DJK Klassik

さて、昨日は、エルベフィルハーモニーのオープニングコンサートをYOU TUBEで鑑賞。大幅に、工期、予算共にオーバーし、非難の的に晒されていたようだが、出来上がってみれば、当初コンセプトそのままに、妥協なき完成度。これぞレガシーにふさわしい。

FUTI93~1

今、ソニーレーベルの主役は何といってもテオドール・クルレンツィスであろう。毎年、リリースそのものが事件のようだ。今年、2020年ベートーベンイヤーにリリースされた運命も実に凄かった。この運命にあらたな生命を宿し、今、生まれたかのように新鮮で、エネルギッシュな世界。この曲が持つ使命、無限の可能性について改めて気づかされるようだ。

激しくたたみつけるような、第一楽章から、柔らかく跳ね上がるような第四楽章まで、細かなアキューテーションを施した表現には一瞬も隙がない。ピリオドオケが持つ、リズム感や音色の素朴さ、従来のオーケストラの持つ、力強さや深い息遣い等、それぞれの長所をうまくブレンドし、ここぞという時に、ジャストミートする表現を繰り出している。

クルレンツィスは、スタジオ録音作品としての割り切り、徹底したこだわりによって、後期ビートルズのようにスタジオにこもり、あらゆる発想を具現化している。これができるのは、ベルリンフィルでもなく、SWRでもなく、ムジカエテルナというオケなんだと思う。単なる演奏記録としてでなく、新たな作品として、運命に取り組んだクルレンツィスの勇気と才能を称えたい。

ライブパフォーマーとしての彼らはどうなのであろう。来日公演初日、オーチャードホールで聴いた記憶からすると、このムジカエテルナというオケ、欧州の名門オケとは大きく異なる、あまり洗練されないロシア田舎風味であった。今や、ルツェルンも、ザルツブルグもクルレンツィスフェスのようになっている状況を見ると、ヨーロッパのお客さんも、ソフィスティケートされたものより、聴いたことも、見たこともない怪しげなものに惹かれているのだろうと思う。異端児と揶揄されながらも、しっかりと保守層の支持を受けているのが、クルレンツィス&ムジカエテルナの強いところだ。

彼らには、これからもヨーロッパの音楽シーンを引っ掻き回してもらいたい。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
交響曲第5番ハ短調 作品67「運命」


テオドール・クルレンツィス
ムジカエテルナ
録音:2018年 コンツェルトハウス、ウィーン

B92

2012年にパリで結成された、トリオ・レ・ゼスプリ。これまで、Mirareから2枚の録音をリリースしていたが、ピアノのアダム・ラルームがソニークラシカルと契約したのを機に、トリオとしての録音がソニーからリリースされた。だが、この録音でトリオとしての活動は最後とのこと、残念だ。

Mirareからのベートーベンとシューマンの三重奏アルバムも素晴らしい出来だったが、このシューベルト三重奏での彼らの成長は目覚しい。三人のポジティブなエナジーがシューベルトの音楽とうまく結びついており、フレーズ一つ一つがしみじみすることなく、いつも瑞々しいのだ。シューベルトの音楽は、枯れに枯れたベテラン演奏家ではなく、こうした若者にこそどんどん演奏してほしいと思う。シューベルトの三重奏曲はどうも長くて苦手という方にも、ぜひ聴いていただきたい一枚だ。

このトリオでヴァイオリンを務めるのはラフォルジュルネでおなじみの、ヤン・ミサだ。2019年のラフォルジュルネで聴いた、彼女のスコットランド幻想曲は、とんでもなく素晴らしく、のびやかなで華やかな音色に終始心を奪われてしまったものだ。そんなヤン・ミサも巷ではあまり有名ではないようだし、フランスローカルでの活動が主なため、ラフォルジュルネ以外は音信不通、評価しているのは、私とルネマルタンだけのような気さえするのだが。そんな中、こうして、メジャーレーベルから、彼女の演奏が偶然にもリリースされたことは誠にうれしい限りである。幻想曲ハ長調もヴェルデ・フラングや、ユリア・フィッシャーに負けず劣らず素晴らしい。

また、チェロのジュリアン=ラフェリエールはアルファレーベルより新作をリリース。ここでもアルペジョーネ・ソナタで切れ味の良い演奏を聴かせる。トリオ解散後も三人のますますの活躍に期待していきたい。


シューベルト
アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 D.898
ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D.934
ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 D.929

トリオ・レ・ゼスプリ
アダム・ラルーム, ピアノ
ヤン・ミサ,ヴァイオリン
ヴィクトル・ジュリアン=ラフェリエール,チェロ

2018年1月 スイス、ラ・ショー=ド=フォン、音楽ホール

sonyまずは、ソニークラシカル
ドイツの超大手レーベルである。なんといっても日本企業の名前が入っている。日本エレクトロニクス業界の繁栄を今に伝える、貴重なネーミングだろう。

ヨアフ・カウフマン、クルレンツィス、イゴール・レヴィット、ランラン(今はグラモフォンに移籍)等、超売れっ子スターを取りそろえながらも、ヘンゲルブロック、ハインツ・ホリガー、ミヒャエル・ザンデルリングなど、地味にドイツ音楽を探求する連中の録音もコンスタントに出し続け、アーチストを継続的にサポートしている姿勢もうかがえて好感度大。主としてドイツ音楽界で深く広く、仕事をしているようだ。

録音は、それぞれのアーチストに合わせた場所で行われていて、録音チームのもいろいろだが、どれも高品質で、裏切られることは少ない。グラモフォンと比べると、ゴージャス感は減退する分、明快なイメージを持つ。

どういう基準で選んでいるのかわからない時もあるが、日本プレス盤も発売しており、Blu-spec CD 2という高品質CDでリリースをしている。Blu-spec CD 2に関しては音がよりクリアになるイメージがあり、私は好きである。

ソニーの名前がついている割には、ハイレゾファイル販売に消極的な印象で、販売サイトとエリアを絞り、多国間の価格をコントロールしているようだ。
また、以前はSACDを推進していたレーベルであったが、今はすっかり撤退してしまった。DSD録音当事者の意地を再び見せてもらえないだろうか。そのあたりブルーレイオーディオや、MQA-CDなどハイレゾフォーマットにそれなりのこだわりを見せるユニバーサルをもう少し見習ってもよいかと思う。

このページのトップヘ