アン・バランス・ダイアリー

EKKOです。読んだ本の感想を中心に書いています。たまにライブレポも。気軽にコメントいただけると嬉しいです。

2018年6月読了本

6月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1170
ナイス数:73

BUTTERBUTTER感想
実際の事件の被告女性をモデルにしているところがとても興味深かった。ただ被告女性の人物像に深く切り込むというよりも、筆者の関心は料理の方に寄っている印象を受けたし、被告女性よりも、主人公と親友の成長友情物語に昇華させるに構成になっていたかなと思った。それでも被告女性の不思議な吸引力はきちんと描かれていて、序盤、主人公がカジマナに心酔する展開は「え、やばいのでは」なんて心配してしまった。それにしても主人公と親友のキャラと関係性も濃くて・・・ボリュームたっぷりの料理のシーンも満載で、かなり胸焼けがしました笑

読了日:06月29日 著者:柚木 麻子

ハネムーン (中公文庫)ハネムーン (中公文庫)感想
ばななさんの文章はいつも比喩が多彩で、ひとつひとつの表現を自分の中で咀嚼するのに少し時間がかかってしまう。それでもはっとさせられる美しい比喩が多く、一粒残さずそれらをじっくりかみしめたいと思う。
まなかと浩志にとっては、なにげない日常を一緒に過ごし、身近な共感を重ねることも大切だけれども、旅に出て、非日常のなかで美しい風景を一緒に眺めるということも、とても大切な体験だったんだなと感じました。
おままごとのようでもあるけれど、不器用に、静かに愛をはぐくんでいく、ふたりの清らかな恋がとても可愛らしかった。

読了日:06月19日 著者:吉本 ばなな

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬感想
キューバでの観光や人とのふれあい、そこで若林さんが感じ考察することは、とても素朴で、とてもわかりやすい。なおかつとても根源的で深いものだということが読み進めるにつれてわかってきます。社会主義の国を旅して、その文化に触れることにより、自分の住む国や町をもういちど見つめなおすことができる。その流れがとても自然でした。灰色の町に住み続ける覚悟を得るための旅だったのかな。でも、あくまで普通のエッセイの範疇を出ないなぁ・・なんて思いながら読んでいたらラスト近くで意外な展開・・・思わず涙が・・・。

読了日:06月13日 著者:若林 正恭

冬雷冬雷感想
一気読み。因習としきたりに縛られた、日本海に近い閉鎖的な町。レトロ感あふれる設定とドロドロ展開。主人公はとても穏やかで思慮深い性格なのに、物語のこの激しさ・・・しかし大人たちが誰もかれもひどすぎる。代助と真琴の誠実に生きようとする心が一筋の光で、それを支えにして読み通すことができた。旭穂乃花や三森龍でさえ、大人たちに比べるとある意味純粋でまともだ。愛美も、愚純だけど無垢でありすぎただけのこと。若者たちの真摯な生きざまが切なく美しい。これからの彼らに幸あらんことを切に願いたい、そんな思いで本を閉じました。
読了日:06月06日 著者:遠田 潤子

読書メーター


更新が遅くなりました。6月はウルフルズのFCライブに行ったり、楽しく過ごし読書も順調だったのですが、7月に入りなかなか読書がすすみません。町田樹さんの引退発表に伴い、急遽東京公演に行くことを決めてあたふたと準備したり、10月の引退公演のチケットの手配をしたり・・・気持ちも落ち着かなくて・・・本は週に1冊は読むことを目標に頑張ってきたのですが、もう開き直って7月は少しお休みするつもり。でも図書館本が届いたので、ぼちぼち読み始めないと・・・という感じです。
1冊くらいは読まないとね・・・

『BUTTER』 柚木麻子 新潮社



内容(「BOOK」データベースより)
結婚詐欺の末、男性3人を殺害したとされる容疑者・梶井真奈子。世間を騒がせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿と、女性としての自信に満ち溢れた言動だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、親友の伶子からのアドバイスでカジマナとの面会を取り付ける。だが、取材を重ねるうち、欲望と快楽に忠実な彼女の言動に、翻弄されるようになっていく―。読み進むほどに濃厚な、圧倒的長編小説。


