2008年12月19日

釣り合いのforはこんな風にも使われる

「英語職人です。」
「ジョシュです。」
「さて、今回はもう少し『釣り合いのfor』の解説を続けます。このforは『〜にとって』だけではなく、こんな文にも使われます。

She looks young for her age.(彼女は年の割には若く見える。)

「『〜の割には』?これもやはり釣り合いなの?」
「もちろん。簡単に言えば、『彼女と実年齢を天秤ばかりに乗せてみると、若く見える』ということだよ。」
「どういうこと?」
「釣り合いというのは前回のイラストにも表している通り、天秤にかけているというイメージが起きるわけじゃん。すると、両者を天秤にかけて『比較』をするというイメージが必然的に発生するわけです。」
「この場合は『彼女(の見た目)』と『彼女の実年齢』を比較しているわけだね。」
「そうです。そうやって比較してみると、『彼女って若く見えるよなぁ』ということなわけです。また、こういう文にも使われています。例えばこれは年金問題においての年金受給者の数とその年金の財源をまかなう労働者の数の割合を表す文だよ。」

At present in developed countries there are about three workers for every pensioner.
(現在先進国においてはすべての一人の年金受給者につき、およそ三人の労働者がいる計算になる。)

「これなんかは、天秤の片方のお皿に一人の年金受給者がいて、もう片方のお皿には労働者が三人乗っている、というイメージだね。」
「その通り。今回は不定詞の意味上の主語を解説するためにforの意味発展を長々と解説したけど、これは言葉の研究にとって非常に大事な側面を表しているんだよ。」

(1)ひとつの状況を見方によって幾通りにも解釈するのが人間のモノの世界の見方。
(2)したがってひとつの語彙を多面体のようにあらゆる角度から捉えることも行なわれる。
(3)このように語彙が会話のやり取りの中でいろんな人によっていろんな角度から捉え直されることによって語彙の多義性が発生する。
(4)これが社会の中で用法として定着するとその時代のその語彙の意味となり、また人々がコミュニケーションを続け、その語彙に対する新たな捉え方が発生する限り、その語彙の意味は変わり続ける。

「なるほどね。同じ単語でも古文の授業でやった単語と今の日本語じゃぁ随分意味が違うものね。こういう原理が働いていたのか。」
「さて、随分回り道をしましたが、不定詞の意味上の主語としてのforの解説はこれでおしまいです。次回からは、It is kind of you to say so.などの、『性格+of+人』がなぜ起きるのかを考えていきましょう。」
(以下次号)



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2008年12月17日

釣り合いのfor/これが不定詞の意味上の主語の正体

dad4c343.jpg「英語職人です。」
「ジョシュです。」
「今回は『交換のfor』から『釣り合いのfor』へ。」
「交換のforをどの角度から見れば『釣り合い』のイメージになるの?」
「かんたんだよ。例えば一万円相当のものを十円玉と交換する?」
「いや、もちろんそれはあり得ないけど。」
「でしょ?一万円相当のものなら、一万円札と交換するよね。つまり、交換できるという事は、両者の価値が釣り合っている、ということになるじゃない。」
「なるほど。たしかに。ではこの釣り合いのイメージは実際にはどんな風に使われているの?」
「これが、不定詞の意味上の主語になると言われているforだよ。

It is difficult for me to finish this work in a day.
([私にとって]この仕事を一日で終わらせるのは難しい。)

これを見ると、『他の人にとってはどうかわからないけれど、私にとっては(この仕事を一日で終わらせるのは)難しいというのが釣り合ってる』ということがわかるよね。」
「え〜っと、つまりこんな感じか(イラスト参照)。」

「そうそう。こういうイメージです。釣り合いというのは『最初10対0だったものが2対8になり、4対6となり・・とスライドしていって最終的に5対5で釣り合う』ものだから、『スライドしていく度合い』というイメージが必然的に出ます。すると、この『〜とっては・・・だ』という所に来る形容詞は難易度を始めとする『度合い』のイメージをもつ形容詞がやってきます。」

It is easy for me.(私にとっては簡単だ。:難易度)
It is necessary for me.(私には必要だ。:必要度)
It is important for me.(私には重要なんだ。:重要度)

(以下次号)



