December 28, 2008

増谷栄一の経済コラム:米11月中古住宅販売、急落=価格も40年ぶり低水準

−NAR、オバマ次期政権の景気対策に期待−

【2008年12月28日(日)】 − 先週(23日)、NAR(全米不動産業協会)が発表した11月の中古住宅販売件数(一戸建てや分譲住宅、集合住宅など、季節調整値)は前月比8.6%減の年率換算449万戸となり、市場予想の493万戸を大幅に下回った。

 中古住宅の価格もNARが1968年に統計を開始して以来の最大の下落率を記録、1930年代の大恐慌以来の最悪の状況となっている。

 一方、住宅市場の供給過剰感を示す売れ残り住宅在庫は、前月比0.1%増の420万戸と、11月の販売ペースで換算して11.2カ月分(10月は10.3カ月分)に上昇、4月に付けた過去最高と一致した。1980年代半ば以来の高水準となっている。

 過去25年間の平均値である7.1カ月分、また、適正水準とされる5.5-6カ月分(住宅ブームのピークだった2005年は4.5カ月分)を依然、大幅に上回っている。在庫はまだ、適正水準より約150万戸多い水準だ。

●中古住宅市場、底打ちの兆し消える

 最近の販売トレンドを見ると、10月までの過去1年間の中古住宅販売件数は、500万戸前後の小幅なレンジ内の動きを示し、落ち着く傾向を示していたが、今回の統計では、底打ちの兆しが見えなくなった格好だ。

 11月の前年比は10.6%減と、依然、大幅な減少が続いており、アナリストは、2008年は3年連続の減少となり、10年ぶりの大幅悪化になると予想している。

 中古住宅の販売が予想以上に減少したことについて、NARの主任エコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、声明文の中で、「10月と11月に株式市場が急落したことや雇用統計の急激な悪化、消費者の購買意欲の冷え込みがきつくなり、販売件数が一段と押し下げられた」と述べ、貸し渋りに加え、景気悪化を主な要因に挙げている。

●NAR、オバマ次期政権に住宅対策の実施を期待

 ヤン氏は、「消費者のマインドは41年ぶりの低水準にあることから、オバマ次期政権には個人消費を刺激することに重点を置いた景気対策を早急に実施するよう望む」とし、追加景気対策に期待を寄せる。

 23日に発表された第3四半期(7-9月)GDP伸び率の確定値は、前期比年率−0.5%で前回改定値とは変わらなかったが、個人消費支出の伸びは−3.7%から−3.8%へ悪化している。第2四半期(4-6月)の+1.2%から急激に悪化しており、個人消費のGDP寄与率はマイナス2.75%ポイントにもなっている。

 NARでは景気対策への要望として、来年の3月と7月、10月の3回わたり、各10日間をタックスホリデーとして、消費者の購買意欲を刺激するよう提案している。これは、州の売上税の対象となっている衣料品や家具、レストラン、自動車などの物品に対する課税を免除するものだ。

 売上税の税率は州によって異なるが2.9%から7.25%までで、年3回、10日間ずつをタックスホリデーにすると、NARの試算では、消費者は約200億ドル(約1兆8100億円)の節約ができるとしている。もちろん、州にとってはその税収減になるので、連邦政府が州に補助金を支出して補填することを求めている。

 また、NARは現在、議会に対し、総額500億ドル(約4兆5200億円)の住宅対策の実施を要請しており、その中には新規住宅購入者に対する7500ドル(約68万円)の税額控除や来年前半の住宅ローンの金利を4.5%にまで引き下げるための財政支出を求めている。NARによると、金利が1%ポイント低下すると、50万戸の販売増につながるという。

●中古住宅価格、前年比13.2%低下=40年ぶりの低水準

 低価格のフォークロージャー物件の販売が増えたことから、今回の統計でも、中古住宅価格の中央値(季節調整前)は、前年比13.2%低下の18万1300ドルと、統計開始の1968年以来40年ぶりの低水準となり、28カ月連続で前年水準を下回っている。

 ヤン氏によると、11月の中古住宅販売件数の45%がフォークロージャー手続きに入っている住宅物件で、かなりの低価格で販売されているため、それ以外の通常の中古住宅の販売主も競争上、価格を引き下げている状況だ。(了)

筆者より:
これが本年最後のメルマガになります。この1年間、当メルマガをご愛読頂き、ありがとうございました。来年は1月4日(日)を年始のお休みとさせて頂き、翌週の1月11日(日)から配信を再開いたします。皆様、良いお年をお迎えください。【了】

筆者  増谷栄一

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December 21, 2008

増谷栄一の経済コラム:米FRB、短期金利誘導目標0-0.25%に=資産買い取り積極化へ

−市場、来年1月ゼロ金利織り込む=3月までの追加ドル資金供給も−

【2008年12月21日(日)】 − 先週の16日、米FRB(連邦準備制度理事会)は、依然としてクレジット市場と景気の悪化に歯止めがかからないことから、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0-0.25%のレンジとすることを全員一致で決めた。これは、1990年の誘導目標の導入以来最も低い水準だ。

 今回の利下げは、1カ月間に2度の利下げを実施した10月以来となる。10月は、月初めの8日に臨時のFOMC会合を開いて0.5%ポイント引き下げたが、このときはECB(欧州中央銀行)を始め、イングランド銀行(中央銀行)、カナダ中央銀行、スイス国民銀行、スウェーデン中央銀行との同率の協調利下げだった。

 続いて、10月29日の定例会合では0.5%ポイントの利下げを実施、政策金利を4年ぶりの低水準である1%にまで引き下げていた。

 FRBは、FOMC(公開市場委員会)会合後に発表した声明文で、今後の金融政策のスタンスについて、「経済情勢の悪化により超低金利がしばらく続く可能性が高い」と述べ、当分の間は、この超低金利を維持する考えを示している。

 しかし、金利先物市場では、FRBが10月に政策金利の誘導目標を1%に引き下げたものの、11月の実際のFF金利は平均で0.39%と、目標を大幅に下回ったことから、来年1月27-28日のFOMCでは、政策金利はゼロ%になる確率を30%近くまで織り込んでいる。

 他方、エコノミスト誌は16日付のウエブ版で、これほどの大幅利下げにもかかわらず、利下げ効果は期待薄だと報じている。FF金利は利下げ期待を先取りする形ですでに誘導目標を大幅に下回っていることもあるが、市中銀行がFRBに預けている所要準備預金も8000億ドルに達し、金融システムには流動性が潤沢に供給されているからだ。

●FRB、流動性の潤沢供給に加え資産買い取りにも重点

 今回の利下げについては、FRB幹部は日銀が景気刺激のため1999年2月から採用したゼロ金利政策と2001年3月からのデフレ対策のために取った量的緩和政策とは異なると指摘している。

 日銀は流動性の潤沢供給だけに主眼を置いたが、FRBの場合、政策の重点を流動性供給だけでなく、クレジット市場の機能回復にも広げた点で異なる。つまり、FRBはバランスシートの左側に記載される資産部分の拡大を目指すという。

 実際、FRBが今回発表した声明文では、「すでに発表済みの政府機関債やMBS(不動産担保証券)の買い取りを今後拡大する態勢にある」とした上で、「今後も引き続きクレジット市場と景気を支えるために必要なあらゆる対策を検討する」と述べている。

 政府機関債やMBSの買い取りは、FRBが11月25日に発表した住宅市場対策で、政府系住宅金融会社のファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)の社債と、これら2社が債務保証したMBSを、5000億ドル(約44兆5000億円)を上限に買い取る制度だ。

 声明文では今後、この買い取り額を拡大するとしている。ウォールストリート・ジャーナルは17日付のウエブ版で、最大6000億ドル(約53兆4000億円)になるだろうとしている。

 また、FRBは声明文の中で、長期国債(米国債)の購入の検討を続けるとしているほか、来年2月までにクレジットカードや学生ローンの債権の購入を開始することも明らかにしている。

●FRB、ECBや日銀などと協調で3月までの追加ドル資金供給実施へ

 このほか、追加のドル資金の流動性供給対策として、FRBは19日、ECB(欧州中央銀行)や日銀、スイス国民銀行(中銀)、イングランド銀行(中央銀行)と協調して、年明けの3月までの1カ月物と3カ月物のドル資金追加供給のための入札を実施すると発表した。資金供給オペ金利は固定金利方式で、FRBの場合、1カ月物は1月12日、2月9日、3月9日、3カ月物は1月26日、2月23日、3月23日にそれぞれ実施、金額は無制限としている。【了】

筆者  増谷栄一

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December 14, 2008

増谷栄一の経済コラム:ブッシュ政権、自動車ビッグ3に緊急融資へ=上院否決で

−GMとクライスラー、破産法適用申請の準備へ−

【2008年12月14日(日)】 − 先週末(12日)、ブッシュ政権は、米上院がGM(ゼネラル・モーターズ)とクライスラーの米自動車大手2社に対する140億ドル(約1兆3000億円)の緊急つなぎ融資法案を否決したのを受けて、短期の緊急融資を検討すると発表した。

 ホワイトハウスは、緊急融資の財源については、10月に議会で成立しブッシュ大統領も署名した金融安定化法の柱である総額7000億ドル(約63兆7000億円)の不良資産救済制度(TARP)の利用も含めてあらゆる選択肢を検討するとしており、これまで強固に反対していた7000億ドルの資金に手を付けることを事実上認めている。

 一方、TARPを管轄する財務省も上院での否決後直ちに、来年、議会が自動車大手3社(ビッグ3)の救済策を検討するまでの当面の経営つなぎ資金として、企業存続に必要な資金を緊急融資する用意があると発表している。ただ、現時点では、まだ具体的な金額や融資条件については明らかにはしていない。

 ただ、財務省では、7000億ドルのうち、議会の承認なしに使えるのは3500億ドル(約31兆8500億円)だ。

 しかし、そのうち、すでに、2500億ドル(約22兆7500億円)は銀行や証券会社、S&L(貯蓄貸付組合)などの金融機関への資本注入、世界保険最大手のAIG救済に400億ドル(約3兆6000億円)、シティグループの救済に200億ドル(約1兆8000億円)、そして、FRBの消費者ローン救済措置で200億ドルなどに使われて残っているのは150億ドル(約1兆3600億円)とぎりぎりとなっている。

 このため、財務省は残り半分の3500億ドルの利用を求めて、議会の承認を得なければならなくなると苦慮しており、そのためにはオバマ次期大統領の政権移行チームの協力が必要になるとみている。