表紙のイラスト、良いですね〜。カジマナのイメージぴったり!(実は主人公だったりして?笑)
いやぁ、濃かったです。
柚木さんの作品は、いつも思うのだけれども、女子力が強くて(高い、ではなく)なんかこう、酸素不足になりそうなイメージがあるのですが(個人的感想です)、この作品はさらに女子力が嵐のように激しくて(強い、ではなく)、さらに息苦しさが増してたような・・・(個人的感想です)

でも面白かったです!先が気になってぐいぐい読めました。
まず、実際の事件の被告女性をモデルにしているところがとても興味深かったです。この事件に関しては個人的には、なぜ彼女がここまで男性の心を次々につかみ骨抜きにできたのか、どういう秘密で自分の思い通りに他人をコントロールできたのか・・・という側面がとても気になっています。なので、この作品も彼女の人物像に深く切り込み、そのあたりを分析してくれると期待して読み進めたのですが、そういうスタンスというよりも、どちらかというと、筆者の関心は料理の方に寄っている印象を受けましたし、被告女性よりも、主人公と親友の成長友情物語に昇華させるに構成になっていたかなと思いました。それでも被告女性の不思議な吸引力はきちんと描かれていて、序盤、主人公がカジマナに心酔し影響されて食生活が変わり、どんどん太っていったときは、正直「え、やばいのでは」なんて心配したりしもました。
終盤、仲間が集まって共同生活をするような場面はとても良かったなぁと思います。それぞれが自分を見つめなおし逃げずに前へ向かおうとする展開はとても心地よかった。

それにしても主人公と親友のキャラと関係性が濃くて・・・ボリュームたっぷりの料理のシーンも満載で、かなり胸焼けがしましたね(笑)

カジマナのような自己愛の強いタイプには、私もときどき出会いますが、自己愛と自己顕示欲が強い人は、結局自分に自信がないことの裏返しだったりすることも多いのでは・・・と思うこともあります。

カジマナのモデルの木島佳苗被告の獄中ブログもちらっと読んでみましたが、柚木さんに相当怒っている様子・・?(逆かも?)

私はこの歳になっていろいろ思うこともあり、見栄えという意味ではなく、健康面でやっぱり体重増加は体によくないなぁと思い、今まさに食事量を減らしている最中なのです。この本では、食べたいものを我慢せず食べていい!というメッセージもありましたが、私としては、やっぱり若い時の食生活は大切で、栄養面に気を付けたほうが良い、バター醤油ご飯もほどほどに・・・そしてあんまり太り過ぎないほうがよいですよ・・と里佳に言いたいです(おせっかい笑)

『ハネムーン』 吉本ばなな 中公文庫



内容(「BOOK」データベースより)
世界が私たちに恋をした―。別に一緒に暮らさなくても、二人がたどる道はいつも家路で、二人がいる所はどこでも家だ…。互いでしか癒せない孤独を抱え、剥き出しの世界へと歩き始めた恋人たちの旅立ちを描く。限りない清らかさと生きることの痛みに彩られた静謐な愛の物語。


予約の本が途絶えたときには例によって積読本。ひさびさの吉本さん。
町田樹さんのプロスケーター引退の知らせに、どん底まで落ち込んでいた心を、すこーし癒してもらえました(涙涙)

ばななさんの文章はいつも比喩が多彩で、ひとつひとつの表現を自分の中で咀嚼するのに少し時間がかかってしまう。それでもはっとさせられる美しい比喩が多く、一粒残さずそれらをじっくりかみしめたいと思う。その文章から感じ取れる気持ちの動きは、多くの場合決して明るくはなく、どちらかというと痛みを伴うことが多い。それでも嬉しいことも悲しいことも、すっと心に自然に寄り添ってくれるような、不思議な力を持っている。今回は私自身が落ち込んでいたこともあって、なおさらそんな風に響いたのかもしれません。性急さがいっさいなく、ゆっくりゆっくり進んでいく物語のカラーも今の私の心情にぴったり寄り添ってくれた気がします。

