DJK Klassik

さて、昨日は、エルベフィルハーモニーのオープニングコンサートをYOU TUBEで鑑賞。大幅に、工期、予算共にオーバーし、非難の的に晒されていたようだが、出来上がってみれば、当初コンセプトそのままに、妥協なき完成度。これぞレガシーにふさわしい。

テツラフブラームス23
とっても濃厚で艶やかな演奏だ。ラルス・フォークト 、クリスチャン・テツラフ、ターニャ・テツラフ。心技体、円熟の時を向かえたドイツの名演奏家三人による渾身のブラームスである。

他の奏者に遠慮することなく、自己の領域はそのままに。個性と調和、自分と他人との領域が躊躇なく一体化し、全員が同じ肺と心臓で動いているかように、音は循環し、伸長し、屈曲の連鎖を繰り返す。

チェロは朗々と、深みのある旋律を、ヴァイオリンは感情の高揚を切々と歌いあげ、ピアノは地を這うように安定した低音部を基調とし、ブラームスらしい、不器用な囁きを演じる。レンジ幅の大きい立体的なフォルテと対を成す弱音部は特に緻密で、余裕のある間の取り方が表現に深みを与えている。

私は、クリスチャン・テツラフの派手な立ち回りから聴かせる協奏曲も嫌いではないが、この演奏を聴くと彼のシュテファン=ペーター・グライナーが最も効果的に鳴るのは、こうした室内楽を演奏した時のように思う。細かい表現をはっきりと感じることができるし、ハイレンジで、澄み切った高音は、シンプルかつモダンで、イタリアの名器には無い純度の高さを感じる。

録音は、最近、ベルリンフィルの自主制作盤でも、その手腕を発揮している、クリストフ・フランケによるもの。楽器質感を克明に記録しながら、ブレーメン、ゼンデザールでの音のベクトルをも感じさせる。

著名な演奏家による室内楽の新譜としては、ハルモニア・ムンディからリリースされているファウスト/ケラス一派の録音が高い評価を得ているようだが、テツラフ/フォークト達によるこのシリーズも真に素晴らしく、忘れては欲しく無い。

ブラームス
ピアノ三重奏曲第2番ハ長調 Op.87
ピアノ三重奏曲第3番ハ短調 Op.101
ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調 Op.8

クリスティアン・テツラフ
ターニャ・テツラフ
ラルス・フォークト

2014年5月27-29日
ブレーメン、ゼンデザール

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毎日寒い日が続いているが、2017年は ヴィルデ・フラングの温かいモーツァルトから始めよう。

昨今のフラングの活躍は目覚ましく、ベルリンフィルのヨーロッパコンサートにソリストとして呼ばれたり、ワーナーとのレコーディングも順調で、昨年リリースしたブリテン、コルンゴルトの録音も軒並み高評価だった。リサ・バティアシュヴィリ に続けと新女王への道を確実に歩んでいるようだ。

本作は、2014年に、話題の若手古楽集団アルカンジェロと組んで、ロンドンで録音された、フラング28歳の録音。

フラングは持ち前の美音と、懐の深い歌い回しで、しっとりと、ディープにモーツァルトを奏でる。アレグロでのスタッカートはしなやかに跳躍し、アダージョでは北欧の妖精が舞い降りて、宙を舞うような、脱力感と、天にも昇るような、美しい時間が支配する。

協奏曲ではフラングを包みこむように透明感溢れるアンサンブルを聴かせていたアルカンジェロだったが協奏交響曲では一転、低音を効かせたサウンドで攻めに行く。

高音質で有名なLINNレーベルで活躍する、Philip Hobbs氏の手による録音も格別であり、ハイクオリティなサウンドが広がる。

こんな寒い夜には、フラングの音色にぬくぬくと浸っていたい。

Recorded: 3-5 April 2014, St Jude-on-the-Hill, Hampstead Garden Suburb, London
Wolfgang Amadeus Mozart
Violin Concerto No.1 in B flat K207
Violin Concerto No.5 in A flat K219
Sinfonia Concertante in E flat K364

Vilde Frang, violin
Maxim Rysanov, Viola
Arcangelo directed by Jonathan Cohen


☆ヴィルデ・フラングは、これもオススメ☆
ヴィルデ・フラングのチャイコスフキーのヴァイオリン協奏曲


☆モーツァルトのヴァイオリン協奏曲のおススメ☆
アラベラ・シュタインバッハーのモーツァルト ヴァイオリン協奏曲集

ヒラリーハーンのモーツァルト ヴァイオリン協奏曲第五番

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ここ数年、ネルソンスの躍進はとても気になっていて、ルツェルンでのブラームスの2番(BS映像)、ゲヴァントハウスのマーラー3番(ネトラジ)、ブリテンの戦争レクイエム(BS映像)など、チェックはしていたのだがどれもいまいちピンとこなかった。音楽が自然に流れないというか、無駄な抑揚が多いというか、そのため、オルフェオから出ている、バーミンガムとのレコーディングも完全スルー状態だったのだが。

さて、グラミー賞を獲得した、ボストン響とのショスタコーヴィチ第10番。ネルソンス、お前はこんなに凄かったのか。

パッサカリアの冒頭から、ものすごーく気合の入った一撃をかまし、そのあとも低弦から、金管まで、垂直にそそり立った、大音響が渦をまく。カロリーは、常に高めで、噛みしめるたびにあふれ出す、肉汁のうまさは半端ない。

その後、静かーに始まる交響曲第10番、緊張感に富むが、ネルソンスが生み出す豊かなフレージングにより、ロシアの荒涼とした大地に、聴き手を置き去りにすることはない。ネルソンスは、スコアの細部から、大げさなほどに、旋律、ハーモニーを炙りだし、音楽の陰影を歌い尽くす。長く、静かな場面も多いこの作品だが、表現は確信的で 一瞬たりとも退屈はしない。

ボストン交響楽団も気合の入った演奏でそれに応える。弦楽器の温かいアンサンブル、じっくりと深く歌う木管ソロ陣、開放的で明るい金管楽器、それらの卓越したアンサンブルが聴き手を大きく包み込でいく。

第四楽章、弾力性のある低弦から次第に盛り上がる大迫力の終結部。最後は、アメリカンオケならではの痛快な金管が打楽器と共に勝利を歌い上げる。とてもかっこいい。これぞ、ショスターコーヴィチを聴く喜び。

私は、ネルソンスの音楽が苦手なのではなくて、ネルソンスの指揮姿が苦手だったのかもしれぬ。あの大げさなアクションに乗り切れないだけで。こうして音だけ聞くと、彼の意味深い解釈に何度もはっとさせられた。

録音は、グラモフォンらしい人口臭さはあるが、カラヤン以来の伝統を受け継いだ見事な録音、編集だと思う。マスとディテイルのバランスも良く、再生環境も問わない。

これは、ショスタコーヴィチレコード誌に名を刻む記念すべき一枚になった。今後も、ネルソンスと、グラモフォンの、コラボレーションに期待したい。

ショスタコーヴィチ
:歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』から パッサカリア
:交響曲第10番ホ短調作品93

ボストン交響楽団
アンドリス・ネルソンス
2015年4月 ボストン  (ライヴ)

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