
落ち着きと勢い、その両方を感じられた新人公演だった。
ダニー・オーシャン(本役:柚希礼音)を演じた真風涼帆は下級生の頃から抜擢され続けてきた人であるが、舞台姿を見ているとその経験が今、実を結び始めているのがわかる。舞台の真ん中に立っていられるだけの自信と安定感。それがそのままダニーとしての余裕にも繋がっているように見えた。歌もしっかりと歌いこなし、銀橋でのソロも危なげない。一皮むけたスター性をダニーを演じる真風から感じることができた。
相手役となるテス(本役:夢咲ねね)役には音波みのり。音波もこれまでバウ公演のヒロインを務めてきたりと、経験を重ねてきた娘役である。夢咲演じるテスのコピーではなく、音波のテスとして存在していたのが好印象。しっとりと大人っぽく清楚な音波のテスが、真風演じるダニーの包容力やちょっと悪ぶった感じを上手く引き立てていたように思う。
ダニーの昔なじみであるラスティー(本役:涼紫央)には芹香斗亜。金髪に甘い容姿、すらっとしたスタイルが仕立ての良さそうなスーツによく映える。「JUMP」という中盤の見せ場となる曲があるが、その中心で歌うのが芹香。歌声も聞きやすかったし、ナンバーを引っ張っていくだけの華やかさも備えていた。
以下、オーシャンズ11のメンバーをプログラム順に紹介するが、
フランク・・・十碧れいや(本役:夢乃聖夏)
ライナス・・・礼真琴(本役:真風涼帆)
ソール・・・大輝真琴(本役:未沙のえる)
バシャー・・・紫藤りゅう(本役:壱城あずさ)
リビングストン・・・麻央侑希(本役:美弥るりか)
ルーベン・・・真月咲(本役:美城れん)
イエン・・・瀬稀ゆりと(本役:鶴美舞夕)
バージル・・・漣レイラ(本役:如月蓮)
ターク・・・音咲いつき(本役:天寿光希)
と11人が揃う。
十碧はディーラーの衣装もシャープに着こなし格好良く、麻央はパソコンおたくらしい雰囲気を出したコミカルな役作り・・・とそれぞれが個性を発揮。中でも目を引いたのは大輝と礼の二人だろうか。
大輝は新人公演の長の期。ソールの演技指導のアドリブも堂々とこなして客席からの受けも良かったし、変装してからの芝居でも「さ行」を必ず「ちゃちゅちょ」と発音するという工夫し、笑いを誘った。いずれも楽しい場面となったが、きちんと役から逸れずに行われていた芝居であったし、大輝の演技が芝居全体のまとまりに大きな影響を与えていたと思う。
礼は歌、芝居、ダンスと三拍子揃った男役であることをここでまた新たに実感することができた。男役としての格好良さという点ではまだまだ物足りない部分はあるが、ヒップホップ系のダンス、そして踊りながらの歌も高いレベルでこなし安定している。ライナスとしての気弱な演技も癖がなく素直。とても器用な人なのだろう、このまま伸びていって欲しい。

この作品の中で、一人敵役をつとめなければならないのがベネディクト(本役:紅ゆずる)なのだが、この役を演じた天寿光希の好演も特筆すべき点だ。
表面上では女性に優しいスマートな男性像を作り上げているのだけれど、その裏にはホテルのオーナーとして手段を選ばず、のし上がってきた過去がある。幼い頃の屈辱から生まれた強い虚栄心を抱きながら、愛されたいという欲求を隠し続けてきた男、という印象を天寿のベネディクトから受けた。
テスから拒絶され、ダニーたちからは報復を受け、だんだんと表の顔が崩れ落ちていくベネディクトの歪みが演技から見えるのが面白く、後半、特に天寿の表情から目が離せなかった。技術面を見ても、歌も聴かせ、台詞も明瞭、と文句がない。男役としてのキザさも天寿の個性の一つになるだろう。新人公演で主演が出来なかったのは惜しいが、天寿の存在はきっとこれからの星組にとっても大きな力になっていくはずである。
一本物の作品の新人公演はもともと2時間半ほどある芝居を1時間半強にしなくてはならないため、大幅なカットがなされたりして強引な展開に感じられることが多い。しかし今回の『オーシャンズ11』の新人公演はストーリーがテンポよく進み、それでいてイリュージョン場面など演出のポイントも押さえられていて、とてもすっきりと観劇することができた。新人公演の演出は田渕大輔。構成力の高さを感じさせた。
中心となる役どころを演じた、真風、音波、天寿の舞台慣れした安定感、その脇を支える芝居巧者の存在、また思い切りよく個性を出す下級生の姿・・・本公演と同様、勢いある星組の舞台を味わうことができた新人公演だった。
星組新人公演
『オーシャンズ11』
脚本・演出◇小池修一郎
新人公演担当◇田渕大輔
●1/19◎東京宝塚劇場
星組公演
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
ミュージカル
『オーシャンズ11』
脚本・演出◇小池修一郎
●1/2〜2/5◎東京宝塚劇場
<料金>
SS席 11,000円、S席 8,500円、A席 5,500円、B席 3,500円(税込)
<HP>
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/251/index.shtml
【文/岩見那津子 撮影/冨田実布】
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