悲しみから抜け出せず、常に不安におびえる浩志くんが、少しずつ立ち直っていく姿を、季節の移り変わりに例えたところが印象的でした。

季節は、決してよりよく変わったりはしない。ただ成り行きみたいに、葉が落ちたり茂ったり、空が青くなったりするだけだ、そういうのに似ている、

たとえ高層ビルの中の一室に閉じ込められて山も川も海も見なかったとしても、体の中に血が流れている限り、人は自然の流れに似た流れを生きるのだろう。


なにげない日常を一緒に過ごし、なにげない共感を重ねることも大切だけれども、旅に出て、非日常のなかで美しい風景を一緒に眺めるということも、ふたりにとってはとても大切な体験だったんだなと感じました。
おままごとのようでもあるけれど、不器用に、静かに愛をはぐくんでいく、ふたりの清らかな恋がとても可愛らしかった。

それにしても「ふたりは恋に落ちた」のではなく

世界が私たちのほうに恋をしたのだと、私は思う。

って、ひゃぁぁ・・・言いますね〜♡
うっとりしてしまう!
(いえ、この歳になってこういう文にキュンキュンしてしまった自分もどうかと思ったりもするんですけどね〜笑)

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 若林正恭  KADOKAWA



内容(「BOOK」データベースより)
前作『社会人大学人見知り学部卒業見込』から約4年ぶり、新作の舞台はキューバ!航空券予約サイトで見つけた、たった1席の空席。何者かに背中を押されたかのように2016年夏、ひとりキューバへと旅立った。慣れない葉巻をくわえ、芸人としてカストロの演説に想いを馳せる。キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない。若林節を堪能できる新作オール書き下ろし!


リンク貼って気づいたのですが、アマゾン、品切れのようですね。
オードリーの若林さんの旅エッセイ。斎藤茂太賞受賞作。おめでとうございます!
読み終えての感想は・・・

ずるい!


なぜか?
絶対言わないほうがいい。読んでみてください、ってそれしか言えない・・・
なので、感想は言える範囲で・・・(折りたたんでネタバレとしても書きたくない)

若林さんは頭の良い方だなぁという印象ですが、感性も鋭いですね。そして勉強家です。そして、冷静にみえて、実は内側には、ほとばしるような熱さもあって、そういう若林さんの人間性にも触れられた気がします。ちょっとめんどくさいところもあって、それはそれで素敵。
キューバでの観光や人とのふれあい、そこで若林さんが感じ考察することは、とても素朴で、とてもわかりやすい。でも浅いのかといえばそうではなくて、とても根源的で深いものだということが読み進めるにつれてわかってきます。社会主義の国を旅して、その文化に触れることにより、自分の住む国や町をもういちど見つめなおすことができる。その流れがとても自然でした。灰色の町に住み続ける覚悟を得るための旅だったのかな。
でも、あくまでタレント本の普通のエッセイの範疇を出ないなぁ・・なんて思いながら読んでいたらラスト近くで・・・(前半はわざと単調に書いたの?って思うほど、筆ががらっと変わる)
ずるい。泣いてしまったではないの!ホントにずるい!(しつこい)
若林さん、やっぱり只者ではないのですね。

人見知りの若林さん以上に人見知りのガイドさんとの攻防はとても微笑ましかったです(笑)



