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コレ本当は公開初日の初回で観に行こうと思ってたんです。
ところが入院しちゃったんで観に行けなかったんですよ。
「まぁ、公開したばっかりだし会社に復帰してからでも観に行くのはいいかぁ。」
なんてノンビリ構えてたら18日で上映終了とのこと。
元々、万人受けするような作品ではないけど、こんだけ人が入ってて大阪でもデカイTOHOシネマズ梅田ですら公開が20日間しかないってどうよ?!
って思いながらも慌てて上映終了日に観に行ってきました。

『ミリオンダラー・ベイビー』、『父親たちの星条旗』で脚本を手がけ『硫黄島からの手紙』では制作総指揮を取り(脚本はアイリス・ヤマシタ)、『クラッシュ』では監督初挑戦ながらアカデミー賞を受賞したポール・ハギスの監督2作目という事で非常に期待してました。
アメリカでの興行成績が振るわなかったと言う情報からも
「これは相当、アメリカ人が触れては欲しくない部分を触れてるな」
と思い、期待度は更にあがりました。
しかも、トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロンが出るときたらもう見るしかないでしょ!!
と意気込んで観に行ったんですけど、撃沈_| ̄|○
感想も何も「わからない」んです(涙)


実は私、偶然『Death and Dishonor』を読んでました。
『Death and Dishonor』を読んだのはアブグレイブでの捕虜虐待やハディーサでの虐殺、マハムディヤでの集団レイプ事件が報道された後だったし、『es』で描かれたように心理的にもそういう状況になってもおかしくないと思ってたんで被害者がイラクで残虐行為をしてたって言うのも本当にあっただろうなと思ったんです。
それにベトナム戦争や湾岸戦争で多くの帰還兵がPTSDで悩まされ、罪を犯した人も少なからずいるってことも知ってたんで加害者の犯行動機も全く理解できないわけじゃなかったんです。
英語で書かれてる記事なので完全に理解してるとは言えませんが、犯人・殺害動機・一連の流れを知っていたので、この作品の犯人・殺害動機・一連の流れを最初っから知り尚且つその事件の背景が理解できないわけじゃない。
ミステリー部分に気を取られないぶん、他のことに集中できたはずなのに・・・。
それでも「わからない」んです。


息子二人が軍人になったことを誇りに思い、軍隊を信じ国を愛してるハンク(トミーー・リー・ジョーンズ)。
退役しても就寝・起床時にはベットメイキングをし、靴を磨き上げた後はベットの側に置き、ズボーンのしわを伸ばし、ストリッパーの女性に対しても「マダム」の呼称を使い、女性の前では例え乾いてなくてもシャツを着るのは規律正しい軍隊を信じてるからでしょう。
だから、息子のマイクを探しに基地に行ってマイクの部屋を案内されたときマイクの仲間がアーミーブーツの手入れをしてたのをみて
「兵士が命を賭けた戦場で一緒に戦った戦友に対して卑劣なことをする筈がない。」
って自分の考えに自信があったと思うんです。
ところが捜査が進むうちに麻薬に手を出したり、いかがわしいお店のおねーちゃんに卑猥な言葉をかけて店から追い出されたりする息子の姿がわかっていく。更には
「兵士が命を賭けた戦場で一緒に戦った戦友に対して卑劣なことをする筈がない。」
と考えてたハンクの信念や価値観を砕くようにマイクを殺した犯人がボスニア・イラクの派兵でマイクと行動をともにしていた人間で、実は自慢の息子がイラクで虐待をしていたという事実を知っちゃう。
それでもハンクは犯人を許し、マイクがした事を受け入れるんです。
自分が今まで疑う事無く信じてきた事・価値観を崩されるのって、それまで自分がしてきた事を否定するって事だから凄い勇気がいることじゃないですか。
エミリー(シャーリーズ・セロン)の息子デヴィッドに
「小さなダビデが巨人ゴリアテに打ち勝ったのは自分の内なる恐怖を克服したから」
と言ったようにハンク自身勇気を持って信念や価値観が崩れたことを認めるんです。
だから犯人を許せたりできたのかなぁって思わなくもない。


で問題はポール・ハギスが作品中に散りばめた隠喩をどこまで私が理解できてるかなんです。
この作品の原題は『In the Valley of Elah』で、旧約聖書に出てくるダビデとゴリアテが戦った場所です。
このダビデとゴリアテの話がこの作品のキーポイントになるんですが、それをどこまで理解したらいいのかがわからないんです。

ダビデとゴリアテの話ってキリスト教圏で話される時は大概
「信仰を用いて、主を信頼してたからダビデはゴリアテに勝てた。だから皆も信仰を用いて、主を信頼しましょう。」
みたいなカンジの教えを言われるんです。
ところが、ハンクは全く違う解釈をしてて、その解釈は凄く軍人的な解釈なんですよね。
それを象徴するのがデヴィッドに読んでとせがまれたものの「内容が理解出来ない」と言って本を読むのを放棄したシーン。
読むのを放棄した本って『ナルニア国物語』なんですよ。
『ナルニア国物語』と言えば聖書の副読本的存在。
それをキリスト教圏で生活してるハンクが内容が理解できないわけがないじゃないですか。
内容が理解できないのは聖書の教えより軍隊での教えが染み付いてるからでしょ。
・・・って考えるのは深読みしすぎ?

