2005年10月

2005年10月15日

見えない仕事

 一年前、会社に入ったとき、これだけはやろうと決めていたことがある。
 皆が出社する前に到着し、全員分のゴミを集めること。
 それは今も続けているし、これから先もやめることはないだろう。

 半年前、さらに一つ付け加えた仕事がある。
「プリンタ・コピー機の給紙」だ。

 編集部のある2階フロアは、紙の減りが早く、すぐに用紙が切れてしまう。
 出力の指示をしても反応せず、「ああー!」といいながら、不機嫌そうに
 プリンタへ走る先輩の姿を何度も目にしていた。

 朝、ゴミ箱を空っぽにしておけば、たしかに仕事の痕跡は残る。
 しかしあるときから、人から礼を言われたり、その思いを人に
 抱かせたりするのは、たいした仕事ではないと思うようになった。

 人に気づかれず、見えない作業をすることで、何事もなく事が運んでいく。
 僕はそこに、本当の仕事の意義を見出すようになっていた。


 それから数ヶ月が過ぎた頃。

 たまっていた仕事があったので、いつもより三十分早く家を出た。
 表参道の一本道を歩いていると、ある年配の女性が道端の掃除をしている。
 手にしたホウキ一本で、次々に道が掃き清められていく。

 表参道は、「“日本の道100選”に入る」とか、
「こんなに気持ちのいい道はない」と耳にしたことがあったが、
 愚かなことに、僕はこの道の美しさが自然と
 保たれているように感じていた。

 反省の気持ちを抱きながら会社に着くと、
 昨日まで隅に積み上げられてあったはずの
 ダンボールの束が、どこかに片付けられている。

 自分の気づかない所で、いつも誰かがしてくれている仕事。
 してくれていた仕事。
 何事もなく、今日も一日が過ぎてゆく。


ekomo at 07:50|PermalinkComments(1)TrackBack(0)