山崎彬インタビュー (その1)からの続き

――俳優さんのテイストでエネルギーの出しようがいろんな方がいて。うまくマッチングし てない部分もなんとなくたあったような、それは意図的ではないような気がしました。それは何かのコンセプト、理屈ではなくて、まちまちな人がまちまちでも いい溶解点がお芝居はあるような気がするんです。その部分でときどき違和感があったような気がしますが。


  新人は、今年5月にデビューしてるんですが、劇場じゃないところだったんですね。家とかライブハウスとか砂の上とか。劇場で初めてやったのが4人なんです。だからそういうのは悔しいですけど。

――演技のくせは経験のある人もない人もあるから、上手にそれを芝居の立ち方にまとめるのが演出の仕事かもしれないですが、それがうまくいってない部分があったかもしれないですね。でも逆に言えば、それが別のエネルギーになってる部分もあったかもしれない。

 ラストでフリーに動いているための訓練はしていて、技術は放っておけばつくので、その部分は徹底しないようにはしていてます。決まっちゃうのが嫌で。下手なんですけど、そのくらいのままで乗せた部分はあるんですけど、そのバランスのとり方みたいなところですかね。

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――むしろ俳優が上手なほうが嫌だというのは山ほどありますが。舞台装置とかもこだわりがありますね。舞台全体を回すわけで、大概はあんなの回すとぎくしゃくするところを、実にスムーズに回りますね。

 稽古場でも組んでもらって。最後に好き勝手にやるための準備というのは、けっこう小心 者なので、まあ当然のことですけどそこは徹底的にやります。何回も台本を確認して。僕が伝えたいのは物語と俳優なんですけど、そのためにスムーズにいくよ うには相当こだわる。その部分はすごく役者に怒るかもしれないですね。足音一つにしても入り方ひとつにしても、自分たちが誤解されるから。セリフが言えな くても僕はどっちでもよくて、言えなくて「えっと…」となるよりは、実は思い出してるけど、首をふっと動かすだけでお客さんは「なんだろう」と思うじゃな いですか。そういうところはすごくこだわりますけど。だからスムーズでしたね。あとは舞台を回す人たちも役者と同じようにダメ出しますし。稽古場にずっと いてもらって。

――スピードとかも変わるし。動物の被り物もかぶってますね。

 苦しいんです。汗がすごいのでナプキン貼ってやってるんです。ヒーローショーの人がそうしてるって聞いて。それでもボタボタ落ちてきて。役者よりも体力は使うそうです。被り物はゴムのマスクです。パーティーグッズみたいなやつなんですけど、あれは苦しいらしい。

――意味ありげでなさげでいいですよね。

 興行的には顔を隠したい、というのがありますけど、意味としては動物が回しているのがあって。ただ動物と人間の違いはなんやろというところからもともとこの話は始まっていて。

――え、そうなんですか。

 そうです。人間って痛いことや悲しいことがあるとそれに乗っかってテンション下げても よくなる。楽しくなるとそれに乗っかって楽しい。動物は痛くて痛みは感じてるけどテンションはあまり下がらなく普通にゴハン食べてたりする。人間のほうが 弱いなと思うことがありまして。人間は考えすぎる。始め、世間の中の一人としている人たちが、最後考えなくなっていく、動物に退化するんじゃなく進化して いくみたいな話にしようというのがもともとの発端です。いろいろなエピソードとかを足していったんですけど、発端は動物と人間の違いはなんやろというとこ ろからです。

――舞台からはけると残る人と楽屋に戻っちゃう人がいますが、規則性はあるんですか。

 僕の中にはあまりないというか。楽屋に帰るのは着替えるからとかです。後ろにいるのは見ておきたいからとか。

――見ておきたい?

 その人たちの舞台に乗る姿がおもしろいだろうと思ったので、ぐるっと回って降りていっ て止まるのを待って座るとか。それがおもしろいだろうと思ってやったのがもともとで。理屈的にどうとか意味はなくて。はじめはあの場所で台本を読ませた り、焦って次のシーンに出るというのをやってたんですけど、ほんまに間に合ってないように見えるといわれて。それは違うからやめたんです。役者を残してる のは意味はなくはないですね。

――普通は楽屋に戻ればいいわけですよね。客としては気になりますけど、気にさせたかったわけですよね。

 そうですね。僕、お客にしんどくなってほしいんです。肩に力を入れて観るほうが僕は好 きなので、その効果のためにも、役者は座らせたのは緊張感みたいなものがそのほうが増す、安全じゃないというか。どっちが檻の中なんだろうというのは意味 としてあるんですが。柵がここにあって、始めはお客さんが見世物を見てるんですけど、僕たちも見てるという状態をつくりたかったのはあります。

