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どんなことやってるの?

田辺 ARC>Tでは、学校や仮設住宅に赴いてワークショップや演劇の「出前」をしているんですよね。そう言った活動は、いつごろからはじまったんですか?

鈴木 ARC>Tを立ち上げて最初の頃は、決して何か作品を作って届けると言う発想を置いといた訳ではないんですが、まずこの状況下で何ができるかと考える様になっていったんですね。そしたら、アーティストとして何ができるかを考えていた時には出来なかったことがいっぱいあったんですけど、一人間として、一市民として何ができるだろうって思考になったら、泥かきにも行けたし、炊き出しのボランティアにも行ける様になりましたね。

田辺 活動の最初は演劇とは関係ないボランティアからはじまったんですね。

鈴木 中には、普段、舞台に上がる時には芸名をつけてらっしゃる50代の俳優の方がいらっしゃるんですが、その方が泣きながら、「俺は本名の俺なのか、芸名の俺なのか分からなくなって来ている」と吐露されている場面とかもありまして。その気持ちは分かると言うか、「何かしなきゃ」って時に自分は演劇しかしてないから、演劇でしか役に立てないだろうって無力さを感じてしまうんですね。そこから、その考えを一回取っ払って、家族や友人や仕事の仲間を助けようって所からのスタートでした。

田辺 その中で、演劇を通じてのボランティアがはじまった切っ掛けってなんだったんですか?

鈴木 こどもの日の集まりに、「こういうことできませんか?」ってこども向けの演劇の依頼が来たんです。そこにアーティストたちをマッチングしていったところが始まりです。それが認知されて、いろいろな依頼が来る様になったんです。なので、出前をしようと言う発想からのスタートではなかったんです。来た依頼に対してのニーズに応えようとした結果が演劇の出前なんですね。

田辺 それが一年経って、ARC>Tの活動の主になっていったんですね。

鈴木 活動の七割八割が教育福祉の現場なので、ARC>Tってそう言う集団って思われがちなんですけど、実は社会の裏返しで一般の方々が表現者に求めたことがこれだったと言うことなんですね。

田辺 なかなか捜さないと演劇の需要ってないですけど、求められるって凄いですよね。

鈴木 震災前までのアーティストは、チケットを買ってもらって、劇場に足を運んでもらって、作品を観てもらってたので、自分たちが社会の中でどう機能しているのかを実感できなかった人がほとんどだったと思うんですね。それが震災の混乱期にもしかしたら演劇のスキルが何か世の中の役に立っているんじゃないかと思えたんですね。そう言う意味で開眼したアーティストは多かったと思います。

田辺 演劇をやって、その感覚を得れることって少ないですよね。

鈴木 その活動がARC>Tの一年目の主流になっていきましたね。ただ、自分たちで企画して発想してアクションしたと言うよりは、外からの声に対してのリアクションなんですよね。

田辺 それって凄い嬉しいと思うんですけど、一年経ってジレンマとか生まれてこないんですか?

鈴木 ありますね。確かに社会貢献はできていると思うんですけど、やはり自分の創作で社会の役に立ちたい思いのアーティストもたくさんいます。それは僕は反動だと思っています。ここからはアーティスト個々が本来の創作していくことも必要なんだって感じはじめているところですね。

田辺 アーティストのエゴってみんなあると思うんです。僕なんかは自分でそれが強い方だと思っていて、学校を回っての活動も自分でも楽しめると思うし、楽しませたいってエンターテーメントの精神もあるんですけど、ずっとやってると「こういうんじゃないんだよ」って思っちゃいそうだなって。

鈴木 僕ももともと福祉教育よりは、もっとプロフィットなビジネスライクな演劇の世界にいましたので、実際に興味があるのはそっちの方なんです。震災前に福祉教育とか街づくりとかに興味があったかと言うと、反省してますけどなかったんです。なので、民間での興業の活性化も仙台には絶対必要だと思ってます。僕は最終的にはそっちで活動していくと思っているんですけど、状況としてこの一年はなかったですね。

田辺 東京の小劇場で活動しているからだと思うんですけど、自分の感覚の健全さで言うと、自分で劇場を押さえてやりたいことをやるのが健全に思っちゃうんですよ。勿論、それは仙台の演劇事情や現状なんかを分かっていないから言えるんですけど、アーティストが好き勝手に好きなものを作れる様にならないと、地震を引きずっちゃっているのかなと思うんですよね。それは、教育福祉の活動が違うとかでは全然ないんですけど。

鈴木 よくわかります。そのアーティストのエゴが、風潮として許されない時間も当初はありましたし。その問題って、ARC>Tに登録しているメンバーが、仙台の演劇人の5割とか6割だったら難しい話じゃないと思うんですけど、本当にほとんどの方が登録しているんです。となると、個々の活動は自分たちで頑張って下さいとしか言い様がなかったですね。ある人が言っていることをARC>Tで実現しようとすると、別の人が「俺のも実現しろよ」と、とりとめもなくなってしまうので、ほぼ全員が納得できる活動を選ばなきゃいけなかったんです。そう言う意味では非常に不自由ではありますね。