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2008年12月15日

forの意味変化/「目標」が「交換に」

「英語職人です。」
「ジョシュです。前回forが『目標』というプロトタイプから『行為との引き換え』という意味を引き起こすっていったよね。」
「たとえば受験生のみんなは『合格』を目指して一生懸命勉強するわけでしょ?これを別の見方で捉えれば、『合格』と引き換えに『一生懸命勉強する』わけじゃない。」
「そうだね。」
「つまり、『目標』というのはその多くの場面で『目標達成のための犠牲や努力との引き換え』という現象を伴うわけだよ。そこからforには『交換』の意味が定着(entrench)していると考えられるわけさ。例えばみんなが習う『期間のfor』というのも私、英語職人は『交換』だと考えています。」

例:I watched TV for two hours.
私はテレビを見るのと引き換えに二時間を消費した。→「私はテレビを二時間みた。」
(*duringが『それはいつの期間の話なのか?』を特定するために使われるので、「during the期間」となるのが普通なのに対して、forにおいては期間の前にtheはつかない。これは『特にいつの二時間でテレビを見たのか、ということではなく、テレビを見たらたまたま二時間を消費したという感覚がある』からだと考えられる。cf: I watched TV during that two hours.「私はその二時間のあいだにテレビを見た。」)

「ふ〜ん、なるほどね。」
「他にも例はあるよ。」

The bag is sold for twenty thousand yen.
そのかばんは二万円と引き換えに売られている→そのカバンは二万円で売られている。

I took him for his brother.
私は彼と彼の兄弟を引き換えて取った(=解釈した)→私は彼を彼の弟とまちがえた。

「ああ、なるほど。上の文なんて、なんでmistakeでもないのに『間違えた』って訳がでるのか不思議だったけど、こういう仕組みなのか。」
「さて、この『交換』のイメージがさらに『釣り合い』のイメージへと変化します。」
(以下次号)



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2008年12月13日

forの意味変化/単語の意味が広がるのはどうして?

b5894939.jpg「英語職人です。」
「ジョシュです。」
「前回はforが『目標』をプロトタイプ、つまり『根っこのイメージ』に持つのだという事をお話しました。今回はそこからforが二段階の意味変化を行う事をお話しします。」
「意味が変わるの?」
「正確に言うと、『見る角度を変える』ということさ。例えばピラミッドってさ、横から見れば三角形だけど、底から見れば四角形じゃん。上から見えると四角形の中に二本の対角線がX型に走って見えるし。」
「何が言いたいのさ?」
「ようするに、ひとつのものでも見方によって違って見えるってことさ。認知言語学で非常に重要視されていることのひとつに、『人間はひとつの状況を様々な角度から見る事ができる。したがって、表現が違うということは、同じ状況でも話し手がその世界をどう捉えているかが違っている事を表している』ということなんだよ。同じ『階段』でも見方を変えれば、それを『登り階段』とも取れるし、『下り階段』とも取れる。」
「でも物理的にはそれはただの『階段』でしかない。」
「その通り。『登り階段』、『下り階段』というのは階段そのものの意味ではなくて、その階段を『人間がどう捉えているか』ということなんだよ。ここに言葉の意味の秘密があるといってもいい。」
「つまり、言葉の意味というのは人間の世界の捉え方だと?」
「まさしくその通りで、そこが言葉を研究するにあたって一番大事な事のひとつです。で、forの話にもどるんだけど、さっきのピラミッドのように、forも見方を変えると違う意味が見えてきます。元々プロトタイプが『目標』なわけだけど、『目標』っていうのは『行為との引き換え』を引き起こすじゃん?」
「何それ?どういうこと?」
(以下次号)



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2008年12月11日

forって何?同じ方向性でもtoとはこう違う

「英語職人です。」
「ジョシュです。」
「今回のシリーズでは、不定詞の意味上の主語として、forとofがどのような気持ちで使われているのか、ということを説明します。まずはforから。」
「forっていうのは『〜のために』という感じが一番典型的だと思えるんだけれど。」
「その通りです。forの一番根っこのイメージ、認知言語学でいうところのプロトタイプには『目標』というイメージがあります。もともとforの語源は『前方』で、これはbefore(前)、forward(前方)、forehead(前頭部=おでこ)などの言葉の中に今も残っています。」
「でも『前』というのと『目標』というのはどうつながるの?」
「自分のゴール、目標というのは自分の前にある?後ろにある?」
「あ、前だね。」
「そしてなおかつ大事なのは、『目標』というのはまだ到達していない、離れた、先にあるものということなんだよ。前置詞においてはこれがtoとforの違いを決定する事が多いわけです。」

