国連憲章には、「旧敵国条項」が存在する。それもそうだ。先の大戦の戦勝国(連合国)が、作ったのだから。

 

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安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。

但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。

もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。

2.本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

 

 分かりやすく言えば、こうだ。

第二次世界大戦中に「連合国の敵国」だった国が、戦争の結果や講和により確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こしたりした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は安保理の許可がなくとも、当該国に対して軍事的制裁を課すこと(制裁戦争)が容認され、この行為は制止できないとしている。

 

この「旧敵国条項」の対象国は「明確ではない」のである。

日本、ドイツ、イタリアの旧枢軸国に加え、その勢いに呼応し、宣戦を布告したブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドがこれに該当すると言われている。

旧枢軸国の影響下(支配下)にあったオーストリアや南北朝鮮は、これに当たらないと言われている。

ただこの意見も日本政府の見解である。

ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドは、法文上では、敵国扱いされているが、「すでに除外されている」とも言われている。

さらに、イタリアも除外され、ドイツも、1990年のドイツ統一と最終規定条約を経て、実質、除外扱いを受けているとも言われている。

実際、この「旧敵国条項」の対象国は、「日本だけ」という説もある。

 

なぜか?

ドイツ、イタリアは、すでに旧連合国との間で、平和条約および友好条約を締結し、実質においても、法的においても、戦争を終結させている。

 

では、日本は?

旧ソ連(ロシア)との間では、平和条約および友好条約を締結出来ていない。北朝鮮との間でも、平和条約および友好条約、どころか外交関係さえ樹立出来ていない。

同時に、近隣諸国との間で、歴史認識問題が解決していない…

 

実質的には、戦争は70年前に終わっているが、法的な決着が「ついていない」のである。

だから「日本はまだ旧敵国扱い」であるという説もある。

 

国会の答弁では、1995年に、この旧敵国条項を含めた憲章の改正が合意されている。そこで「事実上の死文化している」という。

誰が?

日本の政府外交関係者が…である。

 

あくまでも希望的観測である。

それから20年、実際に、改正に手が付けられたわけではない。

 

分かりやすく言えば、法律(条例)を作っているが、施行については、年月日が記載されていない状態である。つまり、いつ施行されるかも分からないのだ。

施行されなければ、法は機能しない。なんぼ理念が書かれていても、法が施行されていなければ、その理念は、無力なものだ。

 

なぜか?

法的な決着が「ついていない」からである。

旧ソ連(ロシア)と北朝鮮との間で、平和友好条約の締結を早期に実現する必要性がある。

 

でも、「北方領土問題があるじゃないか」、「拉致問題があるじゃないか」

「だから平和友好条約が締結出来ない」と言う理屈は、通用しない、世界では。

 

国と国との間に「懸案事項がない」なんてことはない。必ず懸案事項は存在する。特に隣接していれば。

もう一度、言おう。日本とロシア、北朝鮮の間では、法的に戦争は終わっていない。つまり日本は、「まだファイティングポーズをとったまま」なのである。

ファイティングポーズをとったままで、懸案事項の解決に向かうのである。

それも「敗けたのに…」である。

 

中国との平和友好条約の締結の際、両国間にまたがる懸案事項は、「棚上げ」をした。その1つが、尖閣の領有権問題である。

つまり、懸案事項の解決と、平和友好条約の締結は、天秤の関係ではないのだ。

二兎を追うことも出来るのだ。実際は難しいが。

それは中国やロシア、北朝鮮を相手にするから…でもない。領土問題は、どこの国でも先鋭化する。

 

話しは逸れたが、旧敵国条項がある限り、日本が世界で名誉ある地位を占めることはない。

同時に、戦争の結果や講和条件などに反する行為や侵略意図を垣間見せれば、安保理決議がなくとも、「正義の戦争」が出来るのが、この「旧敵国条項」である。

 

旧敵国条項がある。そして安保理常任理事国、5大国の一角である。

世界第二位の経済と軍事力を誇る。

 

「報道されていない事実がある」という。

オバマ政権になって、クリントン国務長官(当時)、オバマ大統領自身も、「尖閣は安保条約の対象」と言ったという。それで日本政府筋は、喜色満面ではある。

だが、こうも付け加えていたという。「ただの岩で両国が争わないでくれ」と。

 

1つは、中国もアメリカにとって大切な経済パートナーであるからだろう。もう1つは、「旧敵国条項が背景にある」と思う。

「旧敵国条項に基づいた制裁措置である」と中国が日本に対し何らかに制裁を発動したとき、アメリカはどう動く?

「動けない」それが答えだ。

アメリカが動いたとき、それは国際連合の破たんを意味する。

 

分かるか?

よく言う、敗軍の将、兵を語らずと。

この国は、「敗戦国」である。この事実は、修正できない。


   さのえいじ