かくかくしかじかで予定を変更してレビューを行うことになったわけですが、その前にサイドバー更新の連絡だけしておきますね。
「Profile」の画像を差し替えました。GTLさんが私の風味名「知里」にちなんで作ってくれたネタ画像です★
前略プロフのほうの画像も同じものに変えました。ついでに「最近ひそかに興味があること」「疑問に思っている事」などのタイムリーな項目をいじっておきましたので興味があればご覧になってみてください♪

それでは、本題のレビューに入ろうと思います♪
ニュアンスづけが豊かな歌姫だなと思いました。これほど鮮烈で個性的で、しかもその個性だけで表現を完結させてしまう力量がある歌姫って、鬼束ちひろさん以来ではないでしょうか・・・。
私が彼女の歌に初めて触れたのは、某ランキング番組で流れていた「name」を聴いてでした。丹下紘希さんによる抽象要素の強いMVに乗った主張の強いしなやかな歌声。すごいインパクトでした。「次アルバムが出たら聴いてみよう」とその時思ったので、今回アルバムを聴いてその希望が実現したというわけです。
なので、本作で私は初めてちゃんと彼女の歌を聴いたことになります。そのため1stとの比較という観点で評することはできません。
ただ、その個性的な歌声にそぐわず、音は意外とポップなものが多いなとは思いました。あのミスチルをブレイクさせた小林武史さんプロデュースだということを知って、それも少し納得。しかも後半にいくごとにオルタナティブ/プログレッシブ的なマニアックな曲が増えているので、そこまで”一般向き”というわけでもなさそう。つまるところ、「サウンド傾向」というものを一言で表すのが難しい盤なんです。
強いて一つ言えるとしたら、「Salyuさんのボーカル」という素晴らしい生楽器は全体を通して生命力と躍動感に溢れていて、聴き手を引き込む力がすごくある、ということ。
そのボーカルも「オールマイティ」ではないだろうな。ラストチューン「to U」にはやっぱり桜井さんの歌声も欲しいと思ってしまうので・・・。
でも、そんなのは大した問題じゃない。彼女のその個性を生かした色んな曲をつくっていけばいい話。
本作で聴ける王道ポップ/ロックやオルタナロックの路線だけに絞ってこれからもいくということになってしまったら、これほどもったいないことはないです。彼女の歌声にはロック歌手のがなりだけでなくオペラ歌手のような波長もあるし、もっともっといろんな実験を重ねる前衛的なアーティストであって欲しいというのが個人的な希望。
そしてある日、「なんじゃこりゃ!」なアルバムがやってきたらファンになるのも時間の問題だと思う・・・。

1.トビラ
「ポップで古きよきロック的曲が多く、とっつきやすい」といった本作(特に前半)のカラーをそのまま映し出したかのような、キャッチーなメロとUK的親しみやすさをもったロックチューン。アルバム曲では一番良い出来ではないでしょうか。
サビの高音ロングトーンボーカルが非常に印象的で、その後に来る「あなたの奥の方へと〜」にみられるオペラ歌手的高尚さとのコントラスト効果がおもしろいです。そういうのが共存しているところも、Salyuというシンガーの唯一無二さですね。
この曲、アルバムリード曲として発売時にはよくランキング番組等でMVが流されていましたが、目を瞑って一心不乱に歌うSalyuさんの姿が今でも印象に残っています。本当に歌に懸けてる人なんだな、というのが伝わってきて・・・。

2.風に乗る船
1曲目で芽生えた勢いを受け継ぐように始まるシングル曲。こちらもポップな感触のあるUKロックで、Salyu初心者にも聴きやすいと思います。ここでもロックとクラシックの間を自在に行き来するSalyuさんの歌が聴け、「くすぐるようなオーラを放つ〜」の部分から放たれるダイナミズムには圧倒されます。歌詞はよくある「今の苦しみを乗り越えよう!」的テーマで詩的に展開していきますが、監督に指示されずとも脚本のニュアンスをさらに広げる演技をしてしまう俳優のごとく、Salyuさんの歌は字面以上のニュアンスを付け加えてしまいます。彼女にかかれば、どんな陳腐な歌でも並以上の逸品に仕上げてしまうに違いないですね・・・。

