2006年11月09日

言語の海

 先日、録画しておいた『情熱大陸』の番組を見ていたら、
 主人公の男性が、認知症患者であることを打ち明け、
 全国を講演に回ったり、奥様と二人で暮らす
 日常の様子が放映されていた。

 認知症の方が、きょうが何曜日であるかを忘れたり、
 実の娘の名前が出てこなくなったりする場面は
 正直なところ想定できたが、「プルルルルル……」と鳴る
 電話の着信音が何を意味するかを忘れたり、
 受話器の持ち方を忘れてしまったりする場面には
 少なからずショックを受けた。

 ただ一つ、僕の心に残ったのは、
 いくら男性が固有名詞や道具の扱い方を忘れようと、
 奥様や取材スタッフとの日常会話が
 立派に成り立っていたということだった。

 ちょうど最近、認知症患者の方の
 面倒をみている女性の方にお話を伺う機会があった。
 その方の話によれば、認知症になった人でも、
 実は9割以上の機能が失われずに存在しているのだという。

 人の話を瞬時にキャッチし、頭の中で咀嚼して、
 新たに言葉を紡ぎ出す能力――。
 何十年という時の中、一人の人間が獲得してきた言語の海は
 そう簡単に失われはしない。


ekomo at 08:28│Comments(0)TrackBack(0)

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