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――一番最初にセリフがよく聞き取れなくて断片的に聞こえてくるのはなぜですか。

 僕は距離を意識してつくるんです。フラットな状態にしたいというか。期待やこれから始 まるワクワク感を使って引き上げるというよりも、「いったん距離をとりましょう」というオープニングにするんです。でも距離はとられたけどでも何か気にな る、みたいな。気になる人や好きになる人って、はじめからいきなり「どうもどうも」と優しく来られるよりも、うまくいかないほうがいい。お客さんに「帰っ たらいい」とか「台本が書けなかったんで、すみません」とマジっぽく全員で謝ってから「嘘です」と言ったりとか。昔けっこうやってたんですけど。「そんな 幼稚なことはやめなさい」とえらい人たちに言われて。よく言われるんです、「東京では通用しないから」とか。知るか!と思うんですけど(笑)。それで最近 はおとなしかったんですけど、今回は開き直って、地元にいることでしかつくれないものをつくろうと思って。関西弁とかいつもはほとんど使ってないんですけ ど、全部関西弁にして。嫌だったんです。東京でやっても楽しんでもらえるようにやってたんですけど、結局劣化版みたいなものしかつくれてなくて。まあいい やと。だったら地元にいることでしかつくれない感覚と、関西弁でやって。昔ずっと悪い芝居でやっていた、始めに一定の距離をとるけどなんか気になるという オープニングを久しぶりにしてみました。大体僕が始めに出て行ってギャーギャー言って、気付いたら物語に入っていて、物語に入ってるものだからお金も払っ てるから観る。けど、いい印象から始まってないけどでもおもしろいことをやってる。となると、「なんやねん」と思いながら観ちゃうという感覚があって。初 めに悪いところから始まってると、そこから出てくるいいものがもっとよく見えるみたいな。悪い芝居という劇団名もそうですけど。悪い芝居と思って来ると 「まあいいじゃん」みたいな。オープニングは僕らはかっこいいと思ってつくってるんですけど。物語の最後のしめが悪いとボロッカスに言われたりする作品が けっこうあって。かわいそうだなと思うんですけど。いいところから始まるとずっと良くないとすぐに興味をそぐじゃないですか、お客さんというのは。残酷な もので。だったら始めにバーンとなって「なんも聞こえないけど」となったら、大体のお客さんのアンケートがとりあえず「おもしろかったです」という中で、 それもしゃくだから「始め聞こえなかった」と書くことで、ストレスが解消される。今回そういうアンケートが多かったですけど。聞こえてたら絶対楽しくない んですよ。寄りかからないでください、あなたたちもあなたちちとしていてください、という意味です。

――芝居を観た印象よりずっと作為的にいろいろつくられてるんですね。もっと勢いで作ってる部分があるのかと思いましたが、そんなことないですね。

 そうしないと強度は強いものができないと僕は思っていて。おちゃらけてるようなもので も、いいと思う作品は絶対考えられてつくられてる。バンドとかでもぐちゃぐちゃにやってるようなライブでも実は緻密に決まってたりして。そうでないと強度 が弱くなるので、ちゃんと勢いでいってるふうに見せるために、そのための準備はしっかりしますけど。

――アングラっぽい要素は今の若い人、お話しにあった劇団などからも出ていますよね。ア ングラは状況劇場からおおむね途絶えていて。一応アングラというジャンルはあるけど、実はアングラじゃないと僕は思ってたんです。今回観せていただいて、 アングラの魂がすごく充満してるんだなと。上手な表現の仕方、今風の表現の仕方で出てきたのかなと。

 もともと学生劇団が寺山修司をやるみたいな、そういう劇団だったこともあって。僕も好 きなのはそういう作品なんです。でもおもしろくないじゃないですか。でもおもしろい。それを伝えるために、今の普通の人たち、テレビのバラエティを見て楽 しいという人たちに伝えるために伝わりやすくしてるというか。単純に、かっこよく見えるようにするとか。それで伝えようとはしてますけど。血としては流れ ていて好きです。僕、寺山修司好きですよ。ああいうのがやりたいですけど、あれをやってもお金にならないし、今の時代は誰もおもしろいと思わないので。

――お金にしたい?