●上院否決の最大要因は賃金の大幅カットをめぐる与野党の確執

 米上院は11日夜に開かれた本会議で、GM(ゼネラル・モーターズ)とクライスラーに対する緊急つなぎ融資法案を否決したわけだが、投票結果を見ると、賛成は民主党の40票に共和党の10票、無所属2票を加えた52票となり、反対の35票を上回っていた。

 しかし、法案可決に必要な60票に達しなかったため、前日(10日)、下院本会議で可決された同法案は廃案となったのである。

 共和党はビッグ3のブルーカラー従業員の賃金水準を2009年からトヨタ自動車やホンダなどといった外資系自動車メーカーと同一水準にまで引き下げるよう提案し、これを民主党とUAW(全米自動車労組)が受け入れるかどうかが焦点となっていたのだ。

 GMの場合、UAWに加入しているブルーカラーの1時間当たりの平均賃金は29.78ドルに対し、トヨタは約30ドルとほぼ同じになっているが、年金や健保を加えた総コストではGMが69ドル、トヨタは48ドルとなって大幅なコスト高になっている。

 結局、民主党とUAWは、基本的には賃金水準の引き下げに応じたが、2009年からではなく、UAWと自動車会社側との契約が切れる2011年に固執して、最後まで共和党に譲歩しなかったのが命取りとなったのだ。 【了】

筆者  増谷栄一

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December 07, 2008

増谷栄一の経済コラム:米自動車ビッグ3、議会公聴会で政府の監督を受諾=緊急融資で

−民主党とホワイトハウス、自動車ビッグ3へ1.4兆円緊急融資で合意−

【2008年12月7日(日)】 − 先週の4-5日の2日間にわたって、米上下両院で、米自動車大手3社(ビッグ3)に対する総額380億ドル(約3兆5000億円)の緊急融資の是非を問う集中審議が行われた。

 上院の公聴会では、3社の首脳は総額380億ドルの緊急支援を受ける代わりに、今後、新設置される政府の監視委員会からの監督や指導を受けることを受諾したほか、GMとクライスラーは、クライスラーの企業存続に不可欠とされている両社の合併が緊急支援の条件となった場合には、合併協議を再開することにも同意した。

 当初、議会では、上院が先月20日に、共和・民主両党が超党派で策定した総額250億ドル(約2兆3000億円)のビッグ3向け緊急融資に関する折衷法案を上院本会議で採決する準備を進めていた経緯がある。

 しかし、この折衷案は、民主党幹部が急きょ、ビッグ3から自主再建が可能であることを証明するリストラ計画の提出がなければ過半数の賛成票は得られないと判断したため、今月2日までにリストラ計画が議会に提出されるのを待って採決を目指す方針に変更されていた。

 この2週間で、結局、当初は250億ドルだったビッグ3からの緊急融資の要請額も380億ドルに拡大した。ビッグ3のうち、GMとクライスラーは運転資金が所要最低水準に近づいており、緊急融資がなければ年内に行き詰まる可能性があるとしており、ちなみに、GMの債務額は450億ドル(約4兆2000億円)、フォードは260億ドル(約2兆4000億円)といわれている。

 しかし、4日の上院公聴会では、参考人として出席したムーディーズ・エコノミー・ドット・コムの主任エコノミストのマーク・ザンディ氏が、ビッグ3が今後2年間にわたり企業存続を図るには合計で750億−1250億ドル(約7兆-11兆6000億円)の資金が必要になるとの見方を示した。

 公聴会では、今回の緊急融資の実施後も再び、議会に救済を要請する事態になるのではないかという疑念が委員の間で消えなかったが、ザンディ氏は、ビッグ3は2009年後半にも追加融資の要請を求める事態になるだろうと指摘している。

●民主党とホワイトハウス、緊急融資の財源問題で合意

 また、380億ドルの資金の財源問題については、ホワイトハウスや財務省と議会の民主党とのミゾはようやく5日夕になって進展が見られた。

 民主党のナンシー・ペロシ下院議長は5日、ホワイトハウスのジョシュア・ボルテン首席補佐官と会談し、ビッグ3に対する緊急融資に関し大筋で合意したのだ。

 ペロシ議長は会談でブッシュ政権の主張を受け入れ、9月に議会で可決されたエネルギー省の250億ドルの燃料効率を促進するための融資制度から約150億ドル(約1兆4000億円)をビッグ3に緊急的に融資することで合意したとしている。

 これまで、民主党は10月初めに議会で成立した金融安定化法の柱である総額7000億ドル(約65兆1000億円)の不良資産救済制度(TARP)の利用に強く固執していた。

 しかし、5日に発表された11月の新規雇用者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)が前月比53万3000人減と、1974年以来34年ぶりの大幅減になったことを重く見て、民主党がこれまでの主張を引っ込めたものだ。

 結局は、先月下旬に、上院の民主党と共和党が超党派で策定した折衷法案に戻った形になる。同折衷案では、民主党は政府と共和党の要望に沿う形でエネルギー省の融資制度を使うことで合意していたからだ。

 また、ペロシ下院議長と民主党のハリー・リード上院院内総務(ネバダ州選出)は5日夕、声明文を出し、その中で、今週半ばをメドに自動車業界救済法案を上下両院の本会議で採決する考えを明らかにしており、今後は、上下両院で、今年末までにビッグ3に緊急融資ができるよう、エネルギー省の融資制度の法改正に向かうものと見られる。

 ペロシ議長は声明文の中で、この150億ドルの緊急融資は「数週間以内に実行される」と述べている。民主党では、この150億ドルについては来年3月までのつなぎ融資と位置づけており、来年1月20日に民主党のオバマ次期大統領が正式に就任したあと、新大統領の下で新たに策定される第2次景気対策の中でビッグ3への緊急融資の財源を確保したい考えだ。

●ビッグ3の破たん、250万人の失業者の可能性

 GMは生き残りをかけて、クライスラーの買収戦略を進めているが、買収には政府から少なくとも180億ドル(約1兆7000億円)の融資が必要と主張している。もし、クライスラーの買収に失敗すれば、GMとクライスラーの合計で14万5000人の従業員と68万2000人の退職者とその家族が路頭に迷うことになるといわれる。

 また、米自動車研究センター(CAR)が5日に発表した調査結果によると、ビッグ3が破たんした場合の失業者数は、関連業界を含めて250万人なると推定している。内訳は、自動車メーカーが24万人、自動車部品メーカーで80万人、自動車業界以外の消費関連で140万人だ。この結果、政府は1000億ドル(約9兆3000億円)の税収減になると予想している。

 民間の経済予測機関、HISグローバル・インサイトの調査でも、GMが破たんすれば政府は1000億-2000億ドル(約9兆3000億-18兆6000億円)の歳出増を招き、失業率も破綻なしの場合の8.5%から9.5%に跳ね上がるとしている。それほど、自動車業界の破たんの経済全体に与える影響は測りしれない。【了】

筆者  増谷栄一

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November 30, 2008

増谷栄一の経済コラム:米FRB、総額76兆円の消費者・住宅ローン市場対策を発表=量的金融緩和へ

−市場、来年1月までにゼロ金利を予想−

【2008年11月30日(日)】 − FRB(米連邦準備制度理事会)は25日、クレジットカードなどの消費者ローンと住宅ローンの金利の低め誘導と借り入れをスムーズにすることを目的とした総額8000億ドル(約76兆円)のクレジット市場対策を発表した。

 これから年末商戦を迎える小売業界にとって、個人消費を盛り上げるために欠かせないクレジットカードや自動車ローン、学生ローンといった生活に密着した消費者ローンの利用を刺激しようというもので、リセッション(景気失速)を乗り切らなければならない米国経済を金融面からテコ入れする措置といえる。

 一部の金融専門家は、FRBによるこの一連の金融措置は、政策金利の引き下げという伝統的な金融政策の手法による経済への波及効果が弱まっている中で、量的金融緩和による効果シフトしたものと見ているようだ。

 ただ、市場では、今後、FRBは日銀が1999年2月から2001年3月まで実施したゼロ金利政策のように、政策金利を現行の1%から来年1月までにはゼロ%にまで引き下げると見ている。

●消費者ローン市場の活性化に19兆円投じる

 クレジット市場対策は3本の柱からなっている。最初の柱は、2000億ドル(約19兆円)の資金を消費者ローン市場に投入するものだ。これはクレジットカード・ローンや自動車ローン、学生ローンの消費者ローンを参照債権(担保)として発行されているABS(資産担保証券)を保有している銀行系のSIV(仕組物投資ファンド)などの投資家に資金を融資するものだ。

 具体的には、ニューヨーク連銀がTALF(Term Asset-Backed Securities Loan Facility)と呼ばれる貸出制度の下で、高格付けの消費者ローンや政府の中小企業局が債務保証している中小企業ローンの債権を裏付けとして発行されたABSを保有している投資家にノンリコース(ローン返済ができなくなったときに、担保になっている資産以外に債権の取り立てが及ばない非遡及型融資)の融資を行う。

 これによって、FRBは銀行などの投資家のバランスシートに余裕を持たすことができれば、これらのABS債券に対する需要が喚起されて債券売買が活発化。その結果、自動車やカードなどのローン金利も下がって消費者は借りやすくなり、資金余裕が生まれた銀行も消費者ローンを増やすようになるという見方だ。

●将来、消費者ローンABSからRMBSやCMBS債券に拡大へ

 また、FRBによると、今後はTALF制度の対象債券はCMBS(商業用不動産モーゲージ担保証券)やRMBS(住宅ローン担保証券)にも拡大される可能性があるとしている。

 ヘンリー・ポールソン財務長官もこのTALFの2000億ドルについては、「出発点に過ぎない」としており、今後、拡大する可能性がある。

●政府系住宅金融3社保証のMBS買い取りで47.5兆円と投入

 2番目の柱は、FRBは住宅ローン金利を引き下げ、借り入れをしやすくするために、ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)、ジニーメイ(政府住宅抵当公庫)の政府系住宅金融3社が債務保証しているMBS(不動産担保証券)を、5000億ドル(約47兆5000億円)を上限に買い取る制度だ。

 これはMBS市場を活性化させ、住宅ローンの金利を引き下げる狙いがある。

 最後の3本目の柱では、FRBはこれらファニーメイとフレディマック、さらに、住宅ローンの融資を行っている金融機関に低コストの資金を提供している全国12カ所の連邦住宅貸付銀行(FHLB)が起債する社債を来週から始まる一般競争入札を通じて、1000億ドル(約9兆5000億円)を限度に購入するとしている。【了】