『冬雷』 遠田潤子 東京創元社



内容(「BOOK」データベースより)
大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが…。


初・遠田さんでした。
いや〜濃い!因習としきたりに縛られた、日本海に近い閉鎖的な町。横溝正史か?って思うほどのレトロ感あふれるこの設定とドロドロ展開。でも面白くて、ぐいぐいぐいぐい引き込まれて一気読みでした。
とても強くて激しい物語です。主人公はとても穏やかで思慮深い性格なのに、この激しさ・・・怪魚伝説のエピソードが、さらに不穏な雰囲気を盛り上げます。それにしても、町の大人たちの自分勝手と横暴に巻き込まれ、町を追われる展開はとても心が痛みました。本当に大人たちが誰もかれも自分のことしか考えてなくて、ひどすぎる・・代助と真琴の誠実に生きようとする心が一筋の光で、それを支えにして読み通すことができました。意地悪でヒールな旭穂乃花や、乱暴で暴力的な龍でさえ、大人たちに比べると、ある意味純粋でまともな感性を持っているのではないかと思える。愛美も、愚純ゆえに代助を困らせはしたけれど、無垢でありすぎただけのことで、彼女もやはり被害者。
若者たちの真摯な生きざまが切なく美しい。これからの彼らに幸あらんことを切に願いたい、そんな思いで本を閉じました。

それにしても、若者はまじめで誠実、それにひきかえ、大人たちは自己中心で想像力がない・・・現代の風潮にまさに合致してる気がするのは私だけでしょうか・・
しっかりしようよ〜大人たち!(もちろん自戒もこめて)

遠田さん、すごいな〜。ほかの作品もこういう感じなのかな?また読んでみよう。

2018年5月読了本

5月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1367
ナイス数:75

青空と逃げる (単行本)青空と逃げる (単行本)感想
四万十、家島、別府と、美しい自然と、素朴で優しい人たちとの出会いとふれあいがとても心地よい。母も息子も、とりたてて聡明というわけではなく(失礼!)個性的な考えを持っているというわけでもなく、ごくごく普通の主婦と小学生の男の子。母子関係も、お互いを思いやりもするけれど、どこかぎこちなさもある。旅を通じてたくましく成長する…という筋立てを前面には出していないけれど、そこが等身大で、リアルで、甘いようで甘くない。そのあたりが辻村さんという感じ。ただ、そこまで逃げ回る必要性が感じられなかったんですが・・・私だけ?
読了日:05月31日 著者:辻村 深月

口笛の上手な白雪姫口笛の上手な白雪姫感想
最初の一文を読むだけで、たちまち別世界にいざなわれ、帰ってこられなくなる。小川ワールド炸裂の短編集。
ここに出てくる人たちは、どこか浮世離れしていてリアリティがないように見えて、でも思うことは誰しも思い当たることばかりです。だからどのお話にも懐かしさを感じる。自分でも気づいていない心の隅っこをそっと照らしてくれたような、そんな温かく切ない気持ちになりました。さりげない小さなかけらを、うっとりするような世界観に染め上げる、小川さんの感性、言葉の選び方、静謐で美しい文章、とにかく素晴らしすぎます。
読了日:05月26日 著者:小川 洋子

そして、バトンは渡されたそして、バトンは渡された感想
現実的に絶対ありえない!という設定ではないけれど、やっぱりどこかファンタジック。とにかく主人公の親になる人たちがとことん優しくて良い人・・・というのがありえないですよね〜。でもそれでも良い。大人すぎる優子の感性は、深く考えたり悩んだりしないことが、自分の不安定な環境に馴染む唯一の方法だったゆえだったのではないかと思います。
ラストにタイトルの意味が明らかになるのと、主人公がくるっと入れ替わり目の前の世界の色が変わったような感覚になるのが、とても秀逸。
森宮さんと早瀬君のキャラが似ていてなんだか微笑ましい。
読了日:05月19日 著者:瀬尾 まいこ

死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)感想
翻訳ものはあまり得意ではないけど、古典ミステリの名作となれば話は別。謎解きというよりもサスペンスっぽい。ぐいぐい引き込まれ面白かったです。時代背景など昔っぽさは否めないけどそれもまた良し。財産を狙って富豪の娘との結婚を企む、プライド高く自信家でイケメンな青年のクズっぷりがたまりません(間違った読み方?笑)、語り手がくるくる変わり、思い込みで読んでたら何度も騙されてしまい、何度もはっとさせられます。なので終盤には、これはいったい誰目線なんだろう?って警戒しながら読んだりして、それも緊張感があって楽しかった。
読了日:05月12日 著者:アイラ・レヴィン


