2007年11月01日

それでも過失は必要である。と。

民事系科目はずいぶんと伸び悩んでる。
もう一歩先まで伸ばすには、おそらく書き方の壁にぶち当たっているので、
こりゃーあと一ヶ月ではあまりどうにもならないのもある。
スタイルは悲しいかなそう簡単には変えられないし、
今さら違うスタイルにするリスクも取れないし。
そういうわけで、ここは基本に戻って、民法の勉強だと。

択一式受験六法をひもといてみたが、疲れて投げ出してしまった。
もともと苦手で苦痛で(´・ω・`)民法を書いていたぐらいである。
今となれば動機も時間もあのころよりはかなり減退しているし、
二回試験は六法が参照できるぶん択一の勉強とはちょっと違う。
そうすると、今こそ「論点」とか思い出しちゃうときではないの?


そういうわけで、まずは懐かしきかな内田1を取り出してみたのだった。
内田1といえば、やっぱり権利外観理論大好き説。
民法94条2項には過失を要求するし、
96条3項でも取消後の第三者を対抗要件よりも権利外観っぽくするし、
95条で救えない第三者もなんとなーく権利外観の話になるし、
表見代理でも過失はかなり前面に出てくる。
極めつけは「しかし判例は文字通り善意のみを要求している」。
一生懸命勉強した身としては、
判例が「事実」「条文」としてのしかかる現実は切ないねぇ。

まぁでも初学者のうちから、
一つの理論的ポリシーに貫かれたものを見るのは悪くないと思う。
それが結論的に妥当である場合もあるし、
将来的な立法課題として説明することも大事だ。
内田がいいのかって突っ込みは当然あるが、
じゃあ我妻がいいのかっていうお約束の返しにも飽きた。
内田、堂々と使えば良いんですよ。

さてその内田民法だが、やはりトンデモ本でもある。
そのトンデモさは今になって分かる。
解釈はかなり実務からかけ離れたところで展開されることもある。
悲しいかな教科書ではそのかけ離れ具合を書いてくれないので、困ることがある。
でもまあ、一つの立場としては面白い。

また表現が相当に面白い。編集のセンスなのか分からないが。
特に判例の解説が面白い。
さっき読んでいて興味深かったのは公序良俗違反の芸娼妓契約の話かな。
芸娼妓として働かせる契約と、その前の消費貸借契約を二つにわけた原審を破棄し、
一体のものとして消費貸借契約も無効とし、
消費貸借で貸したお金も不法原因給付で変えさせないという、
人身売買を断固許さないという最高裁の毅然とした態度を示したものである、と。
いやあかっこいいなー最高裁。そういう気持ちにさせるアナウンサー的解説なのだ。

カフェー丸玉女給事件などでは、社会的反響なども書きつつ、
差戻原審の判断にも触れ、事案にまで踏み込むおもしろさを見せゴシップ的要素も。
カフェー丸玉女給事件は内田先生はよほど大好きらしくて、
1・2・3に登場する超有名判例である。
特に2には差戻原審が最終的に女性を勝たせたことについての法律新聞の解説まで載っており、

「差戻を受けた大阪地方裁判所は大審院何物ぞ? 
とばかり妙に女の肩を持って(諸侯よ怒り給ふな)
再び男に対し証書面金額の支払いを命じた」
と冗談めかして解説したが、事実認定は大阪地裁が正しいとしたのである。

「大審院何物ぞ?」のフレーズは今でも大好きだ。



家族法がらみも内田先生相当思い入れがあるらしく、
「常盤御前判決」とか、大変有名らしいが、
内田先生の本以外ではその名前を見たことがない。
しかし解説は面白い。
(昔の家族百選には載っていたようだ)
何とグーグルで探してもほとんど出てこない。大村先生の本にも見あたらない。
なお内容は、親権喪失についてのもので、
不貞がそれに当たるかというもの。大審院昭和四年二月一三日第三民事部判決。
幼い我が子を養うために売春をしていた母についての親権の問題で、
それを義経を救うために清盛に身を委ねた常盤御前になぞらえた、
長大な上告趣意書から来ているとのことである。
内容自体は重苦しく、そして家族法の解釈にも重要な問題であるが、
こう、内田先生のフォーカスのあて方は、何か記憶に残るのである。
さぞや裁判官の胸を打つ書面であったのであろう、
いつかそういうのが書けたら良いなと思う。
そして、そう思わせる内田先生の解説である。


長々となってきたが、要するに内田先生バンザイである。
民法手詰まり感があったが、
内田をニヤニヤしながら読むこととしよう。
とりあえず明日内田2の新しいの買ってこようっと。

eiji_inose at 00:17│Comments(6)TrackBack(0) 法律語り&法科大学院語り 

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この記事へのコメント

1. Posted by tk   2007年11月01日 20:07
いつも勉強させて頂いています。
新61期を予定している者です。

>もう一歩先まで伸ばすには、
>おそらく書き方の壁にぶち当たっている

これは具体的にはどういうことなのでしょうか?
書き方が問題だとすると,「我妻を読め!」では
対処出来そうにないですね。
民裁,民弁の書き方に定型みたいなものは
あるのでしょうか?
2. Posted by 猪瀬えいじ   2007年11月01日 22:08
>tk様
はい、研修所では知っている法律知識や拾えている事実はみな同じだと思うのですが、書き方、構成力によってえらい点数が変わってきてしまうようなのです。自分の書き癖もありますし、実務修習先の先生の影響も多少なりともあります。ですからそれが起案で要求されている「型」にはまらないと点数が伸びにくいのですね。特に民裁、民弁は型がシビアで、上手くはまらないとガラガラと点数を失うので難しいのです。我妻を読んでも対処はできません。ただ、強いていえば今日立ち読みした岡口裁判官の問題集にある模範解答はあるいは参考になるかも知れません。
3. Posted by れもねーど   2007年11月01日 22:16
はじめまして。学部生です。

ショボーン(´・ω・`)民法 の続きが気になってます。
未完終了なのでしょうか。
4. Posted by tk   2007年11月02日 15:33
>猪瀬様
お返事ありがとうございました。
早速岡口先生の問題集を手配致しました(笑)。
修習では新60期の先輩方の評判を落とすことのないよう頑張りたいと思います。
5. Posted by 猪瀬えいじ   2007年11月04日 22:47
>れもねーど様
くうう…そこは痛いところで。妄想力が枯渇したというのと、ちょっと今になってはスーパー恥ずかしいというのがあります。が、今確かに民法で伸び悩んでいるので、今一度…とも考えています。まぁ、10%くらいと思ってください。すいません…。

>tk様
岡口問題集はベーシックな内容だという評判です。丸暗記の必要はないと思いますが、早めにやっておくと後々楽になると思います。
6. Posted by why not try this out   2014年05月11日 16:04
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