筆者  増谷栄一

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November 23, 2008

増谷栄一の経済コラム:米自動車緊急融資法案、採決先送り=議会通過は来年1月の公算

−ビッグ3、12月2日にリストラ計画提出へ−

【2008年11月23日(日)】 − 米議会は20日、GM(ゼネラル・モーターズ)などビッグ3に対する250億ドルの緊急融資法案の採決を12月以降に先送りした。これは、民主党は20日にも民主・共和両党の超党派による妥協案を上院本会議で採決する構えだったが、同法案の可決に必要な賛成票の確保が困難と判断したためだ。

 民主党幹部のハリー・レイド上院院内総務は、採決延期の理由について、GMやフォード・モーター、クライスラーのビッグ3が国の金融支援を受けても自力再建が可能なリストラ計画が提出しなければ、最大250億ドル(約2兆4000億円)の緊急融資はできないとしている。

 このため、民主党のペロシ下院議長とレイド院内総務は21日に、ビッグ3の首脳にリストラ計画や各社の資金繰り状況などをまとめた報告書を12月2日までに議会に提出するよう求める書簡を送付している。

 今後、議会では米下院金融サービス委員会のバーニー・フランク委員長(民主党、マサチューセッツ州)と上院銀行住宅都市委員会のクリストファー・ドッド委員長(民主党、コネチカット州選出)が中心となって、12月8日から再会される議会で各社のリストラ計画について審議する方針だ。

 ただ、議会では、12月8日以降の議会審議では年内に緊急融資法案の可決は困難で、来年1月に先延ばしになるとの見方が広がっている。

●国民の約半分、ビッグ3救済に反対=最新の世論調査

 20日の採決先送りの決定については、ビッグ3の首脳が18-19日に開かれた上下両院の公聴会に出席するため、高級な社用ジェット機でワシントンに乗り込んできたことが議会で槍玉に挙げられたように、ビッグ3は本当に緊急融資を受けて経営を立て直す意思があるのか疑わしいと批判されたことも影響したようだ。

 しかし、実際のところは、フランク委員長が20日の記者会見で述べているように、金融危機とはいえ、一民間企業の救済について十分な議論なしで7000億ドル(約67兆円)もの巨額の財政支出を決定したことに対する国民や議員、メディアの不信感が背景にあるといえる。

 実際、ラスムッセン・リポートが20日に発表した世論調査結果によると、全体のほぼ半分に当たる48%がGMなどの自動車メーカーに国の資金を投入して救済するよりも、破たんさせた方が経済にとっては良い、と回答。救済支持の35%を大幅に上回り、国民と議会との間には温度差がある。

 もし、議会で緊急融資法案が12月中に成立しない場合には、GMは年末までに経営資金が必要最低水準に近づくと表明しているため、手遅れになることが危惧されている。

 UAW(全米自動車労組)のロン・ゲットルフィンガー会長は20日の記者会見で、政府の緊急支援がなければ、年末までにビッグ3のうち、1社か2社が破たんするだろうと警告しているほどだ。

 こうした懸念が広がる中で、ウォールストリート・ジャーナルは22日付の記事の中で、GMの経営陣の一部は破産法の適用申請も含めたあらゆる選択肢の検討を望んでいる、と報じている。

 ただ、同紙によると、GMの報道担当者は、役員会が破産についての議論を行ったことは認めたものの、破産を会社の資金繰り問題を解決する実現可能な選択肢としては見ていない、と指摘、破産法の適用申請の可能性を否定している。【了】

筆者  増谷栄一

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November 16, 2008

増谷栄一の経済コラム:米国の輸出ブーム終焉へ=7-9月期GDPは下方改定の見通し

【2008年11月16日(日)】 − 先週(13日)、米商務省が発表した9月の貿易・サービス収支の赤字幅は2カ月連続で改善した。しかし、中身を良く見ると、それほど喜ばしいことではないことが分かる。

 米国の景気後退で内需が低下して輸入が減少する一方で、軟調な個人消費に代わって米国経済の成長率を下支えしてきた輸出が急減。第4四半期(10-12月)以降は、輸出ブームが終焉を迎えるのがほぼ確実と見られているからだ。

 9月の貿易・サービス収支(季節調整済み)の赤字幅は前月比4.4%減の564億7000万ドル(約5兆5000億円)となり、市場予想の570億ドルを下回った。直近3カ月では7月のピークの613億ドル(約5兆9000億円)から約8%も改善。赤字幅の水準としては、2007年10月以来の約1年ぶりの低水準となっている。

 内訳を見ると、輸出は前月比6.0%減の1554億ドル(約15兆1000億円)となり、8月の1653億ドル(約16兆円)や7月の1681億ドル(約16兆3000億円)から1500億ドル台半ばまで急落。2カ月連続の減少となった。

 ただ、来月に発表される10月の貿易赤字は、9月の急落の反動増が予想されているものの、これまで輸出拡大に寄与してきたドル安が反転上昇していることや、世界経済の減速が顕著になっていることから、今後、米国の輸出ブームは終焉を迎えるというのが大方の見方だ。

 輸出は住宅投資の3倍もあるため、GDP成長率に与える影響は大きい。過去の輸出のGDP成長寄与度を見ると、2005年は+0.7%ポイントだったのが、2006年と2007年はいずれも+1.0%、また、2008年も8月までは+1.0%となっている。

 しかし、今後は、今年第4四半期(10-12月)か、2009年には輸出のGDP成長率寄与度はゼロ%ポイント近くまで低下すると見られている。

●輸入、5.6%減の大幅減少=国内消費低迷と原油輸入の大幅減少で

 他方、輸入も前月比5.6%減の2118億7000万ドル(約20兆6000億円)と大幅に減少した。これは、国内の個人消費の低迷を反映したもので、2カ月連続の減少となっている。

 商務省が10月30日に発表した第3四半期(7-9月)実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)は−0.3%(速報値)となり、前期の+2.8%からマイナス成長に転じたが、これはGDPの約70%を占める個人消費が1991年以来17年ぶりにマイナス成長となったのが最大の理由だ。

 先週末の14日に商務省が発表した10月の小売売上高(季節・営業日調整後)も前月比2.8%減と、市場予想の2.1%減を上回っており、同統計が始まった1992年以来、過去最大の減少となった。それまでの過去最大は2001年11月の2.65%減。

 これは、9月の1.3%減(改定前は1.2%減)の2倍以上の下げ幅だ。7月から4カ月連続の減少で、4カ月連続は1974年以来34年ぶりとなる。

●第3四半期GDP、マイナス0.8%に下方改定か=実質貿易赤字拡大で

 また、GDPの算出に使われるインフレ調整後の実質ベースの貿易赤字は、9月は前月比6.7%(約30億ドル)増となった。今後もこの増加ペースが続けば、第4四半期(10-12月)GDP伸び率を押し下げる大きな要因の一つになりそうだ。

 先に発表された第3四半期GDP伸び率は前期比年率−0.3%だったが、今回の貿易統計の結果を受けて、エコノミストの一部では、−0.8%へ一気に0.5%ポイントも下方改定されると見ている。【了】

筆者  増谷栄一

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November 09, 2008

増谷栄一の経済コラム:米10月雇用者数、24万人の大幅減=年初来で118万人減少

−オバマ次期大統領、約19兆円の追加景気対策目指す−

【2008年11月9日(日)】 − 先週末(7日)、米労働省が発表した10月の雇用統計(事業所調査)は、新規雇用者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)が前月比24万人の純減となり、市場予想の20万人減を大幅に上回った。

 雇用者数の減少はこれで10カ月連続となった。今年に入ってから実に118万人の純減となっており、その半分以上の65万1000人が直近の3カ月間(8-10月)で減少した。クレジット市場危機が再燃、金融市場が混乱した時期とちょうど重なる。

 また、9月の雇用者数も前回発表時の15万9000人減から28万4000人減へ、実に12万5000人も大幅下方改定された。これは2001年11月以来の約7年ぶりの大幅減だ。

 8月の数値も7万3000人減から12万7000人減となり、この2カ月で合計17万9000人も下方改定された。雇用市場はまさに崖から転がり落ちるほどの悪化ぶりだ。

 雇用者数の増減を民間部門と政府部門に分けて見ると、政府部門は2万3000人増となったが、民間部門は26万3000人減と、2001年にリセッション(景気失速)が始まって以来の7年ぶりの大幅減少となっている。

●失業率は6.5%=2001年リセッション時を上回る

 また、失業率も前月の6.1%から一気に6.5%に上昇した。市場予想の6.3%を大幅に上回り、1994年3月以来14年7カ月ぶりの高水準となった。

 今年4月時点では、まだ5%(昨年10月は4.8%)だったが、短期間で急伸し、2001年のリセッション時に記録された6.3%も軽く突破した。

 エコノミストの中には、今後の米景気の減速が深刻化し、失業率は11%まで悪化しても不思議ではないと見ている。1930年代の大恐慌以来の最悪といわれた1980-1982年のリセッション当時、失業率は10.8%(1982後半)まで上昇しているからだ。

 11月に入ってからも、先週の1週間で、大手企業8社が合計で約1万5000人もの人員削減計画を発表している。家電小売りチェーン大手のサーキット・シティは3日、全従業員(約4万3000人)の17%に相当する約7300人の解雇を発表した。

 金融界でもフィデリティ・インベストメンツは1300人、ハートフォード・ファイナンシャルも500人、さらに、玩具メーカー大手のマテルも1000人、家具製造販売大手のモンローも850人の削減を相次いで発表している。

 そして、自動車2位のフォード・モーターも7日に第3四半期(7-9月)決算を発表し、30億ドルの営業損失となったことを明らかにしたが、同時に経営再建策として、2600人のブルーカラーの追加人員削減を発表している。

●オバマ次期大統領と民主党、第2弾の景気対策を目指す

 こうした雇用統計の急激な悪化を受けて、民主党のバラック・オバマ次期大統領は7日、シカゴで開かれた経済の専門家チームとの協議後、記者団に対し、「大統領に就任後直ちに、この経済危機に正面から取り組み、クレジット市場危機を緩和させ、景気回復のためのあらゆる対策を講じる」と述べている。

 オバマ次期大統領は、選挙戦中、今年2月に議会を通過した1680億ドル(約16.5兆円)の景気対策に続く第2弾の景気対策の実施を公約として掲げている。その規模も当初の1750億ドル(約17.2兆円)から、現在は1900億ドル(約18.7兆円)規模に拡大している。

 一方、民主党も、オバマ氏が大統領に正式就任する1月を待たずに、ブッシュ政権下で、とりあえず1000億ドル(約9.8兆円)規模の景気追加策を議会に提出する構えだ。民主党のナンシー・ペロシ下院議長は1500億ドル(約14.7兆円)規模を要求している。

