January 07, 2007

増谷栄一の経済コラム:米FRB、31日のFOMCで5度目の金利据え置きへ=昨年12月の雇用統計受けて

−米市場で早期利下げ観測完全に後退=労働市場の強さ、一段と明瞭に−

【ライブドア・ニュース 7日 東京】 − 米労働省は先週末(5日)、昨年12月の雇用統計を発表したが、強い内容となった11月をさらに上回り、市場では今年最初のサプライズとなった。12月の新規就業者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)は前月比16万7000人の純増で、これは市場予想のコンセンサスである同+11万5000人(レンジでは+10万〜+12万5000人)を大幅に上回るものとなったからだ。この結果を受けて、5日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価指数が一時、前日比100ドル以上も急落し、結局、ダウ平均は前日比82.68ドル安の1万2398.01ドルで引けている。

  債券市場でもこの激震が広がった。強い雇用の伸びと労働者の賃金が急上昇したことから、インフレ懸念が再燃し、この統計結果はFRB(連邦準備制度理事会)にとって、利上げ再開の圧力になるとして、長期金利の指標である10年国債の利回り(債券価格と反対方向に動く)が、発表前日の4.617%から一時、4.699%にまで急伸、あと4.65%で取引を終えた。また、2年国債の利回りも前日の4.71%から一時、4.816%にまで上昇、あと4.76%で終わっている。さらに、外為市場でも、FRBは早期に利下げしなければならないほどの労働市場の弱さの兆候がまったく見られないとして、ドルは対ユーロで急伸。前日の1ユーロ=1.3079ドルから1.3002ドルと6週間ぶりの高値に上昇している。この日1日だけで、米国の資本市場は年明け早々、大波乱の1日となったのだ。

米経済のハードランディング懸念が完全払拭

  また、12月分までの統計が出そろったことで、昨年1年間の新規雇用者数が計184万人となり、月平均15万3000人のペースで拡大したことが分かった。これは、昨年10-12月期だけでも月平均13万6000人の増加ペースで、人口の増加を吸収してもなお、失業率を安定させるために必要とされる新規雇用者の増加数、月平均10万人を軽く超えた。いかに労働市場がタイトであるかがはっきりと示されたのだ。多くのエコノミストや市場の投資家は、この労働市場の強さは、米経済の強さを示すものと見ており、これまで住宅市場と自動車生産の低迷に代表される製造業の2大セクターのスランプが、最終的には他のセクターに波及し、米経済をハードランディングさせると危惧されていたが、今回の統計で、そんな不安も完全に払拭されたと見ている。

  エコノミストの中には、今回の予想以上の雇用者数の伸びは、米経済がこれまで9カ月の減速から反発に転じ始めた兆候と見る向きもあるが、FRBのボストン地区連銀のキャシー・ミネハン総裁は緩やかな成長が続くと見る。同総裁は、5日のコネチカット州での講演で、米経済はすでに、昨年暮れにソフトランディングを完了しており、まもなく発表される2006年第4四半期(10-12月)GDPの伸び率は、第3四半期の2.0%と同じ2%程度になり、2007年も緩やかな成長率になると緩やかな成長見通しを明らかにしている。多くのエコノミストは、2007年は2.5%成長とトレンド(潜在成長率)以下の成長を予想している。

失業率、労働市場への参入者数の増加でも安定的

  失業率は11月と変わらずの4.5%だったが、市場予想の4.5%とも一致、依然として、5年半ぶりの低水準となっている。また、2006年通年でも2005年の5.1%から6年ぶりの低水準となる4.6%に低下、年初の4.9%から大幅に低下していることが分かった。特に、エコノミストが驚いているのは、労働市場への参入者数の増加にもかかわらず、失業率が安定している点だ。これは、失業者数の増加よりも速いペースで、企業が人材を採用しているからで、それだけ、米経済が住宅関連と製造業の不振を克服して、力強く成長していることを示している。ちなみに、労働力率(就業者と求職活動を行っている成人の比率)は、11月の66.3%から66.4%に上昇、また、就業率(就業者の比率)も63.2%から63.4%へと5年3カ月ぶりの高水準に上昇している。

