【本文の概要】

もしもあなたが、地球温暖化による2、3度の気温の上昇は、自分の近所で大して問題にならないと思っているのであれば、パーマー基地、南極にあるのだが、ここの言葉を贈ろう、「もう一回考えてみろ。」


急激な気候の変化がある地域とその野生生物にどのような影響を及ぼすのかを見るために、USニュース誌は最初、2000年1月に南極の夏場で最も暑い場所であるこのアメリカの基地を訪問した。当時、何事かが急速に動いているかを見るのに博士号など必要なかった。そしてその傾向は弱まらなかった。すなわち、その地域は年を追って変化しており、新種の動物が、在来種が出ていくか絶滅している時に、入り込んで来ていたのだ。

「あの氷の洞窟をご覧になりましたか」とビル・フレイザー、ペンギン研究の生態学者は、パーマー基地からの電話越しに言う。「なくなっているんです。そこの全ての氷河が溶けてしまった」

私達の「暖かい」という考えとは違うのだが、南極半島は地上で最も気温が上昇しているかもしれない。同じ時期、南極大陸のほとんどでは1度位しか気温は上昇していない。そして南極自体は、適度に氷点下を保っている2マイルの厚さの氷の層では、実際気温は少し下がっていた。そうした矛盾は、懐疑論者が諸国が地球温暖化を止めるためのお金のかかる計画に金を費やす前に、地球温暖化の事実はますます疑いないものでなければならないと感じる一つの理由なのである。

しかしここで、もし懐疑論者が誤っているのならば、その賭けはどれだけ高くなるのかが分かるだろう。その変化は微小なものではない。東に100マイル、南極半島の反対側では、巨大で恐らくは永久にそのままだったはずのラルセン(ラーセン)棚氷は、1980年代にはバラバラになり始めていた。2,000立方マイル以上の棚氷、それは700フィートの厚さであるが、2002年の初めには、わずか35日で崩壊した1,250立方マイルを含めて、これが今や崩壊しているのである。

パーマー基地周辺の野生生物は危機に瀕している。移住の兆候と土着の生物の絶滅が世界中で確認されている。地域によっては、チョウが新たな生息地に移動し、植物が気温の上昇につれてより高い高度へと移動しているのである。「危機に瀕した種のほとんどは、自然の生息地の隅に追いやられているが、真っ先に影響を受けることになる。そしてそれが起こっているということだ。」とフレイザーは語る。

フレイザー、現在53歳は、若いころ大学院生としてこの地を訪れ、以来ほぼ毎年ここに帰って来ている。ほとんど、彼はアデリーペンギンのために帰って来ているといってよい。このペンギンは、巣に小さい小石を詰め込まれて、鳥糞石(グアノ)でピンク色に汚れている。巣作りをした場所のゴミの分析から、アデリーペンギンは少なくとも600年間はこの地における鳥類を牛耳ってきたことが分かる。30年前、15,000組以上のペンギンのつがいが毎年基地の2マイル以内の所に巣を作っていた。2000年までに、その数は7,700組にまで落ち込み、今年の初めにはおよそたったの5,400組しかヒナを育てていないとフレイザーは報告している。コロニーの絶滅の兆候である小石の静かな広がりをじきに認めることになる。

80年代半ばまでに、フレイザーと他の研究者は現地のアデリーペンギンの数の減少とアゴヒモペンギンが入り込んでくるのを把握出来ていた。くちばしの下の暗い線を除けば、アゴヒモペンギンはかなりアデリーペンギンにそっくりである。長い間、科学者はなぜ一方がもう一方よりうまくやっていくのかを説明する2つの種の生態における重要な違いに気付いていなかった。

大きな手がかりは、1988年の最も寒くて暗かった月に訪れた。その年は、アメリカがチャーターした大型調査船ポーラーデューク号が南極半島の東にあるウェデル海を探検した。その探検にはフレイザーも船上にあったのだが、アゴヒモペンギンが外海にいっぱいいるのに対して、アデリーペンギンは冬の大浮氷群にいっぱいいたのが観測された。その時まで、アデリーペンギンが冬を越すのに海氷を当てにし、エサもその海氷の端っこ付近にいる魚を常食としていることなど誰も知らなかった。最近になって、ますます南極の海氷が減って来て、その地域のアゴヒモペンギンが難なく過ごしている傍らで、同じ場所にいるアデリーペンギンが苦境に陥っているのかが明らかになってきている。しかし、それはアデリーペンギンだけの問題ではない。元来、アデリーペンギンは自分達の生態を変えることが出来ないのだ。フレイザーは、一列で行進しているおそらくは2,000羽のアデリーペンギンに遭遇した砕氷船から、数年前に目撃した冬の光景を描写した。その先導するペンギンは、足元の氷が横に切れ目が入っている所に到達した。そのペンギンはためらい、跳び越え、小さいコブに蹴躓き、うつ伏せにばったり倒れ、ひょっこり起き上がり、前に進み続けるのであった。「それぞれどのペンギンも寸分違わず同じ場所でジャンプする、」とフレイザーは回想する。「そして最初の奴と全く同じように顔を打ち付けるんだ。」そうした壊れやすく、しかし過酷な環境で、変わることのない生態はたいてい動物が生き残るのには役に立つものである。「どこだかに、いったん良い場所を1羽が見つければ、」とフレイザーは話す、「その習慣に忠実だったことが報われるんだ。」しかし、と彼は話を継ぐ。「それは気候の変動期にあって生態的な弱点となる」