 しかし、エコノミストは景気回復には1000億ドルでは不十分と見ている。多くは3000億ドル(約29.5兆円)規模が必要だ、と指摘している。また、一部のエコノミストは5000億ドル(約49兆円)が必要と見ている。 【了】

筆者  増谷栄一

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November 02, 2008

増谷栄一の経済コラム:米経済、リセッションほぼ確実に=個人消費が17年ぶりに減少

−第3四半期GDP、−0.3%=3期連続でマイナス成長か−

【2008年11月2日(日)】 − 米商務省が10月30日に発表した第3四半期(7-9月)実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)の速報値は−0.3%となり、前期の+2.8%からマイナス成長となった。

 成長率がマイナスとなったのは、昨年第4四半期(10-12月)の同−0.2%以来3四半期ぶりだ。ただ、昨年第4四半期の場合と異なるのは、GDPの3分の2(約70%)を占める個人消費が1991年以来17年ぶりにマイナス成長となったことだ。

●7-9月期個人消費、28年ぶりの大幅低下=所得も大幅減少

 また、個人消費を下支えする所得の伸びの悪化も目立ってきている。税還付による景気刺激策の効果が薄れた第3四半期GDP統計では、インフレ調整後の実質可処分所得の伸びは前期比−8.7%だった。これは、1947年以来61年ぶりの大幅低下で、第2四半期の+11.9%から急激な低下に転じている。

 今回の個人消費支出の−3.1%は、1980年第2四半期の−8.6%以来28年ぶりの大幅低下、GDP成長率に対する寄与度は−2.25%ポイント(前期は+0.87%ポイント)となっている。

 GDP伸び率がマイナス成長だった昨年第4四半期のときでも個人消費支出の寄与度は+0.67%ポイントだったことからも、いかにGDPを押し下げたかが分かる。

 今回は、政府消費支出と純輸出、企業在庫がGDPを下支えしている。もし、これらが悪化していればGDPのマイナス幅はもっと大きくなっていた可能性がある。

 政府消費支出は前期比年率+5.8%(寄与度は+1.15%ポイント)、純輸出の寄与度は第2四半期の+2.93%ポイントから大幅に低下したものの、+1.13%ポイントと寄与度は大きい。

 また、GDPの押し上げ要因である企業在庫も第2四半期の前期比506億ドル減から、第3四半期は385億ドル減に減少幅が縮小。GDP寄与度も前期の−1.50%ポイントから+0.56%ポイントへと大幅に改善している。

●企業設備投資と住宅投資、依然、GDPの足かせ要因

 一方、企業設備投資は、前期の+2.5%から−1.0%へとこれまでの緩やかな増加傾向から一転してマイナス成長となった。GDP寄与度も−0.11%ポイント(前期は+0.27%ポイント)と、足を引っ張っている。この内訳は、非居住用建物投資が+7.9%と堅調だったが、機械・設備投資(ソフトウエアを含む)は−5.5%と大幅減となっている。

 また、住宅投資も−19.1%(前期は−13.3%)と、11四半期連続のマイナスの伸びで、GDP寄与度も−0.72%ポイントと、依然、GDPの押し下げ要因となっている。

●第4四半期GDPは再びマイナス成長へ

 今後の第4四半期(10-12月)のGDP成長率については、大方のエコノミストは、前期比年率−2.8%、さらに、2009年第1四半期(1-3月)も−1.5%となり、リセッションはほぼ確実を見ている。その場合、リセッションは昨年12月、または、今年1月から入ったとするのが大勢だ。

 雇用面でも、失業率は現在の6.1%から来年には7.5%か8%まで急伸すると見られている。これは、人口の増加に対応して、失業率を悪化させないために必要な雇用者数の増加は、月平均10万-13万人で、その達成には+2.5%成長が必要となるからだ。

 ムーディーズ・エコノミー・ドット・コムも10月30日に公表したリポートの中で、全米の30州と276の大都市圏がリセッションに入ったと指摘している。 【了】

筆者  増谷栄一

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October 26, 2008

増谷栄一の経済コラム:米9月中古住宅販売、大幅増=在庫は2カ月連続減少

−フォークロージャー物件急増による価格下落が寄与−

【2008年10月26日(日)】 − 先週末(24日)、NAR(全米不動産業協会)が発表した9月の中古住宅販売件数は前月比5.5%増の年率換算518万戸となり、市場予想の495万戸を大幅に上回った。

 また、住宅市場の供給過剰感を示す売れ残り住宅在庫も前月比1.6%減の427万戸と、2カ月連続の減少となり、販売増とともに今後の住宅市場の改善に期待を抱かせる結果となっている。

 中古住宅が大幅な販売増となったのは、9月に入って、安値のフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件が急増したためだ。

 NARによると、販売件数の全体の35-40%がフォークロージャー物件で占められたという。フォークロージャー物件の増加で販売価格が大幅に低下、販売件数が増加する一方で在庫も減少したのだ。

 また、住宅ローン金利が大幅に低下したことも購入意欲を高めたと見られている。9月の統計は、2カ月前の7月と8月に売買契約を交わし販売が完了した件数がベースになっているため、9月中旬から10月にかけて再発したクレジット市場危機で、銀行の貸し渋りが厳しくなる前だったことも大幅増に寄与している。

 前年比で見た販売件数は1.4%増と、2005年11月以来、約3年ぶりに増加に転じた。これは、1年前の2007年9月はクレジット市場危機が始まったころで、住宅販売が急減しており、その反動増という面もあるようだ。

 しかし、販売増とそれに伴う住宅在庫の2カ月連続減少については、NARの主席エコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「世界経済が不況から回復に向かう第一歩となりうる」とし、住宅市場にとっては良い兆候と見ている。

●中古住宅販売、落ち着いた動き

 9月の中古住宅販売件数(一戸建てや分譲住宅、集合住宅など、季節調整値)は、前月比5.5%増の年率換算518万戸となり、市場予想の495万戸(0.8%増)を大幅に上回った。

 5.5%という増加幅は2003年7月以来5年2カ月ぶりの大幅な伸びで、戸数自体も昨年8月の550万戸以来、1年1カ月ぶりの高水準となっている。

●中古住宅在庫、9.9カ月分に低下=それでも適正水準の約2倍

 一方、9月の中古住宅の売れ残り在庫件数は、前月比1.6%減の427万戸となった。これは、9月の販売ペースで見て9.9カ月分の在庫(供給)水準で、も8月の10.6カ月分から大幅に低下している。これは在庫件数が過去最高となった7月以降、2カ月連続の低下だ。

 しかし、過去25年間の平均値である7.1カ月分、また、適正水準とされる5.5-6カ月分(住宅ブームのピークだった2005年は4.5カ月分)を依然、大幅に上回っている。在庫はまだ、適正水準より約150万戸多い水準だ。

●中古住宅価格、前年比9.0%低下

 低価格のフォークロージャー物件の販売が増えたことを裏付けるように、今回の統計では、中古住宅価格の中央値(季節調整前)は、前年比9.0%低下の19万1600ドルと、2004年4月以来4年5カ月ぶりの低水準となり、26カ月連続で前年水準を下回っている。

 すでに、住宅価格は2006年の中ごろのピーク時から18%下落しているが、今後もフォークロージャー物件が市場に流れ込む見通しのため、価格は、さらに10%も低下すると見られている。

 地域別の住宅価格の動向を見ると、西部が前年比18.5%低下と最も大きく下落、北東部の同5.4%低下、南部の同4.1%低下、中西部の同7.9%低下となっている。【了】

筆者  増谷栄一

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October 19, 2008

増谷栄一の経済コラム:米9月住宅着工、3カ月続落=来年末まで回復見込めず

【2008年10月19日(日)】 − 先週末(17日)、米商務省が発表した9月の住宅着工件数は、前月比6.3%減と、3カ月連続の減少となり、依然として1991年のリセッション(景気失速)以来17年ぶりの低水準が続いている。

 住宅着工は、6月が前月比10.4%増(改定前は9.1%増)となったが、結局、7月は同12.9%減、8月も同8.1%減(改定前は6.2%減)と大幅に下落、今回の9月統計でも下落したことで、6月の大幅上昇が一時的だったことが裏付けられた。

 この結果を受けて、市場では、第4四半期(10-12月)の住宅着工も第3四半期(7-9月)より一段とマイナス幅を広げると懸念し始めている。

●住宅着工、主力の一戸建ては前月比12.0%減

 9月の住宅着工件数(季節調整値)は、前月比6.3%減の年率換算81万7000戸となり、市場予想のコンセンサスである同2.8%減の87万戸を大幅に下回った。これは、リセッションとなった1991年1月の79万8000戸以来、17年8カ月ぶりの低水準だ。

 特に、9月は、50年前の1958年に記録された過去最低をわずか1万9000戸上回るだけで、過去2番目の低さとなっている。

 内訳は、主力の一戸建てが前月比12.0%減の年率換算54万4000戸と、8月の同4.0%減の3倍の大幅下落で、リセッションとなった1982年2月以来26年7カ月ぶりの低水準となり、全体の足を引っ張った。前年比でも42%減と依然、大幅な減少傾向を示している。

 また、前年比で見た全体の住宅着工件数は31.1%減で、2007年9月以来1年ぶりの大幅減少で、水準的には2006年1月のピーク時の230万戸から64%減だ。

 一戸建て住宅にいたっては70%減と、3分の1に激減している。エコノミストは今年の全体の住宅着工件数は第2次世界大戦以降で初めて100万戸を下回ると見ている。

 住宅着工が不振なのは、新築住宅の販売低迷が原因だ。住宅市場の低迷で住宅価格の低下が続いており、消費者は一段の価格下落を期待して買い控えている。

 また、クレジット市場危機による銀行の貸し渋りで、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)手続きが急増。その結果、住宅在庫が増加し、在庫減らしのため着工が抑制されているのだ。

 米商務省の8月の新築住宅販売統計(季節調整値)によると、前月比11.5%減の46万戸と、17年ぶりの低水準になっており、前年比でも実に34.5%減と、2007年8月以来1年ぶりの低水準になっている。

●9月の建築許可件数、前月比8.3%減=一戸建ては同3.8%減

 他方、この日同時に発表された建築業界のマインドを示す9月の建築許可件数(季節調整値)も前月比8.3%減の年率換算79万6000戸と、1981年11月以来、約27年ぶりの低水準となった。市場予想の同2%減の84万戸を大幅に下回っている。