 僕はお芝居が一番おもしろいと思ってるんで。お芝居がおもしろいと思っている人が観 て、お芝居がおもしろいと思っている人を褒めて、お芝居がおもしろいと思っている人が喜んで、お芝居をおもしろいと思ってる人たちが「今の演劇界は…」と 言ったところで、地下の中で勝手に言ってるだけの話じゃないですか。まさにアングラだと言っているお前もアングラにいるよと。これでは全然流行っていな い。芝居はお金になるものだと思いますし。映画やテレビよりおもしろいので、お金にはしたいしお金もほしいです。お金がいっぱい入ってくるときは今よりも ちょっとは流行ったと思います。そういう意味では「集客とかお金じゃない」とは思わないです。僕らライブハウスでライブやるのは音楽のお客さんにも見せた くてなんです。ほんまにバンドをやっている人だと思って観に来た、演劇なんて観たことなかったお客さんがおって、その人がそのまま京都も東京も観に来て、 僕らのことを好いてくれて演劇にはまってるという人もいますし。そういう活動もちょっとずつでもしないとダメだと思います。

――お金はエネルギーになる。なくて恥ずかしいとは思わないけど、ないと不便ですね。

 いい作品をつくるためにはあったほうがいいのは事実。単純に毎日焼肉食べられるという だけで心が芳醇になっていい作品つくれる可能性もあるわけで。僕は地方にいるんで、メインストリームから蚊帳の外だと感じるときがあるんです。メインスト リームじゃないところから見える人間の感覚はずっと持っておこうとは思いましたし、今回はとくにそう思いました。

――真ん中にいてもいるだけではあまり関係ないですね。京都ぐらいがポジション的にいいんじゃないですか。

 のほほんとしてるんで。今も電車に乗ってきましたけど、駆け込み乗車の人のダッシュの 速度が全然違いますね。普通のおばさんが、エスカレーターが動いてるけど登るというのは急ぐときにあると思いますが、京都では若い人たち以外では見たこと ないなと。駆け込み乗車競争したら絶対東京のほうが早いです。本気ですよね。

――では最後に、今年の公約を教えてください。

 そんなに先のことを考えると、今つくるものがおろそかになっちゃう方なんです。おもし ろい芝居をつくりますというのは全体の公約としてあるとして、でも変わらずに、一歩進んでるみたいなものになればいいなと思いますけど。おもしろいことが いえません。まじめなんですよね(笑)。来年の公約というとそれに縛られちゃう感じがすごくするんですよね。

――でもそれを裏切っていくのも面白くないですか。言ったことを翻していく、言ったことをやらないというのも。

 僕は意地でもやるみたいになっちゃう。…来年は海外に行こうと思ってます。海外公演 じゃなくて、芝居の勉強をしにドイツへ。ドイツで一回役者で公演をしてちょっとおもしろかったんです、ヨーロッパの俳優の葛藤というか。「いいよな、彬は 20代で脚本家で。俺らは劇場について同じ芝居をずっとやらなきゃいけないんだ」って日本人みたいなことを言い出して(笑)。おもしろいなと思って。向こ うのほうが国からお金で出るし全然食えてるんです。「食えてなくてアルバイトしてる人が多いんやで」と言ったら「それでもいいじゃないか、夢があってよ」 と言われて。そいつ、「俺、役者やめて映画俳優になるためにアメリカに行こうかな」とか言い出して。ヨーロッパに対するいろんなイメージってありますけ ど、思ってる感覚はそんなに違わなくて、それをもっと知りたいなと。向こうでやってた作品が刺激的やったというか。守るほうから始めないんです。たとえば 舞台で水を使うとき、日本の場合は水がもれないように考えるんですが、向こうの場合は水をまいた後、壊してもう一回張り替えればいいと考える。そういう感 覚がすごくいいなあと。日本でもそういう感覚でやってくれる人いるんですけど、まだ少ないので。ああいう地で生まれたものをもっと観たいなと。海外修行を ちょっとするつもりです。

――語学は堪能なんですか?

 全然しゃべれない。でもなんかわかるんです(笑)。

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山崎彬
やまざきあきら○82年生まれ、奈良県出身。俳優、作家、演出家。04年、悪い芝居を旗 揚げ。以後、全作品で作・演出・出演を担当。劇場での本公演を京都・大阪・東京で行う一方、ライブハウスでのライブの構成・演出や、日本家屋でののぞき演 劇など、劇場外での表現も多数行っている。俳優として外部出演も精力的でありながら、作家としてOMS戯曲賞で佳作を受賞するなど、活動の幅は広い。
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次回予定
◇悪い芝居『猿に恋〜進化ver.〜』1/7〜9◎駅前劇場
◇悪い芝居『ワンダフル・デイズ(仮)』7月◎王子小劇場 ほか
http://waruishibai.jp/

【インタビュー◇坂口真人 構成・文◇矢崎亜希子 撮影◇山口真由子(舞台)】