
青山円形劇場で1月20日からスタートした二人芝居『ガルフ』。
インターネットの巨大掲示板の募集で、湾岸でのニート生活を1年間すれば1000万円がもらえるというモニターに選ばれた2人。1人はパンツスーツの謎の女。もう1人はニート歴15年の男。湾岸にある閉ざされた空間で二人の生活は始まった。
コミュニケーション能力はあるが自分を語りたがらないキャリアウーマンの早乙女真澄、好きになるのは二次元の女の子という独りが好きな佐藤誠、2人は1年のニート生活を全うして1000万円を手にできるのか。
カラフルで明るいロフトのような部屋で、どこかいびつな2人の男女は向き合わざるを得ない。
生活スタイルも生き方も全く違う2人なのだが、同世代という1つの共通項から少しずつ会話がほぐれていく。そして互いの問題点を理解し合うのだが、そのとき…。

パンツスーツで出来る女風の大和悠河が会話のイニシアティブを取る役割で、難しい時事用語もうまくこなしてテンポが良い。それを受けたりかわしたり、ムカついたりする敦士のリアクションも面白く、うまく波長が合う2人だ。
舞台上にあるそれぞれが持ち込んだ生活機器を使って、テーマである「時代」や「コミュニケーション」に、単純な会話だけでなく迫っていく手法が巧みで、作・演出の毛利亘宏の力を感じる。ちょっと苦めのラストを含めて、現代社会をストレートに映し出す舞台に仕上がった。

その初日を前に、主演の大和悠河と敦士、脚本・演出の毛利亘宏が囲みインタビューに応えた。30代で同世代だという3人。衣裳の黒のミニドレスに抜群のプロポーションを包んだ大和とゆるい服装の敦士。舞台上でも異質なキャラクターそのままの2人の組み合わせがなかなか面白い。
━━初日を迎えられる心境は?
大和 このお芝居は2人だけですので、ちょっとしたことで変わってくるんです。初日はどうなるんだろうという不安とちょっとした楽しみが混ざっている感じなんです。お稽古してきたことがちゃんと出せたらいいなということと、あとはお客様が入ると反応なども出てきて、私たちも違うものを感じると思うので。それを楽しむ余裕はないかもしれませんけれど、精一杯やりたいなと思っています。
敦士 初日の幕が開きますが、お客さんが入った状況で自分がどういう心境でいられるのかなというのは楽しみですね。こんな長いセリフを喋るのも初めてですし、そういったところを見ていただけるっていうのは、僕は楽しみです。ただ不安がないっていったら嘘になっちゃうので、そこも楽しみつつ、お客さんに何かを感じ取って帰っていただけたらなって思ってます。
毛利 演出家としてやることはやったという気持ちがありますし、ようやくこの作品を世に出せるという高揚感があります。早く2人を観ていただきたいという気持ちでいっぱいです。
━━表面的には軽やかに進むけれど内容的には重たいものを描いた中で進んでいくという感じで。作品の中身について感じたことがあれば教えてください。
敦士 佐藤誠という人間はニート15年間やってきて、またニート募集されてこの場所にきてニート生活を送るわけですけど。まぁ、僕はニート生活をしたことがないので、僕の中にはその感覚がないんですが。でも人が持っている小さい甘えだったりが表面的に出ているのがニートかなと感じてますし、その部分は僕も自分に甘いところがあるので、そこを増幅さして佐藤誠を演じさせていただいてるんですが。ニートの佐藤の中にも色んな感情があって、怒ったり、不安だったり、楽しみだったり、色んな面を見せれたらいいなって思いますね。
━━もう少し作品の中身についてなど。
敦士 ああ、中身ですね。社会的なところもあるので、色んな事件や事故を追いながら、人は1人では生きていけないんだなってことを改めて感じたことです。僕としても大事にしていきたいし、観ていただいたお客様にも再認識していただきたいなと思いますね。
大和 早乙女真澄という役は、いわゆる出来る女だと思うんですね。今、一生懸命働いている女性が沢山いると思うんですけれど、突っ走っている女性の中で、こういう風に自分を見つめ直している女性もいるんだなと。皆そうなんだと思うんですけど、強い女性であればあるほど、人には言えない弱さであったりコンプレックスであったり、そういうものを抱えていて。真澄はそれを自分自身で探そうとするし、そういう自分自身が嫌で変えたいと思って今回の出来事が始まったわけなんですけど。そういう女性に対して、何か勇気を与えられればいいなと今回思いました。
毛利 今回の『ガルフ』というタイトルは湾岸という意味合いです。私が高校生の時に湾岸戦争がありまして、そのメディアと湾岸戦争との関わりを描こうとした作品です。湾岸戦争という意味合いから東日本大震災、この二つのメディアでの報道が、現在の日本人を形成する大きな事件なんじゃないかなと考えていまして、二つの湾岸を繋ぐおよそ20年間のお話。そのなかで日本人がどう変わって、今後どうなっていくのかということを形にしたいと。それで、ニートと実業家女性の2人の関係性のなかでどう炙りだしていくか、そういうものを作り出していこうと思っていました。今後の日本がどう進んでいくかっていうことをかたちにして皆さんに観ていただければなぁと思っています。
━━二人芝居については?
大和 二人芝居って根本的に相手が喋ったら次は自分なんですよね。集中力の続く限り普通の会話をずっと続けている、それだけなんだと思うんですけど、いざ芝居となるとすごく難しいなと思うことと、2人だからこそのコミュニケーションのやり方が楽しいなという、両方を感じました。
敦士 同じです(笑)。初めてですし、最初に話をいただいたとき怖くてしょうがなかったんです。セリフもどうやって入れていいか分かんなかったし、でも稽古続けていくうちにセリフもどんどん入っていって、大和さんとのコミュニケーションもとれてきて、セリフの流れも流れてきて。二人芝居は面白いなって思います。こんな経験滅多にできないことなので、舞台上で楽しんでやっています。目を見つめ合いながら、「なんだっけ?」みたいなことが色々あって(笑)。
大和 「次はなあに?」みたいなね(笑)
敦士 楽しんでやらしてもらってます。
━━そんな2人を見ていて毛利さんはどうですか?
毛利 1日10時間ぐらい稽古をしていたんですけど、ずっと2人を見続けるし、2人は2人でずっと集中力を保って10時間もやっているんで、1ヶ月くらい2人で生活したような空気感が出てきたんじゃないなかと。ストイックに稽古場は進んできましたので、いい仕上がりになっているんじゃないかなと思っています。

━━稽古以外の場所でコミュニケーションってことはないんですか?
敦士 それはないですね
大和 稽古期間が短かったなかで、ずっと稽古して突っ走っていた感じですね。
敦士 稽古場でお会いして、夜寝てまた稽古場行って、みたいな感じでしたね(笑)。
━━1日10時間もいれば一緒に暮しているような感覚にもなりますよね?
大和 セットの中にベッドがあったから、なんか暮してるみたいな感じね(笑)。
敦士 そうそう、そうなんです。
毛利 でも、なんだかんだいってほぼずっと喧嘩してる芝居なんです。
敦士 わかり合えない2人みたいな。
大和 そう(笑)。
毛利 そういう2人のいい感じの芝居です(笑)。


『GULFーガルフー』
出演◇大和悠河、敦士
脚本・演出◇毛利亘宏
●1/20〜26◎青山円形劇場
〈料金〉7000円
〈問合せ〉イープラス 0570-06--9939
公式サイト http://gulf2012.com/gulf.html
【取材・文/佐藤栄子 撮影/冨田実布(会見) 舞台写真提供/読売新聞事業部】
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