 このうち、一戸建ては同3.8%減の53万2000戸と、リセッションとなった1982年8月以来26年ぶりの低水準で、前年比も39%減と依然大幅に落ち込んだままだ。

 建築許可件数は、7月の前月比17.7%減、8月の同8.5%減に続いて3カ月連続の減少で、エコノミストは、住宅着工件数は来年初めまでに、さらに5-10%減少すると見ている。

 さらに、9月に米商務省が発表したデータによると、8月時点で建築メーカーが完成住宅を販売するのに平均10.9カ月かかっていることから、住宅市場の回復は2009年後半から2010年初めになると見る向きもある。【了】

筆者  増谷栄一

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October 12, 2008

増谷栄一の経済コラム:ブッシュ大統領、公的資金注入を正式表明=早ければ今月実施

−G7声明、銀行間市場の短中期債務保証は盛り込まず−

【2008年10月12日(日)】 − 先週末(10日)、ブッシュ大統領は、ホワイトハウスでテレビを通じて緊急声明を出し、金融危機を克服するため、7000億ドル(約70兆円)の金融安定化対策の一環として、国が銀行の株式を取得、自己資本の増強を支援する意向を正式に表明した。

 ブッシュ大統領は、「7000億ドルの金融安定化法は、財務省が金融機関のバランスシートを再構築するため、株式取得を含むさまざまな措置を取ることを可能にする」と述べたものの、市場は好感せず反対に下げをきつくしただけだった。

 結局、ダウ平均は8営業日続落の前日比128ドル安(1.5%)安の8451.19ドルで引け、週初来の下落率は22.1%と過去最悪となった。これをダウ・ジョーンズのウィルシャー5000総合株価指数で見ると実に2兆4000億ドル(約241兆円)の時価が消えた計算だ。

 また、1年前との比較では8兆4000億ドル(約844兆円)の時価損失となったことになる。いかに、株価の下落が凄まじいかが分かる。

●ブッシュ大統領、銀行間市場の債務保証に言及せず

 金融安定化法に基づいて、公的資金注入が可能というのは、法律では、財務省が買い取ることができる不良資産の定義について、住宅市場の悪化で不良債権化した「不動産ローン」と「その証券化商品(MBS)」、そして、財務長官が金融市場の安定化のために必要と判断した「その他金融商品」となっているからだ。政府は、この「その他」に金融機関の株式が含まれると解釈しているのだ。

 ブッシュ大統領が、公的資金注入について正式に言及したのはこれが初めてだったが、それでもダウ平均が下げ幅を拡大したのは、それ以外では特段、目新しい材料となるものは示さなかったからだ。

 ブッシュ大統領は、FDIC(米連邦預金保険公社)による預金保護上限額を25万ドル(約2500万円)に引き上げることなどすでに明らかになっている対策を列挙しただけだった。

 むしろ、市場が即効性の観点から高く評価していた銀行間市場(短期金融市場)の金融取引(短中期資金の貸し借り)に対する政府保証に言及しなかった失望感の方がかえって大きかった。

 この短中期債務の政府保証は、英国のアリスター・ダーリン財務相が自国での導入を発表したあと、米国側にも同様な対策を取るよう検討を働きかけているものだった。

 英国の発表によると、今後3年間、国が2500億ポンド(約43兆円)を限度に、銀行間市場の短中期債務を保証(債務不履行時の元利金支払いを保証)するというものだ。

 これは、銀行は他の銀行の破たんを恐れて銀行間で貸し渋りが起きているため、企業や家計の末端レベルでも貸し渋りが起きていることから、打開策として導入が決まったものだ。

 しかし、ホワイトハウスは、この英国案は、短中期期資金の貸し借りをしている銀行だけの救済となり、それ以外の金融機関との関係で公平さを欠くことになるとして難色を示している。

●G7、銀行間の金融取引への政府保証を盛り込まず=市場の期待とギャップ

 ブッシュ大統領の演説と並行して、ワシントンで開かれたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)は10日午後6時(日本時間午前7時)に共同声明を発表した。

 しかし、ここでも銀行救済の即効薬になると見られていた銀行間市場の短中期債務に各国政府が協調して保証を与えるという、市場が最も期待していた協調行動が全く明記されていなかった。

●米国の公的資金注入、早ければ10月中か

 もともと、公的資金の注入のアイデアは、英国が8日に世界各国に先行して発表しており、米国はそれに追随する形となっている。

 英国の場合、銀行に対し、優先株の取得と引き換えに500億ポンド(約86兆円)を限度に公的資金を注入、不足している自己資本を増強、金融危機を乗り越える体力を付けさせるというものだ。

 米国の場合、ポールソン長官は、会見で、「公的資金の注入はできるだけ早い次時期に実施したい」とし、「広範な金融機関が対象になる」と述べているが、財務省は早ければ10月末から銀行の普通株か、優先株の取得を通じて公的資金を注入すると見られている。

 国有化を目指すかどうかについては、同長官は、「銀行が民間からの資金調達の補完的役割を果たすものだ」と述べ、国有化を否定。取得する株式についても議決権を持たないため、銀行の経営権を目指すものではないとも述べている。

 しかし、問題は公的資金の注入で、銀行の貸し渋りを解決するためには、経営が悪化している銀行に注入するよりも、むしろ、健全な銀行に注入した方が効果は大きいと指摘する学識経験者やエコノミストが多いことだ。

 また、ABA(米銀行協会)は公的資金を多くの銀行を対象に注入すれば、米国の金融界全体がかなり悪いという印象を与えかねないとして、限定的な注入を要請しているが、実際、フタを開けてみれば、注入を希望する銀行数はかなり減ると見られている。

 こうした問題点をかける中で、財務省が効果的な資本注入制度を作れるかどうか、市場は当面、政府と議会の協議の進展を見守らざるを得ないようだ。【了】

筆者  増谷栄一

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October 05, 2008

増谷栄一の経済コラム:ブッシュ大統領、74兆円の金融安定化法案に署名=下院通過受けて

−NY株式市場、大幅下落=下院の金融法案可決でも−

【2008年10月5日(日)】 − 先週末(3日)、昨年夏以降のクレジット市場危機を克服するための切り札として打ち出した総額7000億ドル(約74兆円)の金融安定化法案(Economic Stabilization Act of 2008)が無事、下院を通過したのを受けて、ブッシュ大統領は直ちに同法案に署名した。

 同法案は、先週初めの9月29日に下院本会議で1回目の投票が行われ、228票対205票の反対多数で否決されてから、上院が下院に先行して同法案を可決させ、下院に再び同法案を送付。2回目の下院投票を求めるという異例の事態となっていた。

●下院での可決にもかかわらず、株価は急落

 下院本会議での可決直前まで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)では、ダウ工業株30種平均は日中高値の前日比313ドル高まで急伸していた。しかし、午後に下院可決のニュースが流れると反落に転じ、結局、前日比157ドル(1.5%)安の1万0325.38ドルで引けている。

 財務省は今後、数週間かけて、法律専門家や会計士、金融市場の専門家ら20-30人規模で金融安定化法に基づくMBS(不動産担保証券)などの不良資産の買い取り方法や買い取り時期、買い取り先の選別などの実施細目を決めることにしている。

 このため、市場関係者は、最初の買い取りのための入札が実施され、効果が実際に感じられるには数週間後になるとしても、当面は先行きの不透明感が強いとして、懸念を先行せざるを得ない状況になっている。

●金融安定化法とは

 今回、上下両院で可決され成立した金融安定化法のうち、不良資産の買取に関する部分は、不良資産救済制度(Troubled Asset Relief Program)と呼ばれ、財務省は総額7000億ドルで金融機関が保有する不良資産(2008年3月14日以前に取得された分)を買い取る。

 また、財務省による金融保証も選択肢の一つとして検討するという形で明記されている。

 この金融保証は、下院共和党の中でも保守派に属する議員有志が策定したもので、銀行などの金融機関は保有するMBSなどの不良資産を国に買い取ってもらう代わりに、売却せずに保有し続け、事実上、不良資産を塩漬けにするというものだ。

 金融保証の場合、金融機関は財務省に保険料を支払い、不良資産の元利払いを保証してもらうが、集めた保険料で金融安定化基金を作り、不良資産に損失が発生した場合、基金で損失を補填することになる。

 また、不良資産の買い取り方法は7000億ドルの一括買い取りではなく、段階的に買い取る方式が取られる。まず、財務省は2500億ドル(約26兆)相当の即時買い取りが無条件で認められ、必要があれば1000億ドル(約11兆円)の追加買い取りが認められるというもの。

 残りの3500億ドル(約37兆円)については議会の承認(採決)を必要となっている。当初、財務省は最初の買い取り額は5000億ドル(約53兆円)を主張していた。

 このほか、救済される金融機関の役員に対する報酬(退職金も含む)に対する支払い制限や政府が救済対象の金融機関のワラント(新株引受権)を取得、利益が発生した場合、国庫(納税者)に還元することだ。

 また、財務省の買い取り状況を監視、不適切と判断した場合には買い取りの停止命令を出す権限が与えられた委員会の設置、政府が買い取った不良資産のうち、住宅ローン債権の借り換えを強制的に実施、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)手続きを回避するとなっている。

 また、不良資産の買い取りの対象も年金基金や地方自治体、低中所得者向けの信用組合まで広げられている。【了】

筆者  増谷栄一

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September 28, 2008

増谷栄一の経済コラム:米議会、74兆円の不良資産買い取りで最終合意=29日に議会採決へ

【2008年9月28日(日)】 − ブッシュ政権の金融安定化対策をめぐる共和、民主両党の協議が28日未明、最終決着した。最終合意内容は、財務省が総額7000億ドル(約74兆円)で金融機関が保有する不良資産を買い取るという当初の政府案が大筋で認められたが、税金投入による国民の損失を回避する新たな仕組みが加えられた。

 民主党のナンシー・ペロシ下院議長やハリー・レイド上院院内総務ら議会幹部は28日未明、議会内で記者会見し、両党の協議が最終合意に達したと発表した。会見には政府側を代表して、ヘンリー・ポールソン財務長官が出席した。

 政府案は19日に発表されて以来、議会で協議が進められたが、25日夕、ホワイトハウスで開かれたブッシュ大統領と議会のトップ会談で、出席した共和党の大統領候補、ジョン・マケイン上院議員が下院共和党の意向を受けて国民の税金投入となる政府案に反対したのがきっかけとなり、協議は暗礁に乗り上げた。

