11neko_2012

登場するのは十一ぴきのネコたち。
お腹を空かせて、へろへろになった彼らは鼠殺しのにゃん作老人(勝部演之)に教えてもらった北の星の下にある大きな湖にいる大きな魚を目指して、いざ進む。
原作は馬場のぼるの絵本『11ぴきのねこ』で1971年に井上ひさしが戯曲化した作品である。
11匹の野良猫たちが大きな魚を目指して進んで行くという冒険性、仲違いしながらも絆を深めていくという物語性、それこそ絵本を読む子供みたいな気持ちになって楽しめた。
登場するネコたちがそれぞれ本当に可愛い。

ただ、可愛いだけでは決して終わらないのがこの戯曲の中にいる井上ひさしだし、演出の長塚圭史である。
楽しい音楽や、韻を踏んだ楽しい台詞の中に、すっと社会を風刺する鋭く尖った刃が見える。
最後の結末はその風刺の刃が特別な切れ味を発揮し、思わず息を呑んだ。
絵本のような物語の中にあって、時折姿を見せるそんな暗さがあったからこそ、今回の長塚圭史演出が誕生したのかもしれない。
井上ひさしの戯曲、しかも音楽劇で“子どもとその付き添いのためのミュージカル”と副題がついた作品を、ゆらゆらと揺れるブラックな精神世界をここ最近表現することが多い長塚が演出するというのは意外だったのだが、結末を見て大いに納得した。

ただ甘いだけでない、ほろ苦さを感じてもらうということも含めて、副題の通り子どもに見せたいと思う音楽劇だ。
この日の客席にも何人か子どもがいたのだが、まず開演前の時間からわくわく感を演出してくれる。
徐々にネコたちが客席に現われて、「お腹が空いたにゃー」などと口にしながら、客席にいる子ども達に自分のふわふわのしっぽを触らせたり、笑顔で話しかけたりしている。
そうやって構ってくれたネコたちが、ふと気付くと舞台の上で冒険の旅に出るのだから、子どもが見てもきっと飽きがこない。もちろん大人も楽しめる。

北村有起哉の軽やかで、口も達者、頭の回転の速いにゃん太郎を中心に、ほぼ同年代の俳優たちが集まって、井上戯曲を全力疾走で演じきる、その勢いが心地良い。
にゃん作老人から受け継がれた地図のように、また次の世代へと井上作品が受け継がれていくのを感じた。

みんなで力を合わせれば、北の星の下にある湖にだって辿り着けるし、大きな魚を捕まえて食べることだってできる。
辛い現実は必ずどこかに転がっているが、あの北の星の輝きも忘れずにいたい。

 

 井上ひさし生誕77フェスティバル2012
『十一ぴきのネコ』

作◇井上ひさし
(馬場のぼる原作・こぐま社刊)
演出◇長塚圭史
音楽◇宇野誠一郎 荻野清子
出演◇北村有起哉 中村まこと 市川しんぺー 粟根まこと 蟹江一平 福田転球 大堀こういち 木村靖司 辰巳智秋 田鍋謙一郎 山内圭哉 勝部演之

●1/10〜31◎紀伊國屋サザンシアター
●2/5◎川西町フレンドリープラザ(山形)
●2/11・12◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

<料金>
一般7,800円 学生(高校生以上)5,800円 子供(小・中学生)4,800円

<HP>
こまつ座 
http://www.komatsuza.co.jp/

【文/岩見那津子】


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