3.鏡
UKロック的楽曲群の締めくくりを飾る、キャッチーなギターリフを持った1曲。「それは柔らかなマシュマロみたいに ふわりとしていた」「たゆまず おごらず 雨にも負けずに ねたまず ひねらず 静かに笑えば」など、日本語ならではの柔らかな表現の多い歌詞がSalyuさんのたおやかなボーカルと非常に合っています。1曲目や当曲のラストのシャウトでもわかるように、かなり高音に強い歌い手であるはずのSalyuさんですが、Bメロでは敢えて高音をかすれて出しており、表現の一環であると解釈できます。今の邦楽で幅を利かせる歌姫で、これほど”余裕”を感じさせる歌いっぷりを見せる人など本当に一握りしかいませんよね・・・。Salyuさんの場合、声があまりにも個性的なので、万人に「うまいね、いいね」と言われるかどうかは微妙です。しかし、この曲での歌いっぷりを聴けば、客観的な歌唱力はかなりあるといえるのではないでしょうか。音域、声量、表現力、ニュアンスづけ、どれも幅広い。声にしたって、むしろ「特徴的」で気に留めてもらえる、という意味では長所なはずです。彼女の歌が好きな者にとっては、その想いを強くできるような会心のボーカルが収まっている曲だといえそう。

4.プラットホーム
初めてオリコントップ20入りを果たし、ブレイクのきっかけになったシングル曲。唱歌を思わせる端正なピアノのイントロから始まり、クラシック・オペラ的側面が大きく表れたSalyuさんのボーカルが曲全体を大きく包み込んでいく名品。ライナーによると「Salyu史上もっとも普遍的な1曲」だそうで。確かに一回聴くだけで聴き手を大きく惹きつける力---普遍性---を備えているバラードです。詞世界は、この曲が主題歌になった映画「地下鉄に乗って」のタイムトラベル的世界観に合わせた「輪廻転生」を思わせる内容で、「隔てられた世界にも 二人のプラットホームは きっと現れる」という一節が特に感動的。アルバムタイトルにも表れている精神ですが、”プラットホーム”が精神的象徴となって詞世界の”終着点”(TERMINAL)となっているあたりに主人公の”落ち着き”を感じます。そして、アウトロ代わりになっている駅の雑踏音は、詞中の”二人”が精神的意味合いで”出会えた”ことを指しているのだと思います。ハッピーエンドの曲なんですね・・・。

5.故に
ここから徐々にオルタナ的要素が現れてきます。この曲では、すっきりしたリズムにUK的ギター、そしてバンジョーのエキゾチックな音色が絡み合って、歌詞に描かれているような叙情的世界観を演出しています。・・・しかし、一青窈さんってすごくプログレッシブな歌詞書きますね。のっけから「氷河期越えて 僕を信じて」って・・・。そのセンスはどこから沸いてくるのだろうか。例のドロドロな騒動で悪いイメージしかなかったのですが(^_^;)、そんなスキャンダルもこんなぶっ飛んだ詞を生み出したと考えれば、なんだか憎めなくなってくる・・・。とにかく、彼女の強烈な世界観がSalyuワールドに新たな刺激をもたらしたのは確かですね。実際、この曲で聴けるボーカルはそれまでの曲と違う、女性性や艶やかさが強く現れたものですし。

6.Tower
こちらも一青さん作詞。もうぶっ飛び過ぎてて、特にサビなんか何を言いたいのかわからん・・・(爆)。Salyuさん自身も歌う時かなり苦戦したらしいです(^_^;)。それまでにないくらい明るい曲だってこともあるけどね。結局言いたいのは「どうしようもない ふたりは常にfallin'love」って部分なのかな・・・?謎。
そんな歌詞でも、この曲は梅酒のCMで当たり前のように耳に入ってきますよね。キャッチーでわかりやすいメロに乾杯、ですな。
Salyuさんの歌に潜在的にあったダイナミズム(「風に乗る船」とかで聴けるやつ)が、明るい方向で現れているのがこの曲。ここ数年で社会に大きく進出してきた女性たちの大胆な気持ちを歌で具現化させているかのようです。そんなところになんとなくカリスマを感じるし、憧れるなぁ。当時のアー写のイメージもあるんだろうけど。

7.Apple Pie
ある意味すごく正統派な「ブリットポップ」なんじゃない!?と思っちゃうような曲(笑)。裏打ちの軽快なリズムに、ギターほぼなし、キーボードばっかり、そして普段の壮大さをとりあえず封印した可愛いSalyuさんのボーカル。歌詞も通俗以外の何物でもない・・・(爆)「たまには浮気したい(笑)」って一青さん!タイムリーすぎるよ!!wwそんな聴いてると背徳感さえしてしまう大胆な歌詞を可愛く歌いこなすSalyuさんもすごい!こんな「外伝」的曲、もっと作ってもおもしろいかもね。

8.I BELIEVE
ここから超マジメモードに切り替え。音もプログレ的なそれになっていきます。前からのファンの方が「彼女の音楽は当アルバムをもって『具体的』になった」と評されていますが、もしそれが本当なら、そのきっかけは自ら作詞したこの曲にあるかもしれませんね。たぶん、ロックっぽさとクラシックっぽさを併せ持っている個性は昔から変わっていないんだろうけど・・・。「言葉を歌に託すように 繋いでいくように もっと」という一節に「『具体的』にしていきたい」という想いが表れているように思いました。