●下院共和党、政府代替案を提示=財務省による金融保証が柱

 25日のトップ会談では、共和党から政府案に対抗する代替案が示され、ブッシュ政権と政府案を支持していた民主党にあ然とさせた。

 この代替案は下院共和党の中でも保守派に属する議員有志が共和党のジョン・ベイナー下院院内総務の了承を得て策定したもので、銀行などの金融機関は保有するMBSなどの不良資産を国に買い取ってもらう代わりに、売却せずに保有し続け、事実上、不良資産を塩漬けにするというものだ。

 代替案では、金融機関は財務省に保険料を支払い、不良資産の元利払いを保証してもらうが、集めた保険料で金融安定化基金を作り、不良資産に損失が発生した場合、基金で損失を補填する。

 これだと、国民の税金を使わないで済むだけに、税金投入に対する世論の反対が強い中で、共和党は大統領選で有利に戦えるという計算だ。

 結局、トップ会談から一夜明けた26日、総額7000億ドルの政府案をめぐり、上下両院の共和、民主両党を代表する4人の議員が集まって、協議を再開。同日の深夜までに折衷案の基本部分がほぼ固まり、残った細部の詰めの協議も28日未明にようやく終わった。

●両党の折衷案、政府案の大枠を維持

 折衷案では、政府が7000億ドルで金融機関から不良資産を買い取るという金融安定化対策の大枠を維持した上で、財務省による金融保証も選択肢の一つとして検討するという形で併記された。

 財務省による金融保証がオプションとしてどういう形で実施されるかは明らかにされていないが、財務省が今後、検討していくことになる。ただ、7000億ドルの買い取り対象となる不良資産の一部に政府の金融保証が付けられ、金融機関はその不良資産を売却せず塩漬けにすることになると見られている。

 また、不良資産の買い取り方法も共和党に譲歩する形で、7000億ドルの一括買い取りではなく、段階的に買い取る方式が取られる。

 まず、財務省は2500億ドル(約26兆5000億円)相当の即時買い取りが無条件で認められ、必要があれば1000億ドル(約10兆6000億円)の追加買い取りが認められるというもの。残りの3500億ドル(約37兆円)については議会の承認(採決)を必要となっている。当初、財務省は最初の買い取り額は5000億ドル(約53兆円)を主張していた。

 このほか、救済される金融機関の役員に対する報酬(退職金も含む)に対する支払い制限や政府が救済対象の金融機関のワラント(新株引受権)を取得、利益が発生した場合、国庫(納税者)に還元することだ。

 また、財務省の買い取り状況を監視、不適切と判断した場合には買い取りの停止命令を出す権限が与えられた委員会の設置、政府が買い取った不良資産のうち、住宅ローン債権の借り換えを強制的に実施、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)手続きを回避するとなっている。

 両党の協議で最後まで問題となったのは、政府が買い取った不良資産をクレジット市場が回復した時点で売却して損失が発生した場合、国民の税金を使うことになるため、いかに税負担を回避するかだった。

 この点について、ペロシ下院議長から発表された最終合意の文書では、納税者は救済を受けた金融機関の株主となり、利益の還元を受けるとし、もし、その金融機関が破たんした場合には、納税者が最優先の債権者となり、全額返済を受けるとしている。

 そのアイデアの一つとして、最有力となっているのは、金融機関の保有資産に応じた拠出金によって民間版の金融安定化基金を設立、5年後に不良資産買い取り制度が失敗し、損失が発生した場合には、同基金を取り崩し、損失を穴埋めするというものだ。

 また、不良資産の買い取りの対象も年金基金や地方自治体、低中所得者向けの信用組合まで広げられている。

●市場で緊急利下げ懸念広がる

 一方、先週末の金利先物市場では、政府の金融安定化対策が議会で成立しない場合には、中規模の金融機関は運転資金の調達が困難になり破たんする可能性があるとして、10月28-29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)会合前にも緊急利下げがあるとの見方が広がった。

 エコノミストはクレジット市場と雇用市場の回復がない場合には、失業率は現在の6.1%から10%強にまで悪化、GDP成長率もマイナス2−4%になり、景気回復は2010年以降になると見ている。

 また、7000億ドルの金融安定化対策が実施されても必ずしも景気回復につながらないという見方もある。このため、NAHB(全米住宅建設業者協会)のジェリー・ハワード会長は、議会の休会明け後にも議会に対し、400億-900億ドル(約4兆2000億-9兆5000億円)の住宅市場対策を要求するとしている。

 26日のCBOT(シカゴ商品取引所)のFF(フェデラル・ファンド)金利先物の10月物は、10月のFOMC前の0.25%ポイントの緊急利下げの確率を100%織り込んだ。また、10月のFOMCでの0.5%ポイントの大幅利下げの確率も前日の0%から一気に32%も織り込んだ。【了】

筆者  増谷栄一

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September 21, 2008

増谷栄一の経済コラム:ブッシュ政権、75兆円の不良債権買い取り枠を発表=金融安定化対策

−MBS買い取り拡大とマネーマーケットファンド救済へ−

【2008年9月21日(日)】 − ブッシュ政権は20日、一連の金融危機に対処するための金融安定化対策として、政府が金融機関から買い取ることができる不良債権の総枠を7000億ドル(約75兆円)とする草案を議会に提案した。

 米証券4位のリーマン・ブラザーズの破産やメリルリンチの身売り、世界保険最大手のAIGや政府系住宅金融大手2社が政府の管理下に置かれるなど第2弾の金融危機が発生する事態に直面する中で、財務省は金融安定化対策の法制化を準備している。

 草案はわずか2ページ半という簡単なもので、現地時間の20日夜、財務省は公式にメディアに配布しているが、住宅ローンやMBS(不動産担保証券)などの不良債権の買い取り枠を7000億ドルとし、買い取り期間も2年間の時限立法としている。

 また、買い取り対象は不良債権化した住宅ローンや商業用不動産向けローン、それらを証券化したMBS(不動産担保証券)となっており、9月17日までに組成された不良債権で、米国内に本部を構える金融機関が対象になる。

 草案では、財務長官にほぼ無制限に権限を与えており、実際の不良債権の取得や売却、保有について、議会の事前承認の必要がなく大幅な自由裁量を認めている。ただ、不良債権の取得後3カ月以内に議会に事後報告が必要で、その後も6カ月ごとに報告するとなっている。

●ポールソン財務長官、金融安定化対策の大枠を発表

 金融安定化対策の大枠については、ヘンリー・ポールソン財務長官が19日、ホワイトハウスで開かれた記者会見で明らかにした。

 主な内容は銀行や証券会社などの金融機関が保有する不良債権(不良債権化した住宅ローンやその証券化商品であるMBS)を公的資金で買い取るための新制度の創設とマネーマーケットファンド市場の救済が柱だ。

 同長官は、会見では、不良債権の買い取り方法など詳細には一切、言及しなかったが、今週末いっぱいまでに、共和、民主の両党のトップとの合意を目指し、議会が大統領選挙のため休会に入る来週末までに、財務長官に不良債権処理を進める権限を与える法案の立法化を目指すとだけ述べている。

 ただ、不良債権の買い取り制度については、1980年代に起きたS&L(貯蓄貸付組合)危機を乗り切るため、政府が1989年に設立したRTC(整理信託公社)の現代版RTCを発足させるという見方が有力だ。

 当時、RTCは破たんしたS&Lを国有化し、その財産処分を行ったが、1995年末までに900億ドル(約9兆6000億円)の公的資金が投入されたといわれる。

 全体として、政府の金融対策は、クレジット市場への資金供給を一段と潤沢にすることで、金融不安を払拭し、また、同時に銀行の貸し渋りを解消して景気浮揚につなげることを狙っているといえそうだ。

●マネーマーケットファンド市場を救済へ

 これより先、19日の朝方、株式市場が開く前に、政府は1930年代の大恐慌以来といわれるESF(為替安定基金)を適用し、国内の企業や銀行などが発行する短期債券に投資するマネーマーケットファンド(短期金融資産投資信託)の払い戻しを保証するため、最大500億ドル(約5兆4000億円)の金融支援措置を取ることを明らかにした。

 FRBも政府を支援する形で、2兆ドル(約214兆円)市場といわれるマネーマーケットファンドが元本割れを起こし、投資家から解約請求が殺到している事態を重く見て、新設したばかりの緊急融資制度を拡大するとしている。

 マネーマーケットファンド市場の混乱の引き金となったのは16日のリザーブ・プライマリー・ファンドの純資産額の急落だった。投資先の米投資銀行大手リーマン・ブラザーズが発行した証券の価値がリーマンの破産でゼロとなり、同ファンドの1口当たりの基準価額が65%も急落、1ドルを割り込んだため、投資家がパニック的に解約に走ったためだ。

●FRB、ファニーメイとフレディマックの割引手形買い取りへ

 また、FRB傘下のニューヨーク連銀は19日、ファニーメイとフレディマック、住宅ローンの融資を行っている金融機関に低コストの資金を提供している12の連邦住宅貸付銀行(FHLB)が発行する割引手形を、他の国債と同様、プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)から数年ぶりに買い取ることで、金融システムへの潤沢資金供給を図ることを発表、即日実施した。

 この措置は金融システムに資金を潤沢供給することが狙いで、これにより、銀行は貸し渋りを緩和させることが期待されているのだ。【了】

筆者  増谷栄一

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September 14, 2008

増谷栄一の経済コラム:米8月小売売上高、大幅減少=ガソリン価格下落でも消費刺激せず

−景気鈍化懸念で利下げ観測強まる=ドル、対ユーロで急落−

【2008年9月14日(日)】 − 先週末、米商務省が発表した8月の小売売上高(季節・営業日調整後)は前月比0.3%減と、市場予想の0.3%増を大幅に下回る結果となった。7月の0.5%減(改定前は0.1%減)に続いて2カ月連続の減少だ。

 また、6月と7月の過去2カ月の小売売上高の伸び率も両月合計で0.6%ポイントも引き下げられた。4月末から7月中旬まで、約1000億ドル(約10兆8000億円)もの所得税の税還付が実施されたものの、税還付の消費刺激効果は見られず、むしろ、景気の鈍化懸念を強める結果となっている。

 8月の小売売上高が減少したのは、原油安に伴うガソリン価格の下落で、ガソリンスタンドの売上高が大幅に減少したのが主な理由だ。一方、7月は不振だった自動車販売が持ち直し、前月比19%増と、1年ぶりの大幅増となり全体の売上高を下支えした。