アデリーペンギンの繁殖地を訪れるたびに、フレイザーは、アデリーペンギンが想定外のことに順応できない証拠を目にするのである。ペンギンは12年、もしくはそれ以上を生き、死ぬまでつがいをなしている。つがいが巣を作ってしまえば、―普通はそのペンギンが生まれた島、そしてしばしば同じコロニーであるのだが―その2羽は通常、毎年毎年そこに戻ってくるのである。しかし、いつもより暖かい空気がいつもより多い湿気を運んで来れば、この静かで寒い場所にいつもより多い雪を降らせることになる。ここの卓越風は、ペンギンが巣をなすその小さな島の南西に面した側に最も深い積雪をもたらす。積雪が激しくなっていく中、そこに棲むペンギンはどこか別の場所に移動すべき時だということを認識できないかのようである。9月か10月に春が来た時、アデリーペンギンはしばしば―そして頑固にも―巣を作るために2フィートかそれ以上の積雪の上に小石を積んでいるのである。その後、氷のように冷たい雪解け水がたくさんの卵やヒナを殺してしまうのである。他方、アゴヒモペンギンは棲み処には多少柔軟なようで、その時にどれだけ有用かを元に巣の場所を選んでいるのである。

全ての損なわれたペンギンのコロニーはそこで繰り広げられる自然の中で動物が直面する厳しい現実のたかだか一章かそこらに過ぎないのかもしれない。確かに、絶滅危機に瀕した種などここにはいない。アデリーペンギンは、ロス海にある生息地の南端で栄えている。そしてそれは気候変動のひな形に相応しいのである。ロス海は歴史的に見てもたいへん寒いため、ほんの少しその地域が暖かくなることはその地をより良い場所にし、アデリーペンギンにとっても前より悪くなるということはない。「アデリーペンギンの全ての生息地については」フレーザーこう述べる、「南へと移住しているようだ。」
 
しかし、世界のほとんどの地域では、種の自然の生息地は、この広大で汚れのない大陸ではアデリーペンギンほど簡単に移動出来る訳ではない。前より暖かい気候が、動物の種を町の端や、あるいは山の頂上に追いやることがあるならば、そのことはその種の終わりであるのかもしれない。そして、それゆえ、ここのアデリーペンギンから得られる教訓が、世界の他の地域でも研究されるべきなのである。

2〜30年間にわたる同じトリの個体群の観察後―フレーザーは今、最初のアデリーペンギンの曾孫にあたるヒナを研究しているのであるが―彼が言うには、直感的にだが、彼が呼ぶところのエコ期を感じ始めているとのことだ。つまりは個体数が増えたり、減ったり、時には絶滅したりする、数十年〜数世紀もの期間である。
 
基地での夕方の科学セミナーの期間中、海洋学のスクリップス研究所の物理学者であるダン・ルービンは、パーマー基地で氷と外海が太陽光をどのように反射するかを研究しているのだが、彼は、気候変動はすぐに現れたり、消えたりしないということに言及している。例えヒトがたった今にも排出を止められるとしても、太陽エネルギーを取り込んでしまう二酸化炭素および他の気体は、200年あるいはそれ以上の期間で工業化時代以前の水準には戻らないであろう。「200年か!」フレーザーは語る。「実にエコ期なら、ことごとく台無しにしてしまうには十分な時間だ」

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◆◆重要表現◆◆
p. 134 
1. penguin ペンギン
2. greenhouse effect 温室効果
3. deforestation 森林破壊[伐採]
4. polar 極
5. melt(ing) 溶ける
6. gas(es) ガス、気体
 
p.135 
7. a few degrees of ~ ある程度の〜
8. neighborhood 近所
9. Palmer Station パーマー基地
10. Antarctica 南極
11. wildlife 野生生物
12. outpost 基地
13. Ph.D. 博士号
14. let up 弱まる
15. terrain 地域
16. die out 絶滅する
17. cave 洞窟
18. ecologist 生態学者
19. be gone なくなる
20. glacier 氷河
21. melt(ed) 溶ける
 