またこの話は
「ダビデは大きなゴリアテやゴリアテが身に着けていた武器や防具などの目に見えるものに囚われずに主や主への信仰と言った目に見えないものを信じたから。だから皆さんも目に見えるものだけに囚われずに目に見えないものに目を向けましょう。」
って教えられることもあるようです。
ハンクはマイクの今まで目に見える部分を信じてきました。
ところが、上に書いたように徐々にハンクの知らない(目に見えない)マイクを知ることになります。
聖書の教えから言うと自慢の息子としての一面だけではなく、虐待をしていた息子の一面を受け入れよって事になりますが、親ならそんなことを直に受け入れられるわけがありません。
聖書の教えを守るということは息子の暗部を認めるということ。
逆に言えば、聖書の教えを守らなければ息子の暗部を認めなくても済む。
だったら教えを捨てれば・・・という思いがあって町を出る際エミリーに聖書を渡し教えを捨てたんじゃなかろうかって考えるのは深読みしすぎ?

「ダビデは子供なのになぜ王様はゴリアテと戦わせたの?」
と最後エミリーに聞くデイヴィッド。
この一言が監督が最も言いたいことだと思うんです。
現にインタヴューでタイトルに込めた意味について聞かれて監督は
「いったい巨人と闘わせる為にナゼ罪もないこんなにも若者が送りこまれなければならないのか、とね。」
って答えてるんです。

この王様って初代イスラエル王のサウルのことなんです。
サウルは王族に生まれたとかではなく、サムエルっていう預言者(と言うよりかは司祭的存在)が神様からのお告げを聞いて選ばれた王様なんです。
サウルが王様になる前のイスラエルはペリシテと戦争してました。
この頃のイスラエルは幾つかの部族があって1つの国として存在してたわけではありません。
その纏まりのないイスラエルを守るには全民族的な結束が必要でその為に象徴的存在が居ると言う事が部族の長老達の出した結論でした。
そこで長老達はサムエルのところへ行って
「他の国々のように、このイスラエルにも国を治める王を立てて下さい。」
とお願いします。このときサムエルは神様から
「今は彼らの声に従いなさい。ただし、彼らが王を求めるのは、私(主)の統治を拒むことであり、王を立てるなら彼らにとって困難になることを警告しなさい」
と言われてたので長老達に
「あなた達が望む王を立てるとという事はこういう事です。あなた達の息子を徴兵し騎兵として、自分(王)の戦車の前を走らせたり、自分(王)の為の耕作や収穫に従事させたり、あるいは武器や戦車を造らせるでしょう。また、あなた達の娘を香料作り、料理女、パン焼き女にするでしょう。それだけではありません。あなた達のぶどう畑・オリーブ畑といった畑の作物を奪って、できた穀物などの十分の一を家臣に与えるでしょう。あなた達の奴隷(男女共に)やロバや家畜を奪って自分(王)の為に使役します。こうしてあなた達は、ついに王の奴隷となり、その日あなた達は、自分の選んだ王ゆえに泣き叫ぶでしょう。しかし、神はあなた達に何も答えてはくださらないですよ。」
と警告します。
が、長老達はそれに真摯に受け止めずサムエルは王になるべく人を探し、見つけたのがサウルです。(詳しくは聖書を読んでください)

ダビデがイラクに派兵されたアメリカの若者なら王様はイラク派兵時に合衆国大統領であったブッシュです。
アメリカ国民(長老達)が望んだブッシュ(王)はアメリカ国民の若者(息子)を徴兵し、戦車の前を走らせました。また、アフガニスタン・イラク戦争後は戦争特需や株価の上昇でアメリカ経済は上昇を見せました。アメリカ経済の上昇(特に軍需産業・石油関連企業)で利益を得たのはブッシュ(王)やラムズフェルドやチェイニー、ライスといったブッシュの部下(家臣)です。
サムエルが警告したように自分の選んだ王ゆえに泣き叫ぶことになったって意味でこのダビデとゴリアテの話を使ったってのは深読みしすぎ?


いろんなことを考えてるうちに自分が深読みしすぎてわからなくなってるのか、宗教的背景とかを理解できてないからわからないのかわからなくなってしまいました。
観客に考えさせるような作品は好きですが、これはマジで難しすぎで自分の中で消化できませんでした。
ちなみに『Playboy』に載った記事そのものは現在でも「Playboy magazine」サイト内の「Death and Dishonor」で読むことができます。(興味があるかたはコチラからどうぞ)
あと、投石器を『パチンコ』って訳してたのが非常に気になりました。
投石器って今時の子は知らないとか?!