 AAA(全米自動車協会)によると、レギュラーガソリンの全米平均価格は、7月17日に一時、1ガロン当たり4.114ドルの過去最高を記録したあと下がり始め、9月12日にはピーク時の10.7%安の3.675ドルに緩和。これを反映して、ガソリン販売は7月の前月比0.2%増から同2.5%減へ伸びが急速に鈍化した。

 好調となった自動車販売を除いた小売売上高は前月比0.7%減。他方、低調だったガソリン販売を除いた小売売上高は横ばい、また、自動車とガソリンを除いた小売売上高は同0.4%減と、昨年12月以来8カ月ぶりの大幅下落となり、個人消費は勢いを失っている。ガソリン価格の下落で家計が楽になった分、消費が拡大するかと思われたが、消費者は買い控えしている状況だ。

●第3四半期の個人消費支出、17年ぶりのマイナスになる可能性

 エコノミストは、第3四半期(7-9月)の最初の2カ月で、GDPの約3分の1を占める小売売上高が連続してマイナスとなったことから、同四半期の個人消費支出の伸びは、第2四半期(4-6月)の伸び率(改定後で前期比年率+1.7%)を下回り、1991年のリセッション(景気失速)以来17年ぶりにマイナスに転じると予想している。

 これまでは所得税の税還付で個人消費支出が支えられ、第2四半期GDPは前期比年率
+3.3%(改定値)と堅調となったが、7月中旬で税還付が終わったことから、第3四半期GDPの減速は避けられない見通しだ。

 大方のエコノミストは第3四半期のGDO成長率については、+1.5%〜2%に再び伸びが鈍化、第4四半期(10-12月)も企業の設備投資の低迷や、個人消費も減税効果が薄れて鈍化、輸出も欧州や日本の景気後退で減速し、再び、マイナス成長になる可能性があると見ている。

●市場、利下げの可能性を織り込み始める

 こうした個人消費の低迷に加え、8月の雇用統計では失業率が6.1%に急上昇するなど雇用の一段の悪化、さらには、米住宅金融大手2社への公的資金注入や米投資銀行大手リーマン・ブラザーズの身売り観測などクレジット市場危機が続いていることから、利下げ観測が市場に広まってきている。

 FRBは来週の16日に開かれるFOMC会合で、政策金利を2%に据え置く見通しだ。しか
し、その先はとなると、利上げよりも利下げが今年末、または、来年早々に実施されるとの見通しを市場は織り込み始めた。

 ニューヨーク外為市場では、利下げ観測が強まったことから、ドルが対ユーロで売られ、これまで2カ月続いたドル高基調は終わったとの見方が支配的になっている。

 ドルは対ユーロで、前日の1年ぶり高値1.3882ドルから、一時、1.4223ドルまで急落、結局、前日の1.3942ドルから1.4219ドルに下落して引けた。ただ、7月15日に付けた1.6040ドルの過去最安値までにはまだ遠い。しかし、アナリストは、これまでのドルの回復基調は終わったと見ている。【了】

筆者  増谷栄一

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September 08, 2008

増谷栄一の経済コラム:米財務省、ファニーメイとフレディマックに公的資金注入へ

−財務長官、2社に最大22兆円の資本注入を保証−

【2008年9月8日(月)】 − ヘンリー・ポールソン米財務長官は7日午前(日本時間8日未明)、記者会見し、財務内容が悪化している政府系住宅金融会社のファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)の救済するため、当面、政府の管理下に置くとともに、直ちに20億ドル(約2200億円)の公的資金を注入する、と発表した。

 同長官は、会見で、救済策について、「MBS(不動産担保証券)市場の安定を図り、住宅ローンの上昇を防ぐことを目的にしている」と述べている。

 また、ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長も声明文を出し、「財務省が2社からMBSを買い取るという新制度は、クレジット市場の先行きが不透明な中で、モーゲージ市場の安定化に寄与する」として歓迎している。

●救済策は政府によるMBS買い取りや緊急融資など4本柱

 救済策は、(1)2社をコンサーベイターシップ(財産管理)下に置く(2)財務省は2社が発行する新規に優先株を取得する(3)新たに2社向けの緊急融資制度を創設する(4)政府は2社が金融機関から買い取った住宅ローン債権を裏付けとして発行する資産担保証券であるMBSを買い取る−の4つの柱からなる。

 コンサーベイターシップは、2社を政府の財産管理下に置くものだが、破綻した企業に対し裁判所が指名する破産管財人制度とは違い、政府の手による企業再建を目指すもので、再建後は再び民間経営に戻すというもの。

 具体的には、2社の監督機関である連邦住宅金融機関(FHFA)が2社の日常業務を引き継ぐとともに、2社の資産を管理する。これは2社のバランスシートを健全な状態に回復させるための措置で、期限は定められてはいない。コンサーベイターシップの期間中は、既存の株主の議決権は停止される。

 また、これに伴い、ファニーメイのダニエル・マッドCEO(最高経営責任者)とフレ
ディマックのリチャード・サイロンCEOが辞任。新CEOに、それぞれ、TIAA−CREF(全
米教職員年金・保険基金)の元会長であるハーブ・アリソン氏とUSバンコープ(USB)
の元CFO(最高財務責任者)であるデービッド・モフェット氏が就任する。

●2社の普通株と優先株は紙くずにならず=財務長官

 このほか、2社の普通株と優先株の株主に対する配当金支払いを停止する。これにより、毎年20億ドル(約2200億円)の節約になる見通しだ。

 市場では国有化の結果、2社の普通株が紙くず同然となり、優先株や2社で計190億ドル(約2兆円)の劣後債を保有している投資家がかなりの損失を受けると懸念され、2社の株式の狼狽売りにつながっていた。

 しかし、ポールソン長官は、「既存の普通株と優先株は紙くずにはならない」とし、普通株の弁済順位が劣位となり、優先株の株主の弁済順位は普通株に次いで2番目になるとしている。また、普通株と優先株は引き続き市場での売買が可能となるとしている。2社の劣後債に対する元利金支払いも引き続き行われるという。

 2社は、MBS市場の安定化させるため、2009年末まではMBSのポートフォリオへの組み入れを2社合計で現行の1兆5000億ドル(約162兆円)から1兆7000億ドル(約184兆円)まで2000億ドル増やすことが許される。

 しかし、2010年以降は年間10%のペースでMBS保有額を低リスクとなる2社合計で5000億ドル(約54兆円)規模まで減らすとしている。

●政府の2社の保有は80%以内=当面、20億ドルの公的資金注入

 政府の優先株取得は、2社が債務超過にならないよう、2社がそれぞれ新規に発行する10億ドル(約1100億円)相当のシニア優先株を表面金利10%で直ちに取得するほか、2社のそれぞれの79.9%に相当する普通株を購入できる新株引受権(ワラント)を取得する。

 シニア優先株の取得限度はそれぞれ1000億ドル(約10兆8000億円)で、ポールソン財務長官は、「この金額は、2社の債権者や2社のMBSを保有する投資家に安心感を与える」と自信を示している。一部では、最終的な2社への資本注入は2社で150億‐200億ドル(約1兆6000億‐2兆2000億円)になるという見方がある。

 また、シニア優先株の配当金は年間10%とし、配当金が全額、現金で支払うことができない場合には12%に引き上げられる。財務省はシニア優先株を取得することで、2社が万が一、破たんした場合でも、弁済順位が優先されるため、納税者の負担にはならないと強調している。

 新しい緊急融資制度(Government Sponsored Enterprise Credit Facility)は、限度なしに、2社が必要とする資金を有担保で融資する制度だが、融資期間は来年12月31日までの短期としている。

 融資金の原資は、財務省がニューヨーク連銀に預けている政府預金から財務省が直接2社と住宅ローンの融資を行っている金融機関に低コストの資金を提供している12の連邦住宅貸付銀行(FHLB)に融資する。担保資産は、2社が発行した債務保証付きMBSとFHLBがメンバー8000行強に対して保有する貸出債権。

 また、財務省は市場を通じて、2社のMBSを取得する。これにより、財務省は住宅ローンに向けられる資金を供給でき、既存の住宅所有者やこれから住宅を取得する世帯の住宅資金の調達を円滑化できるとしている。

 財務省は今月後半から、2社が発行するMBSを50億ドル(約5400億円))相当購入し、満期まで保有することも可能だとしている。満期保有によって、納税者が負担を負うことは避けられると指摘している。ただ、市場の状況に応じて、ポートフォリオの見直しを行う。このため、財務省は独立した投資会社を指定するという。【了】

筆者  増谷栄一

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September 07, 2008

増谷栄一の経済コラム:米8月雇用者数、大幅減少=市場は利下げ織り込み始める

−民主党、約12兆円規模の追加景気対策提案へ−

【2008年9月7日(日)】 − 先週末(5日)、米労働省が発表した8月の雇用統計は、新規雇用者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)が前月比84000人の純減となり、市場予想の7万5000人減を大幅に上回った。雇用者数は8カ月連続で減少しており、3月の8万8000人減以来の大幅減少だ。

 また、失業率も前月の5.7%から一気に6.1%に上昇、市場予想の5.8%を大幅に上回り、2003年9月以来5年ぶりの高水準となった。2001年のリセッション(景気失速)時に記録された6.3%に迫る勢いで、エコノミストの中には7%まで悪化すると見る向きもある。

 こうした雇用統計の急激な悪化を受けて、市場では、米経済はリセッション(景気失速)寸前の厳しい状況にあるという見方が広がった。

●FRB、16日のFOMC会合で金利据え置き=将来的には利下げの可能性

 FRB(米連邦準備制度理事会)は16日にFOMC(米連邦公開市場委員会)会合を開く予定だが、金融政策への影響についても、景気懸念の方がインフレ懸念よりも重くなったことで、市場は、これまでの年内金利据え置きの観測から一歩踏み込んで、利下げ再開の可能性を織り込み始めた。

 また、JPモルガンのエコノミストは、従来、来年3月から利上げ開始と予想していたが、雇用統計発表後は、2009年11月までFRBは金利を据え置くという予想に変更している。

●民主党、第2弾の景気刺激策の成立目指す

 今回の雇用統計の結果を受けて、民主党のバラック・オバマ大統領候補(イリノイ州選出の上院議員)は選挙公約に掲げている1150億ドル(約12兆3000億円)の景気刺激策の実現に弾みをつけたい考えだ。

 主な内訳は、原油高騰で打撃を受けている低・中所得者層向けに1世帯当たり1000ドル(約10万7000円)の税還付(総額650億ドル=約7兆円)と、企業向け投資減税や州政府への補助金(失業対策事業の実施)の500億ドル(約5兆4000億円)で、民主党は9日から再開される議会で、オバマ候補の提案に沿った方向で第2弾の景気刺激策法案を提出する計画だ。

