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『復讐は野蛮な正義である』
イギリスが生んだ偉大な哲学者であり宗教学者であるフランシス・ベーコンが本の中でこう語ったのは17世紀。
ほぼ同時期に発表されたシェイクスピアの『タイタス・アンドロニカス』はフランシス・ベーコンの言葉を地で行く作品だと私は思ってます。
この格言をブッシュが知ってたかどうかは知りませんが21世紀に入って起こった9.11後の世界はまさに『野蛮な正義』のくり返し。
本来、コレ10月1日に京橋のIMPホールで行なわれた試写会で見る予定だったんだけど仕事の都合で行けなくて・・・(涙)
そういう意味でも公開を待ちに待ってた作品です。
ところで『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以来どうも手持ちカメラで撮影してる作品多くないですか?
緊張感とかリアルに伝わってきてでいいんですが、見る人によってはカメラ酔いしません?
今回、一緒に観に行った子は『ユナイテッド93』観てカメラ酔いでダウンしたんですが、今回もやっぱりダメでした。
私も辛うじて大丈夫でしたが、あまりこの手の取り方は好きじゃないです。


で、感想です。
「オマエら旧約聖書読みなおせ!!」

皆様はハムラビ法典って覚えてます?
『目には目を。歯には歯を』で有名なやつです。
あのハムラビ法典より後に出来た旧約聖書(モーゼが出てくるヤツ)にも似たようなお言葉があるんです。
『目には目を、歯には歯を、手には手を、足には足を、焼き傷には焼き傷を、傷には傷を、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない』
ってね。
2つとも意味は同じで『同害復讐法』について書いてあってザックリ言うと
「被害を被ったらその被害と同等の損失を与えてもいいけど、それ以上の損失を与えちゃダメよ」
ってことで
「やられたらやりかえす!!」
って言う解釈は間違いなんです。

でね、旧約聖書は面白いことにキリスト教、イスラム教にとってベース的存在なんですよ。
相容れない宗教同士なハズなのにベースは一緒。
ベースが一緒なんで基本的には両方とも『拡大復讐』は禁止されてるハズなんですよね。
ところが現実は違ってて、報復に次ぐ報復で復讐の連鎖は断ち切れる様子はありません。
お互い『正義』の名の下に一般人を巻き込んで。


さて、『ブラッド・ダイヤモンド』のような社会派アクション系、『ミュンヘン』『ホテル・ルワンダ』『ルワンダの涙』のような民族問題を扱った作品等々一増えてきたような気がします。
非常にいいことだとは思うのですが、一方で予備知識がないと始まってすぐにリタイアせざるを得ない状況になることもあります。
ところが、この作品は最初である程度の知識を補ってくれる為
「サウジアラビア?石油が取れる国だよね?」
「サウジアラビアの王様って超お金持ちなんでしょ?」
ってくらいの知識でも十分ついていけます。(勿論予備知識が多いほどより楽しめます)

劇中にも解説があったようにサウジアラビアはアラビア中東諸国ではかなり特殊な国。
・イスラム教の聖地でムスリムが一生のうち一度は行かなくてはならない土地メッカを有する。
・イスラム教の開祖である偉大な預言者モハメッドの生誕地である。
・ワッハーブ派が多くいる。
ってことでイスラム教国の中では中心的存在の国なんだけど、一番アメリカやヨーロッパなどのキリスト教国と仲よしという微妙な立場。
特にポイントとなるのが「ワッハーブ派である」ってところ。

イスラム教にはスンニ派とシーア派って大きい2つの宗派があります。
イメージ的にはキリスト教におけるプロテスタントとカトリックみたいなカンジ。
そのスンニ派にも色んな宗派があってワッハーブ派もその中の一つ。
で、色んな宗派が出来るとチョットずつ最初の教えとズレが出てきたりするでしょ。
「それはイカン!!やはり初期のイスラム教に返らねば!!」
っと言ってイスラム教の回顧を掲げて初期イスラム教の厳しい慣習や教えに法っていくのがワッシーブ派な訳ですよ。
つまり「イスラム原理主義」(イスラム過激派という意味ではない)のハシリ的宗派。
そういう意味でもサウジと言う国は他のイスラム教国とはチョット違ってイスラム教に取ってより神聖な国(←この言い方が適切かどうかはわかりませんが)ってカンジです。
余談ですが、ジェニファー・ガーナー演じる女性捜査官がTシャツとパンツだけでウロウロしてるシーンがやたらとありましたが、あんなこと実際にすればぶっとばされます。
ってゆーか捜査に出れずに体育館に閉じ込められます。
そこは映画なんでいいんですが(笑)

話を戻して、イスラム教徒にとっては神聖な国的存在のサウジがよりにもよってキリスト教を教えとするヨーロッパ・アメリカと仲良しとは十字軍以来の屈辱!!
と思った人達が多くいたのも事実です。
(ちなみにブッシュはイラク戦争当初「アメリカ軍は十字軍だ!!」と勢いよく発言しイスラム教国からおもいっきり反感を食らった。)
そう思う人の大半はアフガニスタンから帰国した(サウジは一時期アフガニスタンを宗教上の理由でロシアから守るという名目で派兵してた)人達でその人達を率いていたのがオサマ・ビンラディンの一族。
イスラム過激派が多く生まれやすい土地であると言う事、それを上手く利用するのに長けた人物がいる事を知ってれば9.11の実行班の多くがサウジ出身者であったという事や最後のシーンのあのセリフが出てくる理由がより理解し易いと思います。
それでもあの最後のセリフはキツいですけどね・・・。

『復讐は野蛮な正義である』
と言ったフランシス・ベーコンは復讐についてこうも本の中で言ってます。
『復讐するとき人間はその仇敵と同列である。しかし赦すとき彼は仇敵よりも上にある。』