読書メーター


5月はちょっと慌ただしかったですね〜
まずは、GWに毎年恒例の、アイスショー遠征(プリンスアイスワールド横浜公演)で大興奮!
町田樹さんの今年の新作は、あの超有名な、定番中の定番プログラム「ボレロ」をベジャールリスペクトの8分バージョンで。これがもう、素晴らしくて・・・いつも語りたい私が数日間まったく言葉を失ってしまったという・・・全身全霊の演技に圧倒されました。その後、テレビ東京でのドキュメント町田特集や、アイスショーのオンエアもあって、興奮はおさまるところを知らず・・・(幸せ〜)

そして、中旬以降は、実母の有料ホーム入居があったので、そちらの準備や手続等であたふた・・母に関しては、いつまでひとりぐらしを続けていけるのか、どういうタイミングで入居したらよいのか、ここ数年は思いあぐねていたけれど、思ったよりもすんなり母自身が決断してくれて、結果とても良いタイミングになったなぁと思っているところです。家事や入浴以外の身の回りのことは自分でできるし、入居して食欲も出て元気になったし、今のところ個室で気ままに過ごせているようで、ほっとひと安心・・・母とはいろいろ確執もあったけど、今は私は母を大切に思う気持ちしかなくて、とにかく長生きしてほしいと思っています。

春から独学で初めた英会話も、5月はまったくできなかったけど、6月はぼちぼち再開させていきたいですね。そのほかもいろいろやりたいことがあって夢は広がっています。頑張りたいと思いま〜す。

『青空と逃げる』 辻村深月 中央公論新社



内容(「BOOK」データベースより)
深夜の電話が、母と息子の日常を奪い去った。疑心、恐怖、そして怒り。壊れてしまった家族が、たどり着く場所は―。母の覚悟と、息子の決意。


本屋大賞受賞作はなかなか順番がまわってこないので・・・こちらを。

夫が起こした事故の余波に巻き込まれ、母と息子は逃避行の旅に出ます。四万十、家島、別府と、美しい自然と、素朴で優しい人たちとの出会いとふれあいがとても心地よい。母も息子も、とりたてて聡明というわけではなく(失礼!)個性的な考えを持っているというわけでもなく、ごくごく普通の主婦と小学生の男の子。母子関係も、お互いを思いやりもするけれど、逆に変に気を遣ったり、肝心なことを言い出せなかったりどこかぎこちなさもある。ストーリー展開も、旅を通じてたくましく成長する…という筋立てを前面には出しておらず、そこが若干物足りなくもあるけれど、でもそこがかえって私たちと等身大で、リアルで、甘いようで甘くない。そのあたりが辻村さんという感じ。どんな着地になるんだろう?って気になりながらいっきに読み上げました。早苗と力と、ふたりの視点が交互に語られるので、ふたりの気持ちがとてもわかりやすかった。

ただ、そこまで逃げ回る必要性が感じられなかったのが少し残念ですが・・これは私の読み方が甘かったのかな・・・

『口笛の上手な白雪姫』 小川洋子 幻冬舎



内容(「BOOK」データベースより)
劇場で、病院で、公衆浴場で―。“声”によってよみがえる、大切な死者とかけがえのない記憶。その口笛が聴こえるのは、赤ん坊だけだった。切なく心揺さぶる傑作短編集。


小川ワールドが炸裂する短編集。
素晴らしかった〜!最高です♪

きらきら光る華やかさや、地を這うような強さではなく、ほんのり静かに内側から灯してくれる温かさ。最初の一文を読むだけで、たちまち別世界にいざなわれ、帰ってこられなくなる。

でも、考えてみると、吃音の少年は珍しくないし、何かを、誰かをかわいそうだと思うことは誰しも頻繁にある。自分を他の誰かとして演じてみたり、誰かを狂おしく思うことも、失った人の面影を追いかけることも誰にだって経験のあること。そして母親であれば、赤ちゃんを一人でお風呂に入れる苦労は言わずもがな・・・。ここに出てくる人たちは、どこか浮世離れしていてリアリティがないように見えて、でも実はどこにでもいる普通の人たち。小川さんの手にかかるとまるで別の世界の人たちのように変身してしまうけど、でも実は人よりも少し感受性が強くて想像力に長けているだけのこと・・。だから読んでいると、なぜか懐かしさで温かく切ない気持ちになる。この懐かしい感じは、自分でも気づいていない心の隅っこをそっと照らしてくれる優しさからくるものなのかもしれない。