 また、ホワイトハウスのダナ・ペリノ報道官も5日、雇用統計の発表後の記者会見で、追加の景気刺激策の必要性について「すぐに第2弾の景気刺激策を検討する必要はないと考えている」と述べ、否定的な見解を示している。

●6月と7月の新規就業者数の減少幅、計5万8000人も拡大

 今回の雇用統計では、7月の新規雇用者数が、前回発表時の前月比5万1000人減から6万人減に、6月も同5万1000人減から実に同10万人減に、いずれも減少幅が拡大し、2カ月合計で実に5万8000人も下方改定された。

 8月の新規雇用者数が減少したのは、製造業と建設業が合計で前月比6万9000人減となったためだ。製造業は同6万1000人減と、2003年7月以来5年ぶりの大幅減少となり、26カ月連続の減少となった。他方、建設業も長引く住宅市場の調整で、8000人減と、14カ月連続の減少となった。

●自動車業界で雇用減少目立つ

 製造業は、特に、自動車・自動車部品業が前月比3万9000人減と大幅減となったことが大きく響いた。自動車・自動車部品業では、この1年間で12万8000人が職場を失っている。

 建設業は、1-6月は月平均4万5000人減だったが、7月と8月は月平均1万4000人減と、減少幅は縮小する傾向がある。それでも、2006年2月のピーク時からは38万8000人減と大幅に落ち込んでいる。

 また、サービス産業は前月比2万7000人減と、3カ月連続で減少したことも大きい。このうち、小売業は、個人消費の悪化を反映して、同2万人減と、9カ月連続の減少となった。

 また、小売業のうち、自動車・自動車部品販売では同1万4000人減となった。自動車・部品販売業の雇用は昨年4月をピークに減少、これまでに6万人が職を失っている。

●雇用情勢悪化で賃金上昇に至らず=消費抑制が心配

 インフレの先行きを示す1時間当たり賃金は、前月比0.4%(7セント)上昇の18.14ドルとなった。しかし、前年比は3.6%上昇で、7月のCPI伸び率(前年比5.6%上昇)を大幅に下回っており、依然、インフレ調整後の実質賃金はマイナスの伸びになっている。

 エコノミストは、失業率が上昇しているため、賃上げ圧力が低下しており、短期的には賃金上昇ペースが減速する可能性があり、結果的に、インフレ上昇圧力をいくぶん緩和させる半面、消費を抑制すると見ている。【了】

筆者  増谷栄一

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August 31, 2008

増谷栄一の経済コラム:米4-6月期GDP改定値、予想上回る+3.3%=輸出の大幅上方改定で

−第3四半期以降のGDP伸び率は再び鈍化へ−

【2008年8月31日(日)】 − 先週の28日、米商務省が発表した第2四半期(4-6月)実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)の改定値は+3.3%と、7月末に発表された速報値の+1.9%から大幅に上方改定された。これは昨年第3四半期の+4.8%以来の大幅な伸びだ。

 市場の事前予想のコンセンサスでは+2.7%と、3%程度に上方改定されると見られていたが、それを上回っている。

 もともと、市場では、12日にGDPの算出に使われるインフレ調整後の6月の貿易統計が発表された際、貿易赤字が5月の435億ドルから10.3%減の391億ドルに縮小、6年半ぶりの低水準となり、第2四半期ベースの赤字幅も前四半期の495億ドルから431億ドルへと大幅に縮小したことから、GDPは1%ポイント以上押し上げられると見られていた。一部では、+3.5%に上方改定したところもあった。

●第3四半期GDPは+1.5%〜2%に再び鈍化か

 しかし、第3四半期(7-9月)成長率については、大方のエコノミストは+1.5%〜2%に再び伸びが鈍化、第4四半期(10-12月)も企業の設備投資の低迷や、個人消費も減税効果が薄れて鈍化、輸出も欧州や日本の景気後退で減速し、再び、マイナス成長になる可能性があると見ている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)も同様な見方だ。26日に公表された、8月5日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録の中でも、景気見通しについては、議事録は、「多くの委員が、経済活動は今後数四半期、低迷する可能性がある」としている。

 議事録は、「雇用市場は引き続き悪化が続き、金融市場も依然弱く、消費者や企業のマインドも冷えている。製造業の活動も縮小傾向にあり、2009年上期まで潜在成率(年率+2.5〜+2.75%)を下回る」としている。

 その上で、「景気回復は、2009年下期には住宅市場が底打ちし、金融市場のタイト感
も薄れ、潜在成長率に戻る」としているのだ。

●純輸出のGDP寄与度、+3.1%ポイントに上方改定=速報値は+2.4%

 第2四半期GDP伸び率に寄与したのは、ドル安に助けられて、依然、ブームが続いている輸出で、純輸出(輸出と輸入の差)は、住宅投資の減少というGDPマイナス要因を相殺して、GDPを大きく押し上げている。

 今回の改定値では、輸出の伸びは速報値の前期比年率+9.2%から+13.2%に大幅に上方改定された。他方、輸入はガソリン価格の高騰などで消費が抑制された影響で、速報値は−6.6%と大幅減少だったが、改定値では−7.6%となった。

 その結果、純輸出のGDP寄与度は+3.1%ポイントとなり、速報値の+2.4%ポイントを上回り、1980年以来28年ぶりの大幅な寄与度となった。

●個人消費、上方改定=GDP寄与度1.2%ポイントに上昇

 また、個人消費も景気刺激策の一環として、4月末から7月にかけて実施された所得税の税還付により、緩やかながら拡大。企業の設備投資も前四半期同様、安定した伸びとなったことがGDPの伸びに寄与した。

 GDPの約70%を占める個人消費支出の改定値は、速報値の前期比年率+1.5%から+1.7%に上方改定された。前四半期の+0.9%を上回り、個人消費のGDP寄与度も速報値の+1.1%ポイントから+1.2%ポイントに引き上げられた。前四半期の+0.6%ポイントからは改善している。

 国内最終消費支出も速報値の+3.9%から+4.8%に上方改定され、前四半期の+0.9%から大幅に改善している。

●企業利益、4半期連続の減少=雇用市場の先行きに不安

 第2四半期の企業利益(税引き前利益)は、原油などコモディティ価格の高騰の影響で、前期比−2.4%減の1兆5600億ドルとなり、4半期連続の減少となった。また、前年同期比も−7%と、2001年第3四半期以来7年ぶりの大幅減少となっており、今後の雇用市場の先行きに暗い影を投げかけている。

 また、インフレ動向を示すPCE(個人消費支出)物価指数は、今回の改定値では+4.2%と速報値とは変わっておらず、前四半期の+3.6%を上回っている。コア指数も+2.1%で変わらず、前四半期の+2.3%を下回っている。【了】

筆者  増谷栄一

(参照:http://blog.livedoor.jp/emasutani/
(経済コラム:http://blog.livedoor.jp/eiichimasutani/


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August 24, 2008

増谷栄一の経済コラム:米格付け大手ムーディーズ、ファニーメイとフレディマックを格下げ

−政府による2社救済、不可避との判断強める−

【2008年8月24日(日)】 − 先週末(22日)、米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスが政府系住宅金融会社のファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)を格下げした。

 ムーディーズによると、2社の優先株の格付けをいずれも「A1」から投資不適格とされるジャンク級まであと1段階の「Baa3」へ引き下げたほか、銀行財務格付けも「B−」から「D+」に引き下げ、政府や株主(出資者)など第3者からの相当な金融支援の可能性が高まったとの判断を示した。

 優先株の格下げ理由について、ムーディーズは、2社が保有する住宅ローン債権が予想以上に劣化しているため、所定の自己資本額の維持が困難となり、その結果、配当金の支払いが停止するリスクが高まったことを挙げている。

 また、ムーディーズは、政府による2社への公的資金注入の結果、優先株を保有している株主への配当金支払いが停止、あるいは、支払い優先順位が劣後化した場合には、さらに格下げするとしている。

 銀行財務格付けの引き下げ理由については、2社に対する政府の直接介入による救済によって、株主が保有している普通株の価値が失われるという懸念が市場に広がっているため、2社は普通株や優先株の発行を通じて、必要な資金調達が困難になっていることを挙げている。

●2社の株価、自己資本規制の緩和・撤廃の観測で下げ渋る

 先週初めから1日だけで20%を超える急落が続いていたファニーメイとフレディマックの株価は21日からようやく落ち着きを取り戻したばかりだったが、前場の取引中に発表されたムーディーズの格下げのニュースで、2社の株価は再び急落。下落幅は一時、ファニーメイで10.3%安、フレディマックも20.9%安に達した。

 しかし、後場は、アナリストが2社の自己資本に対する規制が緩和、あるいは、撤廃されるとの見通しを示したことに市場が反応、2社の株価は急速に下げ渋り、結局、先週末のファニーメイは前日比3.1%高の5ドル、フレディマックは11%安の2.81ドルで取引を終え、値を戻した。

 もともと、この規制は、2社が2003年から2004年にかけて、不正会計処理問題が明るみに出た際、当時の監督機関OFHEO(連邦住宅公社監督局)から自己資本の充実策が求められ、自己資本のほかに、自己資本の30%を資本余剰金として積み立てるよう指導されていたものだ。


●株価急落の発端は米経済誌バロンズの報道

 もともと、2社の株価が急落する発端となったのは米経済誌バロンズが18日付で、政府は今後数カ月以内に2社の優先株を取得、事実上の国有化による金融支援に乗り出すという報道だった。

 しかし、同誌は、その結果、2社の普通株が紙くず同然となり、優先株や2社で計190億ドル(約2兆1000億円)の劣後債を保有している投資家もかなりの損失を受けると報じたのが株式の売りにつながっている。

 市場では、2社に対する政府の直接介入の時期については、今週末ではないとしても、数週間以内に起こるかどうかについては株価の動き次第と見ている。

 しかし、ヘンリー・ポールソン財務長官は、2社の普通株の株主保護には関心がなく、あくまでも2社の住宅ローン市場の円滑化の機能維持に主眼があるため、今後、2社の短期債発行による資金調達が困難にならない限り、政府は救済に乗り出さないと見られている。

 具体的には、2社は9月末までに2250億ドル(約24兆5000億円)のロールオーバー資金を調達するための借換債発行を予定しているが、これを無事できるかどうかにかかっている。もし失敗した場合には、財務省は直ちに2社救済のための政府介入手続きに入ると見られている。【了】

筆者  増谷栄一

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