに、大切なものは失われていたのだ。それも森口悠子だけではない。本作の登場人物たちは皆、「あらかじめ失われた」世界で生きている。だから大切なものを失う気持ちを共有させるための復讐、という悠子の動機は成立しない。本作は復讐譚ではない。続きを読む



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春との旅

2010年06月23日

 はるかな水平線。『山椒大夫』(あるいは『気狂いピエロ』)のラストを逆回しするかのようにキャメラがパンすると、海沿いに建つ一軒家がある。玄関の引き戸がやにわに開き、中からものすごい剣幕の老人と、その孫娘が現れる。続きを読む

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シャッター アイランド

2010年05月19日

 J.D.サリンジャーが『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を発表したのは1951年。あまりにも有名なこの作品には、実は第二次世界大戦の存在が色濃く影を落としている。サリンジャー自身がヨーロッパ戦線に従軍し、ドイツとの激しい戦闘を経験、帰還後、いまでいうPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したからだ。『キャッチャー』執筆には、その自己治療の目的もあったのではないか、との分析がなされている。
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ハート・ロッカー

2010年04月26日

 軍用車ハンヴィーに乗ってバグダッド郊外の街へやってきた小隊を、建物の窓から怪訝そうに見つめる顔、顔、顔。舞い上がる砂ぼこり、何かひと悶着ありそうな不穏な空気……。紛れもなくウエスタンのタッチだ。  続きを読む

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インビクタス/負けざる者たち

2010年04月05日

 スピルバーグの『シンドラーのリスト』で、オスカー・シンドラーが強制収容所長のアーモン・ゲート大尉に、「本当の強さは殺すことではなく赦すこと」と諭す場面がある。『インビクタス』では二十六年もの間、政治犯として収監されていたネルソン・マンデラが、「まず赦すことから南アフリカの未来が始まる」と説いた。 続きを読む

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ゴールデンスランバー

2010年03月01日

 ヒッチコック的、あるいはカフカ的、はたまた筒井康隆的、そして何とも伊坂幸太郎的な物語。こうした巻き込まれ型サスペンスでは、主人公を絶体絶命の状況下に置き、伏線等活用しながらそこからいかにうまく逃れるかに、作り手はとことん腕をふるうことになる。 続きを読む

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パブリック・エネミーズ

2010年01月18日

 銃弾を受け、いままさに生命活動を停止しようとする身体。人間の生から死への移行を、本作でマイケル・マンは何度も我々に見せつける。それらは吐息が絶えることであったり、掴んでいた手が力を失い放れていくことであったり、もっとも顕著なのは、眼が虚空に見開かれることによって示される。続きを読む

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イングロリアス・バスターズ

2009年12月22日

 いまどき二元論でものを語ろうなぞ時代遅れの謗りを免れないのは充分承知のうえだが、私は「愛」と「憎しみ」では最後に必ず愛が勝つと信じている(そんな歌詞の曲があったなあ)。続きを読む

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マイケル・ジャクソン THIS IS IT

2009年11月13日

 私は『スリラー』の直撃を受けた世代である。訃報を受けて何度も再放送された、あの、ジョン・ランディスによるショート・フィルムを中学生の頃リアルタイムで初めて見た時の衝撃は強烈で、四半世紀を経て改めて観直しても、やはり傑作という評価に変わりはない。続きを読む

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