こんな風に、日常のさりげない小さなかけらを、うっとりするような世界観に染め上げる、小川さんの感性、言葉の選び方、静謐で美しい文章、とにかく素晴らしすぎて唸りました。そして自分の書いた記事を読みかえし、あまりの拙い文章が嫌になり(そもそも比べるのもおこがましいし、失礼極まりない話ですが)恥ずかしくて思わず自分のブログを全部削除しそうになってしまいました(笑)



どうしたらこんな文章が書けるんだろう‥
どうしたらこんな風に世界をみることができるのだろう・・・
羨ましくて仕方がない。
ああ、死んだら小川洋子さんに生まれ変わりたい!


(どうしようめちゃめちゃ変な感想になってる・・・)


「一つの歌を分け合う」に号泣でした。これも「レ・ミゼラブル」・・・レミゼは全然知らない私ですが、いよいよレミゼに踏み込むときがきたのかも・・・?


とにかく、おススメです!

『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ 文藝春秋



内容(「BOOK」データベースより)
血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった森宮優子、十七歳。だが、彼女はいつも愛されていた。身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。


お父さんが5人・・・というのは伊坂幸太郎さんの「オー!ファーザー!」ですが、こちらは、親が結婚離婚を繰り返し、その都度保護者が変わり、血のつながらない親と暮らし続けてきた女の子のお話。
現実的に絶対ありえない!という設定ではないけれど、やっぱりどこかファンタジック。とにかく主人公の親になる人たちがとことん優しくて良い人・・・というのがありえないですよね〜。でもそれでも良いと思う。登場人物たちを愛おしく思えるから。この微妙なリアリティが瀬尾さんの持ち味なのだと思っています。
優子は、愛に包まれ、とても柔軟な感性を持っているけれども、それでもやっぱり複雑な気持ちを抱えていて、関係性に気を遣ったり、神経質になったり・・・大人すぎるように思える優子の感性は、深く考えたり悩んだりしないことが、自分の不安定な環境に馴染む唯一の方法だったゆえだったのではないか、そう思うと少し胸が締め付けられる感じがします。
ラストにタイトルの意味が明らかになるのと、主人公がくるっと入れ替わり目の前の世界の色が変わったような感覚になるのが、とても素敵。
森宮さんと早瀬君のキャラがとても似てる気がするのですが、これは作者の意図でしょうね。とても微笑ましくて好きです。

『死の接吻』 アイラ・レヴィン ハヤカワ文庫



内容紹介
二人は学生同士の恋人だった。女は妊娠しており、男は結婚を迫られていた。彼女をなんとかしなければならない。おれには野心があるのだ――冷酷非情のアプレゲール青年の練りあげた戦慄すべき完全犯罪。当時弱冠二十三歳の天才作家の手になる恐るべき傑作! アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞受賞作。


フォロワーさんにおすすめしてもらって読んだアイラ・レヴィン。翻訳ものはあまり得意ではないけど、古典ミステリの名作となれば話は別。ぐいぐい引き込まれ、面白かったです。謎解きを楽しむというよりも、犯人をどう追い詰めるかという展開に息を呑みます。時代背景など昔っぽさは否めないし、いろいろ突っ込みどころもなくはないけど、それもまた良し。財産を狙って富豪の娘との結婚を企む、プライド高く自信家でイケメンな青年のクズっぷりがたまりません(間違った読み方?笑)、語り手がくるくる変わり、思い込みで読んでたら何度も騙されてしまい、幾度もはっとさせられます。なので終盤には、これはいったい誰目線なんだろう?っていちいち警戒しながら読んだりして、それも緊張感があって楽しかった。
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