9.夜の海 遠い出会いに
「Tower」とは真逆の意味でぶっ飛んだ曲!玄人にはたまらないでしょうね、こういう曲。ピアノの音色で始まるイントロから典型的なオルタナロックの音色に繋がっていき、そこから始まるSalyuさんのエモーショナルな歌唱。さらに衝撃的なのが、詩的にセクシュアルなモチーフを暗示した耽美な歌詞。そして追い討ちをかけるのがプログレ的な広がりを見せるブリッジのサウンド。ラストもSalyuさんの凄まじい高音ロングトーン→吐息音で締めるという隙の無さ。と、「俗世界の昇華」の一言で表せるエネルギーをプログレッシブに表したマニアックな名曲になっています。これをヒットした「プラットホーム」のカップリングに入れるってのが凄いね。そういう実験的な精神は大好きです。

10.name
私がSalyuさんを聴くきっかけになった名ロックバラード。腹にずしずし響くドラムと枯れたアコギの音色がオルタナってますね。好きっす。Salyuさんの歌唱も本来の持ち味がよく出ているので、我ながらこの曲で興味を持ったのもわかります・・・(^^ゞ総評で紹介したMVと同じく、詞世界もけっこう抽象的で概念的。おそらく主人公はパートナーに離れられつつあって、それを必死に(心の中で)引き止めているのがこの歌なんだと思います。「name」は、結局そう考えてる状態を何か喩えて欲しいという思いから立ち上がってくるキーワードなのでしょう。「パパから言われた内緒話それはね〜」で始まる部分は結局何を伝えたいのかはっきりしませんが、「抱えきれない熱はでも冷ませないよ」という一節から推察するに、実に本能的なセックス・アピールではないかと・・・。それを考えると、すごく「エロい」バラードですね、これ。主題はすごく純な思いがつまってるんですけど・・・。でも、そんな生々しいところがリアルでいいのかも。一青さんはどこまでも「生っぽい」表現をする方ですね。そういう側面が同性の共感・支持を得られるかは危ういところですが、私は皮肉っぽい意味も込みで好きです。

11.be there
ドラマのワンシーンでよくある「空港から飛び立とうとしたけど、あのひとが恋しくてやっぱり戻ってきちゃった」というシチュエーションを切り取ったような曲。「Tower」や「Apple Pie」でみられる「女の子らしくてキュートなSalyu」はこの曲にも出現しているかも。「トビラ」の続編のような高揚感ある編曲も、そんなわくわく・うきうきした心情をよく表していて良いです。「I'll be there」という一節がビートルズからもってきたものなのかどうかはさておいて・・・。

12.heartquake
タイトルはおそらく「earthquake」をもとに作った造語。「心のふるえ」といったところでしょうか。その名の通り、うねるようなプログレサウンドと暗鬱さを感じさせるSalyuさんのボーカルが光っている佳曲。Salyuさんの色んな表情が覗ける当アルバムの中でいちばん、ダークな彼女が伺える曲だと思います。「死にたくないけれど悲しまれたい いろんな人に想い出されたい」といったエゴをぶっちゃけた詞は「鏡」の時の感触からしてどおなの?と思っていましたが、実際聴くと暗鬱な表現もピカイチじゃないか!びっくりです。この曲や「夜の海 遠い出会いに」のようなプログレサウンドと、「name」のような女性性をさらけだした世界観を二本柱にして、他にもいろんな実験をやっていってくれれば、いずれ私が驚愕・ハマるというほどに化けると思うんですよね・・・。

13.to U(Salyu ver.)
昨年の夏を席巻した、彼女も参加していた名バラードをSalyuのみバージョンで。でも、コラボ曲とかデュエット曲って、やっぱりメンバーが皆揃ってこそ輝いてきますよね。これを聴いてると、やっぱり桜井さんの声も欲しくなる。Salyuさんの世界観だけじゃ表現しきれないくらい大きい曲だってのもあるかもしれません。でも、シングルを結局買わなかった身にとっては、他のメンバーがいないとはいえ聴けるだけでも嬉しいですね。桜井さんのペンによる歌詞も、平凡な応援歌・ラブソングの域になどとどまらない、慈愛を感じる素晴らしいもの。「誰かを通して 何かを通して 想いは繋がっていくのでしょう 遠くにいるあなたに 今言えるのはそれだけ 悲しい昨日が 涙の向こうで いつか微笑みに変わったら 人を好きに もっと好きになれるから 頑張らなくてもいいよ」おっと、サビ全部引用しちゃった(@_@。うん、ここの一節、決して「甘い」やつではなくて、現代人が失くしつつある優しさですよね。救われる思いがします。「プラットホーム」でその兆候は少し感じましたけど、Salyuさん一人でいつかこれほど普遍的な素晴らしいうたが作れるといいですよね。