DJK Klassik

さて、昨日は、エルベフィルハーモニーのオープニングコンサートをYOU TUBEで鑑賞。大幅に、工期、予算共にオーバーし、非難の的に晒されていたようだが、出来上がってみれば、当初コンセプトそのままに、妥協なき完成度。これぞレガシーにふさわしい。

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今年のラ・フォル・ジュルネで印象に残ったアーチストはなんと言ってもラルス・フォークトだ。音楽監督を務めるロイヤル・ノーザン・シンフォニアを率いて三日間朝から晩まで出ずっぱり、ものすごい暴れっぷりだった。

日本ではなかなかお目にかかれないであろう彼の指揮を見たくて、2日目のモーツァルト〈プラハ〉他を聴きに行った。
1曲目のドンジョバンニ序曲からやる気満々でキレキレ。〈プラハ〉第一楽章の繰り返しでは、各所あまりに濃すぎて聴き疲れが生じたが、エネルギッシュで楽しくなる演奏だった。とてもやんちゃで自由な指揮姿が魅力的なフォークト。今後、明るいクルレンツィスになれるのであろうか。

そして、ONDINEからリリースされてるのが、このベートーベンのピアノ協奏曲第1番、第5番。やはり彼はピアニストである。ピアノは半端なく素晴らしい。ドイツの伝統的なピアノの響きと、ピリオド奏法を経由したNEU KLANGを融合させた最新バージョン。

皇帝では、冒頭から、粒立ち良くきらびやかな高音がどこまでも翔け上がる。ピアニストとしてなにか吹っ切れたのではと感じるほどの大胆な切れ込みと爽快感。リズム感よくオケを鳴らしまくり、弾き振りならではの絶妙な一体感で、名曲皇帝のイメージを一新。キビキビと俊敏な皇帝像を作り上げた。

第一番も同様に若々しい演奏で、オーケストラとピアノとの対話が親密、美しい響きの連続だ。ラルゴで見せるしっとりとした抒情性は、元来彼の得意技である。

残りの協奏曲もすでにリリースされており、第1番、第5番を聴く限り、協奏曲全集として、かなりの偉業になるのではと思ってる所である。正直、アンスネスの全集よりもビビットと来たし、ポリーニ・アバド全集をも更新させてしまう勢いである。

ぜひこのコンビで、また来日し、ベートーベンの協奏曲ツィクルスを聴かせてもらいたい(欲を言えば音響条件の良いホールで)

ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73『皇帝』

ラルス・フォークト(ピアノ、指揮)
ロイヤル・ノーザン・シンフォニア


録音: 2016年10月28日(1番)、2016年11月18日&2017年1月28日(5番)
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イギリス、セージ・ゲーツヘッド・コンサート・ホール
2004年に出来たとってもモダンな外観のホールです。

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クリスティアン・テツラフ、
これが1回目のJ.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンの録音。

今でこそモジャモジャ頭の長髪おじさんとなった彼だが、このころはまじめな27歳の好青年だった。 テツラフ汁はまだまだ薄くて、見た目どおりの実直な演奏。 ピュアで伸びやかなボウイングに終始心洗われる。自分の個性よりも バッハそのもの焦点をあてているようだ。 高い技術をベースとし、過度な演出もない正統派ドイツロマンな演奏は、巷の個性過多な演奏に慣れた耳には、とても新鮮だし、聴きやすい。

テツラフのバッハ無伴奏は2005年録音の次作で最初の頂点に達するわけだが、1993年のテツラフも若さなりの魅力に溢れている。

本盤は、今年出たワーナーUHQCDシリーズでの再発である。90年代EMI系の録音は平面的だったりして、しけたものも少なくないが、UHQCDだからか、再発に向け気合を入れたのか、90年代デジタル録音のネガティブ面を感じさせない、フォーカスの定まった生き生きとした音をしている。デジタルの再発という点ではUHQCDはなんだか良さそうだ。

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲
クリスティアン・テツラフ
1993年3月、11月
イギリス、ブリストル、セント・ジョージズ・ブランドン・ヒル

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しばらくの投稿していない間に、欧州クラシックシーンも次のフェーズに移ってきたような気がする。ベルリンは、ラトルからぺトレンコへ、ハンブルグは、ヘンゲルブロックからアラン・ギルバートへ、SWRにはクルレンツィスが。

そんな中、2015年からNDRエルプシンフォニー首席客演指揮者を務めているのがこのポーランド出身の若手 クシシュトフ・ウルバンスキ、36歳。指揮者らしからぬ、風貌もあって、その実力には私自身懐疑的であったし、いくつかのラジオ音源を聴いても取り立てて特徴を感じることができなかった。

ところがである、このショスタコーヴィチの録音。物凄い。個人的には、これまでで一番しっくりきた、5番への回答である。

明るいのか、暗いのか、勝利なのか、敗北なのか、明確な答えは示されない。喜んでいると言え、嬉しいと言え、無理やりに笑わされた民衆たちの引きつった笑み、20世紀、社会主義国家抑圧下の中で、生きた人々のリアルがここにはある。歴史資料をひも解くような他人事ドキュメンタリーではない、民衆達の感情。第4楽章の強靭な響きの構築にそれを見る。

ウルバンスキの創り出す、オーケストラハーモニーは実に素晴らしい。
金管楽器、木管楽器、弦楽器が有機的に立ち登り絡み合い巨大なオーケストラから、無限の響きを導き出す。ゆっくりとしたテンポで、各パートがしっかり鳴り、しっかりと響きあう。どこを切ってもクライマックスのような美しさと必然性があり45分があっという間だ。彼が提示するのは、パキパキ筋肉質演奏や爆演系とは異なる、21世紀的オーケストラサウンド。リズムからハーモニーへ、あらたな音楽の潮流をも感じることができるのだ。

ウルバンスキとNDRエルプフィルとの相性もピッタリで、どこか無理矢理感も残ったヘンゲルブロック時代と比べると実に自然に聴こえてくる。これはもはやヴァント時代、エッシェンバッハ時代の一体感をも彷彿とさせるものだ。

エルベフィルハーモニーでのセッション録音はNDR放送のデュルク・リューデマン氏によるもので、ホール独自の残響感と直接音とのバランスもよく、ホールの立体感をうまく捉えている。同じくデュルク・リューデマン氏が録音したエルベフィルハーモニー初録音のブラームスと比べても大きな進化を感じる。(写真: エルベフィルハーモニー舞台裏の録音ルームとデュルク・リューデマン)

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ウルバンスキとα(アルファ)のCDを買ったのはこれが初めであったが、感度の高いα(アルファ)が、わざわざ契約するだけはある。既に発売されている春祭や新世界もとっても気になってきたぞ。NDR、アランギルバートとの秋の来日も待ちきれない!

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 Op.47『革命』
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団
クシシュトフ・ウルバンスキ
2017年12月 エルプフィルハーモニー・ハンブルク、大ホール


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