p.136 
22. the Antarctic Peninsula 南極半島
23. South Pole 南極(点)
24. atop 〜の上で
25. layer 層
26. actually 実際に
27. cool(ed) 涼しくなる、冷える
28. inconsistency 矛盾、不一致
29. skeptic(s) 懐疑論者
30. pay for ~ 〜に代金を支払う
31. expensive 高額な
32. stake(s) 賭け
33. subtle 微小な
34. supposedly 恐らく
35. permanent 永久の
36. disintegrate バラバラになる
37. shelf 棚
38. collapse(d) 崩壊する
39. including ~ 〜を含めて
 
p.137 
40. hint(s) 兆候
41. migration(s) 移住
42. local その地域の、現地の
43. extinction(s) 絶滅
44. pick up 捉える
45. range 生息地
46. altitude 高度
47. edge(s) 端、隅
48. graduate student 大学院生
49. nearly ほとんと、ほぼ
50. Adelie Penguin アデリーペンギン
51. pack 詰め込む
52. nest(s) 巣
53. pebble(s) 小石
54. stain(ed) 汚す
55. guano グアノ、鳥糞石
56. analysis 分析
57. debris ごみ
58. nest(ing) 巣作りをする
59. indicate(s) 示す
60. dominate(d) 牛耳る、支配する
61. within ~ 〜以内に
62. base 基地
63. young(n.) ヒナ
64. learn to V~ 〜する[できる]ようになる
65. silent 静かな
66. expanse(s) 広がり、拡大
67. extinct 絶滅した
68. colonies < colony コロニー、群落
 
p. 138 
69. chinstrap penguin アゴヒモペンギン
70. except for ~ 〜以外の
71. beak(s) くちばし
72. behavior 行動
73. clue 手がかり
74. charter チャーターする、借り切る
75. vessel (大型)船
76. explore(d) 探検する
77. the Weddell Sea ウェデル海
78. on board 船上に
79. ice pack 大浮氷群
80. get through ~ 〜を乗り切る
81. feed on ~ 〜を常食とする
82. region 地域
83. struggling < struggle もがく、苦闘する
84. by nature 元来、もともと
85. describe(s) 描写する
86. witness(ed) 目撃する
87. icebreaker 砕氷船
88. encounter(ed) 遭遇する
89. march(ing) 行進する
90. single 一つの、単〜
91. file 列
 
p. 139 
92. gap 切れ目、裂け目
93. hesitate(d) 躊躇う
94. hop over ~ 跳び越える
95. trip on ~ 蹴躓く
96. bump こぶ
97. fall flat on one's face うつ伏せにばったり倒れる
98. pop up ひょっこり現れる、起き上がる
99. recall(s) 思い出す
100. do a face plant 顔を地面に打ちつける
101. delicate こわれやすい、繊細な
102. yet (conj.) しかし
103. fix(ed) 固定する
104. niche くぼみ
105. pay off 報われる
106. stick with ~ 〜に忠実である
107. behavioral 生態的な
108. flaw 欠点
 
p. 142 
109. rookeries < rookery ペンギンの繁殖地
110. evidence 証拠
111. inability 無能力
112. adjust to ~ 〜に順応する
113. surprise(s) (n.) 意外なこと
114. dozen ダース(12個)
115. mate (v.) つがいをつくる
116. establishes < establish 作る
117. year after year 毎年毎年
118. moisture 湿気
119. prevailing wind 卓越風
120. pile 積む
121. incapable of ~ 〜できない
122. it is time to V~ 〜してもいいころだ
123. stubbornly 頑固にも
124. ice-cold 氷のように冷たい
125. meltwater 雪解け水
126. chick(s) ヒナ
127. fail(ed) 失敗する、損なう
128. chapter 章
129. the pitiless pageant of nature 自然の中で動物が直面する厳しい現実
130. endangered 絶滅に瀕する
131. flourish(ing) 栄える、繁栄する
132. the Ross Sea ロス海
 
p. 143 
133. fit(s) ふさわしい、合う
134. historically 歴史的に見て
135. observe(s) (考え)を述べる
136. not as ~ as … ...ほど〜ではない
137. vast 広大な
138. drive A to B AをBに追いやる
 
p. 144 
139. decade(s) 
140. great grand-chick(s) 曾孫のヒナ
141. feel in one's bones ~ 直感的に感じる
142. ecological 生態学的な、エコの
143. seminar(s) セミナー
144. physicist 物理学者
145. institution 研究所
146. Oceanography 海洋学
147. reflect 反射する
148. note(s) 気付く、言及する
149. emission(s) 排出
150. carbon dioxide 二酸化炭素
151. trap (v.) とらえる、取り込む
152. solar 太陽の
153. pre-industrial 工業化時代以前の
154. screw ~ up 〜を台無しにする