  ただ、今後の失業率の推移については、多くのエコノミストは、経済がトレンド以下のペースで緩やかに成長するので、今年の失業率は再び4.9%にまで上昇すると予想している。ミネハン総裁も雇用のタイトな状況が今年も続くとして、5%を下回る水準を予想している。

住宅以外のセクターで雇用拡大が顕著に

  このほか、今回の統計では、11月の新規就業者数は前回発表時の+13万2000人から+15万4000人に上方改定され、また、10月の新規就業者数も前回発表時の+7万9000人から+8万6000人に上方改定され、10-11月の2カ月の合計で2万9000人の上方改定となった。また、セクター別では、11月と同様、住宅市場と新車販売の低迷を反映して、建設業は前月比−3000人、製造業も同−1万2000人となり、小売業も同−9000人となったものの、教育・健康関連サービス業は同+4万3000人、金融サービス業も同+9000人、レジャー・接待業は同+3万1000人とサービスセクター全体で実に同+17万8000人となり、住宅以外の企業が雇用を拡大していることを示した。実際、米人材派遣業大手チャレンジャーの調べでも、12月の米企業のレイオフ者数は前月比−29%で前年比でも−49%と大幅に改善している。

賃金、8カ月ぶりの大幅な伸び=インフレ懸念の一方、個人消費を下支え

  また、今回の統計では賃金が予想以上に伸び、インフレ懸念をさらに高める結果となった。1時間あたり賃金は、8カ月ぶりの大幅な伸びとなる前月比+0.5%の17.04ドルとなり、市場予想の+0.3%を大幅に上回った。また、前年比では11月の+4.1%を上回る4.2%となり、2000年11月の+4.3%以来、6年ぶりの大幅な伸びを示した。商務省が昨年12月22日に発表した11月の個人消費支出・所得統計では、9-11月の過去3カ月のコアPCE(個人消費支出)物価指数(価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたもの)の平均が前年比+1.8%だったが、それを2倍以上上回るペースで賃金が上昇していることになる。それだけ、実質賃金の伸びも大きく、エコノミストは、今年の個人消費は昨年7-9月期の年率+2.8%と同率で推移し、住宅市場の低迷による個人消費へのマイナスの影響を相殺すると見ている。

FRBの利下げ確率が急低下

  今回の統計で、CBT(シカゴ商品取引所)のFF金利先物で見た利下げ確率は、来年3月に0.25%ポイント利下げする確率は、同統計発表前の14%から発表後には6%に急低下。また、来年6月までに同幅で利下げする確率も86%から52%に低下した。これは、市場では今年中に1%ポイントの利下げがあると見ているものの、その時期が3月までの早期利下げから5-6月に先延ばしになったことを示している。ちなみに1月の確率は0%で、アナリストは、1月30-31日に開かれるFOMC(公開市場委員会)で、FRBは政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25%のまま、5度目となる据え置きを決定すると見ているのだ。

◎12月失業率は4.5%=11月は4.5%
◎12月サービス産業就業者、前月比+17万8000人
 うち、小売業就業者は同−9000人
 専門・ビジネスサービス業は同+5万人
 教育・健康関連サービス業は同+4万3000人
 レジャー・接待業は同+3万1000人
 政府部門就業者数は同+1万7000人
◎12月建設業就業者数、同−3000人
 うち、住宅建築関連は同−5800人
    非住宅建築関連は同+4600人
◎12月製造業就業者数、同−1万2000人
 うち、自動車産業就業者数、同−4600人
◎12月平均時給、17.04ドル=11月は16.96ドル
◎12月週平均賃金、577.66ドル=11月は574.94ドル
◎12月週平均労働時間、33.9時間=11月は33.9時間
 うち、製造業の週平均労働時間は41.0時間=11月は41.0時間
◎12月週平均労働時間指数、105.9=11月は105.7 (2002年=100)
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◎11月就業者数、前月比+15万4000人に上方改定=前回発表時は+13万2000人
◎10月就業者数、前月比+8万6000人に上方改定=前回発表時は+7万9000人 【了】

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ライブドア・ニュース 増谷栄一記者
(参照:http://blog.livedoor.jp/emasutani/
(経済コラム:http://blog.livedoor.jp/eiichimasutani/

emasutani at 23:28│Comments(0)TrackBack(0)増谷栄一の経済コラム 

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