2006年09月24日

SCENE 14:変換すること

Hopes and Fears




今日、この街ではじめて星を見たよ。




「ほらね、やっぱり煙草吸ってる」

そうだね、やっぱり煙草吸ってる。このジッポも10年使ってしまってる。煙草をきちんと吸い出したのは律儀な事に20歳を越えてからだったけど、ライターとナイフは早い内から慣れてた方がいいという信念の元10年経った。お陰で今じゃ両方とも人並み以上に使えるんだけど、僕は見事なまでにインドア青年になってしまったから、大地震でも来ない限りまあ役には立たない。で、自分のスキル生かすために今住んでるこの街の壊滅を祈ってる程暇でもない。この街嫌いじゃないし。
そういえば随分と素振りもしていない。こんなに長く竹刀や木刀に触れずにいるのは生まれて初めてだ。自分の腕から力がするする抜けていく事が、面白いように実感できる。風呂上りの僕の背中を見た同居人が、「痩せたね」と言った。違うよ、背筋がごっそり無くなっただけだ。
以前の僕なら?以前の僕ならこんな現状を絶対に許せずに、夜な夜な走り込んだり、肉刺が潰れて肉刺ができるまで素振りを続けたりしたんだろうけど、今の僕はそんな事をしない。焦燥はないのか?怠惰しているのか?いずれも違う。
1回折れた刀は芯から打ち直さなければならないし、打ち直しても2度と同じ刀は作れない。それだけだと思う。
ああ、そうだ。「何でまだ煙草を吸ってるのか?」という問いだ。君が煙草を吸っている僕が格好良いと言ってくれたからだ。本当にそれだけなんだ。それと自惚れなんだけど、君が格好良いと言ってくれた僕の仕草は、きっと世界中の誰が見ても格好良いと言ってくれるに違いないからだ。
そんな言葉を沢山貰ったから、だから僕は、死ぬまでギリギリのところで僕でいられるんだと思う。


話ががらっと変わるんだが、金曜の夜に地元の友達の電話にうっかり出て、うっかり恋愛相談に乗ったりしたもんだから、どっぷり自己嫌悪に陥った。
相談される人間に必要なものは、まず、相手の話をしっかり聞く忍耐力。次に自分の経験談を交えながら相手の事を思いやって話す、経験に裏打ちされた表現力と包容力。おまけに、相手が何を考えているか思いやる洞察力と、親身になって会話をしながらも、決して感情に左右されない客観的な判断力。最終的に相手を納得させる説得力と、相手を決して追い詰めない、むしろ逃げ道さえ作ってあげられるだけのラストを組み立てる分析力だ。
そしてその会話の中で簡単なQ&Aを積み重ねる情報収集力、相手からできるだけ多くの「YES」を導き出す集中力も必要。

金曜の夜もそう。
「私、○○と別れようと思うんだけど衛門はどう思う?」
「え!?何で!!?」ここで大袈裟に驚いてみせる事で『僕は君の話す内容に非常に興味がある』事をアピール。漫画読んでるけど。
で、上記作業を繰り返す事によって、最終的にはこう。

「私、自分の言い分ばっかりで○○の言う事全然聞いてなかった気がする。もう一回ちゃんと話してみるね」
「うん、それがいいよ。あ、○○にもよろしくね。今度また皆で飲もうよ」
「そうだね。今日はありがと衛門」
「じゃあねー」ピッ。



電話で喋ってる自分の顔が部屋の窓ガラスに映ってたから、暫く見てた。呆れる位無表情。声色は表情豊かに八面六臂。お前は何様のつもりだよ。
違うよ俺はただ向こうが安心するための装置に過ぎないさ向こうもあと何人かに相談して同じような回答を集めたら心の平穏を取り戻すに違いない俺は目の粗いフィルターみたいなもんで幾らでも替えが効く。
それが傲慢だ向こうが生きるか死ぬかの問いをお前に投げてたらどうするつもりだお前の安い言葉で打ち返せてると思ってんのか。
「そんな」

そして僕は貴重な休みを丸々潰して僕と戦った。莫迦みたいだ。高校生みたいだ。こう書くと高校生が莫迦みたいで申し訳ないが、本当に莫迦みたいだ。
僕はすぐに僕の親友と妻の例を持ち出して僕の言葉を切り返す。生まれてこの方討論で負けたことの無い僕でもすぐに白旗揚げて逃げ出したくなる。最初から勝ち目ないよそんなの。そして開き直って煙草を1本吸って冒頭に戻る。

莫迦だなあ。

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