井上薫「日本統治下末期の朝鮮における日本語普及・強制政策 : 徴兵制度導入に至るまでの日本語常用・全解運動への動員」
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/29532/1/73_P105-153.pdf

森田芳夫は,『東亜日報』記事を用いた金蚕昌論文から, 「1938年 4月から中・女学校で朝鮮語教育を廃止したこと,小学校では 39年度に入って四学年以上の朝鮮語教育を廃止する学校が続出 し,形式的に三学年までは教えていたこと,ソウル市内の寿松,蓬莱の二小学校が, 39年 4月の新学期から上級学年の朝鮮語廃止を京城府学務課に申請したことを具体的に報道して小学校での 朝鮮語教育は漸次あとを絶って行った」ことがわかると記している(15)。

これを『東亜自報』で確認すると, 1939年 3月 19日付夕刊では,まず「随意科目」化後の状況について,
「昨年より実施された学制改革で,初等校の校名統一は勿論,小学校の朝鮮語科目が髄意科目として規定されたが,全く朝鮮人児童に朝鮮語を教授するなということではないことは学務当局者のその後数次の言明によって糾明されているが,未だに一部ではこれを間違って解釈,時折,朝鮮語教授を廃止し,世間の非難を受けていることは屡々報道した通り」(16) と伝え 「廃止」をすれば「非難」が起こるという世相であったことがわかる。

・・・1939年 2月 27日の慶尚南道会において 「忠清北道に於ては現に小学校に朝鮮語を廃止して居る」こと,慶尚南道でも「或る学校は朝鮮語の時間を非常に少くし或る学校に於ては三学年以上は朝鮮語の時間をなくしたりして朝鮮語の教科目は殆ど有名無実であって遠からずして自然に廃止される運命にある」と論じられていた(21)。この発言をした金乗圭議員は,この背景について次のように述べている。
「昨年四月学制改正に依って小学校に於ける朝鮮語科目は之を随意とする之を教へるか教へないかと云ふ取捨権を学校長に一任シしてあるやうでありますが学校長と云ふものは既に発表された法令なり訓令なり或は当局の方針は忠実に遵守するは勿論当局の発表せざる方針をも進んで励行しやうとするものであって是は官吏の共通の心境であり方針であるのであります朝鮮語を随意科として取捨を学校長に委せると云ふことは初めから小学校に朝鮮語を廃止しやうと云ふ示唆であると思ひます」(22)


1937年 2月 16日,総督府内務局長大竹十郎が地方議会で用いる「国語,日本語の奨励に関する談話を発表した(29)。その内容は,①「道・府・邑会等では現に全然通訳を廃止してゐる向が少くない」こと,②「地方公職者に於ても範を衆に示す為に勗めて国語を勉強せられ,尠くとも道・府・邑会に於ては成るべく最短期間に全部通訳廃止の機運に向はしめられたい」ことを含んでいた(30)。但し,「国語を解せざる者は議員の立候補ができぬ」というような「資格を制限する様なことは考へて居らない」との断わりもある(31)

1937年 3月 17日の朝鮮総督府文書課長通牒は,官公吏が対象であった。「既に国語に習熟し,職を宮公署に奉ずる者にして執務中尚未だ国語を使用せざる向ある」状況を「甚だ遺憾」 とし,これら各宮公署の職員に対して,「執務中は努めて国語を使用するやう」に指示したものであっ た(40)
 
1937年 5月 20日の政務総監通牒は・・・①「授業時間中」の日本語使用は「既に徹底を見てゐる」と認識されているが,「運動時間中」には「職員相互間に於てすら未だ其の徹底を見ざるものある」状態であること。②「話方・綴方指導法」に「研究改善」を加える必要があること。③「話方の練習を轍底」し,国語家庭化の機縁」とすること。④公立学校だけでなく,「私立学校教員」の「採用認可」においても「国語通達の点を一層重視」し,「既採用」者へも日本語に「通達」するよう「替励」すること。⑤「普通学校教員の国語力増進」のため「講習会」等を行うこと,であった(41)

1939年 7月 31日には,特に多数の使用人を有する工場,商店の施設」を対象として,職場でも日本語を講習するようにと学務局から通牒が出された。内容は,上記の職場では,「平素,連続的」に,あるいは「一定の時期J」「なるべく長期」に,国語講習の施設を講 ずる」ことを促したものであった。「工場員,店員」に対し,「平素相互間に於て,国語を使用」 するよう命じてもいた(42)。

「極秘」印
朝鮮統治施策企画上の問題案

1、人口配分
2、同化政策
朝鮮人の民族感情は其の言語、風習、歴史、宗教等を礎地とする血縁共同の意識乃至矜持なるを以て之を打破し逐次日本民族としての意識乃至矜持に置換する如く指導を集中するものとす

(1)精神訓練
日本国体の尊厳を徹底的に理解せしめ日本臣民たるの意義を体得せしむる如く精神訓練を施すこと。之が為
(イ)神社崇敬の観念を徹底せしむ
(ロ)日本歴史中に於ける内鮮間の史実の取扱に於て極力同化を促進するが如く歴史を編纂するを為す
(ハ)優秀教員の配置に依り精神的陶冶を徹底せしむ

(2)言語対策 
国語を徹底的に普及し概ね二十年間に其の用語を国語に統一すること。之が為 
(イ)諺文(※ハングルの旧称)出版物特に新聞を能ふ限り速に廃止す
(ロ)公私生活に於ける用語の国語への転換を徹底的に促進す

(3)風習改善 
能ふ限り大和民族の風習を移植し朝鮮人の模倣を順致するが如く指導すること、之が為
(イ)服装に付ては能ふ限り大和民族の模倣を為さしむるも要すれば国民服等の奨励に依り朝鮮在来の服装の常用を嫌忌するが如く指導す
(ロ)家族制度に付ては内鮮通婚に支障を来すが如きものを逐次指導により改善せしむ
(ハ)年中行事及冠婚葬祭に付ては努めて大和民族の模倣を為さしむ
(二)食事に付ては食物並に食事様式等に大和民族の様式を模倣するが如く指導す
(ホ)住宅に付ては能ふ限り大和民族の様式を模倣せしむるも要すれば内鮮折衷の様式を奨励す

(4)宗教対策 
宗教に付ては原則として基督教を抑制し仏教の徹底的普及を図ること 

3、処遇其の他 

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本邦内政関係雑纂/植民地関係 第二巻