2009年05月25日
相続を手掛けるということ
ネットを見ていると、「相続専門」とうたっている司法書士が
結構いることに気づく。
特に若い人に多いようだ。
そのことはよく理解できる。
士業の開業ノウハウ本などには「専門分野に特化しろ」
というようなことがよく書いてある。
相続は、それにうってつけだ。
・ 金融機関や不動産会社のしがらみがないので、
エンドのお客さんから直接受託できる。
・ 極端な話、地面師に騙される危険性すらあって
落とし穴がどこに潜んでいるかわからない売買などと比べれば、
名義を移転させるのは戸籍類から少なくとも法定相続人の誰かに
であることが間違いないとわかっているので安心できる。
・ 戸籍類を遡って集める作業は一般の人から見れば
複雑怪奇に感じられるかもしれないが、
実はある程度経験を積めばルーティーンワークに近い。
・ それでもケースによっては面倒ではあるが、
面倒であることは報酬の増加につながる。
・ そして、人は必ず死ぬ。
こうした様々な理由から「相続専門」の司法書士がいるのだと思う。
そのことについて批判する気はない。
経営に関して研究熱心なのは結構なことだ。
少なくとも生き恥をさらした私よりは立派だと思う。
現に私も、従来のHPからブログに切り替えようかと悩んでいた期間、
ブログを立ち上げたら相続案件を誘致するページは
すぐに作るつもりでいた。
だが、数年前にある相続案件に携わったことで少し考えが変わった。
その依頼人、長年連れ添ってきた夫を突然失ったおばあさんは、
ショックのあまり少しの間しゃべれなくなったという。
私のところへ連絡をしてきたのは1年近くが経過した後だったが、
それでも立ち直るというには程遠く、細かい字の書類を読んだり
字を書いたりすることがひどく苦痛な様子だった。
もちろん出歩くこともままならないので、私のほうから訪ねることが
多かった。
それが、虚無を伴侶に生きているような私にはとてもショックだった。
中には肉親が死んでも平気な人間だっているだろう。
しかし、家族を失うというのは本来そういうことなのだ。
自分はこれまで、そうした依頼人の悲しみや喪失感を
ちゃんと考えながら仕事をしていただろうか?
だからこそ、そうした人々のお役に立ちたいという考えは私にもある。
しかし、そのことと「相続専門」をうたい文句にするのとは
少し違うのではないという気がする。
あるいは、私に覚悟ができていないだけなのかもしれないが。
いずれにしても、私は今日に至るまで「相続登記を承ります」
という広告ページを作れずにいる。
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