例:I went to Shibuya.(私は渋谷に行った。)
→渋谷に着いている。
例:I left my house for Shibuya.(渋谷目指して家を出た。)
→渋谷には着いていない。目指している目標。

「あ、本当だ。あれ?でも不定詞のtoというのは「これから向かう」というイメージが多かったのでは?」
「不定詞には『これから向かう』と『到達する』の二種類のtoがあるわけだけど、前置詞の場合はほとんどが『到達』を表します。」
「でもさ、I will go to Shibuya tomorrow.(私は明日、渋谷に行くつもりです。)なら、まだ渋谷に着いていないじゃん。」
「それでもその文は、『明日渋谷に到達する、ということをやるつもりです』ということを言っているだけだから、toが到達を意味する事には変わりないんだよ。さて、forの話に戻りましょう。同じ方向性を表していても、toと違ってforは『まだ着いていない、目指しているだけ』というイメージがでてきます。」
「わかったよ。だから『目標』ね。でもさ、それが不定詞の意味上の主語になるのとどう関係があるの?」
「それを知るにはね、forがここから意味の変化を起こしているんだ、ということを知る必要があるんだよ。」
(以下次号)



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2008年12月09日

今回からは不定詞の意味上の主語/ofとforをじっくりと・・

「英語職人です。」
「ジョシュです。」
「今回からは、不定詞の意味上の主語、特にforとofの使い分けを紹介していくね。」
「ああ、あれ、わかりにくいね。でもさ、とにかく人の性格を表す形容詞が来たときはofを使えばいいんでしょ?」
例:It was kind of you to tell me the truth.

「確かに。でもなぜofを使うのか、っていわれるとわからないでしょ?」
「うん。そうだね。」
「それにさっきあげた例文、訳すならどう訳す?」
「う〜ん、『あなたは親切にも私に本当のことを教えてくれた。』かな。」
「でもなんか不自然な日本語じゃない?私ならこう訳すけれどね。」
→直訳なら『私に本当の事を教えてくれたのはあなたから出てきた親切な部分だ』
→意訳なら『私に本当の事を教えてくれたりして、あなたって親切なところあるよね。』
「え?なになに?『あなたから出てきた親切な部分』?これってどういうこと?」
「実はここにofの正体があるんだよ。正確な意訳というのは、言葉の意味の正確なイメージを知る事無しにはありえないんだよ。今回のシリーズでは、forとofのイメージを知る事でこの構文をもっと生き生きと知る事ができるようにしたいと思います。」
(以下次号)



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2008年12月03日

今回はenough to構文。enoughにも気にして欲しいことがあるの!

「英語職人です。」
「ジョシュです。」
「さて今回は enough to構文。」
「『〜するには十分〜だ』ってやつだね。」
「そうだね、まぁそれでいいんだけどね。」

例:He is old enough to understand it.
(彼はもうオトナなんだから、そのことを理解できるよ。)

「ん?なにかenoughにも一言あるの?」
「以前tooは『〜すぎる』だけじゃなくて、『〜すぎてダメ、失格』ってところまで考えるべきだ、って言ったじゃない。」
「そうだね。」
「enoughにはちょうど逆のことが言えるんだ。『十分〜だ』だけじゃなくて、『十分〜だから合格だ、OKだ』って感じなんだよ。」
「『失格』の逆、っていうこと?」
「そうだね。まずは
He is old enough(彼は十分年をとっているから合格)
という『核になる情報』のまとまりというか、『結論』があって、そのあとに『何をすることに向かっては合格なの?』ということをフォローしてくれる
to understand it.(→そのことを理解する)
という情報がくるんだよ。」
「これって、too ~ to構文でもそうだったけど、to不定詞はまた『基準』の役割をするの?」
「その通り。『そのことを理解する』ということを基準ラインとすると、『彼は十分オトナだからその基準を満たしている』ということなのさ。」
「tooにしてもenoughにしても『基準』という考えと密接に結びついているんだね。」
「そしてto不定詞の前で文を区切って読むことがこの構文を自然に前から読みこなしていく最善の方法なんだ、ということも忘れないでね。」
「英語は前から読もう!当たり前のことだけど、大事なことだよね。」



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