2006年12月05日

肉声

 きょう会ったばかりの人の顔や聞いた話の内容を、その日のうちに
 忘れてしまうこともある僕だが、その人の「声」だけは
 いつまでたってもはっきりと覚えている。
 そして思い出すたび、やさしい気持ちになったり、
 二度と会えない切なさに胸が詰まりそうになる。

 六年前に祖父が亡くなった時、僕は祖父に二度と会えなくなる
 寂しさと同時に、あぁ、あの声がもう聞けなくなったのだと
 思うと、居たたまれない気持ちになった。
 死によって最も取り戻せなくなると感じたのは、
 僕の場合、「声」だった。

 もともと無口な人で、それほど話をしたこともないのだが、
 遊びに行くたびこちらを見て
「よう来てくれたな」と笑いかけてくれた祖父。
 八十年近くの人生を生きている人の温かみに溢れていた。

 肉体。そして、肉声。
 体だけではない。声も肉をまとっている。


ekomo at 10:11│Comments(0)TrackBack(0)

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